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第4部 四神を愛しなさいと言われました
166.定期的に想いが溢れる
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入浴後、香子は朱雀によって彼の室へ運ばれた。
これから抱かれるのだと思うと、いつも香子は恥ずかしくなってしまう。
(百年も経てば慣れるかしら?)
それぐらい時間が経たないと頬が熱くなるのは止まらない気がする。香子はそっと朱雀の胸に頬を押し当てた。朱雀の肌は燃えるように熱いと香子は思う。
けれどそれで焼かれるとは思わなかった。
朱雀は玄武と共に香子に触れる。
「あっ、あっ、あっ……」
四神宮ではそうだろうが、誰かの領地に行ったなら一神とだけ交わることになる。そう思っただけで、香子は涙をこぼした。
二神に同時に求められたいわけではない。ただ、四神宮での日々がなくなってしまうことが香子にはつらいのである。
「ああっ……!」
けれどそんな思いも、玄武と朱雀に求められれば霧散してしまった。
当然ながら、翌朝にはまた思い出すのだが。
翌朝、香子は目の前で横になっている玄武にぎゅうっと抱き着いた。
どうしても想いが溢れてしまう。四神に抱かれたことで気持ちは安定したはずだったが、ここで向かう先を決めなければいけないということが香子へのプレッシャーになっていた。
『香子、如何した?』
耳を溶かすようなバリトンで囁かれ、香子は震える。
『なんだか、気持ちが不安定で……すみません』
『何を謝ることがあろう。気がかりなことがあるのならば話すがよい。我らでは気づかぬことが多い故な』
安心させるようにそう声をかける玄武のことが、香子は愛しかった。定期的に気持ちがわーっとなってしまう。これはどうにかならないものかと、玄武にぎゅうぎゅうくっつきながら考えてしまう。
そうしているうちにおなかが盛大な音を立てたので、まずは朝食をいただくことにした。
腹が減っては戦はできぬのである。
朝食を終えてから、香子は朱雀にぴっとりとくっついた。
『香子、如何した?』
『……うまく言えないのです……』
『そうか。なんでも聞くぞ。そなたの望む答えが返せるかどうかはわからぬが……』
望む答えとはなんだろうと香子はぼんやり思う。
『ああいえ……別に答えがほしいわけではないのです。うまく言葉にできない気持ちがあって、それをただ聞いてもらえるだけでいいというか……』
香子は自分で言いながら何を言っているのかわからなくなってしまった。
『我らはそなたを悩ませてばかりのようだ』
『……決めごと、みたいなのがよくわからないのです。四神って領地からどれぐらいの期間離れていられるのかとか、他の神の領地に長期滞在はできるのかとか……ようは』
香子は玄武と朱雀を見た。
『私はこれからもあまり生活を変えたくないんです』
とは言いながら、香子は大陸を旅したいとは思っている。その時側に四神がいたらどんなに嬉しいだろうとも思った。
『……変わることが怖いのか、純粋に変えたくないのか悩むところだな』
朱雀はそう言って笑った。
『怖いですよ』
香子はポツリと答えた。
『何が怖い?』
『だって……喧嘩した時私の味方は一人もいないじゃないですか』
『は?』
玄武と朱雀は面食らったような顔をした。
『私は多分どなたかの領地へ行ったとしても、自分が暮らしたいように暮らすことを諦めないと思います。だからそれで衝突することはあると思うんですよ』
二神は頷いた。それはわかっているようだ。
『でもそのどなたかの領地で喧嘩をしたとして、眷属の方々は誰も私の味方にはなってくれないじゃないですか。そうしたら私、心が死んでしまうかもしれません。心が死んだら子どもは生まれませんよね。それはそれで困ります』
『……そなたはかようなことを考えていたのか』
玄武が呆然と呟いた。
『……おそれながら、眷属が全員四神の味方になるとは限りません』
朱雀の室に控えていた紅炎が発言した。
『それは……どうして?』
『我々眷属は四神が第一ではありますが、番を得ますと番が一番となります。なので四神の番に当たる花嫁様をもし悲しませるようなことをなされた際は、我々は全面的に花嫁様を支持します。もちろん喧嘩などの内容を聞いてからにはなりますが……』
『あらまぁ……』
香子は目を丸くし、口元に手を当てた。
四神の眷属は確かに、番を見つけると番を囲うことに全力になるのは香子も見てきた通りだ。それで何度も眷属の地雷を踏み抜いてきた香子だけに、さもありなんと納得してしまう。
『……関係性は大事ね』
『花嫁様が我ら眷属と関わるのはたいへんかもしれませんが、少しでも信じていただけると幸いです』
紅炎はそう言ってにっこりした。
『ありがとう、紅炎。少しだけ気が晴れたわ』
香子はにっこり笑むと、玄武に抱かれて部屋に送ってもらった。身支度を整えて、昼は青龍と過ごすことになっている。
『……そなたを放したくないな』
玄武に囁かれて、香子は「もうっ!」と思った。声も顔も魅力的だと知っているからタチが悪い。
『……では夜はなしにします?』
『それは困る』
玄武は残念そうに笑んで、戻っていった。香子はその背を見送って嘆息する。
身体も気持ちも四分割できればいいのにと香子は一瞬思ったが、それでも全員同じ方を向いてしまうだろうと思い直した。
決めるのは香子である。
侍女たちに身支度を整えてもらいながら、青龍と過ごす時間を香子は思った。
ーーーーー
香子はまた不安定
これから抱かれるのだと思うと、いつも香子は恥ずかしくなってしまう。
(百年も経てば慣れるかしら?)
それぐらい時間が経たないと頬が熱くなるのは止まらない気がする。香子はそっと朱雀の胸に頬を押し当てた。朱雀の肌は燃えるように熱いと香子は思う。
けれどそれで焼かれるとは思わなかった。
朱雀は玄武と共に香子に触れる。
「あっ、あっ、あっ……」
四神宮ではそうだろうが、誰かの領地に行ったなら一神とだけ交わることになる。そう思っただけで、香子は涙をこぼした。
二神に同時に求められたいわけではない。ただ、四神宮での日々がなくなってしまうことが香子にはつらいのである。
「ああっ……!」
けれどそんな思いも、玄武と朱雀に求められれば霧散してしまった。
当然ながら、翌朝にはまた思い出すのだが。
翌朝、香子は目の前で横になっている玄武にぎゅうっと抱き着いた。
どうしても想いが溢れてしまう。四神に抱かれたことで気持ちは安定したはずだったが、ここで向かう先を決めなければいけないということが香子へのプレッシャーになっていた。
『香子、如何した?』
耳を溶かすようなバリトンで囁かれ、香子は震える。
『なんだか、気持ちが不安定で……すみません』
『何を謝ることがあろう。気がかりなことがあるのならば話すがよい。我らでは気づかぬことが多い故な』
安心させるようにそう声をかける玄武のことが、香子は愛しかった。定期的に気持ちがわーっとなってしまう。これはどうにかならないものかと、玄武にぎゅうぎゅうくっつきながら考えてしまう。
そうしているうちにおなかが盛大な音を立てたので、まずは朝食をいただくことにした。
腹が減っては戦はできぬのである。
朝食を終えてから、香子は朱雀にぴっとりとくっついた。
『香子、如何した?』
『……うまく言えないのです……』
『そうか。なんでも聞くぞ。そなたの望む答えが返せるかどうかはわからぬが……』
望む答えとはなんだろうと香子はぼんやり思う。
『ああいえ……別に答えがほしいわけではないのです。うまく言葉にできない気持ちがあって、それをただ聞いてもらえるだけでいいというか……』
香子は自分で言いながら何を言っているのかわからなくなってしまった。
『我らはそなたを悩ませてばかりのようだ』
『……決めごと、みたいなのがよくわからないのです。四神って領地からどれぐらいの期間離れていられるのかとか、他の神の領地に長期滞在はできるのかとか……ようは』
香子は玄武と朱雀を見た。
『私はこれからもあまり生活を変えたくないんです』
とは言いながら、香子は大陸を旅したいとは思っている。その時側に四神がいたらどんなに嬉しいだろうとも思った。
『……変わることが怖いのか、純粋に変えたくないのか悩むところだな』
朱雀はそう言って笑った。
『怖いですよ』
香子はポツリと答えた。
『何が怖い?』
『だって……喧嘩した時私の味方は一人もいないじゃないですか』
『は?』
玄武と朱雀は面食らったような顔をした。
『私は多分どなたかの領地へ行ったとしても、自分が暮らしたいように暮らすことを諦めないと思います。だからそれで衝突することはあると思うんですよ』
二神は頷いた。それはわかっているようだ。
『でもそのどなたかの領地で喧嘩をしたとして、眷属の方々は誰も私の味方にはなってくれないじゃないですか。そうしたら私、心が死んでしまうかもしれません。心が死んだら子どもは生まれませんよね。それはそれで困ります』
『……そなたはかようなことを考えていたのか』
玄武が呆然と呟いた。
『……おそれながら、眷属が全員四神の味方になるとは限りません』
朱雀の室に控えていた紅炎が発言した。
『それは……どうして?』
『我々眷属は四神が第一ではありますが、番を得ますと番が一番となります。なので四神の番に当たる花嫁様をもし悲しませるようなことをなされた際は、我々は全面的に花嫁様を支持します。もちろん喧嘩などの内容を聞いてからにはなりますが……』
『あらまぁ……』
香子は目を丸くし、口元に手を当てた。
四神の眷属は確かに、番を見つけると番を囲うことに全力になるのは香子も見てきた通りだ。それで何度も眷属の地雷を踏み抜いてきた香子だけに、さもありなんと納得してしまう。
『……関係性は大事ね』
『花嫁様が我ら眷属と関わるのはたいへんかもしれませんが、少しでも信じていただけると幸いです』
紅炎はそう言ってにっこりした。
『ありがとう、紅炎。少しだけ気が晴れたわ』
香子はにっこり笑むと、玄武に抱かれて部屋に送ってもらった。身支度を整えて、昼は青龍と過ごすことになっている。
『……そなたを放したくないな』
玄武に囁かれて、香子は「もうっ!」と思った。声も顔も魅力的だと知っているからタチが悪い。
『……では夜はなしにします?』
『それは困る』
玄武は残念そうに笑んで、戻っていった。香子はその背を見送って嘆息する。
身体も気持ちも四分割できればいいのにと香子は一瞬思ったが、それでも全員同じ方を向いてしまうだろうと思い直した。
決めるのは香子である。
侍女たちに身支度を整えてもらいながら、青龍と過ごす時間を香子は思った。
ーーーーー
香子はまた不安定
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