異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
618 / 652
第4部 四神を愛しなさいと言われました

166.定期的に想いが溢れる

しおりを挟む
 入浴後、香子は朱雀によって彼の室へ運ばれた。
 これから抱かれるのだと思うと、いつも香子は恥ずかしくなってしまう。

(百年も経てば慣れるかしら?)

 それぐらい時間が経たないと頬が熱くなるのは止まらない気がする。香子はそっと朱雀の胸に頬を押し当てた。朱雀の肌は燃えるように熱いと香子は思う。
 けれどそれで焼かれるとは思わなかった。
 朱雀は玄武と共に香子に触れる。

「あっ、あっ、あっ……」

 四神宮ではそうだろうが、誰かの領地に行ったなら一神とだけ交わることになる。そう思っただけで、香子は涙をこぼした。
 二神に同時に求められたいわけではない。ただ、四神宮での日々がなくなってしまうことが香子にはつらいのである。

「ああっ……!」

 けれどそんな思いも、玄武と朱雀に求められれば霧散してしまった。
 当然ながら、翌朝にはまた思い出すのだが。


 翌朝、香子は目の前で横になっている玄武にぎゅうっと抱き着いた。
 どうしても想いが溢れてしまう。四神に抱かれたことで気持ちは安定したはずだったが、ここで向かう先を決めなければいけないということが香子へのプレッシャーになっていた。

香子シャンズ、如何した?』

 耳を溶かすようなバリトンで囁かれ、香子は震える。

『なんだか、気持ちが不安定で……すみません』
『何を謝ることがあろう。気がかりなことがあるのならば話すがよい。我らでは気づかぬことが多い故な』

 安心させるようにそう声をかける玄武のことが、香子は愛しかった。定期的に気持ちがわーっとなってしまう。これはどうにかならないものかと、玄武にぎゅうぎゅうくっつきながら考えてしまう。
 そうしているうちにおなかが盛大な音を立てたので、まずは朝食をいただくことにした。
 腹が減っては戦はできぬのである。
 朝食を終えてから、香子は朱雀にぴっとりとくっついた。

『香子、如何した?』
『……うまく言えないのです……』
『そうか。なんでも聞くぞ。そなたの望む答えが返せるかどうかはわからぬが……』

 望む答えとはなんだろうと香子はぼんやり思う。

『ああいえ……別に答えがほしいわけではないのです。うまく言葉にできない気持ちがあって、それをただ聞いてもらえるだけでいいというか……』

 香子は自分で言いながら何を言っているのかわからなくなってしまった。

『我らはそなたを悩ませてばかりのようだ』
『……決めごと、みたいなのがよくわからないのです。四神って領地からどれぐらいの期間離れていられるのかとか、他の神の領地に長期滞在はできるのかとか……ようは』

 香子は玄武と朱雀を見た。

『私はこれからもあまり生活を変えたくないんです』

 とは言いながら、香子は大陸を旅したいとは思っている。その時側に四神がいたらどんなに嬉しいだろうとも思った。

『……変わることが怖いのか、純粋に変えたくないのか悩むところだな』

 朱雀はそう言って笑った。

『怖いですよ』

 香子はポツリと答えた。

『何が怖い?』
『だって……喧嘩した時私の味方は一人もいないじゃないですか』
『は?』

 玄武と朱雀は面食らったような顔をした。

『私は多分どなたかの領地へ行ったとしても、自分が暮らしたいように暮らすことを諦めないと思います。だからそれで衝突することはあると思うんですよ』

 二神は頷いた。それはわかっているようだ。

『でもそのどなたかの領地で喧嘩をしたとして、眷属の方々は誰も私の味方にはなってくれないじゃないですか。そうしたら私、心が死んでしまうかもしれません。心が死んだら子どもは生まれませんよね。それはそれで困ります』
『……そなたはかようなことを考えていたのか』

 玄武が呆然と呟いた。

『……おそれながら、眷属が全員四神の味方になるとは限りません』

 朱雀の室に控えていた紅炎が発言した。

『それは……どうして?』
『我々眷属は四神が第一ではありますが、番を得ますと番が一番となります。なので四神の番に当たる花嫁様をもし悲しませるようなことをなされた際は、我々は全面的に花嫁様を支持します。もちろん喧嘩などの内容を聞いてからにはなりますが……』
『あらまぁ……』

 香子は目を丸くし、口元に手を当てた。
 四神の眷属は確かに、番を見つけると番を囲うことに全力になるのは香子も見てきた通りだ。それで何度も眷属の地雷を踏み抜いてきた香子だけに、さもありなんと納得してしまう。

『……関係性は大事ね』
『花嫁様が我ら眷属と関わるのはたいへんかもしれませんが、少しでも信じていただけると幸いです』

 紅炎はそう言ってにっこりした。

『ありがとう、紅炎。少しだけ気が晴れたわ』

 香子はにっこり笑むと、玄武に抱かれて部屋に送ってもらった。身支度を整えて、昼は青龍と過ごすことになっている。

『……そなたを放したくないな』

 玄武に囁かれて、香子は「もうっ!」と思った。声も顔も魅力的だと知っているからタチが悪い。

『……では夜はなしにします?』
『それは困る』

 玄武は残念そうに笑んで、戻っていった。香子はその背を見送って嘆息する。
 身体も気持ちも四分割できればいいのにと香子は一瞬思ったが、それでも全員同じ方を向いてしまうだろうと思い直した。
 決めるのは香子である。
 侍女たちに身支度を整えてもらいながら、青龍と過ごす時間を香子は思った。


ーーーーー
香子はまた不安定
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...