異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

173.その溺愛の理由は

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 入浴を終えた香子が部屋に戻ると、白虎が待っていた。
 侍女が一瞬迷惑そうな顔をしたのを、香子は見逃さなかった。香子としては窘めるところではなく、ちょっと面白いと思った。

『しばしお待ちを』

 延夕玲が白虎に声をかける。

『気にせずともよい』

 白虎は上機嫌だった。やっぱりなんだかなぁと香子は思う。これから白虎の室へ向かうことになっているようだが、他にも付き添いはいるのだろうか。

『白虎様、本日の付き添いはどなたですか?』
『玄武兄と朱雀兄には声をかけた。安心せよ』
『ありがとうございます』

 香子はまだ一人で白虎に身を委ねる勇気はない。本性を現わした白い虎の姿の白虎に抱かれるなど、考えるだけで恐怖だ。だから香子はあまり考えないようにしている。どうせ考えても考えなくても身を委ねることになっているのだから。
 睡衣のまま、白虎に長袍を羽織らせられて抱き上げられた。その胸にこてんと頭をもたせかける。
 香子はこうして抱き上げられるのが好きだ。最初朱雀に抱き上げられた時もときめいてしまってどうしようもなかったが、その逞しい腕や胸板にほっとしてしまう。
 それは四神が絶対己に危害を加えないと知っているから猶更だった。
 白虎の室に連れて行かれると、しばらくもしないうちに玄武と朱雀がやってきた。
 そうして、香子は震えながらも身体の力を抜いた。
 口づけは人型の白虎から受け、肌を辿る指先も優しい。朱雀に熱を与えられたらもう、白虎の形状がどうだとかそんなことは関係なかった。

「あぁあっ……!?」

 香子は甘い熱と己を包み込む毛皮に涙をこぼした。


 翌朝、虎の姿の白虎の腕の中で香子は目覚めた。
 ただくっついているだけならば、でかいもふもふにじゃれつくという幸せに浸れる。言ってはなんだがぬいぐるみ感覚に近い。とても白虎には言えないが。

(もふもふ~もふもふ~……)

 香子は幸せだが、白虎にとっては忍耐を強いられる行為だ。ただでさえ香子は裸だし、昨夜たっぷり愛したことで香子の身体は白虎の匂いを纏っている。これは己の物だと、白虎はまた襲ってしまいそうだった。
 それをどうにか抑え、白虎は人型になった。

『……おはようございます』

 途端に香子が不機嫌になる。そのさまが白虎としても面白い。

『おはよう。昨夜も愛らしかったぞ』
『ううう……』

 香子は昨夜の己の痴態をありありと思い出してしまい、真っ赤になった。

『……白虎様は意地悪です』
『どこがだ? 今すぐ襲わないだけでも感謝されてしかるべきではないか?』

 白虎はそう言いながら香子を抱きよせ、その髪に頬に口づけを落とした。そうして唇が重なる。

「……んっ……」

 四神との口づけは甘露だと香子は思う。特に抱かれた翌朝はそうだった。それは空腹だからなのかな? と思った時、香子の腹が盛大に鳴った。

『……厨房に伝えてはある』

 後ろから甘いテナーが聞こえて、香子は自分の後ろに朱雀がいたことに気づいた。

「……はぁ……」

 唇を放されて身体を起こそうとすると、後ろからやんわりと抱きしめられた。

香子シャンズ、どこへ行く?』
『いえ……どこにも行きません。朱雀様、玄武様は?』
『昨夜のうちに室へ戻られたぞ』
『そうですか』

 香子は昨日考えていたことを思いだしたので、もしみながいるのならば聞いてみたいと思ったが、いないというなら後でもいいかと身体の力を抜いた。

『玄武兄に何か?』
『玄武様に、というのではないのです。できれば全員集まられたところで聞こうかと思いまして』
『それは他の者に聞かれてはいけない話か?』
『あんまり聞かれたくはないですね。ただの確認ですが……』
『では朝食の後で集まるか』

 グルル……という唸るような声が前からして、香子はそちらを見た。白虎の機嫌が悪そうである。そういえば白虎は嫉妬するのだったと思い出したが、それは朱雀がとりなしてくれた。
 そして朱雀、白虎と共にありえない量の朝食を食べ、その後は玄武の室に集まったのだった。


 玄武の室の居間で、香子は玄武の腕の中にいる。
 ここは玄武の室だからということらしい。表情はあまり動かないいが、玄武の機嫌がいいことは香子にもわかった。

『して、香子。聞きたいこととは何か』
『えっとですね……私は先に四神全員と結婚してしまったわけなのですが……そういうことって過去の花嫁でもした人はいるのですか?』

 そう聞くと、みな黙った。過去の四神の記憶を探っているのかもしれないと、香子はお茶を飲んで待つことにした。
 四神の、先代の記憶を探るということが香子にはよくわからない。情景しか見えないとは聞いたことがあるが、その情景だけでも探せるものなのか疑問だった。

(記憶を投影できる機械みたいなのは……元の世界でもないんだよね。不思議だなぁ……)
『……ないな』
『ありませんね』
『ない』
『ありませんでした』

 玄武、朱雀、白虎、青龍の順に答える。現状のようなことは過去の花嫁にはなかったようだ。
 香子はため息をついた。
 ということは、現在の溺愛っぷりは香子に対してだけなのかもしれない。

(でもなぁ……みんな現状を理解してるのかなぁ?)

 それを聞いていいのかどうか、今の香子には判断がつかなかった。
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