625 / 653
第4部 四神を愛しなさいと言われました
173.その溺愛の理由は
しおりを挟む
入浴を終えた香子が部屋に戻ると、白虎が待っていた。
侍女が一瞬迷惑そうな顔をしたのを、香子は見逃さなかった。香子としては窘めるところではなく、ちょっと面白いと思った。
『しばしお待ちを』
延夕玲が白虎に声をかける。
『気にせずともよい』
白虎は上機嫌だった。やっぱりなんだかなぁと香子は思う。これから白虎の室へ向かうことになっているようだが、他にも付き添いはいるのだろうか。
『白虎様、本日の付き添いはどなたですか?』
『玄武兄と朱雀兄には声をかけた。安心せよ』
『ありがとうございます』
香子はまだ一人で白虎に身を委ねる勇気はない。本性を現わした白い虎の姿の白虎に抱かれるなど、考えるだけで恐怖だ。だから香子はあまり考えないようにしている。どうせ考えても考えなくても身を委ねることになっているのだから。
睡衣のまま、白虎に長袍を羽織らせられて抱き上げられた。その胸にこてんと頭をもたせかける。
香子はこうして抱き上げられるのが好きだ。最初朱雀に抱き上げられた時もときめいてしまってどうしようもなかったが、その逞しい腕や胸板にほっとしてしまう。
それは四神が絶対己に危害を加えないと知っているから猶更だった。
白虎の室に連れて行かれると、しばらくもしないうちに玄武と朱雀がやってきた。
そうして、香子は震えながらも身体の力を抜いた。
口づけは人型の白虎から受け、肌を辿る指先も優しい。朱雀に熱を与えられたらもう、白虎の形状がどうだとかそんなことは関係なかった。
「あぁあっ……!?」
香子は甘い熱と己を包み込む毛皮に涙をこぼした。
翌朝、虎の姿の白虎の腕の中で香子は目覚めた。
ただくっついているだけならば、でかいもふもふにじゃれつくという幸せに浸れる。言ってはなんだがぬいぐるみ感覚に近い。とても白虎には言えないが。
(もふもふ~もふもふ~……)
香子は幸せだが、白虎にとっては忍耐を強いられる行為だ。ただでさえ香子は裸だし、昨夜たっぷり愛したことで香子の身体は白虎の匂いを纏っている。これは己の物だと、白虎はまた襲ってしまいそうだった。
それをどうにか抑え、白虎は人型になった。
『……おはようございます』
途端に香子が不機嫌になる。そのさまが白虎としても面白い。
『おはよう。昨夜も愛らしかったぞ』
『ううう……』
香子は昨夜の己の痴態をありありと思い出してしまい、真っ赤になった。
『……白虎様は意地悪です』
『どこがだ? 今すぐ襲わないだけでも感謝されてしかるべきではないか?』
白虎はそう言いながら香子を抱きよせ、その髪に頬に口づけを落とした。そうして唇が重なる。
「……んっ……」
四神との口づけは甘露だと香子は思う。特に抱かれた翌朝はそうだった。それは空腹だからなのかな? と思った時、香子の腹が盛大に鳴った。
『……厨房に伝えてはある』
後ろから甘いテナーが聞こえて、香子は自分の後ろに朱雀がいたことに気づいた。
「……はぁ……」
唇を放されて身体を起こそうとすると、後ろからやんわりと抱きしめられた。
『香子、どこへ行く?』
『いえ……どこにも行きません。朱雀様、玄武様は?』
『昨夜のうちに室へ戻られたぞ』
『そうですか』
香子は昨日考えていたことを思いだしたので、もしみながいるのならば聞いてみたいと思ったが、いないというなら後でもいいかと身体の力を抜いた。
『玄武兄に何か?』
『玄武様に、というのではないのです。できれば全員集まられたところで聞こうかと思いまして』
『それは他の者に聞かれてはいけない話か?』
『あんまり聞かれたくはないですね。ただの確認ですが……』
『では朝食の後で集まるか』
グルル……という唸るような声が前からして、香子はそちらを見た。白虎の機嫌が悪そうである。そういえば白虎は嫉妬するのだったと思い出したが、それは朱雀がとりなしてくれた。
そして朱雀、白虎と共にありえない量の朝食を食べ、その後は玄武の室に集まったのだった。
玄武の室の居間で、香子は玄武の腕の中にいる。
ここは玄武の室だからということらしい。表情はあまり動かないいが、玄武の機嫌がいいことは香子にもわかった。
『して、香子。聞きたいこととは何か』
『えっとですね……私は先に四神全員と結婚してしまったわけなのですが……そういうことって過去の花嫁でもした人はいるのですか?』
そう聞くと、みな黙った。過去の四神の記憶を探っているのかもしれないと、香子はお茶を飲んで待つことにした。
四神の、先代の記憶を探るということが香子にはよくわからない。情景しか見えないとは聞いたことがあるが、その情景だけでも探せるものなのか疑問だった。
(記憶を投影できる機械みたいなのは……元の世界でもないんだよね。不思議だなぁ……)
『……ないな』
『ありませんね』
『ない』
『ありませんでした』
玄武、朱雀、白虎、青龍の順に答える。現状のようなことは過去の花嫁にはなかったようだ。
香子はため息をついた。
ということは、現在の溺愛っぷりは香子に対してだけなのかもしれない。
(でもなぁ……みんな現状を理解してるのかなぁ?)
それを聞いていいのかどうか、今の香子には判断がつかなかった。
侍女が一瞬迷惑そうな顔をしたのを、香子は見逃さなかった。香子としては窘めるところではなく、ちょっと面白いと思った。
『しばしお待ちを』
延夕玲が白虎に声をかける。
『気にせずともよい』
白虎は上機嫌だった。やっぱりなんだかなぁと香子は思う。これから白虎の室へ向かうことになっているようだが、他にも付き添いはいるのだろうか。
『白虎様、本日の付き添いはどなたですか?』
『玄武兄と朱雀兄には声をかけた。安心せよ』
『ありがとうございます』
香子はまだ一人で白虎に身を委ねる勇気はない。本性を現わした白い虎の姿の白虎に抱かれるなど、考えるだけで恐怖だ。だから香子はあまり考えないようにしている。どうせ考えても考えなくても身を委ねることになっているのだから。
睡衣のまま、白虎に長袍を羽織らせられて抱き上げられた。その胸にこてんと頭をもたせかける。
香子はこうして抱き上げられるのが好きだ。最初朱雀に抱き上げられた時もときめいてしまってどうしようもなかったが、その逞しい腕や胸板にほっとしてしまう。
それは四神が絶対己に危害を加えないと知っているから猶更だった。
白虎の室に連れて行かれると、しばらくもしないうちに玄武と朱雀がやってきた。
そうして、香子は震えながらも身体の力を抜いた。
口づけは人型の白虎から受け、肌を辿る指先も優しい。朱雀に熱を与えられたらもう、白虎の形状がどうだとかそんなことは関係なかった。
「あぁあっ……!?」
香子は甘い熱と己を包み込む毛皮に涙をこぼした。
翌朝、虎の姿の白虎の腕の中で香子は目覚めた。
ただくっついているだけならば、でかいもふもふにじゃれつくという幸せに浸れる。言ってはなんだがぬいぐるみ感覚に近い。とても白虎には言えないが。
(もふもふ~もふもふ~……)
香子は幸せだが、白虎にとっては忍耐を強いられる行為だ。ただでさえ香子は裸だし、昨夜たっぷり愛したことで香子の身体は白虎の匂いを纏っている。これは己の物だと、白虎はまた襲ってしまいそうだった。
それをどうにか抑え、白虎は人型になった。
『……おはようございます』
途端に香子が不機嫌になる。そのさまが白虎としても面白い。
『おはよう。昨夜も愛らしかったぞ』
『ううう……』
香子は昨夜の己の痴態をありありと思い出してしまい、真っ赤になった。
『……白虎様は意地悪です』
『どこがだ? 今すぐ襲わないだけでも感謝されてしかるべきではないか?』
白虎はそう言いながら香子を抱きよせ、その髪に頬に口づけを落とした。そうして唇が重なる。
「……んっ……」
四神との口づけは甘露だと香子は思う。特に抱かれた翌朝はそうだった。それは空腹だからなのかな? と思った時、香子の腹が盛大に鳴った。
『……厨房に伝えてはある』
後ろから甘いテナーが聞こえて、香子は自分の後ろに朱雀がいたことに気づいた。
「……はぁ……」
唇を放されて身体を起こそうとすると、後ろからやんわりと抱きしめられた。
『香子、どこへ行く?』
『いえ……どこにも行きません。朱雀様、玄武様は?』
『昨夜のうちに室へ戻られたぞ』
『そうですか』
香子は昨日考えていたことを思いだしたので、もしみながいるのならば聞いてみたいと思ったが、いないというなら後でもいいかと身体の力を抜いた。
『玄武兄に何か?』
『玄武様に、というのではないのです。できれば全員集まられたところで聞こうかと思いまして』
『それは他の者に聞かれてはいけない話か?』
『あんまり聞かれたくはないですね。ただの確認ですが……』
『では朝食の後で集まるか』
グルル……という唸るような声が前からして、香子はそちらを見た。白虎の機嫌が悪そうである。そういえば白虎は嫉妬するのだったと思い出したが、それは朱雀がとりなしてくれた。
そして朱雀、白虎と共にありえない量の朝食を食べ、その後は玄武の室に集まったのだった。
玄武の室の居間で、香子は玄武の腕の中にいる。
ここは玄武の室だからということらしい。表情はあまり動かないいが、玄武の機嫌がいいことは香子にもわかった。
『して、香子。聞きたいこととは何か』
『えっとですね……私は先に四神全員と結婚してしまったわけなのですが……そういうことって過去の花嫁でもした人はいるのですか?』
そう聞くと、みな黙った。過去の四神の記憶を探っているのかもしれないと、香子はお茶を飲んで待つことにした。
四神の、先代の記憶を探るということが香子にはよくわからない。情景しか見えないとは聞いたことがあるが、その情景だけでも探せるものなのか疑問だった。
(記憶を投影できる機械みたいなのは……元の世界でもないんだよね。不思議だなぁ……)
『……ないな』
『ありませんね』
『ない』
『ありませんでした』
玄武、朱雀、白虎、青龍の順に答える。現状のようなことは過去の花嫁にはなかったようだ。
香子はため息をついた。
ということは、現在の溺愛っぷりは香子に対してだけなのかもしれない。
(でもなぁ……みんな現状を理解してるのかなぁ?)
それを聞いていいのかどうか、今の香子には判断がつかなかった。
142
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる