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本編
99.非常的選択
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非常的選択 究極の選択
早い方がいいだろうと、二人はすぐ花嫁に紅児の叔父に会う旨を伝えに行った。花嫁は笑んでさっそく手配してくれた。
そうは言ってももう夕方であるし、早くても謁見は明日の午後以降になるだろうことは二人にもわかっていた。
夕食を終えると、紅夏は具体的に紅児の叔父に伝える内容を整理してくれた。二人の関係を正しく説明するにはやはり紅夏が伝えた方がいいだろう。紅児では伝えようとする前に叔父に遮られてしまう可能性も0ではない。もちろん叔父に反対されたからといってこの婚姻がなくなるわけではない。けれど少しでも理解してもらうよう努めないといけないと思うのだ。
許せなくても、相手は身内なのだから。
はるばる海の向こうから紅児を迎えにきてくれたのだから。
叔父は唐への貿易についてほとんど携わっていなかったので四神信仰については詳しくない。どういう経緯で王城に来、紅夏と知り合ったのかは先に花嫁が説明してくれたようだが、結婚となると話は別だ。特に紅児はまだ未成年である。
紅児だって、まさかこんな遠い地で伴侶に巡り合えるとは思っていなかった。
それもすこぶる素敵な……。
チラ、と紅夏を伺い頬を染める。暗紫紅色の長い髪に、健康的に見える小麦色の滑らかな肌、黒曜石を思わせる瞳。こんな美丈夫が己を愛しているだなんてどうしても信じられない。
客観的に見ると紅児の容姿はとてもかわいい。しかしこの国で暮らした3年で紅児は己の容姿がコンプレックスになってしまっていた。
セレスト王国にはいろんな髪や肌の色をした人間がいるので全く気にならなかったが、この国の人々の容姿はほぼ同じ。黒髪に黄色を帯びた肌色、というのが一般的である。村でも大人たちはかなり紅児を気遣ってくれたが子供たちはそうはいかなかったし、たまに訪れる旅人はいぶかしげな視線を紅児に向けた。それ故に紅児は己の容姿に全く自信を持てなくなってしまっていた。
そんな紅児を紅夏が愛しくてならないという風に見つめている。
その視線は全然変わらなくて、それも紅児の心を溶かした要因の一つかもしれなかった。
二人の唇が自然と重なろうとした時、扉を叩く音がした。
「紅児ー、お風呂に行きましょう~!」
侍女たちの声だった。
紅児ははっとして紅夏からその身を離そうとする。だが紅夏は逃がしてはくれなかった。
そっと唇が重ねられすぐに離される。紅夏は苦笑した。
「全く……無粋な……」
そう低く呟いて紅児を優しく離した。
「紅児ー?」
「……あ。はーい、今行きまーす!!」
真っ赤になってしまっただろう頬に触れる。案の定熱を持っていた。どうしよう、と思いながら入浴の準備をし「行ってきます……」と紅夏に声をかけて室を出た。
「さ、行きましょ!」
侍女たちの好奇心に満ちた視線に出迎えられ紅児は一瞬怯んだが、両腕を彼女たちにがっちり掴まれ文字通り浴場へ連行されてしまった。
あのまま紅夏に押し倒されていればよかったのか。
まるで究極の選択といえる状態に紅児はこっそりため息をついた。
侍女たちの好奇心は留まるところを知らなかった。
あけすけに「初めてってどんなかんじ?」とかもう聞かれ放題である。猥談なんて本当に困る物はない。
紅児は侍女たちに囲まれて乞われるままにぽつりぽつりと答えた。いったい何の羞恥プレイだろう。
「はーーーっ! やっぱりそうなのね~」
「最初は痛いんだ? でも気持ちよくなるんでしょ?」
「花嫁様の時はすごかったわよね、あの血の量ときたら……」
「でもあれって一神につき一回だけみたいだし、毎晩のように過ごされてるんだから、やっぱりねぇ……すごく気持ちいいんじゃない?」
侍女たちの猛攻の前で、紅児はただ真っ赤になってあうあうと口を開いたり閉じたりすることしかできない。
気持ちいいというか、もうどうしたらいいかわからないというか……。
そんな恥ずかしいことを世の女性たちは話し合ったりするものなのかと気が遠くなりそうである。
「そういえば、紅夏様は紅児と結婚したのよね?」
「……はい」
もうどうにでもしてくれという心境である。
「白雲様と陳さんとか、青藍様と延様は結婚されてないわよね」
彼女たちは顔を見合わせて確認した。
そういえば彼らが結婚したとは聞いた覚えがない。
「……そうしたら……朱雀様のお付きはどうなるのかしら?」
紅児はあ、と顔を上げた。
「ええと、領地からどなたか来られるようなことを聞いています」
「え、本当!?」
「は、はい……」
「きゃーーーーーー!!」
「やだー、また目の保養が増えるのねッ!」
「いやーもう! 今度こそ玉の輿狙わなきゃーーー!」
「あんたが相手にされるわけないでしょっ!」
「お肌の手入れしてないーーー!」
彼女たちの反応に紅児は茫然とした。確かに、一人増えるということはそういう可能性もないではない。
ふふ、と紅児はやっと笑みを浮かべる。
紅児がもし帰国してもみんな変わらず楽しく暮らしてくれるだろう。そう思ったら嬉しくなった。
浴場での喧騒は、侍女頭に一喝されるまで続いた。
早い方がいいだろうと、二人はすぐ花嫁に紅児の叔父に会う旨を伝えに行った。花嫁は笑んでさっそく手配してくれた。
そうは言ってももう夕方であるし、早くても謁見は明日の午後以降になるだろうことは二人にもわかっていた。
夕食を終えると、紅夏は具体的に紅児の叔父に伝える内容を整理してくれた。二人の関係を正しく説明するにはやはり紅夏が伝えた方がいいだろう。紅児では伝えようとする前に叔父に遮られてしまう可能性も0ではない。もちろん叔父に反対されたからといってこの婚姻がなくなるわけではない。けれど少しでも理解してもらうよう努めないといけないと思うのだ。
許せなくても、相手は身内なのだから。
はるばる海の向こうから紅児を迎えにきてくれたのだから。
叔父は唐への貿易についてほとんど携わっていなかったので四神信仰については詳しくない。どういう経緯で王城に来、紅夏と知り合ったのかは先に花嫁が説明してくれたようだが、結婚となると話は別だ。特に紅児はまだ未成年である。
紅児だって、まさかこんな遠い地で伴侶に巡り合えるとは思っていなかった。
それもすこぶる素敵な……。
チラ、と紅夏を伺い頬を染める。暗紫紅色の長い髪に、健康的に見える小麦色の滑らかな肌、黒曜石を思わせる瞳。こんな美丈夫が己を愛しているだなんてどうしても信じられない。
客観的に見ると紅児の容姿はとてもかわいい。しかしこの国で暮らした3年で紅児は己の容姿がコンプレックスになってしまっていた。
セレスト王国にはいろんな髪や肌の色をした人間がいるので全く気にならなかったが、この国の人々の容姿はほぼ同じ。黒髪に黄色を帯びた肌色、というのが一般的である。村でも大人たちはかなり紅児を気遣ってくれたが子供たちはそうはいかなかったし、たまに訪れる旅人はいぶかしげな視線を紅児に向けた。それ故に紅児は己の容姿に全く自信を持てなくなってしまっていた。
そんな紅児を紅夏が愛しくてならないという風に見つめている。
その視線は全然変わらなくて、それも紅児の心を溶かした要因の一つかもしれなかった。
二人の唇が自然と重なろうとした時、扉を叩く音がした。
「紅児ー、お風呂に行きましょう~!」
侍女たちの声だった。
紅児ははっとして紅夏からその身を離そうとする。だが紅夏は逃がしてはくれなかった。
そっと唇が重ねられすぐに離される。紅夏は苦笑した。
「全く……無粋な……」
そう低く呟いて紅児を優しく離した。
「紅児ー?」
「……あ。はーい、今行きまーす!!」
真っ赤になってしまっただろう頬に触れる。案の定熱を持っていた。どうしよう、と思いながら入浴の準備をし「行ってきます……」と紅夏に声をかけて室を出た。
「さ、行きましょ!」
侍女たちの好奇心に満ちた視線に出迎えられ紅児は一瞬怯んだが、両腕を彼女たちにがっちり掴まれ文字通り浴場へ連行されてしまった。
あのまま紅夏に押し倒されていればよかったのか。
まるで究極の選択といえる状態に紅児はこっそりため息をついた。
侍女たちの好奇心は留まるところを知らなかった。
あけすけに「初めてってどんなかんじ?」とかもう聞かれ放題である。猥談なんて本当に困る物はない。
紅児は侍女たちに囲まれて乞われるままにぽつりぽつりと答えた。いったい何の羞恥プレイだろう。
「はーーーっ! やっぱりそうなのね~」
「最初は痛いんだ? でも気持ちよくなるんでしょ?」
「花嫁様の時はすごかったわよね、あの血の量ときたら……」
「でもあれって一神につき一回だけみたいだし、毎晩のように過ごされてるんだから、やっぱりねぇ……すごく気持ちいいんじゃない?」
侍女たちの猛攻の前で、紅児はただ真っ赤になってあうあうと口を開いたり閉じたりすることしかできない。
気持ちいいというか、もうどうしたらいいかわからないというか……。
そんな恥ずかしいことを世の女性たちは話し合ったりするものなのかと気が遠くなりそうである。
「そういえば、紅夏様は紅児と結婚したのよね?」
「……はい」
もうどうにでもしてくれという心境である。
「白雲様と陳さんとか、青藍様と延様は結婚されてないわよね」
彼女たちは顔を見合わせて確認した。
そういえば彼らが結婚したとは聞いた覚えがない。
「……そうしたら……朱雀様のお付きはどうなるのかしら?」
紅児はあ、と顔を上げた。
「ええと、領地からどなたか来られるようなことを聞いています」
「え、本当!?」
「は、はい……」
「きゃーーーーーー!!」
「やだー、また目の保養が増えるのねッ!」
「いやーもう! 今度こそ玉の輿狙わなきゃーーー!」
「あんたが相手にされるわけないでしょっ!」
「お肌の手入れしてないーーー!」
彼女たちの反応に紅児は茫然とした。確かに、一人増えるということはそういう可能性もないではない。
ふふ、と紅児はやっと笑みを浮かべる。
紅児がもし帰国してもみんな変わらず楽しく暮らしてくれるだろう。そう思ったら嬉しくなった。
浴場での喧騒は、侍女頭に一喝されるまで続いた。
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