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本編
41.前進
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朝食の席では当然のように紅夏が傍らにおり、相変わらず紅児に給餌をする。もう逆らうのも疲れたので食べさせてもらっているが、周りの生ぬるい視線が痛くてげんなりしてしまう。けれど食べ物に罪はないのでそれなりにおいしくいただいてはいる。
本人が思っているより紅児はけっこう図太かったらしい。
朝食後侍女頭である陳に声をかけられて四神宮の庭に向かった。紅夏も一緒にと言われる。
道すがら陳に心配をかけたことを謝罪した。陳はそれにころころと笑ってさらりと言った。
「貴女はいいのよ。それよりも紅夏様の方が問題だわ」
けれど紅夏はそれに何の反応も見せなかった。
紅夏の問題、というのはなんとなくわかるような気がする。人ではないから人の心の機微はよくわからないだろうし言葉も少ない。紅児自身も紅夏のことはわからないからお互いさまなのかもしれなかったが、それをぽつりとつぶやいた時侍女たちに全力で否定された。
四神宮の庭では今日も、花嫁が朱雀の腕に抱かれて待っていた。
紅の美しい一対。
目にするだけでほうっとため息をつきたくなる光景である。
近くには延や黒月の姿もあるが、あくまで目立たないように控えている。
「遅くなりまして申し訳ありません」
紅夏が全然申し訳なく思っていなさそうに謝罪の言葉を述べた。
それに朱雀がひらひらと手を振る。あっちへ行けという意味だろうか。
「エリーザ、いらっしゃい」
柔らかい声に招かれて、紅児はふらふらと花嫁の近くに寄った。
「座って」
戸惑いながらも淑女の礼を取り石造りの凳子に腰掛ける。その横の席に紅夏が座った。
「本当はこんな場ではなく正式に伝えなくてはいけないのだけど……」
言いづらそうに言葉を紡ぐ花嫁に、紅児は居住まいを正した。どうやら先程の件ではないらしい。
「実はね、昨日までセレスト王国の貿易商が王都に滞在していたの」
意を決したように真剣な顔で告げられた内容に、紅児は目を見開いた。
(……え……)
「ただ、どうやら身分がそれほど高い者ではなかったみたいで、一昨日まで滞在していることがわからなかったの」
花嫁の言葉をどうにか頭に入れようとする。
こんなに。
こんなに近くに。
「それで昨日どうにか捕まえて、問い合わせの書状を渡すことができたわ」
「……はい」
国に紅児の存在が知らされるのだろうか。
「もちろん、エリーザの国までは片道だけで2カ月かかるわ。往復で4カ月、その間に書状がどれだけ滞るかわからない」
紅児はそれに頷いた。
元よりそれも覚悟の上だ。
「ただそれではわざわざ問い合わせをした意味がないから、エリーザを受け入れる、入れないも含めて半年の猶予を与えたの。つまり国では2カ月以内に返答がある計算ね。半年経てば必ず返事がくるから、それまで待ってほしいのよ」
花嫁の科白には説得力があった。けれどそれを鵜呑みにすることはできない。
「必ず、なんて誰が言えるんですか……」
”必ず”なんてありえない約束だと紅児は思う。
現に紅児の乗った船は嵐に遭って難破し、乗組員たちや父の消息も知れない。
なのに。
厳しい表情で近づいてこようとする延を花嫁が制した。
「そうね、紅児には信じられないかもしれないわ」
花嫁が柔らかく笑む。
「でもね、四神の花嫁の言うことは”絶対”なの」
紅児はぽかん、と口を開けた。
慈愛に満ちた笑みの中でその黒い瞳だけが自信に満ちている。
それは神の加護なのだろうか。
もしも、花嫁がいる間に返事が来たなら。
そうしたら神の存在を信じられるかもしれない。
「だからね、紅夏。それまで手を出すのはおやめなさい」
ぴしゃりと言われた紅夏を窺うと、彼は無表情だった。ただその目だけが厳しい色を帯びている。
敵意とまではいかないだろうが、花嫁に対して向けていい視線ではないと紅児は思った。
「それは合意の上でもでしょうか」
「合意にさせるの間違いじゃないかしら? 貴方たちの愛情が深いことは承知しているわ。でもエリーザは今大事な時期でしょう。帰国できるかできないか不安でいっぱいなところをひっかきまわしてはいけないわ」
花嫁の言うことはもっともだった。
紅児もできることなら国からの返答がくるまで心穏やかに過ごしたいと思う。
けれどそれでもし紅夏が全くかまってくれなくなったとしたら、それはそれでひどく寂しいだろうとは思うのだ。
(私、勝手なことばかり……)
紅夏と一緒にいる時恥ずかしいと思うことが多いけれど、大事にしてもらっているのはよくわかる。それに、こんな素敵な男性に愛を囁かれて悪い気がする女はいないだろう。もちろん紅児としてはいまだ全く信じられないが。
紅夏が嘆息した。
「抱かなければいいのでしょうか」
「この国では少なくとも成人するまで非交渉が前提ではなかったかしら。もちろんエリーザの国の考え方は違うみたいね。でも彼女の国の考え方に則るなら、結婚は18歳までできないわよ」
花嫁の目もまた厳しい。
この国での成人は15歳。結婚も15歳以上である。
対するエリーザの国では成人前の性交渉が認められている(もちろん避妊が前提ではあるが)。しかし結婚は原則18歳以上である。
「わかりました。紅児が15歳になるまでは合意であっても手は出しませぬ」
「……なんかひっかかるけどまぁいいわ。……後は別にエリーザさえよければいつも通りでね」
そう言って花嫁は大きくため息をついた。
紅児はその言葉にほっとする。そうしてほっとした自分に赤面した。これではまるで……。
「花嫁様のお心づかい、感謝いたします」
全然感謝しているとは思えない無表情のまま紅夏は礼をとった。それにククッと朱雀が笑う。
「まぁせいぜいあがくといい」
紅夏よりも深みのある甘いテナーが言葉を紡ぐ。紅夏はスッと目を細めた。
「ひとのことを言える立場ですか」
すると何故か花嫁が俯いた。
「ふむ、それもそうだな。ではせいぜい我もがんばるとしよう」
紅夏の言に気を悪くするでもなく、朱雀は花嫁を抱いたまま立ち上がるとそのまま庭を後にした。
「朱雀様! これ以上がんばらなくていいですから!」
「何を言う。ただでさえ昼間は遅れをとっているのだ。これまで以上にがんばらねばな」
「朱雀様の愛はちゃんと届いてますーー!!」
紅児はあっけにとられたまま花嫁と朱雀を見送る。
「紅夏!! 覚えてなさいよ!!」
花嫁の捨てゼリフとも取られる言葉に、紅夏が口角を上げた。
本人が思っているより紅児はけっこう図太かったらしい。
朝食後侍女頭である陳に声をかけられて四神宮の庭に向かった。紅夏も一緒にと言われる。
道すがら陳に心配をかけたことを謝罪した。陳はそれにころころと笑ってさらりと言った。
「貴女はいいのよ。それよりも紅夏様の方が問題だわ」
けれど紅夏はそれに何の反応も見せなかった。
紅夏の問題、というのはなんとなくわかるような気がする。人ではないから人の心の機微はよくわからないだろうし言葉も少ない。紅児自身も紅夏のことはわからないからお互いさまなのかもしれなかったが、それをぽつりとつぶやいた時侍女たちに全力で否定された。
四神宮の庭では今日も、花嫁が朱雀の腕に抱かれて待っていた。
紅の美しい一対。
目にするだけでほうっとため息をつきたくなる光景である。
近くには延や黒月の姿もあるが、あくまで目立たないように控えている。
「遅くなりまして申し訳ありません」
紅夏が全然申し訳なく思っていなさそうに謝罪の言葉を述べた。
それに朱雀がひらひらと手を振る。あっちへ行けという意味だろうか。
「エリーザ、いらっしゃい」
柔らかい声に招かれて、紅児はふらふらと花嫁の近くに寄った。
「座って」
戸惑いながらも淑女の礼を取り石造りの凳子に腰掛ける。その横の席に紅夏が座った。
「本当はこんな場ではなく正式に伝えなくてはいけないのだけど……」
言いづらそうに言葉を紡ぐ花嫁に、紅児は居住まいを正した。どうやら先程の件ではないらしい。
「実はね、昨日までセレスト王国の貿易商が王都に滞在していたの」
意を決したように真剣な顔で告げられた内容に、紅児は目を見開いた。
(……え……)
「ただ、どうやら身分がそれほど高い者ではなかったみたいで、一昨日まで滞在していることがわからなかったの」
花嫁の言葉をどうにか頭に入れようとする。
こんなに。
こんなに近くに。
「それで昨日どうにか捕まえて、問い合わせの書状を渡すことができたわ」
「……はい」
国に紅児の存在が知らされるのだろうか。
「もちろん、エリーザの国までは片道だけで2カ月かかるわ。往復で4カ月、その間に書状がどれだけ滞るかわからない」
紅児はそれに頷いた。
元よりそれも覚悟の上だ。
「ただそれではわざわざ問い合わせをした意味がないから、エリーザを受け入れる、入れないも含めて半年の猶予を与えたの。つまり国では2カ月以内に返答がある計算ね。半年経てば必ず返事がくるから、それまで待ってほしいのよ」
花嫁の科白には説得力があった。けれどそれを鵜呑みにすることはできない。
「必ず、なんて誰が言えるんですか……」
”必ず”なんてありえない約束だと紅児は思う。
現に紅児の乗った船は嵐に遭って難破し、乗組員たちや父の消息も知れない。
なのに。
厳しい表情で近づいてこようとする延を花嫁が制した。
「そうね、紅児には信じられないかもしれないわ」
花嫁が柔らかく笑む。
「でもね、四神の花嫁の言うことは”絶対”なの」
紅児はぽかん、と口を開けた。
慈愛に満ちた笑みの中でその黒い瞳だけが自信に満ちている。
それは神の加護なのだろうか。
もしも、花嫁がいる間に返事が来たなら。
そうしたら神の存在を信じられるかもしれない。
「だからね、紅夏。それまで手を出すのはおやめなさい」
ぴしゃりと言われた紅夏を窺うと、彼は無表情だった。ただその目だけが厳しい色を帯びている。
敵意とまではいかないだろうが、花嫁に対して向けていい視線ではないと紅児は思った。
「それは合意の上でもでしょうか」
「合意にさせるの間違いじゃないかしら? 貴方たちの愛情が深いことは承知しているわ。でもエリーザは今大事な時期でしょう。帰国できるかできないか不安でいっぱいなところをひっかきまわしてはいけないわ」
花嫁の言うことはもっともだった。
紅児もできることなら国からの返答がくるまで心穏やかに過ごしたいと思う。
けれどそれでもし紅夏が全くかまってくれなくなったとしたら、それはそれでひどく寂しいだろうとは思うのだ。
(私、勝手なことばかり……)
紅夏と一緒にいる時恥ずかしいと思うことが多いけれど、大事にしてもらっているのはよくわかる。それに、こんな素敵な男性に愛を囁かれて悪い気がする女はいないだろう。もちろん紅児としてはいまだ全く信じられないが。
紅夏が嘆息した。
「抱かなければいいのでしょうか」
「この国では少なくとも成人するまで非交渉が前提ではなかったかしら。もちろんエリーザの国の考え方は違うみたいね。でも彼女の国の考え方に則るなら、結婚は18歳までできないわよ」
花嫁の目もまた厳しい。
この国での成人は15歳。結婚も15歳以上である。
対するエリーザの国では成人前の性交渉が認められている(もちろん避妊が前提ではあるが)。しかし結婚は原則18歳以上である。
「わかりました。紅児が15歳になるまでは合意であっても手は出しませぬ」
「……なんかひっかかるけどまぁいいわ。……後は別にエリーザさえよければいつも通りでね」
そう言って花嫁は大きくため息をついた。
紅児はその言葉にほっとする。そうしてほっとした自分に赤面した。これではまるで……。
「花嫁様のお心づかい、感謝いたします」
全然感謝しているとは思えない無表情のまま紅夏は礼をとった。それにククッと朱雀が笑う。
「まぁせいぜいあがくといい」
紅夏よりも深みのある甘いテナーが言葉を紡ぐ。紅夏はスッと目を細めた。
「ひとのことを言える立場ですか」
すると何故か花嫁が俯いた。
「ふむ、それもそうだな。ではせいぜい我もがんばるとしよう」
紅夏の言に気を悪くするでもなく、朱雀は花嫁を抱いたまま立ち上がるとそのまま庭を後にした。
「朱雀様! これ以上がんばらなくていいですから!」
「何を言う。ただでさえ昼間は遅れをとっているのだ。これまで以上にがんばらねばな」
「朱雀様の愛はちゃんと届いてますーー!!」
紅児はあっけにとられたまま花嫁と朱雀を見送る。
「紅夏!! 覚えてなさいよ!!」
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