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5.夕飯はカレーでした
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「うむ……まぁ人は見かけによらないというからな!」
騎士団長はよくわからないことを言い、「がんばれよ!」と無責任にもリックを励まして去っていった。
「わーい! 騎士団長に応援してもらえたー! 僕、がんばる!」
がんばらなくていいから。頼むからやめてくれと思ったけど、みんながみんなリックに好意的でへきえきした。
さすがに仕事場は一緒にならなかった。リックは今日は王城の外で仕事をするらしい。俺はほっとした。
でも夕飯はどうしたって一緒になる。
夕飯は早めにとった方がいいのか、それとも遅めにとった方がいいのか少しだけ考えた。けどやめた。そんなことを気にして大事なごはんをおろそかにするなどありえない。リックに会おうが会うまいが同僚にからかわれるのは必至である。俺は開き直ることにした。
騎士団の食事はうまい。元々うまい飯がここ何年かで更にうまくなっていると同僚は言っていた。
今日は異世界料理と言われるカレーである。豚肉がごろごろ入ったカレーだ。野菜もごろごろ入っている。野菜嫌いの同僚は多いが、何故かこのカレーだけは食べられるという。黄色く色づけられたごはんをこれでもかとよそり、カレーをどばどばかけていく。うん、これだけでもリックのことを忘れられる。
「えー? 何これ? 見たことないっ!」
一昨日騎士に昇進した者たちがカレーを見て戸惑っていた。俺も最初の頃はああだったなぁとほっこりする。
いつのまにか帰ってきていたらしいリックが、みんなの皿を見てむむむと眉を寄せていた。
「カイエー、それ何?」
きょろきょろしていたリックが俺の姿を見つけて声をかけてきた。
「これか? これはカレーっていうんだ。異世界料理らしいぞ」
「へー。その黄色いごはんにかければいいの?」
「ああ、早く食べないとなくなるぞ。人気メニューだからな」
「わかった! ありがと、とってくる!」
ぴゅーっ! と音がしたように、リックは急いで列に並んだ。俺はさりげなく隣にハンカチを置いて人がいることをアピールする。
そして山盛りのサラダから手をつけはじめた。
「~~~~~~っっ! 何これっ! 超うまいんだけど!」
リックの感動した声が食堂内に響く。反応は予想通りだったがうるさい。
「おいしいのはみんな知ってる。あとうるさい」
「あ、ごめん。でもなんでこんなうまい飯が騎士団で出るんだよ? 普通は街中の食堂とかからじゃないの?」
「お前はいったい何を夢見てるんだ」
どういうわけかリックは冒険者になることも夢見たことがあるらしい。いろんなところを旅して世界中のうまいものを食ってやる! と思っていたそうだ。だが現実は厳しい。せめて騎士クラスにならないとこの世界を旅するのは難しいのである。
「王さまと同郷の方が料理をいろいろ教えてくれているらしいぞ。俺たちはいわば毒見役だな。評判がよければ徐々に巷に流すんだと」
そんなことを言いながら俺の正面に腰掛けたのはリュウだった。コイツもよく姿を消すから食堂で姿を見るのは珍しい。
「へー! そうなんだ!」
リックが目をきらきらさせている。なんか面白くなかった。
「そういえばリック」
リュウが声を潜めた。
「みんな多分知ってるけど……お前童貞なんだって?」
せっかく口に入れたカレーを噴きそうになったが、どうにかこらえることができた。よかった。つかなんてことを言うんだ。
「うん、そーです。ピッカピカの童貞だよっ!」
俺は無言でぱしん、とリックの頭を叩いた。お前のチンコは何色だ。ピッカピカってことは金色か。
「痛い!」
「痛いように叩いたんだ!」
「ひどい! 僕愛されてない!」
「愛してない!」
友情と愛情はイコールにはならん。
リュウは一瞬呆気にとられたような顔をしたが、すぐにくくっと笑った。
「お前ら面白いなー」
「面白くないっ!」
即答する。コイツと一緒にするなって思った。
「あー、その……話を進めたいんだが、いいか?」
「あ、ハイ。すいません」
さすがに悪いと思ったので素直に謝った。またリュウが声を潜めた。
「リック、お前確か巨人族の混血だったよな?」
「はい、そうです」
巨人族との混血? 俺は一瞬耳を疑った。リックがなんらかの種族との混血だという話は最初の頃に聞いた気がする。その時も確か意外だなと思った。そうだ、あれは酒の席だったから記憶があいまいなのかもしれないと思い至った。今聞くまで思い出さなかったことをちょっとだけ申し訳なく思った。
「失礼だがお前の身体は小さい。だが、魔力量が非常に多く、それから身体の一部がでかいんだったな」
「ええ、そうなんですよ」
身体の一部と聞いて俺は背を冷汗が伝うのを感じた。アレか? アレが巨人族クラスとかいうやつか? た、確かにでかかったけど……。
「それが障害になって童貞のままでいるというのなら、「天使さま」に渡りをつけられるがどうする?」
「いえ、大丈夫です。僕はカイエを口説きますんで」
「……大丈夫なのか?」
「そういう魔物も売ってるって聞いてますし、それに僕、魔法の使い方はとてもうまいんですよ」
「それならかまわない。つまらないことを聞いたな」
「いえいえ、お気遣い感謝します」
天使さま、というのはわかるがそれ以外の話はさっぱりわからなかった。俺は首を傾げながらカレーを食べた。カレーはやっぱりおいしかった。
騎士団長はよくわからないことを言い、「がんばれよ!」と無責任にもリックを励まして去っていった。
「わーい! 騎士団長に応援してもらえたー! 僕、がんばる!」
がんばらなくていいから。頼むからやめてくれと思ったけど、みんながみんなリックに好意的でへきえきした。
さすがに仕事場は一緒にならなかった。リックは今日は王城の外で仕事をするらしい。俺はほっとした。
でも夕飯はどうしたって一緒になる。
夕飯は早めにとった方がいいのか、それとも遅めにとった方がいいのか少しだけ考えた。けどやめた。そんなことを気にして大事なごはんをおろそかにするなどありえない。リックに会おうが会うまいが同僚にからかわれるのは必至である。俺は開き直ることにした。
騎士団の食事はうまい。元々うまい飯がここ何年かで更にうまくなっていると同僚は言っていた。
今日は異世界料理と言われるカレーである。豚肉がごろごろ入ったカレーだ。野菜もごろごろ入っている。野菜嫌いの同僚は多いが、何故かこのカレーだけは食べられるという。黄色く色づけられたごはんをこれでもかとよそり、カレーをどばどばかけていく。うん、これだけでもリックのことを忘れられる。
「えー? 何これ? 見たことないっ!」
一昨日騎士に昇進した者たちがカレーを見て戸惑っていた。俺も最初の頃はああだったなぁとほっこりする。
いつのまにか帰ってきていたらしいリックが、みんなの皿を見てむむむと眉を寄せていた。
「カイエー、それ何?」
きょろきょろしていたリックが俺の姿を見つけて声をかけてきた。
「これか? これはカレーっていうんだ。異世界料理らしいぞ」
「へー。その黄色いごはんにかければいいの?」
「ああ、早く食べないとなくなるぞ。人気メニューだからな」
「わかった! ありがと、とってくる!」
ぴゅーっ! と音がしたように、リックは急いで列に並んだ。俺はさりげなく隣にハンカチを置いて人がいることをアピールする。
そして山盛りのサラダから手をつけはじめた。
「~~~~~~っっ! 何これっ! 超うまいんだけど!」
リックの感動した声が食堂内に響く。反応は予想通りだったがうるさい。
「おいしいのはみんな知ってる。あとうるさい」
「あ、ごめん。でもなんでこんなうまい飯が騎士団で出るんだよ? 普通は街中の食堂とかからじゃないの?」
「お前はいったい何を夢見てるんだ」
どういうわけかリックは冒険者になることも夢見たことがあるらしい。いろんなところを旅して世界中のうまいものを食ってやる! と思っていたそうだ。だが現実は厳しい。せめて騎士クラスにならないとこの世界を旅するのは難しいのである。
「王さまと同郷の方が料理をいろいろ教えてくれているらしいぞ。俺たちはいわば毒見役だな。評判がよければ徐々に巷に流すんだと」
そんなことを言いながら俺の正面に腰掛けたのはリュウだった。コイツもよく姿を消すから食堂で姿を見るのは珍しい。
「へー! そうなんだ!」
リックが目をきらきらさせている。なんか面白くなかった。
「そういえばリック」
リュウが声を潜めた。
「みんな多分知ってるけど……お前童貞なんだって?」
せっかく口に入れたカレーを噴きそうになったが、どうにかこらえることができた。よかった。つかなんてことを言うんだ。
「うん、そーです。ピッカピカの童貞だよっ!」
俺は無言でぱしん、とリックの頭を叩いた。お前のチンコは何色だ。ピッカピカってことは金色か。
「痛い!」
「痛いように叩いたんだ!」
「ひどい! 僕愛されてない!」
「愛してない!」
友情と愛情はイコールにはならん。
リュウは一瞬呆気にとられたような顔をしたが、すぐにくくっと笑った。
「お前ら面白いなー」
「面白くないっ!」
即答する。コイツと一緒にするなって思った。
「あー、その……話を進めたいんだが、いいか?」
「あ、ハイ。すいません」
さすがに悪いと思ったので素直に謝った。またリュウが声を潜めた。
「リック、お前確か巨人族の混血だったよな?」
「はい、そうです」
巨人族との混血? 俺は一瞬耳を疑った。リックがなんらかの種族との混血だという話は最初の頃に聞いた気がする。その時も確か意外だなと思った。そうだ、あれは酒の席だったから記憶があいまいなのかもしれないと思い至った。今聞くまで思い出さなかったことをちょっとだけ申し訳なく思った。
「失礼だがお前の身体は小さい。だが、魔力量が非常に多く、それから身体の一部がでかいんだったな」
「ええ、そうなんですよ」
身体の一部と聞いて俺は背を冷汗が伝うのを感じた。アレか? アレが巨人族クラスとかいうやつか? た、確かにでかかったけど……。
「それが障害になって童貞のままでいるというのなら、「天使さま」に渡りをつけられるがどうする?」
「いえ、大丈夫です。僕はカイエを口説きますんで」
「……大丈夫なのか?」
「そういう魔物も売ってるって聞いてますし、それに僕、魔法の使い方はとてもうまいんですよ」
「それならかまわない。つまらないことを聞いたな」
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