毒リンゴは絶対拒否します!白雪姫に転生したのに全力で死亡フラグを避けていたら、なぜか隣国のハンサム王子に溺愛されてしまいました。

紅葉山参

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過剰な勘違いと、迫る王子の捜索隊

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 七兄弟の家での生活は、表面的には平穏そのものだった。私は、ひたすら地味に、汚く、目立たないように振る舞うことに努めた。

(私の目標は『美しくないこと』!ムスカ王妃から見て、私が生きていることさえ問題なのに、さらに美しさに磨きがかかっているなんて思われたら、即座に毒リンゴが飛んでくるわ!)

 私は顔に木炭を塗り、髪はボサボサのまま、常にフードを深く被った。七兄弟は、私の「不幸な境遇」を信じきっており、私を「純粋で健気な娘」だと過剰に保護してくれた。

「アーリャ。外には出るな。森には熊も出るし、何より、お前の追っ手が来るかもしれない」
「ありがとうございます、グラント様。私も、皆様の重荷にならないよう、家事に専念します」

 私の完璧な家事のおかげで、七兄弟は私を「森の天使」と呼び、溺愛してくれた。

(これで、七人のこびとによる「一時的な安全確保」フラグは、完全に成立したわ。あとは、いかに王妃と、この勘違い王子から身を隠し通すか!)

 しかし、オーリオン王子の行動は、私の予想を遥かに超えて過激だった。

 ある日の夕方。七兄弟が仕事から帰ってきたとき、彼らは興奮気味に私に話した。

「アーリャ、今日の森はすごかったぞ!」
「見たか?あの騎士団の数!まるで戦争でも始まるかと思ったぜ!」

 私は心臓が跳ね上がった。

「き、騎士団?何事があったのですか?」

「隣国の王子様の捜索隊らしい。あの、ハンサムな坊主だ」

 ノームが、口の周りについたシチューを拭いながら言った。

「それがな。王子様、森のあちこちに、こんなものを貼り付けてるんだ」

 ボルが取り出したのは、一枚の美しいポスターだった。そこには、私の顔ではない、しかし私の特徴を極端に美化し、夢見るような女性の肖像画が描かれていた。

 そして、その下には、大々的にこう書かれていた。

「我が運命の淑女へ捧ぐ。清らかな心を持つ、森の奥深くで健気に働く、真の美の象徴を探しています。――オーリオン王子」

(ああああああ!勘違いが過剰すぎる!そして、このポスターのせいで、私の美貌が、ムスカ王妃の嫉妬心を刺激する『噂』として拡散されるじゃない!)

 私はポスターを見て、卒倒しそうになった。

「この王妃様!自分の顔を『真の美の象徴』と自称するのは、やめてください!それは私の命を縮めるだけです!」

「どうした、アーリャ?顔色が悪いぞ。まさか、お前の故郷の領主の追っ手か?」

 グラントは心配そうに言った。

「い、いえ。ただ、こんな大々的な捜索隊が出ていると知って、怖くなっただけです……。私のせいで、皆様にご迷惑をかけるわけには……」

「バカ言え!心配するな、アーリャ。俺たちがいる限り、誰もこの家には近づけないさ」

 七兄弟は、私の「健気さ」と「無力さ」をさらに確信し、小屋への警備を厳重にした。

(彼らの過保護さはありがたいけど、オーリオン王子、本当にやめて!あんたが私を探せば探すほど、私の存在が王妃の耳に入る危険性が増すのよ!)

 翌日、オーリオン王子は、ついに七兄弟の家の近くまでやってきた。

「この小屋の近くだと確信している!私は、この場所から立ち去る前に、彼女の清らかな姿を一目見たいのだ!」

 王子と騎士たちの声が、森の中に響き渡る。私は、小屋の中で震えていた。

「アーリャ、隠れていろ!絶対に出てくるな!」

 グラントは、私を物置スペースに押し込み、ドアを閉めた。

 七兄弟は、王子たちに向かって、敵意をむき出しにした。

「ここは俺たちの狩猟区だ!立ち入り禁止だ!」
「何の用だ、王子様。静かに暮らしている俺たちを邪魔するな!」

 オーリオン王子は、七兄弟の荒々しい態度に動じず、優雅に馬から降りた。

「あなた方が、この小屋の住人ですね。私は、あなた方の小屋で、清らかな心を持つ、一人の美しい女性が暮らしていると聞いています」

「あ?女なんかいねえよ!いるのは俺たち七人だけだ!」
「そうだ!女は足手まといだ!」

 七兄弟は、私を守るために、必死で嘘をついた。

 しかし、オーリオン王子は、彼らの言葉を完全に誤解していた。

「なんと……!あなた方は、彼女の清らかさを守るために、あえてその存在を否定しているのですね!素晴らしい友情だ!しかし、私の愛は本物です。どうか、彼女に、この贈り物だけでも!」

 王子は、七兄弟に向かって、豪華絢爛なレースと宝石で飾られた、純白のドレスが入った大きな箱を差し出した。

「これを彼女に着てほしい。これこそ、私の愛の証であり、彼女の無垢な美しさに相応しいと信じている!」

(やめて!そのドレスは、私の「地味にして目立たない」作戦を完全に打ち砕く凶器よ!)

 七兄弟は、高価なドレスを困惑しながら受け取った。オーリオン王子は満足げに微笑み、再び馬に乗って去って行った。

「王子様、本当に優しい方ですね。彼が探している女性は、きっと素敵な方でしょう」

 私は、物置スペースの隙間から、その豪華すぎるドレスを眺めながら、全身の力が抜けるのを感じた。

「ち、違うのよ!あれは私への毒よ!私を殺すための、派手さという名の毒よ!」

 私は、あのドレスを着たら、鏡の認識が私を「最も美しい」と確定し、ムスカ王妃の嫉妬の炎が、瞬く間に燃え上がることを知っていた。

(あのドレスは、絶対に着ちゃダメ!これは、私の美しさを再燃させる、危険な「美化フラグ」だわ!)

 私は、七兄弟に悟られないよう、すぐにそのドレスを小屋の地下深くに隠した。オーリオン王子の過剰なまでの勘違いと溺愛は、私の「生存」にとって、新たな、そして最も厄介な脅威となっていたのだった。
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