転落令嬢と辺境公爵の開墾スローライフ~愛と勇気と知恵で、不毛の地に楽園を築きます!

紅葉山参

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辺境に地へ

公爵夫人の鍬と豆の知識

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 朝陽が昇ると同時に、わたくしは目を覚ました。公爵であるあなたの隣で目覚めるのは、何ものにも代えがたい幸福だと思う。

「おはよう、ミーシア」

「おはようございます、あなた。とても清々しい朝ですね」

 彼は、朝早くから既に動き出す準備を整えていました。公爵の身分は剥奪されていませんが、この地ではその称号は何の役にも立たないのです。

「私は今日、村の老人に頼んで、水脈を探るための道具を借りてくる。そして、この荒れた土地を、まず君と私の生活の基盤にするんだ」

「ラッシュ様。お一人で行かれるのは危険ではないでしょうか?」

 私は心配でたまりません。この辺境の地で、もし、この方に何かあったら、わたくしは生きていけませんから。

「心配ないよ。私は君の夫だ。君を守るために、私は強くいなくてはならないのだよ」

 あなたの力強い言葉に、わたくしは静かに頷きました。

 朝食を済ませ、ラッシュ様が出かけた後、わたくしは家の裏手に回る。昨日、宿の主人から譲り受けた農具、小さな鍬と古びたシャベルが置いてあったわ。

「さて、わたくしミーシアも、やれることから始めましょうか」

 植物学に精通していたわたくしの知識が、今、試されるときです。帝都の図書館で読み耽った、膨大な文献。それを、この不毛の地に活かさなくてはならない。

 まず、土壌の調査から始めました。

 小さな鍬で、地面を掘り起こします。硬い。信じられないほど硬い土壌だった。帝都の庭園の、豊かな黒土とは似ても似つかぬ、赤茶けた粘土質の土だ。石がゴロゴロと混ざり、少し掘るだけで、手がマメだらけになりそうな予感がする。

 この土壌で、一体何が育つのだろうか。わたくしは、この土地の気候や地質について、深く考えた。このバルザムの不毛地は、内陸に位置し、年間を通じて雨量が少ない。乾燥した気候と、鉄分を多く含む粘土質の土壌。これでは、通常の穀物や野菜は育たないでしょう。

「乾燥に強い植物。そして、土壌の改良が必要よ」

 わたくしの脳裏に浮かんだのは、ある一つの植物でした。それは、古代の文献に記されていた、「耐乾性の豆」です。ミッドガル帝国の辺境地域でわずかに栽培されていたという記録がある。

 この豆は、痩せた土地でも育ち、さらに土壌に窒素を固定する効果がある、と書かれていたわね。

「この豆を探さなくてはならないわ」

 わたくしは、すぐにその豆の種を探すため、村へと向かった。

 村は、宿と数軒の粗末な家があるだけで、活気がない。住民の顔には、この土地での厳しい生活が色濃く刻まれているようだ。

 わたくしは、恐る恐る村の長老らしき男性に声をかけました。

「あの、もしよろしければ、お尋ねしたいのですが…、この辺りで、『ナーガの豆』と呼ばれる植物の種を見かけたことはございませんでしょうか?」

 長老は、わたくしの言葉を聞いて、目を細めた。

「ナーガの豆?ああ、あれか。昔は少しだけ、貧乏な農家が植えていたよ。食えたもんじゃないが、土が肥えるとかなんとかでな。もう誰も作っていないだろうね」

「種も、どこかに残っているかどうかわからん」

 絶望的な返答だ。しかし、わたくしは諦めませんでした。

「その豆の、実物を見たことはございますか?特徴だけでも教えていただけますでしょうか」

 長老は、わたくしの熱意に根負けしたのか、渋々、その豆の特徴を教えてくれた。

「硬い殻に包まれていて、色は茶色。大きさは小指の爪ほどだ。昔、俺の家の裏の物置に、種を少しだけ保管していたかもしれないが…」

 わたくしは、長老の物置へと案内してもらった。薄暗く、埃っぽい物置。その隅に、虫食いだらけの古い麻袋が放置されていたわ。

 中を漁ると、ありました。小さな、硬い、茶色の豆。

「これです!これこそ、ナーガの豆!」

 わたくしは感激のあまり、長老に深々と頭を下げた。わたくしの持っていたわずかな銀貨を全て支払い、種を分けていただきました。

 家に帰ると、ちょうどラッシュ様も帰宅したところだった。彼の顔には、微かな疲労が見えるが、その瞳は希望に満ちている。

「ミーシア、ただいま。村の老人から、井戸を掘るための場所の見当をつけてもらったよ。この辺りには、浅い地下水脈があるらしい。明日から本格的な掘削作業に入るのだ」

「お帰りなさいませ、ラッシュ様!聞いてください、わたくし、やりましたよ!」

 わたくしは、手に持ったナーガの豆を見せた。

「この不毛の土地でも育つ、耐乾性の豆です!これを植えることで、土壌を改良し、いずれは他の作物も育てられるようにするのですわ!」

 彼は、わたくしの手から豆を受け取り、愛おしそうに見つめた。

「さすがはミーシアだ。君の知識は、私にとって何にも勝る財産だよ」

 そして、彼は、わたくしの額に、優しいキスを落とした。

「公爵夫人の鍬と知識。君は、帝都の白百合から、辺境の開拓者へと美しく変貌を遂げたのだね」

 その日の夜、私たちは、手に入れたナーガの豆の種を数え、どの場所に植えるか、真剣に話し合った。愛するあなたとのこの作業は、何よりも幸せな時間です。マカリスタやモンローの悪意など、この愛の前では、埃のようなものにすぎないわ。
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