転落令嬢と辺境公爵の開墾スローライフ~愛と勇気と知恵で、不毛の地に楽園を築きます!

紅葉山参

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辺境に地へ

豆の芽吹き、森の始まり

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 家の基礎固めの作業が一段落した朝、わたくしは興奮を隠せなかった。

「ラッシュ様!見てください!ナーガの豆が…!」

 わたくしは、愛しい夫を、家の裏の畑へと誘った。

 痩せた赤茶けた土の中から、小さな、しかし力強い緑色の芽が、いくつも顔を出しているではないか。

「芽生えた!ミーシア!君の知識が、この不毛の地で、初めての生命を生み出したのだ!」

 公爵は、感極まった様子で、その小さな芽を見つめていた。

 ナーガの豆は、わたくしたちの最初の希望だ。この豆が育ち、土壌に窒素を固定してくれれば、他の作物も育てられるようになるはず。

「わたくしの知恵と、あなたの愛の賜物ですね」

 わたくしは、その芽の一つに、優しく水をやった。この小さな芽は、マカリスタやモンローの悪意に対する、わたくしたちの最初の勝利の証だったわ。

 喜びも束の間、わたくしたちは、すぐに次の作業に取り掛からなくてはならない。村へと向かい、わたくしが選定した「サフラスの木」の苗木を探した。

「サフラスの木?ああ、あの硬くて育ちの悪い木かい。誰も植えないね」

 村の老人は、そう言った。

 しかし、長老は、昔、家の裏でその苗木を育てていた、と言う。

「どうせ、誰も欲しがらない。持って行っていいよ」

 わたくしたちは、長老から数十本のサフラスの苗木を譲り受けました。その苗木は、小さく、貧弱で、本当にこの不毛の地で育つのか、不安になるほどだったわ。

 家に帰り、ラッシュ様とわたくしは、植林の作業に取り掛かった。

 家から少し離れた、比較的平坦な場所に、彼は等間隔で穴を掘り始めた。昨日、井戸を掘った経験が活かされ、彼のシャベルさばきは、格段に上達している。

 帝都の公爵が、泥まみれになりながら、自ら穴を掘り、植林作業をしている。この光景は、村人たちの目には、異様に映ったに違いないわ。

 遠巻きに、数人の村人が私たちを見ていた。彼らの視線は、まだ警戒心に満ちているけれど、以前のような蔑みは薄れているのがわかる。

「ラッシュ様。村人たちが、私たちを見ていますね」

「気にするな、ミーシア。彼らに、私たちが本気でこの土地を開拓するのだということを、行動で示すのだ」

 彼は、一言も弱音を吐かず、黙々と作業を続けた。

 わたくしも、その小さな苗木を、一つ一つ丁寧に穴の中に植え、土をかぶせていく。

「育ってね。この土地の未来は、あなたの成長にかかっているわ」

 わたくしは、心の中で、苗木に語りかけた。

 夕焼けが、辺境の空を赤く染め上げていた。植林作業を終えたわたくしたちは、並んで、植えたばかりのサフラスの木の苗木を見つめていた。数十本の小さな苗木が、規則正しく並んでいる。

「これで、将来、この土地には、私たちの手で植えた森ができる。君と私の、バルザムの森だね」

 公爵は、そう言って、わたくしを優しく抱きしめた。

「ええ、あなた。この森が育ち、この土地が緑に覆われる頃には、マカリスタやモンローの悪意も、消え去っているでしょう」

 わたくしたちの愛と知恵は、この不毛の地に、確かな希望の根を張り始めていた。その夜、ラッシュ様が用意してくれたハーブティーの温かさが、わたくしの疲れた体を優しく癒してくれた。
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