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不毛の地に咲く新たな絆
激突の序曲、バルザム防衛戦
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帝都軍の接近を告げる伝令が飛び込んできたのは、朝靄がまだ村を包んでいる頃でした。 五百の兵、そしてそれを指揮するのは、数々の戦功で知られる冷徹な騎士、バルカス将軍。 マカリスタ皇太子は、なりふり構わず「本物」を送り込んできたのです。
「奥様‼ 敵の先遣隊が、境界線の川を越えました‼ 」
リリカが、伝令の若者と共に駆け込んできました。 彼女の表情には緊張が走っていますが、その足取りに迷いはありません。 わたくしは、自ら開発した防護服に身を包み、ラッシュ様の元へと向かいました。
村の入り口、かつては荒れ地だった場所には、今や巨大な堀と、わたくしが育てた特殊な植物の壁がそびえ立っています。 ラッシュ様は、自警団の男たちを前に、静かに、けれど熱を帯びた声で指示を飛ばしていました。
「皆、怯えることはない。敵は数こそ多いが、この土地のことは何一つ知らない。我々には、ミーシアの知恵と、この大地が味方している。……自分たちの家族を、家を、そして我々の誇りを守り抜くぞ‼ 」
「おおおおおっ‼ 」
村人たちの咆哮が、バルザムの空に響き渡ります。 わたくしは、高台に設けられた指揮所から、眼下に広がる戦場を見つめました。 遠く、地平線の彼方から、銀色に輝く鎧の列が、波のように押し寄せてくるのが見えます。 帝都の正規軍。その整然とした行進は、確かに威圧感に満ちていました。
しかし、彼らは気づいていないのです。 自分たちが今、足を踏み入れようとしているのが、ただの村ではなく、緻密に計算された「生きた罠」であることを。
「……リリカさん、合図を。まずは『誘いの香』から始めましょう……」
「了解しました、奥様‼ 」
リリカが、特殊な笛を吹き鳴らしました。 すると、村の周囲に植えられたサフラスの変種から、目に見えないほど微細な花粉が放出されました。 この花粉には、嗅いだ者の神経をわずかに昂ぶらせ、判断力を奪う効果があります。 「功名心」に駆られた将兵たちは、慎重さを欠き、一気に村の中央へと突入しようとするはずです。
案の定、バルカス将軍の指揮する歩兵隊は、堀に架けられた唯一の「わざと残された」橋へと殺到しました。
「案ずるな‼ 辺境の村一つ、一刻で落としてみせよう‼ 蒼の月草を確保した者には、皇太子殿下から莫大な恩賞が与えられるぞ‼ 」
兵士たちの叫び声が聞こえてきます。 彼らは欲に目が眩み、橋の向こう側に広がる「紅棘の森」の異常さに気づいていません。 わたくしは、ラッシュ様と視線を合わせ、静かに頷きました。
「……今ですわ‼ 」
わたくしが手元の装置を作動させた瞬間。 橋のたもとに隠されていた感圧式の仕掛けが作動し、地中から大量の水分が噴き出しました。 それは、蒼の月草の根から抽出した「活性剤」を含んだ水。 水を受けた紅棘の蔓は、まるで意志を持つ蛇のように猛烈な速さで成長し、橋を渡り始めた兵士たちに絡みついたのです‼
「な、なんだこれは⁉ 植物が動いているのか⁉ 」
「ぐああああっ‼ 棘が鎧を貫く⁉ 助けてくれ‼ 」
阿鼻叫喚の地獄絵図が広がります。 紅棘の蔓は、一度獲物を捕らえれば、その動きを封じるまで決して離しません。 さらに、蔓から分泌される麻痺毒が、兵士たちの自由を奪っていきます。 バルカス将軍は、予想だにしない「植物による迎撃」に、顔を青ざめさせました。
「退くな‼ 魔法兵、火を放て‼ こんな雑草、焼き払ってしまえ‼ 」
敵の魔法兵たちが杖を掲げ、紅棘の蔓に向けて炎の弾を放とうとしました。 しかし、それこそがわたくしの第二の罠。
「……無駄ですわ。バルザムの霧は、ただの霧ではありませんもの……」
わたくしが呟くと同時に、周囲の湿地から濃密な白い霧が立ち上りました。 この霧には、空気中の魔力を吸収し、拡散させる性質を持つ「蒼の月草」の微粒子が含まれています。 放たれた火炎弾は、霧に触れた瞬間に霧散し、小さな火花となって消えてしまいました。
「魔法が……効かないのか⁉ バカな、そんなことがあり得るはずが……⁉ 」
絶望が、帝都軍の間に広がっていきます。 その隙を逃さず、ラッシュ様率いる自警団が、堀の裏側から一斉に弓を放ちました。 矢尻には、リリカが丁寧に塗り込んだ強力な睡眠薬が塗布されています。
「射てえええっ‼ 」
空を覆い尽くす矢の雨。 眠りに落ちた兵士たちが、次々と折り重なるように倒れていきます。 五百の軍勢は、バルザムの入り口で、たった一人の戦死者を出すこともなく、無力化されていったのです。
指揮所からその光景を見ていたわたくしは、深く安堵の息をつきました。 けれど、これで終わりではありません。 後方にはまだ、カシアン伯爵と、そして……贅を尽くした輿に乗ったモンローが控えているはずです。
「リリカさん、次の準備を。……あの方たちには、特別な『おもてなし』が必要でしょう⁉ 」
「はい、奥様‼ とびきり素敵なやつを用意してありますわ‼ 」
リリカと不敵な笑みを交わすわたくし。 一方、ラッシュ様は戦場を駆け抜け、首魁であるバルカス将軍の前に立ちふさがりました。 その手には、かつて帝都で無敵を誇った公爵の剣が、鋭い輝きを放っています。
「バルカス将軍。貴殿の敗北だ。……バルザムの民に、そして私の妻に仇なす者は、たとえ皇帝の勅命であろうとも容赦はせん」
圧倒的な力を見せつけた、バルザム防衛戦。 けれど、これは帝国全土を巻き込む壮大な物語の、ほんの序章に過ぎませんでした。 帝都の毒花たちが、この屈辱をどう受け止めるのか。 そして、わたくし、ミーシアの「ざまぁ」が、どのように彼らを奈落へと突き落とすのか。
わたくしたちのワンダフルライフを懸けた闘いは、いよいよ熱を帯びていくのでした……。
「奥様‼ 敵の先遣隊が、境界線の川を越えました‼ 」
リリカが、伝令の若者と共に駆け込んできました。 彼女の表情には緊張が走っていますが、その足取りに迷いはありません。 わたくしは、自ら開発した防護服に身を包み、ラッシュ様の元へと向かいました。
村の入り口、かつては荒れ地だった場所には、今や巨大な堀と、わたくしが育てた特殊な植物の壁がそびえ立っています。 ラッシュ様は、自警団の男たちを前に、静かに、けれど熱を帯びた声で指示を飛ばしていました。
「皆、怯えることはない。敵は数こそ多いが、この土地のことは何一つ知らない。我々には、ミーシアの知恵と、この大地が味方している。……自分たちの家族を、家を、そして我々の誇りを守り抜くぞ‼ 」
「おおおおおっ‼ 」
村人たちの咆哮が、バルザムの空に響き渡ります。 わたくしは、高台に設けられた指揮所から、眼下に広がる戦場を見つめました。 遠く、地平線の彼方から、銀色に輝く鎧の列が、波のように押し寄せてくるのが見えます。 帝都の正規軍。その整然とした行進は、確かに威圧感に満ちていました。
しかし、彼らは気づいていないのです。 自分たちが今、足を踏み入れようとしているのが、ただの村ではなく、緻密に計算された「生きた罠」であることを。
「……リリカさん、合図を。まずは『誘いの香』から始めましょう……」
「了解しました、奥様‼ 」
リリカが、特殊な笛を吹き鳴らしました。 すると、村の周囲に植えられたサフラスの変種から、目に見えないほど微細な花粉が放出されました。 この花粉には、嗅いだ者の神経をわずかに昂ぶらせ、判断力を奪う効果があります。 「功名心」に駆られた将兵たちは、慎重さを欠き、一気に村の中央へと突入しようとするはずです。
案の定、バルカス将軍の指揮する歩兵隊は、堀に架けられた唯一の「わざと残された」橋へと殺到しました。
「案ずるな‼ 辺境の村一つ、一刻で落としてみせよう‼ 蒼の月草を確保した者には、皇太子殿下から莫大な恩賞が与えられるぞ‼ 」
兵士たちの叫び声が聞こえてきます。 彼らは欲に目が眩み、橋の向こう側に広がる「紅棘の森」の異常さに気づいていません。 わたくしは、ラッシュ様と視線を合わせ、静かに頷きました。
「……今ですわ‼ 」
わたくしが手元の装置を作動させた瞬間。 橋のたもとに隠されていた感圧式の仕掛けが作動し、地中から大量の水分が噴き出しました。 それは、蒼の月草の根から抽出した「活性剤」を含んだ水。 水を受けた紅棘の蔓は、まるで意志を持つ蛇のように猛烈な速さで成長し、橋を渡り始めた兵士たちに絡みついたのです‼
「な、なんだこれは⁉ 植物が動いているのか⁉ 」
「ぐああああっ‼ 棘が鎧を貫く⁉ 助けてくれ‼ 」
阿鼻叫喚の地獄絵図が広がります。 紅棘の蔓は、一度獲物を捕らえれば、その動きを封じるまで決して離しません。 さらに、蔓から分泌される麻痺毒が、兵士たちの自由を奪っていきます。 バルカス将軍は、予想だにしない「植物による迎撃」に、顔を青ざめさせました。
「退くな‼ 魔法兵、火を放て‼ こんな雑草、焼き払ってしまえ‼ 」
敵の魔法兵たちが杖を掲げ、紅棘の蔓に向けて炎の弾を放とうとしました。 しかし、それこそがわたくしの第二の罠。
「……無駄ですわ。バルザムの霧は、ただの霧ではありませんもの……」
わたくしが呟くと同時に、周囲の湿地から濃密な白い霧が立ち上りました。 この霧には、空気中の魔力を吸収し、拡散させる性質を持つ「蒼の月草」の微粒子が含まれています。 放たれた火炎弾は、霧に触れた瞬間に霧散し、小さな火花となって消えてしまいました。
「魔法が……効かないのか⁉ バカな、そんなことがあり得るはずが……⁉ 」
絶望が、帝都軍の間に広がっていきます。 その隙を逃さず、ラッシュ様率いる自警団が、堀の裏側から一斉に弓を放ちました。 矢尻には、リリカが丁寧に塗り込んだ強力な睡眠薬が塗布されています。
「射てえええっ‼ 」
空を覆い尽くす矢の雨。 眠りに落ちた兵士たちが、次々と折り重なるように倒れていきます。 五百の軍勢は、バルザムの入り口で、たった一人の戦死者を出すこともなく、無力化されていったのです。
指揮所からその光景を見ていたわたくしは、深く安堵の息をつきました。 けれど、これで終わりではありません。 後方にはまだ、カシアン伯爵と、そして……贅を尽くした輿に乗ったモンローが控えているはずです。
「リリカさん、次の準備を。……あの方たちには、特別な『おもてなし』が必要でしょう⁉ 」
「はい、奥様‼ とびきり素敵なやつを用意してありますわ‼ 」
リリカと不敵な笑みを交わすわたくし。 一方、ラッシュ様は戦場を駆け抜け、首魁であるバルカス将軍の前に立ちふさがりました。 その手には、かつて帝都で無敵を誇った公爵の剣が、鋭い輝きを放っています。
「バルカス将軍。貴殿の敗北だ。……バルザムの民に、そして私の妻に仇なす者は、たとえ皇帝の勅命であろうとも容赦はせん」
圧倒的な力を見せつけた、バルザム防衛戦。 けれど、これは帝国全土を巻き込む壮大な物語の、ほんの序章に過ぎませんでした。 帝都の毒花たちが、この屈辱をどう受け止めるのか。 そして、わたくし、ミーシアの「ざまぁ」が、どのように彼らを奈落へと突き落とすのか。
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