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聖域の盾、動乱の世界
侵略の蹄音と、愛の誓い
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ザルツブルク王国の使節団が去ってから三日。 バルザムの北方に位置する「狼の喉笛」と呼ばれる険しい峡谷に、不穏な鉄の音が響き始めました。 偵察鳥がもたらした報告によれば、その数、三千。 北の軍事大国が誇る精鋭、白銀騎士団の先遣隊です。
「……ついに、来ましたわね」
わたくし、ミーシアは、村の高台にある監視塔から北の空を見つめていました。 空は低く垂れ込め、今にも雪が降り出しそうな寒空です。 ですが、わたくしの胸の中には、かつて帝都を追放された時のような冷たい絶望はありませんでした。
「ああ。奴らはこの寒さを味方につけるつもりだろうが、それは大きな間違いだ。……この地で冬を越した我々の強さを、見誤っている」
背後から響く、重厚で頼もしい声。 振り返ると、フルプレートの甲冑に身を包んだラッシュ様が立っていました。 公爵としての穏やかな顔ではなく、戦場を支配する「バルザムの獅子」としての顔。 その瞳には、侵略者を一歩も通さないという冷徹なまでの決意が宿っていました。
「ラッシュ様。……どうか、ご無理をなさらないでくださいませ。わたくしが配置した植物たちが、必ず貴方たちの助けになりますわ」
わたくしは彼の胸当てにそっと手を触れました。 冷たい鉄の感触の奥に、力強い鼓動を感じます。 ラッシュ様はその手を優しく包み込み、わたくしの額に静かな口づけを落としました。
「ミーシア。君がこの半年でこの地に蒔いた種は、今やどんな石壁よりも堅牢な城壁となっている。……信じているよ。君が守るこの家へ、必ず勝利を持って帰る」
「はい。……信じて、待っておりますわ」
短い、けれど魂を揺さぶるような誓い。 ラッシュ様は翻したマントと共に、待機していた騎士たちの元へと駆け下りていきました。 その後姿を見送りながら、わたくしもまた、自分の戦場へと向かいました。
わたくしの戦場……それは、このバルザムの村全体を包み込む、巨大な「命の回路」です。 わたくしは研究室の地下に設置された、巨大な水晶の感応装置の前に座りました。 これは、村の各所に植えられた蒼の月草とわたくしの意識を同調させ、土地全体の変化を察知するためのものです。
「リリカさん、準備はよろしいかしら? 」
「いつでもいけますわ、奥様! 『おもてなし』の準備は万端です。……あんな礼儀知らずな人たち、森の迷子にしてやりましょう! 」
リリカさんは、植物の成長を促す特殊な培養液が入った瓶を抱え、頼もしく笑いました。
「ええ。……力で奪おうとする者には、大地の厳しさを。……守ろうとする者には、命の温もりを。……さあ、バルザムの森よ。目覚めなさい」
わたくしが水晶に手を触れると、地中を伝って微かな振動が広がっていきました。 それは、何万という植物たちが一斉に呼吸を始めた音。 白銀の鎧を纏った侵略者たちは、まだ気づいていません。 自分たちが踏み込もうとしているのが、ただの田舎道ではなく、意志を持った巨大な生き物の口内であることを。
「……ついに、来ましたわね」
わたくし、ミーシアは、村の高台にある監視塔から北の空を見つめていました。 空は低く垂れ込め、今にも雪が降り出しそうな寒空です。 ですが、わたくしの胸の中には、かつて帝都を追放された時のような冷たい絶望はありませんでした。
「ああ。奴らはこの寒さを味方につけるつもりだろうが、それは大きな間違いだ。……この地で冬を越した我々の強さを、見誤っている」
背後から響く、重厚で頼もしい声。 振り返ると、フルプレートの甲冑に身を包んだラッシュ様が立っていました。 公爵としての穏やかな顔ではなく、戦場を支配する「バルザムの獅子」としての顔。 その瞳には、侵略者を一歩も通さないという冷徹なまでの決意が宿っていました。
「ラッシュ様。……どうか、ご無理をなさらないでくださいませ。わたくしが配置した植物たちが、必ず貴方たちの助けになりますわ」
わたくしは彼の胸当てにそっと手を触れました。 冷たい鉄の感触の奥に、力強い鼓動を感じます。 ラッシュ様はその手を優しく包み込み、わたくしの額に静かな口づけを落としました。
「ミーシア。君がこの半年でこの地に蒔いた種は、今やどんな石壁よりも堅牢な城壁となっている。……信じているよ。君が守るこの家へ、必ず勝利を持って帰る」
「はい。……信じて、待っておりますわ」
短い、けれど魂を揺さぶるような誓い。 ラッシュ様は翻したマントと共に、待機していた騎士たちの元へと駆け下りていきました。 その後姿を見送りながら、わたくしもまた、自分の戦場へと向かいました。
わたくしの戦場……それは、このバルザムの村全体を包み込む、巨大な「命の回路」です。 わたくしは研究室の地下に設置された、巨大な水晶の感応装置の前に座りました。 これは、村の各所に植えられた蒼の月草とわたくしの意識を同調させ、土地全体の変化を察知するためのものです。
「リリカさん、準備はよろしいかしら? 」
「いつでもいけますわ、奥様! 『おもてなし』の準備は万端です。……あんな礼儀知らずな人たち、森の迷子にしてやりましょう! 」
リリカさんは、植物の成長を促す特殊な培養液が入った瓶を抱え、頼もしく笑いました。
「ええ。……力で奪おうとする者には、大地の厳しさを。……守ろうとする者には、命の温もりを。……さあ、バルザムの森よ。目覚めなさい」
わたくしが水晶に手を触れると、地中を伝って微かな振動が広がっていきました。 それは、何万という植物たちが一斉に呼吸を始めた音。 白銀の鎧を纏った侵略者たちは、まだ気づいていません。 自分たちが踏み込もうとしているのが、ただの田舎道ではなく、意志を持った巨大な生き物の口内であることを。
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