転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参

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第二の難関 不在の夫に代わり領地を守る賢妻

王都の監査団の再来と「ダブルチェック」の罠

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 マクナル様が王都へ旅立ってから、二週間も経たないうちに、王都からの第二波の攻撃が訪れた。

 王都の貴族、特に王弟公爵は、私が辺境伯代理として領地を統治している状況に、強い不満と疑念を抱いていた。彼らは、私が提出した「驚異的な成長」を示す月次報告を、捏造だと決めつけ、さらなる監査団を派遣してきたのだ。

 今度の監査団は、エルンスト男爵とは異なり、王弟公爵が特に信頼を置く、若く傲慢な財務官僚、グラント伯爵が率いていた。彼の目的は、私の「可視化帳簿」ではなく、私の統治の「倫理的欠陥」を見つけることだった。

「辺境伯夫人。辺境伯様がご不在の間に、辺境伯代理として領地を統治されているとのこと。しかし、一貴族の妻が、軍事と内政の全てを統括するなど、前代未聞でございます。王国の法は、辺境伯の地位を継承する権利を、夫人に認めておりません。貴女様の統治は、法的に不安定だと言わざるを得ません」

 グラント伯爵は、私の性別と法的地位の曖昧さを突いてきた。これは、私が辺境伯代理として下した全ての決定を、後で無効化するための、周到な策略だった。

「グラント伯爵。わたくしの統治が不安定だと仰いますが、ご安心ください」

 私は、彼が攻めてくるポイントを完全に予想していた。マクナル様は、王都へ発つ前に、この法的脆弱性を補強するための、完璧な準備をしてくれていたのだ。これこそが、スパダリ夫の恐ろしいほどの周到さだった。

 私は、マクナル様が残してくれた、二つの重要な文書をグラント伯爵の前に差し出した。

 一つは、国王陛下の署名が入った、「マクナル辺境伯の王都顧問就任中の、アナスタシア夫人への全権委任」を承認する勅書。もう一つは、領内の有力貴族と騎士団長全員の署名が入った、「辺境伯代理アナスタシア夫人への絶対服従と忠誠」を誓う誓約書だ。

「わたくしの統治は、国王陛下の勅書、そしてこの辺境伯領の全貴族の合意に基づいて行われています。法的に不安定であるというご懸念は、的外れでございます」

 グラント伯爵は、国王の勅書を見て、顔を青ざめさせた。王弟公爵は、マクナル様を王都へ閉じ込めることに気を取られ、私が全権を委任された勅書を、国王が承認していたという事実を見落としていたのだ。これは、マクナル様が、王弟公爵の策略を読んで、あらかじめ国王陛下に根回ししていた証拠だった。

 しかし、グラント伯爵はすぐに立ち直り、次の攻撃に移った。

「勅書は確認いたしました。しかし、夫人の統治の『公正さ』については、依然として疑問が残ります。特に、夫人が導入されたという、あの『投資証券』。あれは、辺境伯領の富を、夫人の私的な友人や、夫人の都合の良い者に流すための、不正なシステムではないか、という疑いが王都にはございます」

 彼は、私の合理的な経営システムを「不正の温床」だと決めつけようとした。

「不正の温床、でございますか」私は冷静に答えた。「グラント伯爵。わたくしが導入した『投資証券』は、辺境伯領の鉱山開発の利益を、辺境伯領の貴族だけでなく、広く領民にまで分配する、公正で透明性の高いシステムです。王都の貴族が既得権益として利益を独占するシステムとは異なります」

 そして、私は彼が絶対に逃れられない「ダブルチェック」の罠を仕掛けた。

「グラント伯爵。わたくしは、辺境伯領の運営の全てを、監査団の皆様に公開いたします。全ての帳簿を精査していただいて構いません。しかし、わたくしが提示する、もう一つの帳簿と、照らし合わせながら監査を行っていただきます」

 私が提示したのは、王都の会計法に則って作成された「王都向け報告書」と、私が独自に開発した「可視化帳簿」の、二つの帳簿だった。

「王都の会計法では、辺境特有の費用の計上が曖昧になるため、わたくしは二重の帳簿を作成しております。王都の報告書で、不正を見つけられた場合、それは王国の法律に基づいて裁かれるでしょう。しかし、もし王都の報告書が完璧であると認められた場合、貴方様には、わたくしの『可視化帳簿』が示す、辺境伯領の真の経済成長の数字を、王都に正確に報告していただきたいのです」

 この「ダブルチェック」の提案は、グラント伯爵にとって大きな罠だった。もし彼が不正を見つけられなければ、私の統治の公正さが証明される。そして、彼は私の示す「驚異的な成長率」を、王都に報告しなければならなくなる。それは、王弟公爵が最も聞きたくない報告だろう。

「このダブルチェックは、わたくしの統治の公正さと、辺境伯領の驚異的な成長率を、王都に証明するための、最も合理的な方法でございます。監査団の皆様の公正な判断を期待しております」

 グラント伯爵は、私の大胆さと、二つの帳簿による完璧な論理的な防衛に、言葉を失った。彼は、私という女性が、マクナル様不在の間に、王都の監査団を逆手に取り、領地の繁栄を王都に認めさせようとしていることに、初めて気づいたのだ。

 彼の顔は、悔しさと焦りで歪んでいた。私の知性は、王都の傲慢な官僚たちを、常に一歩先回りし、彼らが仕掛ける罠を、私自身の勝利のための道具へと変えていくのだ。
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