元公爵令嬢の私は冷酷な王子に嫌われましたが、最強辺境伯に溺愛されて幸せな人生を始めます!~地味メイドに転生した私のざまぁ逆転劇~

紅葉山参

文字の大きさ
7 / 14

嫉妬の炎と魔獣の襲撃

しおりを挟む
 ライオンハート様が城を離れてから五日が経過した。

 私は執事のアルベルトと共に、連日領地の財政改革に没頭していた。辺境の特産品である【毛皮】や【鉱石】を、王都の貴族が無視する海の向こうの商業国家へ高値で売却する【秘密の取引ルート】の準備は順調に進んでいた。

 城の文官たちは、かつての公爵令嬢の知識に基づいた、私の示す数字の正確さと、父から教わった【領地経営の抜け道】の知識に、今や絶対的な信頼を寄せている。

「エリス様のおかげで、この三ヶ月で領地の財政は劇的に改善に向かいます。旦那様もきっとお喜びになるでしょう」

 アルベルトは深く頭を下げた。

 しかし、城の中で私に懐疑的な目を向ける人物が一人だけいた。ライオンハート様の近衛騎士団を束ねる、女性騎士の【ルクレツィア】だ。

 彼女は辺境伯に絶対的な忠誠を誓っており、その剣の腕は辺境伯に次ぐと言われている。赤みがかった髪に、戦場を生き抜いてきた鋭い眼差しを持つ彼女にとって、私が王都から連れてこられた【地味なメイド】でしかないことは、容認しがたい事実だったのだろう。

 ある日の夕食時、ライオンハート様が留守の間、私が城主代理として食卓に着いた際、ルクレツィアが私に鋭い視線を投げかけてきた。

「エリス様。旦那様は、この城を動かす最も重要な任務を、経験のない女性に託されました」

 その言葉には、明らかに【不満】と【嫉妬】が滲んでいた。

「あなたは武力もなければ、社交界での地位もない。なぜ旦那様があなたを選ばれたのか、我々騎士団には理解しがたい」

 ルクレツィアの言葉は、他の騎士たちも抱える疑問を代弁していた。彼らはライオンハート様への忠誠心から私に従ってはいるが、心の底では納得していないのだ。

「財政を立て直したところで、魔獣の剣には勝てません。辺境は常に【死】と隣り合わせ。旦那様にとって必要なのは、領地を守る【剣】と【盾】を持つ女性です」

 彼女は私を真っ向から否定した。その言葉は、ライオンハート様を心から慕っているが故の、純粋な【嫉妬の炎】だった。

「辺境伯様の心は、私が一番よく理解しています!!」

 ルクレツィアがそう言い放った瞬間だった。

 突如の襲撃と元公爵令嬢の機転、突然城の警鐘がけたたましく鳴り響いた。

「敵襲!! 魔獣の群れだ!!」

 外から聞こえてきた騎士の叫び声に、食堂の空気が一変する。

 ルクレツィアは即座に立ち上がり、剣を手に取った。

「来たか!! 全員、防衛配置につけ!! エリス様、あなたは地下の安全な場所へ!!」

「待って、ルクレツィア!!」

 私は慌てて帳簿の知識を思い出し、叫んだ。

「魔獣の群れは、いつもこの時期、北東の山脈から降りてくる。しかし、今夜は【風向き】が違う!!」

「風向き!? 何を言っているのですか、この期に及んで!!」

 ルクレツィアは私の言葉を無視しようとしたが、私は前に立ちはだかった。

「北東からの襲撃だと、騎士団の配置が【手薄】な箇所がある!! アルベルト、直近の【物資輸送記録】を出して!!」

「は、はい!!」

 アルベルトが震える手で記録を探し出す。

「この数日、北東ルートが凍結しているため、防衛物資の運搬ルートを城の【西側】に集中させているはず!! 魔獣は、人が手を加えた【最も手薄な場所】を狙ってくるわ!!」

 ルクレツィアの顔が驚愕に染まった。彼女の騎士としての【経験】が、私の【知識】と結びついたのだ。

「西側!? しかし、西側はこれまで一度も魔獣の標的になったことがない!!」

「常識は通用しない!! 魔獣は賢くなっている!! 急いで西門に戦力を集中させて!! さもないと、物資の集積所がやられる!!」

 私の【過去の公爵令嬢としての知識】、すなわち戦況分析と補給ルートの管理の知識が、この瞬間に【命を救う剣】となった。

 ルクレツィアは一瞬迷ったが、私の瞳の【強い意志】と、ライオンハート様と同じ【戦場を支配する】ような冷静な指示に、従うことを決意した。

「全騎士団に伝達!! 西門に戦力を集中!! 間に合わない者は、物資集積所を防衛せよ!! エリス様、指示をありがとうございます!!」

 ルクレツィアは私に向かって一礼すると、剣を抜き放ち、騎士たちと共に城壁へと駆け上がっていった。


 私の指示通り、魔獣の群れは城の西門を破ろうと集中攻撃を仕掛けてきた。

 騎士団は【不意を突かれた】ものの、エリスの指示で迅速に戦力を集中させたため、被害を最小限に抑え、魔獣の群れを撃退することに成功した。

 夜明け前、ルクレツィアが私の部屋にやってきた。彼女の軍服は血と泥にまみれていたが、その顔には深い【敬意】の念が浮かんでいた。

「エリス様。あなたの判断が、この城を救いました」

 彼女は、静かにそう言った。

「魔獣は本当に西門を狙っていました。王都の貴族が考えるような【常識的なルート】ではなかった。あなたは、旦那様と同じ【先見の明】をお持ちだ」

「ルクレツィア……」

「わたくしは、あなたをただのメイドだと侮っていました。しかし、あなたは武力ではなく【知性】でこの城を守った。わたくしの【嫉妬】は、旦那様の愛を理解できていなかった証拠です」

 ルクレツィアは私に向かい、深々と頭を下げた。彼女はもう、私を軽蔑の目で見ることはなかった。城の騎士団と使用人たちの間にも、私に対する【公爵夫人】としての確固たる信頼が生まれた瞬間だった。

 その翌日、東の砦から戻ったライオンハート様は、城の防衛報告を聞き、目を見開いて驚愕した。

「西門からの襲撃!? そして、エリスの判断で防いだというのか!!」

 彼は、私を抱きしめ、喜びと安堵が入り混じった表情を浮かべた。

「エリス!! 君は本当に、私の【最高の伴侶】だ!!」

 ライオンハート様は、私に【甘すぎるキス】を何度も落とした。

「君の知識は、私の剣よりも、この領地にとって価値がある。私は君を誰にも渡さない!!」

 ライオンハート様の【溺愛】は、城を守った私の功績によって、さらに加速していったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

湊一桜
恋愛
 王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。  森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。  オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。  行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。  そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。 ※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

家を乗っ取られて辺境に嫁がされることになったら、三食研究付きの溺愛生活が待っていました

ミズメ
恋愛
ライラ・ハルフォードは伯爵令嬢でありながら、毎日魔法薬の研究に精を出していた。 一つ結びの三つ編み、大きな丸レンズの眼鏡、白衣。""変わり者令嬢""と揶揄されながら、信頼出来る仲間と共に毎日楽しく研究に励む。 「大変です……!」 ライラはある日、とんでもない事実に気が付いた。作成した魔法薬に、なんと"薄毛"の副作用があったのだ。その解消の為に尽力していると、出席させられた夜会で、伯爵家を乗っ取った叔父からふたまわりも歳上の辺境伯の後妻となる婚約が整ったことを告げられる。 手詰まりかと思えたそれは、ライラにとって幸せへと続く道だった。 ◎さくっと終わる短編です(10話程度) ◎薄毛の話題が出てきます。苦手な方(?)はお気をつけて…!

処理中です...