元公爵令嬢の私は冷酷な王子に嫌われましたが、最強辺境伯に溺愛されて幸せな人生を始めます!~地味メイドに転生した私のざまぁ逆転劇~

紅葉山参

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全ての舞台は整った

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 辺境伯公爵夫妻を乗せた馬車は、静かに王都の城門をくぐり抜けた。前回、私が王都を去った時とは比べ物にならないほど、その威容と存在感は圧倒的だった。ライオンハート様の馬車は、辺境伯領の紋章を掲げ、武装した騎士団に守られていたため、誰もこれを止めることはできない。

 私たちは、王宮ではなく、ライオンハート様が王都に所有する別邸に入った。その別邸は、王宮にも引けを取らないほどの壮麗さで、辺境伯の財力と権力を静かに物語っていた。

「エリス。少し休むように。明日の朝、私は国王陛下に謁見を求める」

 ライオンハート様は、辺境での冷徹な表情に戻っていた。彼の目は、アスモデウス王子に対する最終的な断罪を見据えている。

「その前に、一つだけ、私が済ませたいことがあります」

 私がそう言うと、ライオンハート様は不思議そうな顔をした。

「君が?何をするつもりだ」

「メイド長ジェニファーに、私が【公爵夫人】として王都に戻ったことを、誰よりも早く知らせたいのです。そして、彼女の【最後の傲慢】を引きずり出すつもりです」

 私は、深紅のドレスを纏ったまま、一通の短い手紙をしたためた。差出人は「ヴァルトガルト公爵夫人エリス」とし、内容はただ一言。

『あなたに、一杯のお茶を勧める権利を差し上げましょう。場所は、王都別邸の広間にて。本日午後四時。』

 この手紙を、最も口の軽い王宮の使用人に渡るように手配した。

 午後四時ちょうど。王都別邸の広間は、豪華な調度品と、辺境から連れてきた厳粛な騎士たちで満たされていた。

 そして、広間の扉が開き、驚きと混乱の表情を浮かべたジェニファーが、よろめきながら入ってきた。彼女は、深紅のドレスを纏い、威厳に満ちた私を一目見て、凍りついたように立ち尽くした。

「エ、エリス!?なぜ、あなたがここに……しかも、その格好は……」

 ジェニファーは、私が王子の執務室で隅に立っていた、みすぼらしいメイドの姿しか想像していなかったのだろう。彼女の目には、憎悪と恐怖、そして信じられないという感情が渦巻いていた。

 私は、ライオンハート様の隣に座り、優雅に紅茶のカップを傾けた。

「ごきげんよう、ジェニファー。久しぶりですね。メイド長のあなたが、このような形で辺境伯公爵夫人に会いに来るとは思いませんでした」

 私の静かで冷たい声が、広間に響き渡った。

「公爵夫人……嘘よ!あなたのような地味で能無しの女が、辺境伯様の妻になどなれるはずがない!あの飾り皿の件で、追放されて然るべき人間よ!」

 ジェニファーは、信じたくないという感情から、つい本性を露わにして叫んだ。

「王子の【厄介な影】が、何を偉そうに!」

 その言葉を聞いた瞬間、ライオンハート様が立ち上がった。彼の背後には、ルクレツィアをはじめとする屈強な騎士たちが控えている。

「メイド長ジェニファー。私が【ヴァルトガルト公爵】ライオンハートだ。そして、彼女は私の【愛する妻】、エリス・ヴァルトガルト公爵夫人だ」

 ライオンハート様が発する威圧的な気配に、ジェニファーは思わず後ずさりした。

「君は、我が妻を『厄介な影』と罵り、その命を毒で奪おうとした。さらに、アスモデウス殿下と共に、辺境伯領の物資輸送を妨害し、辺境の防衛を脅かした」

 ライオンハート様の言葉は、まるで氷の刃のようにジェニファーの心を貫いた。彼女の顔は蒼白になり、足が震え始めた。

「し、知るものですか!私は王子の命令に従ったまで!全ては、あの方の命……!」

「その『あの方』には、明日、私が直接会う」

 ライオンハート様は、冷酷に言い放った。

「そして、君の【主犯】であるアスモデウス王子は、君をあっさり見捨てるだろう。君は王子の【毒牙】として利用されただけだ。この状況で、まだ君が王子の庇護を受けられると思うのか?」

 ジェニファーは、その言葉の意味を理解し、顔から血の気が引いた。彼女は、王子の冷酷さを知っている。利用価値がなくなった瞬間、容赦なく切り捨てられることを。

 私は、最後の追い打ちをかけた。

「ジェニファー。あなたは、私に毒を盛り、私を陥れようとしました。その罪は重い。ですが、私に残された【公爵令嬢としての知識】が、あなたの仕業を全て暴きました」

 私は立ち上がり、ジェニファーの目の前まで歩み寄った。

「あなたが最も軽蔑した私の【知識】と【地味さ】が、今、あなたの全てを奪います。これが、あなたが私にしたことへの【ざまぁ】です」

 ジェニファーは、その場で膝から崩れ落ちた。深紅のドレスを纏った私の姿は、彼女にとって、王都での地位も、権力も、全てを失う【恐怖の象徴】となったのだ。

「もう二度と、私の夫と、私の領地に手出しはさせません」

 私の命令で、騎士たちがジェニファーを拘束した。彼女の末路は、王子の告発の後に決まるだろうが、王都での彼女の生活はここで完全に終わった。

 夜、広間から戻った私は、ライオンハート様に抱きしめられた。

「見事だった、エリス。君の知性と勇気が、私に代わって復讐を遂げてくれた」

「いいえ、ライオンハート様。これは、あなたという【最高の盾】があったからこそできたことです」

 明日、私たちは、いよいよアスモデウス王子と対峙する。王子の運命を決める【最後のざまぁ】の舞台が整ったのだ。
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