元公爵令嬢の私は冷酷な王子に嫌われましたが、最強辺境伯に溺愛されて幸せな人生を始めます!~地味メイドに転生した私のざまぁ逆転劇~

紅葉山参

文字の大きさ
14 / 14

大団円

しおりを挟む
 翌朝。エリスは深紅のドレスの上に、ライオンハート様から贈られたヴァルトガルト公爵夫人の紋章が入った黒の外套を羽織り、王宮へと向かった。隣には、全身から冷たい威圧感を放つライオンハート様がいる。

 国王陛下の謁見の間。

 王宮は、辺境伯夫妻の突然の帰還と、メイド長ジェニファーの逮捕の報せで、既に騒然としていた。広間には、国王陛下と、その隣に座るアスモデウス王子が待ち構えていた。王子の表情は、表面上は平静を装っているものの、目の奥には隠しきれない動揺と怒りが渦巻いているのが見て取れた。

「ライオンハート公爵、並びにヴァルトガルト公爵夫人エリス。予は、貴殿らの突然の帰還に驚いている」

 国王陛下の声は疲れていた。彼は、王子の独断専行がもたらした辺境伯との緊張関係に、既に心を痛めているのだろう。

 ライオンハート様は、一言の淀みもなく口を開いた。

「陛下。この度の帰還は、王子の【不正な権力乱用】と【我が妻への毒殺未遂】について、陛下に直接、事実を奏上するためです」

 ライオンハート様の言葉に、アスモデウス王子がすぐに反論した。

「待て、ライオンハート!何という不敬な物言いだ。ジェニファーというメイドの暴走に、私が関わっているとでも言うのか?そして、この女……ただのメイドだったエリスが、公爵夫人とは笑わせる!」

 アスモデウス王子は、エリスを一瞥し、侮蔑に満ちた笑みを浮かべた。

「やはり、【厄介な影】が、辺境伯をたぶらかしたとしか思えん。貴様の罪は、王子の私に逆らい、不当に公爵夫人を名乗っていることだ!」

 エリスは、王子の露骨な侮辱にも動じなかった。この時のために、どれほどの屈辱に耐え、知識を蓄えてきたか。

「アスモデウス王子。私は不当に公爵夫人を名乗っているわけではありません。私はライオンハート様の正式な妻であり、ヴァルトガルト領の未来の女主人です」

 エリスは一歩前に進み出た。深紅のドレスと、冷酷なまでに美しい威厳が、広間に集まった貴族たちを一瞬で黙らせた。

「そして、私は以前、あなたの側で仕えていた元公爵令嬢、エリス・エディンバラの記憶を持つ者でもあります」

 その告白に、広間全体がざわめきに包まれた。

「馬鹿な!故エディンバラ公爵令嬢は既に……!」

「私の知性は、あなたが王位継承者として不適格であることを示しています」

 エリスは、王子の動揺を無視し、切り出した。

「一つ。あなたは、国境防衛に不可欠な【魔獣討伐用の油】を含む物資の輸送を、私的な恨みから意図的に妨害しました。これは、辺境伯領の防衛力を低下させ、王国全体を危険に晒す【国事犯】にあたります」

 ライオンハート様は、すかさず証拠となる王都商会からの凍結命令書と、エリスが確立した【秘密交易ルート】の成功の記録を国王陛下に提出した。

 アスモデウス王子は焦り、冷や汗を流し始めた。

「こ、これはメイド長が勝手に行ったことだ!私は知らん!」

「二つ目」

 エリスの声は冷たく、王子をさらに追い詰めた。

「あなたは、メイド長ジェニファーを使い、私の命を【毒】で奪おうとしました。公爵夫人への暗殺未遂は、王国の公爵家への反逆であり、王族としての品位を著しく欠く行為です」

 ライオンハート様は、刺客の供述書と、毒物が仕込まれていたハーブティーの鑑定結果を提出した。全ての証拠は、王子の指示があったことを明確に示していた。

 アスモデウス王子は、完全に狼狽した。彼の頭の中では、ただのメイドだったはずの女が、なぜこれほどの証拠と、権力を持っているのか理解できていない。

「この女は嘘をついている!ライオンハート、貴様もたぶらかされているのだ!」

「黙れ、アスモデウス」

 国王陛下の声が、広間に響き渡った。

「ライオンハート公爵の提出した証拠と、辺境伯領の財政が危機に瀕していた事実は、看過できない。国境の安全を私的な恨みで脅かすなど、王位継承者としてあるまじき行為だ!」

 アスモデウス王子の顔は、絶望と屈辱で歪んだ。

「お前は、この女を追放し、侮辱した。しかし、この女は、その【知性】をもって辺境伯領を救い、王国の危機を防いだ。そして、お前が最も軽蔑した【地味な女】の知性に、お前は敗北したのだ!」

 国王陛下の最終的な判断が下された。

「アスモデウス王子。王位継承権を剥奪し、辺境の修道院へ【追放】とする。二度と王都に戻ることは許さん」

 アスモデウス王子は、座り込んで全身で震えた。彼の周りに集まっていた貴族たちは、一斉に彼から視線を逸らした。かつて彼を「厄介な影」と呼び、見下した女に、王位と全てを奪われたのだ。

 これが、エリスによる【最後のざまぁ】だった。

 私は、ライオンハート様の隣で、静かに勝利を噛みしめた。彼の手が、優しく私の手を握りしめた。

「エリス。よくやった。君の勝利だ」

 私を公爵令嬢からメイドに貶め、絶望的な日々を送らせた王子は、今、自らと同じ【追放】という運命を辿ることになった。そして、私を【愛】と【光】で満たしてくれたライオンハート様と、私は永遠に結ばれたのだ。

 辺境伯夫妻の帰還は、王国の歴史に大きな転換点をもたらした。王子の追放後、私たちは静かに王都を離れ、愛する辺境伯領へと戻った。

 ライオンハート様の領地は、エリスの知性と彼の武力によって、王国のどこよりも豊かで、安寧な地となった。

「私の愛しい妻よ。君と出会えたことで、私の人生は、真の光を得た」

 ライオンハート様は、辺境の雪山を背景に、私を抱きしめた。

「私もです、ライオンハート様。あなたは、私に【愛】と【居場所】と、【最高の復讐】をくれました」

 私は、彼の腕の中で、永遠に続くであろう幸せな人生の幕開けを感じていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

湊一桜
恋愛
 王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。  森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。  オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。  行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。  そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。 ※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

家を乗っ取られて辺境に嫁がされることになったら、三食研究付きの溺愛生活が待っていました

ミズメ
恋愛
ライラ・ハルフォードは伯爵令嬢でありながら、毎日魔法薬の研究に精を出していた。 一つ結びの三つ編み、大きな丸レンズの眼鏡、白衣。""変わり者令嬢""と揶揄されながら、信頼出来る仲間と共に毎日楽しく研究に励む。 「大変です……!」 ライラはある日、とんでもない事実に気が付いた。作成した魔法薬に、なんと"薄毛"の副作用があったのだ。その解消の為に尽力していると、出席させられた夜会で、伯爵家を乗っ取った叔父からふたまわりも歳上の辺境伯の後妻となる婚約が整ったことを告げられる。 手詰まりかと思えたそれは、ライラにとって幸せへと続く道だった。 ◎さくっと終わる短編です(10話程度) ◎薄毛の話題が出てきます。苦手な方(?)はお気をつけて…!

処理中です...