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訓練の森 弓の達人 シリウスの独占欲
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女王との最終的な対決は避けられない。そう判断したアルバスの指示により、スノーリアは単なる守護対象でいるのではなく、己の身を守る術を学ぶことになった。毒を見抜く魔力があっても、物理的な攻撃や魔力による直接攻撃には無力だからだ。
その指導役を買って出たのは、孤高のハンター、シリウスだった。彼は弓の腕前は七人の中でも群を抜いており、彼の魔力は風と鋭い殺意を纏っていた。
彼の塔は、他の塔とは違い、自然の木材と岩を組み合わせて作られており、まるで森の一部のように佇んでいる。塔の周囲は、彼が訓練に使う広大な射場になっていた。
「訓練だ。遊んでいるわけではない。お前の命は、もうお前一人のものではないのだから、真剣に取り組め」
シリウスは、スノーリアが弓を構える姿を見て、冷たく言い放った。彼の言葉は容赦がない。他の守護者たちが甘やかす中でも、彼は厳しさを貫く。
「弓はな、ただ引くだけでは意味がない。己の魔力、そして集中力、そして何よりも殺意を全て矢の一点に込める。それができない者に、生き残る資格はない。お前の美しさは、標的となることを意味する。無力な美しさは、ただの餌だ」
「はい、シリウス様。理解しています」
スノーリアは緊張して返事をした。彼の愛は、熱情的なルークとは対照的に、静かで冷たい炎のようだった。しかし、その根底にあるのは、彼女の命を絶対に守り抜くという鋼の意志だ。
彼はスノーリアの背後に音もなく立ち、彼女の手を取り、弓の構えを矯正する。彼の指先が触れるたびに、スノーリアの背筋に緊張が走った。彼の体温は低く、しかし、彼の魔力は静かに、そして強大に脈打っている。
「目標を見ろ。標的は、女王だと思え。お前を殺そうとする毒の影だと思え。敵の殺意を魔力で感じ取り、その一瞬早く、お前が仕留めるのだ」
シリウスの指示は正確だった。スノーリアは言われた通り、百メートル先の木に描かれた標的に集中した。
(女王私は、もう誰も私を傷つけることを許さない)
前世の過労死、今世での毒殺未遂。彼女の心に眠っていた強い怒りと生きる意志が、魔力となって弓に伝わる。彼女の毒を見抜く魔力が、矢の先に微かな黒い光を纏わせた。
ヒュン。
放たれた矢は、僅かに的を外れたが、かなりの勢いを持っていた。
「悪くない。だが、まだ甘い。女王の魔力は、その何倍も強力だ」
シリウスは、スノーリアの弓を持つ手を離すと、ため息をついた。
「毒を見抜くだけでは、女王には勝てん。毒を避けても、殺意の矢は避けることはできない。お前は美しすぎる。その美しさゆえに、常に誰かの標的になることを忘れるな。私のように、誰にも気づかれない場所から、確実に敵を仕留められるようになれ」
彼の言葉は、スノーリアの置かれた立場の本質を突いていた。
休憩時間になり、スノーリアはシリウスが持ってきてくれた水筒の水を飲んだ。静かな森の中で、二人の間に流れる空気は、張り詰めた糸のように緊迫していた。
「シリウス様は、なぜこの塔に。あなたほどの弓の腕があれば、王国の騎士団長として英雄視されたはずです」
スノーリアは、ふと疑問に思って尋ねてみた。
シリウスは遠い目をして、答えた。
「王国の権力の座にいる者は、真の獲物を見失う。彼らは、常に手に入らないものを追い求めるが、本当に必要なもの、守るべきものを見ようとしない。私は、真実の標的を追い続けたかっただけだ。自分の魔力と技術が、誰かの道具として使われるのが嫌だった」
そして、彼の視線がスノーリアに向けられた。その瞳は、獲物を捉えた瞬間のように、鋭く輝いていた。
「そして今、私は最高の獲物を見つけた。守るべき標的、スノーリア。お前だ」
彼は一歩、スノーリアに近づいた。その距離は、獲物を仕留める直前のハンターの距離だ。
「姫。アルバスの契約も、ルークの熱情も、私には関係ない。私はただ、お前を守り抜く。なぜなら、お前は私が見つけた、私だけの宝だからだ。誰にも渡すつもりはない」
彼はスノーリアの首筋に、そっと指を触れさせた。その仕草は、獲物の息の根を止めるハンターのようであり、同時に、愛しいものを優しく包み込む恋人のようでもあった。
「女王も、そして他の連中も。誰も、お前を奪うことは許さない。お前を傷つけるものは、私が先に射抜く。お前が私を必要としなくても、私の愛は一方的にお前を縛る」
彼の言葉には、圧倒的な力と、冷徹なまでの独占欲が込められていた。彼の愛は、外から見ればクールだが、その内側では全てを焼き尽くすほどの炎を秘めている。
スノーリアは、その強い視線から逃れることができなかった。彼こそが、七人の中でも最も危険で、最も彼女を逃がさないだろうと感じた。
「シリウス様。私は、あなた方の誰とも、まだ特定の関係を結ぶつもりはありません。あくまで契約の範囲で」
スノーリアがそう告げると、シリウスは冷たい笑みを浮かべた。
「知っている。だが、関係を結ばなくても、お前は私の守護対象だ。私の視界から逃れることはできない。お前は私の射程圏内にあるのだから」
彼はそう言い残し、次の訓練に移るように促した。
この訓練は、彼女の護身術を向上させる以上に、七人の守護者たちの深くて激しい愛情の重さを知る機会となっていた。彼らの愛情は、女王の毒とは別の種類の、甘く逃げられない毒のようなものかもしれない。
その指導役を買って出たのは、孤高のハンター、シリウスだった。彼は弓の腕前は七人の中でも群を抜いており、彼の魔力は風と鋭い殺意を纏っていた。
彼の塔は、他の塔とは違い、自然の木材と岩を組み合わせて作られており、まるで森の一部のように佇んでいる。塔の周囲は、彼が訓練に使う広大な射場になっていた。
「訓練だ。遊んでいるわけではない。お前の命は、もうお前一人のものではないのだから、真剣に取り組め」
シリウスは、スノーリアが弓を構える姿を見て、冷たく言い放った。彼の言葉は容赦がない。他の守護者たちが甘やかす中でも、彼は厳しさを貫く。
「弓はな、ただ引くだけでは意味がない。己の魔力、そして集中力、そして何よりも殺意を全て矢の一点に込める。それができない者に、生き残る資格はない。お前の美しさは、標的となることを意味する。無力な美しさは、ただの餌だ」
「はい、シリウス様。理解しています」
スノーリアは緊張して返事をした。彼の愛は、熱情的なルークとは対照的に、静かで冷たい炎のようだった。しかし、その根底にあるのは、彼女の命を絶対に守り抜くという鋼の意志だ。
彼はスノーリアの背後に音もなく立ち、彼女の手を取り、弓の構えを矯正する。彼の指先が触れるたびに、スノーリアの背筋に緊張が走った。彼の体温は低く、しかし、彼の魔力は静かに、そして強大に脈打っている。
「目標を見ろ。標的は、女王だと思え。お前を殺そうとする毒の影だと思え。敵の殺意を魔力で感じ取り、その一瞬早く、お前が仕留めるのだ」
シリウスの指示は正確だった。スノーリアは言われた通り、百メートル先の木に描かれた標的に集中した。
(女王私は、もう誰も私を傷つけることを許さない)
前世の過労死、今世での毒殺未遂。彼女の心に眠っていた強い怒りと生きる意志が、魔力となって弓に伝わる。彼女の毒を見抜く魔力が、矢の先に微かな黒い光を纏わせた。
ヒュン。
放たれた矢は、僅かに的を外れたが、かなりの勢いを持っていた。
「悪くない。だが、まだ甘い。女王の魔力は、その何倍も強力だ」
シリウスは、スノーリアの弓を持つ手を離すと、ため息をついた。
「毒を見抜くだけでは、女王には勝てん。毒を避けても、殺意の矢は避けることはできない。お前は美しすぎる。その美しさゆえに、常に誰かの標的になることを忘れるな。私のように、誰にも気づかれない場所から、確実に敵を仕留められるようになれ」
彼の言葉は、スノーリアの置かれた立場の本質を突いていた。
休憩時間になり、スノーリアはシリウスが持ってきてくれた水筒の水を飲んだ。静かな森の中で、二人の間に流れる空気は、張り詰めた糸のように緊迫していた。
「シリウス様は、なぜこの塔に。あなたほどの弓の腕があれば、王国の騎士団長として英雄視されたはずです」
スノーリアは、ふと疑問に思って尋ねてみた。
シリウスは遠い目をして、答えた。
「王国の権力の座にいる者は、真の獲物を見失う。彼らは、常に手に入らないものを追い求めるが、本当に必要なもの、守るべきものを見ようとしない。私は、真実の標的を追い続けたかっただけだ。自分の魔力と技術が、誰かの道具として使われるのが嫌だった」
そして、彼の視線がスノーリアに向けられた。その瞳は、獲物を捉えた瞬間のように、鋭く輝いていた。
「そして今、私は最高の獲物を見つけた。守るべき標的、スノーリア。お前だ」
彼は一歩、スノーリアに近づいた。その距離は、獲物を仕留める直前のハンターの距離だ。
「姫。アルバスの契約も、ルークの熱情も、私には関係ない。私はただ、お前を守り抜く。なぜなら、お前は私が見つけた、私だけの宝だからだ。誰にも渡すつもりはない」
彼はスノーリアの首筋に、そっと指を触れさせた。その仕草は、獲物の息の根を止めるハンターのようであり、同時に、愛しいものを優しく包み込む恋人のようでもあった。
「女王も、そして他の連中も。誰も、お前を奪うことは許さない。お前を傷つけるものは、私が先に射抜く。お前が私を必要としなくても、私の愛は一方的にお前を縛る」
彼の言葉には、圧倒的な力と、冷徹なまでの独占欲が込められていた。彼の愛は、外から見ればクールだが、その内側では全てを焼き尽くすほどの炎を秘めている。
スノーリアは、その強い視線から逃れることができなかった。彼こそが、七人の中でも最も危険で、最も彼女を逃がさないだろうと感じた。
「シリウス様。私は、あなた方の誰とも、まだ特定の関係を結ぶつもりはありません。あくまで契約の範囲で」
スノーリアがそう告げると、シリウスは冷たい笑みを浮かべた。
「知っている。だが、関係を結ばなくても、お前は私の守護対象だ。私の視界から逃れることはできない。お前は私の射程圏内にあるのだから」
彼はそう言い残し、次の訓練に移るように促した。
この訓練は、彼女の護身術を向上させる以上に、七人の守護者たちの深くて激しい愛情の重さを知る機会となっていた。彼らの愛情は、女王の毒とは別の種類の、甘く逃げられない毒のようなものかもしれない。
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