七人の美形守護者と毒りんご 「社畜から転生したら、世界一美しいと謳われる毒見の白雪姫でした」

紅葉山参

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女王の策略 毒りんごの幻影

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 フェリックスの登場は、七人の守護者たちに新たな緊張をもたらした。彼らは、フェリックスがスノーリアに会いに来たことをすぐに察知し、アルバスの塔の広間に集まっていた。

「アルバス、どういうことだ。フェリックスは、我々の領域に手を出さないと約束したはずだ」

 シリウスが鋭い視線をアルバスに向けた。

「彼はこの塔の最も古い契約者だ。我々が彼を排除することはできない。彼は姫の心を魅了する魔力を持っている。物理的な防御は無意味だ」

 アルバスは冷静に答えたが、その表情には焦りの色が見えた。フェリックスの魔力は、彼らの規律や防御の概念を無効化する。

 その議論の最中、広間の中心に、突如として禍々しい黒いモヤが立ち込めた。スノーリアの毒の魔力が、過去最大の脅威を感知した。

「これは、女王の魔力です。呪具が使われたわけではない。直接、私たちの精神に働きかけています」

 スノーリアが叫んだ瞬間、空間が歪み、広間の中心に一つの幻影が現れた。

 それは、鮮やかな深紅の毒りんごだった。

 童話に出てくる、まさにあの毒りんごだ。しかし、このりんごからは、スノーリアの毒の魔力でしか見えない、濃密な黒い殺意のモヤが噴き出していた。そのモヤは、守護者たちの魔力を掻き乱し、彼らの精神を侵食しようとする。

 そして、毒りんごの幻影から、女王の冷たく、嘲るような声が響き渡った。

「スノーリア。愛らしい私の継娘。お前はどこまで逃げても無駄よ。お前が持つ生命の輝き、その全ては私のものとなる。お前の守護者どもも、お前の愛で狂い、互いに潰し合うがいい」

 毒の魔力は、スノーリアだけでなく、守護者たちの間に疑心暗鬼を生み出そうとしていた。彼らの心に潜む、スノーリアへの独占欲が、増幅されていくのを感じる。

 ルークが熱に浮かされたようにスノーリアに手を伸ばした。

「姫は僕のものだ。他の奴らに渡さない。僕の炎で、この塔ごと焼き尽くして、二人きりになろう」

 シリウスは弓を構え、ルークを射殺さんばかりの鋭い視線を向けた。

「ふざけるな、ルーク。姫は私の獲物だ。お前のような感情の塊に、彼女を穢させるものか」

 アルバスは剣を抜き、二人の間に割って入った。彼の理性すら、女王の毒の魔力によって揺らいでいるのが分かった。

「皆、落ち着け。これは女王の幻影魔術だ。互いに争うな」

 スノーリアは、守護者たちが互いに殺意を向け合う光景を見て、絶望的な気持ちになった。彼女の毒の魔力は、この精神的な毒を防ぐことができない。

(私が、彼らを正気に戻さなければ)

 スノーリアは、毒りんごの幻影に向かって一歩踏み出した。彼女のルビー色の瞳は、りんごから噴き出す黒いモヤを、凝視した。

「女王。私は、あなたの毒にはもう屈しません。私の命は、誰のものでもない。あなたに利用されるために、前世で過労死したわけじゃない」

 彼女は、前世の社畜OLとしての強い意志を、魔力に込めた。逃げずに、理不尽に立ち向かうという、彼女自身の生きる意志だ。

 その瞬間、彼女の毒の魔力が、「解毒」の光へと変異した。黒いモヤの幻影に、純粋な白い光がぶつかり、モヤを弾き飛ばしていく。

「私の魔力は、毒を見抜くだけではない。毒を弾き、真実を見抜くための力だ。あなたたちの愛は、決して毒ではない」

 スノーリアは、互いに剣を向け合う守護者たちを、強く見つめた。

「アルバス様、あなたの規律は、私を守る理性です。ルーク様、あなたの情熱は、私を癒やす温もりです。シリウス様、あなたの独占欲は、私を狙う全ての敵への殺意です。皆さんの愛は、私にとって毒ではない」

 彼女の強い意志と、純粋な解毒の魔力によって、毒りんごの幻影は徐々に薄れ、やがて広間から完全に消滅した。

 守護者たちは、ハッと我に返り、互いに剣を収めた。彼らの顔には、自分たちが一瞬、理性を失っていたことへの羞恥と、スノーリアへの強い感謝が浮かんでいた。

 ガイウスが、その大きな体でスノーリアを抱きしめた。

「姫。感謝します。我々は、危うく自滅するところでした。貴女こそが、我々の鉄壁の盾だ」

 ルークは、自分の熱情的な行動を恥じ、スノーリアに深く頭を下げた。

「ごめんよ、姫。君の愛を手に入れたいという僕の欲望が、女王に利用された」

 アルバスは、冷静さを取り戻し、スノーリアの肩に手を置いた。

「この塔の結界は、物理的な侵入を防ぐが、精神的な魔術には弱い。女王は、我々の結束を乱すことで、我々を内側から崩壊させようとした。我々の最大の弱点は、貴女への愛だ」

 スノーリアは、彼らの愛が、女王にとって最高の「毒」として利用されることを悟った。

「皆さんの愛は、私の盾になります。ですが、これからは、愛が毒として利用されないよう、理性を持って行動しましょう」

 彼女の言葉に、七人の美形守護者たちは、再び彼女への忠誠と、そしてより深い愛情を誓った。
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