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第1部 エピローグ
エピローグ
しおりを挟む慌ただしかった一日が終わって、みんなが眠りについた深夜。
俺は目を覚ましてベッドに座っていた。
隣のベッドは無人だ。大人たちがどうしているのか、気になるけど探しに行く気にはなれない。
月明かりを頼りに、鞄から取り出したものを見る。
これはワボロさんにもらったレターケースの中に入ってたものだ。
模様が手書きのとても高価な品なのに、便せんにペンがこすれた汚れがついていて、ひどくひっかいたような痕が残ってた。
よっぽど慌てていたのか、二枚重ねて書いていたようで、痕がうっすらと残ったって感じだ。
一枚目はなくなってた。……正確には、ないものとしてレターセットの中に封じられてた。
水と光のマナが複雑に絡み合った封印……。俺には解くことはできないし、解こうとは思ってない。
自力で解けるようになったら、理由を教えてもらえるんじゃないかな。
「…………なにかの記号?」
強い筆圧でなにかを書き殴ったような痕を月で透かして見てもわからない。鉛筆はないけど、前にとったトレントの炭があるから、それでそっと紙の表面をこすってみたら、やっとそれが見えた。
「なんだろう、これ……。どこかの文字?」
大きいのは「藤崎悟」……半分以上かすれてるけど、なんとなく線をつないだらこんな形っぽい。なんだか石版の古代文字みたいだな。あとは「おとうさん」「おかあさん」これは……「大人」かな? ……こっちは線が少ない。模様なのかも。
気になるのは、これがなにかってだけじゃなくて、ところどころ濡れたあとがあることだ。
ぽつん、ぽつんと滴が落ちた跡……。まるで泣きながらこれを書いたような。
俺……? いや、でも泣く理由ないし。
ただ、この紙の存在を知られない方がいいってことだけはわかる。
だからその紙を鞄に収納して、俺は気泡の多い窓におぼろげに映る自分を見た。
今でも見慣れない、白くて幼い輪郭がそこにある。
そっと窓に手で触れて、俺は膝を抱えて目を閉じた。
ニケに言われてからずっと、考えてたことがある……。
世界の始まりは、いつなのだろう?
世界の終わりは、いつなのだろう?
どこからが始まりで、どこからが終わりなのだろう?
それを決める存在が神さまだというのなら、神さまは一体どこにいるのだろう?
誰だって自分が自分の世界の中心で、自分が生まれた瞬間から世界が始まっている。
けれど自分が死んでも世界が続くって、いつの間に信じるようになったんだろう?
だってもう、そこに自分はいないのに。
ふわふわといろんな属性のマナが浮かんで、俺にまとわりついてくる。
俺を慰めるように、監視するように……。
遠いどこかでまた、あのしゃりんしゃりんと何かが廻る音が聞こえたような気がした。
――――――――――――――――――――――――
後書き
第一部最終回です。
頼りなくても大人だった主人公が大人だった欠片を持ったままレベル1少年になり、やがて成長して、様々なものを見て、抱えて、背負いながらラスボスを相手にするまでのお話を書きたいなと思って書き始めたものでした。
第二部はまた後日上げますので、またよかったら続きも読んでやってください。ありがとうございました!
応援ありがとうございます!
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