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風太6歳 美晴4歳

風太&美晴 vs 雷鳥…!!

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 ファミリーレストラン「ゆったりハンバーグ」。 
 その18番テーブルにて、ふてぶてしく足を組みながら席に座る大男こそ、“雷鳥”という異名を持つ高校生、風太の兄・雷太ライタである。ちなみにその隣には、メガネをかけた女子高生・マネージャーの真音マネもいる。
 待つこと数分。突然わたわたと慌ただしく来店し、二人の前に現れたのは、口を真一文字に結んでキリリとした眼差しを向ける少年・『風太』と、こちらもまたふてぶてしく腕を組んで弱々しい瞳で睨みを利かせる少女・『美晴』だった。
 運命の再会。そして、空気はピリッと張り詰めた。

 「で?」

 雷太が問う。

 「俺の一秒は、お前の百年にあたいする。お前ごときが、数百年も俺を待たせた理由はなんだ? 愚弟ぐていよ」

 問われたのは『風太』。しかし、真音が先に口を挟んだ。

 「もうっ、いきなりそんな高圧的な態度とって! どうして『こんばんは』の一言くらい言えないかなぁ、雷太くんは! 私はバスケ部のマネージャーとして恥ずかし」
 「雑魚ザコは黙っていろ」
 「ざっ、雑魚ぉ!? 私のことっ!?」
 
 真音は文句を投げ続けたが、雷太は受け取ろうとしなかった。すでにお前は眼中がんちゅうにない、というような態度。
 結局、真音は発言権を失った自分の立場を理解したのか、しばらく黙っているという選択をせざるを得なかった。
 
 「二度と、俺の前にその無様ぶざまな姿を晒すなと言ったハズだ。……改めて聞くぞ。なぜ俺の前に現れた? 答えろ」
 
 雷太が問う。さっきとは違い、口を挟む者はいない。
 『美晴』と『風太』は互いに顔を見合わせ、一度だけうなずくと、指名された通り愚かな弟・『風太』が一歩前に出て、その問いに答えた。

 「お前を倒すためだ。二瀬雷太」

 宣戦布告。本来なら風太が言うべきセリフを、事前に打ち合わせた通りに、『風太』が言った。

 「俺を倒す、だと?」
 「そうだ。そのために、二人でここに来た」
 「冗談なら付き合う気はないが」
 「冗談じゃないっ! 本気だっ! 今日この場所で、お前は、二瀬雷太はっ、わたした……おれたちに、無様ぶざまに負けるんだよっ!!」
 「……!」

 一瞬、雷太は目を丸くした。どうやら、愚弟の意気込みは本物らしい。
 しかし、雷太はすぐに冷静になり、フッと鼻で笑った。

 「勝負しろ、と言っているのか? 俺に?」
 「さっきからそう言ってるっ!」
 「哀れな浅学非才せんがくひさいよ。ついに気でも狂ったか? 俺とお前の間にある決して埋まらない絶望的な差くらいは、流石に理解していると思っていたんだがな。脳みそすら矮小わいしょうだったか」
 「一人じゃ勝てないことくらいは分かってる。でも、二人なら、お前にだって勝てる!」
 「二人?」
 「こっちの美晴も、お前を倒すつもりでここに来た! おれたち二人と勝負してもらうよ! 二瀬雷太っ!」
 「……」

 雷太は、弟の隣に立つ少女に視線を向けた。
 髪の長い女の子。陰気なオーラが、こちらにも漂ってくる。運動能力があるわけでもなさそうだし、特に頭が良さそうにも見えない。スカートから伸びる華奢きゃしゃな脚は見るからに弱々しく、かすかに震えてさえいた。

 「誰だ」
 「……! ……!!」

 雷太は少女の声を聞こうとしたが、少女は口をパクパクとさせるだけで、声を発さなかった。対話する意思は見られるが、どうにも言葉を話すことができないらしい。
 見かねた『風太』が、すぐに助け舟を出した。

 「この子は美晴。戸木田美晴だよ」
 「美晴?」
 「話すのはあまり得意じゃないの。特に、初対面の男性が相手だと、緊張して声が出なくなる。この子が慣れるまで、待って」
 「なるほど。よぉく分かった」

 呆れの果て。雷太は落胆らくたんのため息をつき、席を立とうとした。
 想定外の行動に、『風太』と『美晴』は慌てて雷太の前に立ち塞がった。

 「ま、待てっ!! 逃げるつもりっ!!?」
 「つまり、小学生のくだらないお遊戯ゆうぎ会に付き合わされる、ということだろう? 俺は帰る。ガキと遊んでるほどヒマじゃない」
 「遊びじゃないっ! こっちは真剣に……!」
 「『程度が低い』と言っているんだ。くだらない、くだらない。無駄な時間なんだよ。俺の前からさっさと消えろ。出来損ないのゴミが」

 雷太は帰ろうとしている。『風太』と『美晴』は、必死になって止めようとした。しかし、小学生の二人の力では、男子高校生は止められない。強い言葉で威圧され、次第に押され気味になり……。
 そこに待ったをかけたのは、先ほどから問答もんどうを黙って聞いていた女子高生だった。

 「ふぅ~ん。雷太くん、逃げるんだぁ~?」
 「……!」
 
 ピクリと、雷太の耳が動いた。真音は猫撫ねこなで声で話を続ける。

 「あれだけの天才が、まさか小学生二人にビビっちゃうなんてねぇ~?」
 「あ?」
 「怖いもんねぇ。もし負けたら、みんなにごめんなさいしなきゃいけないからねぇ~?」
 「おいお前、黙れ」
 「黙らなぁ~いよ。私の正論は、痛いところを突いちゃったかな~?」
 「そのしゃべり方と、安い挑発をやめろ。くだらん」
 「ん? イライラしてる? そっかそっか。じゃあ逃げてもいいよ。ほら、ここから逃げ出しなよ。弟くんと美晴ちゃんの不戦勝ね」
 「ぐぬぬっ……!」

 雷太は眉間みけんにシワをたくさん寄せながら、仕方なく、しょうがなく、席に戻った。真音の方をギリリと睨みつけたりもしたが、真音は一向に涼しい顔を続けていた。

 「よーしよしよし。雷太くんは良い子ねー」
 「うるさい。黙れ」
 「もし雷太くんが勝ったら、数学の宿題の答え、教えてあげるね」
 「約束だぞ。数学と世界史の宿題を貴様にやってもらうからな」
 「あ、あれ? なんか、教科が増えてない?」
 「勝てばいいんだろう。勝てば。何の勝負だろうと、俺がこいつらごときに負けるハズがないんだ。全てにおいて、俺は優れている」
 「じゃあ、勝負を受けるってことでいいんだね?」
 「まとめてかかってこい。ひねつぶしてやる……!!」

 雷太はイスに座り直し、闘志を燃やした。改めて、敵として立ちはだかってくれるようだ。美晴は雷太の挑発に乗りやすさを見て、「やっぱりこの人は風太くんのお兄ちゃんなんだ」、と思った。
 事前の打ち合わせ通り、コトが運んだ。勝負の立会人たちあいにんとしてこの場に呼ばれた真音が、開戦の言葉を述べる。
 
 「始めるよ。二瀬風太&戸木田美晴vs二瀬雷太の……パフェ早食い対決……!!!」

 * *

 ジャイアント・チョモランマ。
 高さは約40cm。名前の通り、チョモランマ(エベレスト山の別名)のように雄大ゆうだいなパフェが、18番テーブルに二つ、運ばれてきた。
 上層にはウエハースとソフトクリームなどのふわふわホイップゾーンが、中層にはフレークなどのサクサクお菓子ゾーンが、最下層にはバナナやイチゴ、メロンやキウイなどのフレッシュ果実ゾーンが待ち受けている。

 「な、なんだこれは……!」

 雷太は動揺した。初見では、そのインパクトに圧倒されるのも無理はない。しかし、『風太』と『美晴』と真音は、この大きさも想定内だ。

 「ルールは簡単。先に、これを食べ終わった方が勝ちね。OK?」
 「おい真音、これはどういうことだ。これを食べ切るだと? それで勝負だと言えるのか? もっと真面目な戦いを……!」
 「あら? 弟くんと美晴ちゃんは大真面目だけど? この勝負なら、雷太くんにも勝てるんだってさ」
 「ふ、ふざけるなっ」
 「とにかく位置について。よーい、スタート!」

 真音の掛け声と共に、勝負は始まった。
 『風太』と『美晴』はスプーンを右手に持ち、果敢にチョモランマへと入山を始めた。まずはクリームをすくい、口の中へと放り込む。こちらは二人なので、口も二人分のうえに胃袋も二人分だ。
 一方、雷太は未だ状況を飲み込めず、目の前にそびえ立つチョモランマに手を付けられずにいた。

 「本気なのか……? 真音も、この勝負の内容を知っていたのか?」
 「もちろん。このパフェ対決を提案したのは私だしね。『どうしても雷鳥を倒したい』って、あの子たちが真剣に言うものだから、手を貸してあげたくなっちゃって」
 「ガキの遊びだぞ。こんなの。まともに取り合う方がどうかしてる」
 「そう? あの子たちは、本気で雷太くんに勝つつもりだよ?」
 「だいたい、俺に勝ってどうする? こいつらの目的は何だ? 見返りに何を求めてるんだ?」
 「さあね。兄弟の間で、何かあったんじゃないの?」
 「……」

 ヒョイ、パクッ。ヒョイ、パクッ。
 快調に食べ進める『風太』&『美晴』チーム。かなりのハイペースで進んだため、そろそろホイップゾーンが終わろうとしている。
 その様子を、雷太は隣の席で見ていた。表情に一切の冗談がない『風太』と『美晴』を、まじまじと見つめていた。真剣な空気が、だんだんテーブル全体を覆い始めている。

 「くっ……!」

 雷太は居心地いごこちが悪くなり、思わず席を立とうとした。しかし……。

 「ふぇうなっ……!!! 勝負ひろっ……!!!」

 ビシッ。
 人差し指の代わりに、スプーンで指を差す。口の周りを、真っ白なクリームだらけにした少女。言葉を話すことすらできず弱々しかったあの少女は、もう一端いっぱしの戦士としての顔に覚醒していた。 

 「う……!」

 雷太は、もう逃げられない。

 *

 「フッ、はは……。こいつら、マジで俺に勝つ気か……」

 『風太』&『美晴』がサクサクゾーンに差し掛かるころ、雷太の様子にも変化があった。
 何やらうすら笑いながら、ブツブツと言葉をつぶやいている。その笑いは、小学生二人組に対してではなく、真音に向けてでもなく、おそらく自分に向けて。

 「これ以上……恥をかくのは、俺の方だというわけか。確かに、今の俺はダサいな……。じゃあ、どうする? どうすればカッコいい俺になる? 本物の天才として、この劣等れっとう共を叩き潰すには、どうすればいい……?」
 
 自問じもん。これは、雷太がバスケットの試合中などによくやる、集中力を高めるための行為だ。
 風太はプライドが高くてカッコつけだが、雷太はその上をいくほどのカッコつけ。そして、自信家でもある。普段から周りの人間を見下みくだすクセは、おのれが積み上げてきた物に揺るぎない信頼を置いているため。

 ガシャンッ!!!

 突如とつじょ、激しい物音と共にテーブルが揺れた。真音も、『風太』も、『美晴』も驚き、そちらを見た。

 「「「か、顔からっ……!?」」」

 雷太が、パフェに顔を突っ込んでいる。スプーンさえ持たずに、山の中に直接顔面をブチ込み、もしゃもしゃとアゴを動かしている。そして、雷太がゴクンと飲み込むと、そこにはもうソフトクリームもウエハースも跡形あとかたもなく消え去っていた。

 「んぷはっ! ゲップ……」

 顔中クリームまみれのまま、その怪物は山から出てきた。そして、隣の席にいる雑魚共ザコどもの方へとグルリと首を回した。
 バチバチと蒼い電気を宿やどした雷鳥が、ついに姿を現した。

 「俺をめるなよ。もう、くだらない夢さえ……げぷっ、持つことは許さん」

 *

 そこからの勝負は、熾烈しれつを極めた。 
 『美晴』は少食。早くも胃袋に限界を迎えたため、しばらくは休息が必要になった。『風太』が一人で走り続けているものの、迫り来る巨大な雷鳥に、常に背中を捉えられているという状況が続いた。そして……。

 「もぐもぐ……さ、最後のゾーンっ……!」
 
 いよいよフレッシュ果実ゾーンに辿り着いた。ここまでは、ほぼ同着。
 『風太』は持てる力を振り絞り、意を決して果物の層に飛び込んでいった。……が、それができたのも、スプーンの三杯目まで。

 「ゲホゲホッ!! きゃっ、な、なにこれっ!? おえっ、マズいっ……!!」

 手が止まった。何かが、これ以上先へは行かせまいと、邪魔をしている。
 『風太』は異常を感じて、自分が今口に入れたスプーンの先を見た。

 「キウイ……!? うそっ、これのせい!?」

 少しかじられたキウイが、そこにあった。この果実からにじみ出る果汁が、口の中で大暴れしたらしいのだ。
 『風太』は瞬時に考えた。キウイにこれほど苦しめられたことは、今まで一度もない。思い当たるふしといえば、ただ一つ……。

 「ふ、風太くんっ!」
 「なんだ……? 美晴……、どうか……したのか……? けぷっ」
 「風太くんは、もしかしてキウイが苦手なんですか?」
 「え……? そうだけど……。なんで……美晴が……それを……知ってるんだ……? お前に……話したこと……あったっけ……?」
 「やっぱり!」
  
 舌および味覚が入れ替わっているので、嫌いな食べ物も入れ替わっている、ということだ。つまり『風太』の体では、キウイを攻略することができない。思わぬブレーキがかかってしまった。
 しかし、立ち止まっているわけにはいかない。『風太』は『美晴』のスプーンを手に取り、そこにありったけのキウイを盛り込んだ。

 「さあ、口を開けて」
 「え……!? これを……食べろって……言うのか……!? おれ……、キウイは……嫌いだって……今言った……じゃん……!」
 「それはわたしなんですっ! 風太くんなら食べられるっ!」
 「はあ……!? どういう……意味だよ……」
 「わたしは風太くんで、風太くんはわたし。わたしの体は、キウイが苦手じゃない。だから、あなたが食べなきゃいけないの」
 「えー……。でも、やっぱり……抵抗がある……というか……なんというか……。大丈夫だって……分かってても……勇気が……いるよ……。ちょ、ちょっと……待てってば……」
 「早くしてっ! じゃないと、風太くんのお兄ちゃんに負けちゃう……!」

 そう言いつつ、『風太』は隣の席の方へと振り返った。一方の雷太はというと……。

 「うえっ、おうえっ、うげええっ……!!」
 
 激しく、むせ返っていた。口元を押さえながら、パフェから顔を逸らしている。どうやら、直視することすらできない様子。
 風太が持つキウイに対する苦手意識よりも遥かに高い苦手意識を、雷太は持っていたようだ。つまり、味覚さえも風太より上。
 真音は、雷太の背中をさすりながら、優しい言葉をかけた。

 「あららー、雷太くんはキウイ苦手だったね。これだけ特別に、私が食べてあげよっか?」
 「い、いらん……! お、おれが……下等な女に……手助けなど……! うええっ……!!」
 「まったく、プライドだけは高いんだから。じゃあ頑張って食べなさい。私がそばで見ててあげる。写真も撮って、バスケ部のみんなに見せちゃおっと」
 「やめろぉ……! お、俺は一人で食えるぞ……! 何も問題なく、口に運んで……うぐぅっ! ぐうおおおおぉっ!!」

 雷鳥の咆哮ほうこう。雷太は白目をひんむきながら、キウイへと挑んでいた。上に立つ者の意地というべきか、極限状態になりながらも、とてもゆっくりだが少しずつ口へと運んでいる。ちなみにその横で、真音はパシャパシャと写真を撮っている。
 『風太』は再び、『美晴』がいる方へと顔を戻した。

 「見ましたか? 今の」
 「見たよ……。雷太兄ちゃん……、あんな顔に……なっても……苦手なキウイを……必死に……食べようとしてる……。絶対に……おれたちには……負けたくないんだ……」
 「なんだか、天才と呼ばれる雷鳥さんの正体が分かったって感じですね」
 「美晴……。おれも……、キウイ……食べるよ……。この体だと……あんまり……努力には……ならないかも……しれないけど……」
 「はい、どうぞ。今日はとりあえず、わたしたちの過去に決着をつけましょう。未来のことを考えるのは、それからで」
 「そうだな……。よし、食べるぞ……!」

 6歳の風太。4歳の美晴。それぞれとの出会いを胸に、『風太』&『美晴』チームは、最後の一口を同時に口へと運んだ。

 * 

 「……」

 怪鳥かいちょうつ。
 雷太は白目を剥いたまま、天を見上げていた。完全に気絶しているらしく、精巧なオブジェのように固まっていて、指一本すら動かない。彼の手前にあるテーブルには、あとほんの少しだけキウイが残った、パフェのグラスが置いてある。

 「私たちの勝利に、乾杯かんぱい♪」

 『風太』と『美晴』が食べ終わり、からになったパフェのグラス。真音はにこやかに、そのグラスに自分のオレンジジュースが入ったグラスをコツンと当てた。

 「「か、かんぱ~い……↓」」
 「あらら、お二人さんも元気ない感じ? せっかくの大勝利だよ? もっと勝利の喜びを味わわなきゃ! イェーイっ!」
 「「た、食べすぎて……お腹が痛い……」」
 「うーん、そりゃそうか。食べ終わった直後だもんね。二人とも、まずはお手洗いに行ってきなさい。雷太くんのことは、私が見てるから」
 「「はーい……」」

 『風太』は『美晴』の肩を担ぎ、席を立った。
 「やったー!」とか「うおおー!」などの言葉はなく、テンションはかなり下がり気味ぎみで、のっそりと二人でトイレに向かう。途中、二人で顔を見合わせ、パフェ早食い対決を挑んだことを、若干じゃっかん後悔した。

 「悪いな……、美晴……。うっぷ……」
 「いいえ。わたしの体だとキツいでしょうから。うっぷ」
 「男女兼用の……個室トイレが……一つだけ……か……。お前が……先に……入れよ……。おれは……後で……いい……」
 「いいんですか? じゃあ、お先に失礼します」

 バタン。『風太』は、扉の奥へと消えていった。
 因縁いんねんとの決着は、無事にやり遂げた。もう、お互いを演じる必要はない。『風太』は美晴に、『美晴』は風太に。
 風太は深いため息をつき、だらしなく床に腰をおろした。これで全ての戦いが、終わったはず……。
 
 「ん……?」

 声が聞こえる。場所は、このファミレスの26番テーブル。喫煙席きつえんせきの方だ。
 大人の男性が二人で、何やら話し込んでいる声。

 「それにしても、大変な要求っすね。そりゃあ」
 「ああ、俺も困ったよ。だが、一つ思い出したんだ」 
 「思い出した? 何をっすか?」
 「8年前に別れた女房にょうぼうと、その娘のことをさ」
 
 一人は見知らぬ男性。体型は小太りで、後輩のようなしゃべり方をしている。
 しかし、もう一人は見知った男性。風太と美晴がよく知ってる、あの男だ。あの男が、偶然にもそのテーブルにいた。

 「あ……あれは……!!」

 風太は、物陰にサッと身を隠した。

 (継本流壱……!? 美晴のお父さんだったヤツが、なんでこんなところに……!!?)
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