昔助けた王子様に求婚されて外堀を埋められています

水無瀬雨音

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 アルデンヌ男爵の長女ソフィアは、プラチナブロンドに青い瞳、きめの細かいミルク色の肌と美しさに定評があった。顔の造作も美形の両親の特によいところを受け継いでいる。三つ年下の弟ジャンも少女に見まごうぼどの美形で、一家揃っているところを見たものは、歌劇の一場面のようだとため息をつくほどだ。
 所作は持ち合わせているが、それでいて令嬢らしからぬはっきりとした性格であるところも利点らしい。
 この国の成人である16歳を間近に控え、毎日のように婚約のお伺いの手紙が届く。社交界デビューすれば、もっと増えるだろう。そろそろ結婚を考える年齢ではあるが、男爵は娘が一番幸せになるところに、と考えあぐねているようだ。

 開け放たれた窓から陽光が射し込み、気持ちのよい風がレースのカーテンをはためかせている。
 昼食が終わり、窓際に置かれた椅子に腰かけたソフィアは、自室で一人本を読んでいた。
 腰まで届く、ウェーブがかった見事なプラチナブロンドを彩る小さいサファイアがついた髪飾りは、幼い頃ほんのわずかなひとときを過ごし、兄のように慕った少年からもらったものだ。別れてしばらくは落ち込んでいたので、父に「高貴なお方なので、数日一緒に過ごしていただいただけで身分不相応なありがたいことなのだ」とたしなめられた。連絡をとる手段もなく、会うことはないのだが、楽しかった思いでとしてたまに思い出す。いくつか持っているが、気に入っているため大抵つけているのはこの髪飾りだ。
「お嬢様、旦那様がおよびです」
 ソフィア付きのメイド、マリアに声をかけられ、本にしおりを挟んで閉じると立ち上がる。
「すぐ行くわ」
 男爵は仕事がなければ家族で食事をとることを常としており、話があってもそこで済ませるため、日中呼びだされることなど滅多にない。
 先日のお茶会で侯爵の息子にしつこく言い寄られ、ヒールで足を踏んづけてやったことだろうか。
 マリアも至急と言われただけで、詳しいことは知らされてないらしい。服装の乱れがないか見てもらい、父のもとに向かった。
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