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「ソフィアと出会えただけで僥倖であるのに、再び相まみえたことが信じられぬ。ソフィアは美しい容姿はもちろんだが、歯にものを着せぬ物言いができるのもよいな。令嬢同士の裏側を読む会話は聞くに堪えぬからな。そうは思わぬか、マリア」
「その通りです、クロード様」
「10年前はおとなしい一面もあり、それもまた愛いものだった」
「ソフィア様ならなんでもよいのは承知いたしました」
馬車を入らせてしばらくたつが、クロードはずっとこの調子だ。マリアの相槌がだんだんと感情がこもらなくなるのは一向に気にならないらしい。
ソフィアは延々続く自分への過剰なまでの賛辞に耐えられず、途中から耳をふさいでしまっている。
「ソフィア、幼子のように耳をふさいでいる姿もかわいらしいが、そろそろその愛らしい声を聞かせてくれぬか」
ソフィアの手をつかんだクロードはその耳にささやき、そっと口づけた。先程は手だったが、今度は口に。
「な、なにをなさるのですか!」
真っ赤になったソフィアが手のひらで口をふさぐ。クロードはやっと声を聞けたことと、愛らしい反応にうれしそうだ。
「私の前ではお控えください、クロード様。ソフィア様に私の隣に座っていただきますよ」
釘をさすマリアに、クロードは素知らぬ顔で答える。
「舌も入れておらぬのだから、挨拶と同じだろう。マリアにもしてやろうか。手に」
「結構です」
マリアは顔色も変えずに答える。精悍な顔立ちで、しかも王子であるクロードに「キスをしてやる」と言われたら大抵の娘は、恐れ多さに断るだろうが顔を赤らめずにはいられないだろう。
そしてクロードもマリアの反応を予測して軽口をたたいたように見える。
いかにクロードが寛容だとは言え、会ってすぐに王族にこのように物申せるメイドはそうはいないだろう。
ソフィアとマリアの姉妹のような関係のように、主人とメイドというよりは姉弟のように見える。
「マリアを連れていきたい」とクロードに進言した時も、マリアが何者なのか知っているようだった。
疑問に思ったソフィアは尋ねてみる。
「もしかしてクロード様とマリアはお知り合いだったのですか?」
「その通りです、クロード様」
「10年前はおとなしい一面もあり、それもまた愛いものだった」
「ソフィア様ならなんでもよいのは承知いたしました」
馬車を入らせてしばらくたつが、クロードはずっとこの調子だ。マリアの相槌がだんだんと感情がこもらなくなるのは一向に気にならないらしい。
ソフィアは延々続く自分への過剰なまでの賛辞に耐えられず、途中から耳をふさいでしまっている。
「ソフィア、幼子のように耳をふさいでいる姿もかわいらしいが、そろそろその愛らしい声を聞かせてくれぬか」
ソフィアの手をつかんだクロードはその耳にささやき、そっと口づけた。先程は手だったが、今度は口に。
「な、なにをなさるのですか!」
真っ赤になったソフィアが手のひらで口をふさぐ。クロードはやっと声を聞けたことと、愛らしい反応にうれしそうだ。
「私の前ではお控えください、クロード様。ソフィア様に私の隣に座っていただきますよ」
釘をさすマリアに、クロードは素知らぬ顔で答える。
「舌も入れておらぬのだから、挨拶と同じだろう。マリアにもしてやろうか。手に」
「結構です」
マリアは顔色も変えずに答える。精悍な顔立ちで、しかも王子であるクロードに「キスをしてやる」と言われたら大抵の娘は、恐れ多さに断るだろうが顔を赤らめずにはいられないだろう。
そしてクロードもマリアの反応を予測して軽口をたたいたように見える。
いかにクロードが寛容だとは言え、会ってすぐに王族にこのように物申せるメイドはそうはいないだろう。
ソフィアとマリアの姉妹のような関係のように、主人とメイドというよりは姉弟のように見える。
「マリアを連れていきたい」とクロードに進言した時も、マリアが何者なのか知っているようだった。
疑問に思ったソフィアは尋ねてみる。
「もしかしてクロード様とマリアはお知り合いだったのですか?」
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