昔助けた王子様に求婚されて外堀を埋められています

水無瀬雨音

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 朝の食事がすみ、ソフィアはクロードと出かける準備のため、マリアとともに頭を悩ませていた。
「ねぇどれがいいと思う?マリア」
 ベッドやテーブルに彩り豊かなドレスや宝石を並べ、靴も床一面に並んでいる。さながら露店のようだ。質で言えば露店にあるような品ではないが。
 「今日は気候もよいですし、長そでじゃなくてもよいですよね。これはどうでしょう?春らしい色合いですわ」
 マリアが選んだのは若草色の軽やかなドレスだった。ドレスの中心は華やかなレースアップで、七分袖の袖はたっぷりとしたレースで彩られている。各所につけられた宝石が花のようだ。
「いいわね。それにするわ。靴はこれはどうかしら?」
「お似合いだと思います」
 ソフィアの選んだ黄色いヒールに、マリアもうなづく。
「急がないと待ちくたびれたクロード様がお迎えに来てしまうかもしれませんね」
 マリアが手早く支度を整えてくれる。髪型はハーフアップにし、髪飾りで彩る。
 化粧を施し終わったところで、扉がノックされる。
「ソフィア。支度は済んだか?」
「はい。すみました」
 返事をすると、クロードが扉を開ける。ソフィアを上から下まで見つめ、満足そうにうなづく。
「春の訪れを知らせる女神のようだな。お手をどうぞ、女神様」
「はい」
 恥じらいながらソフィアはクロードの手を取る。
 相変わらずクロードの賛辞はもったいないほどでくすぐったい。
「いってらっしゃいませ」
 マリアが笑顔で送り出してくれる。
 二人は王宮の馬車に乗って城下町に向かった。
 城下町で一番大きな劇場の顧客はほとんどが高等貴族で、王都に住んでいたときもソフィアは入ったことはない。
 黒と金色を基調とした荘厳なつくりにソフィアは臆するが、安心させるようにクロードが手を握ってくれる。
 前日に思い立ってチケットが取れるのだろうかと不思議に思っていたのだが、王族用の席が常にあるらしい。席に向かうまでのほんのわずかな距離の間、何人もの貴族に挨拶のために呼び止められる。護衛はごくわずかだったが、貴族たちにはクロードがだれかすぐわかるようだった。
 王子の婚約者として細心の注意を払って挨拶していたため、王族用の席のソファーに座った時にはソフィアはすっかり疲れ果ててしまった。
 王族用の席は舞台の正面の高い位置につくられ、半個室になっているためこの席にいる間は挨拶に来られる心配はなさそうだ。この席ならば余すことなく舞台がよく見えるだろう。
 クロードが劇場の使用人に果実水を持ってこさせてソフィアに手渡す。
「ありがとうございます。おいしい!」
 受け取ったソフィアはすぐに飲み干してしまい、優しい甘みに顔をほころばせる。冷えた果実水がのどを落ちていくのはなんとも心地よく、ほてった体を冷ましてくれるようだ。すかさず使用人が新しいものを注いでくれる。
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