昔助けた王子様に求婚されて外堀を埋められています

水無瀬雨音

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 夕食の後、ソフィアはベルを呼び止め、小声で告げた。
「あとでお部屋に伺います。よろしいですか」
「もちろん。お待ちしていましたのよ」
 ベルはゆったりと微笑んだ。

 クロードに命じられたということで一日中張り付いていたメイドに頼み込んで、5分だけという約束でベルと二人きりになった。メイドはベルの部屋の外で待たせている。
 黒檀の机を挟んで、向かい合わせにソファに座っている。
「戦でクロードが亡くなったらとお考えにはならないのですか」
「クロードは強いからまずないとは思うけれど、そうなれば私の見込み違いということですわね」
 ベルがこともなげに答える。
「……クロードを、お好きなのですよね」
「もちろん。あんなに有能な人はそんなにいないわ。しかも顔も美しいでしょう?子孫を残すのは王族の義務とはいえ、醜い相手と子作りしたくないもの」
 ベルの表情は微笑んだまま動かない。
 確かに言葉が通じているのに、まるで会話が噛み合っていない気がする。
 好きな相手を危険にさらしてもよいと考えるなど到底理解できない。昨日も思ったが思考が理解できないベルは、別の生き物を相手にしているようだ。
「……私欲だけで国民を危険にさらすことはどう思われますか」
「この国は小国ながら資源豊かだから持っていて損はありませんので、私欲だけということはありませんわ。
 それに私の国民持ち物をどう使っても自由でしょう。私に尽くすのは当然ですもの。ソフィア様は食べ物を口にするときにいちいち豚や魚の死を悼みますか?」
 ベルは演技ではなく、本当に理解できないというように不思議そうな顔をしている。根本的にソフィアとベルは分かり合うことはできないのだろう。
「ソフィア様、お時間です」
 メイドがドアをノックしている。
 正しいやり方ではないかもしれない。
 もっといい方法があったかもしれない。

「……今夜、クロードにお話しします。セヴィオ王国に手出ししないとお約束ください」

「王女の誇りにかけてお約束いたします。賢明な判断をされましたね。では私は明日帰ります。政務もたまっておりますし、目的は達成しましたので」
 満足そうにベルは嫣然と微笑む。

 ソフィアは悪魔と契約をした。
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