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初めて会ったときのことをよく覚えている。
「この子がお前の婚約者のクロードだよ」
クロードの誕生祭に両親と出席し、初めてクロードに会った。
城下でも露店が開かれたりダンスをしていたりと、国中がお祝いの雰囲気一色だった。
城内はもちろんその比ではなく、選りすぐりの音楽隊が荘厳な音楽を奏で、ホールの真ん中ではダンスが繰り広げられていた。近隣諸国の王族や高等貴族が多数招待され、にぎやかだ。
テーブルに用意された料理も趣向をこらした贅沢なもの。
「ご出産おめでとうございます。女王陛下」
持ってきた祝いの品を女王陛下の傍らに控えていたメイドに渡す。
「ありがとう。よろしくお願いしますね、ベル」
5人目の出産だというのに全く美貌がそこなわれていない王妃に抱かれ、クロードが眠っている。
まだ産まれて一か月だというのに、目鼻立ちがはっきりしているのが印象的だった。
国王陛下や王太子たちは挨拶に回っているという。
「髪の色と目の色は私に似ているのだけれど、お顔は国王様に似てらっしゃるかしらねぇ。子供の顔はどんどん変わってくるものだけれど」
優し気な顔で女王が髪をそっと撫でつけてやる。
この子が私の婚約者なのだ。
なんとなく心が高揚したのを覚えている。
それからクロードは会うたびにベルの期待通り、いや期待以上に眉目秀麗で頭脳明晰な青年になった。一国を治める相手として申し分ない。そして根本の性格も似ている。
大事なもののためならどんな犠牲もいとわない。
必要とあらば人の命もためらいなく奪うだろう。
きっとうまくやっていける。クロードもそう思っていただろう。そんな矢先のことだった。
「婚約解消?私に相談もなく、どういうことですか。父上」
「クロードに添い遂げたい女性ができた、というものでね。ベルはクロードでなくてもかまわないだろう」
「それは……そうですけれど」
クロードを男として意識したことはない。クロードもベルのことをそのように見たことはないはずだ。
だが、自分のものを盗られるのは腹ただしい。
「婚約解消したところでお前にはいくらでも縁談があるだろう。大丈夫だ、ベル」
「……はい。父上」
自分が魅力的な容姿をしていることは自負している。だが、クロードと同等の条件を持ったものはそうそういない。
馬車に揺られながら物思いにふけっていたベルは背中の窓のカーテンを少し開け、様子を伺った。
数台ほど間を開け、同じ馬車がついてきている。
先ほどいなくなっていたのだが、こちらを油断させるため一時的に姿を隠したのだろう。
ベルは御者に声をかけた。
「ネズミがついてきているわ。追い払って」
「かしこまりました。ベル様、窓をお閉めください」
御者の答えにベルはすぐ窓を閉める。
窓のカーテンを開けて後ろの様子をうかがう。
ややあって真っ黒な煙幕が上がり、一瞬で視界がきかなくなる。
馬のいななきが聞こえ、後続の馬車が慌てて馬車を止める音がする。
御者がうまくやったのだろう。こちらのスピードは全く落ちないが、後続の馬車は煙幕が晴れるまでしばらくの間は走行できないはずだ。
たぶん無関係な馬車も巻き込まれたが、それはどうでもいい。
これでクロードはベルを追うことはできない。
ソフィアにもたどり着けない。
いずれたどり着くことがあるかもしれないが、それはソフィアと結婚できなくなった後だ。
そうしたらクロードはベルのもとに戻ってくる。
ベルは確信した。
「この子がお前の婚約者のクロードだよ」
クロードの誕生祭に両親と出席し、初めてクロードに会った。
城下でも露店が開かれたりダンスをしていたりと、国中がお祝いの雰囲気一色だった。
城内はもちろんその比ではなく、選りすぐりの音楽隊が荘厳な音楽を奏で、ホールの真ん中ではダンスが繰り広げられていた。近隣諸国の王族や高等貴族が多数招待され、にぎやかだ。
テーブルに用意された料理も趣向をこらした贅沢なもの。
「ご出産おめでとうございます。女王陛下」
持ってきた祝いの品を女王陛下の傍らに控えていたメイドに渡す。
「ありがとう。よろしくお願いしますね、ベル」
5人目の出産だというのに全く美貌がそこなわれていない王妃に抱かれ、クロードが眠っている。
まだ産まれて一か月だというのに、目鼻立ちがはっきりしているのが印象的だった。
国王陛下や王太子たちは挨拶に回っているという。
「髪の色と目の色は私に似ているのだけれど、お顔は国王様に似てらっしゃるかしらねぇ。子供の顔はどんどん変わってくるものだけれど」
優し気な顔で女王が髪をそっと撫でつけてやる。
この子が私の婚約者なのだ。
なんとなく心が高揚したのを覚えている。
それからクロードは会うたびにベルの期待通り、いや期待以上に眉目秀麗で頭脳明晰な青年になった。一国を治める相手として申し分ない。そして根本の性格も似ている。
大事なもののためならどんな犠牲もいとわない。
必要とあらば人の命もためらいなく奪うだろう。
きっとうまくやっていける。クロードもそう思っていただろう。そんな矢先のことだった。
「婚約解消?私に相談もなく、どういうことですか。父上」
「クロードに添い遂げたい女性ができた、というものでね。ベルはクロードでなくてもかまわないだろう」
「それは……そうですけれど」
クロードを男として意識したことはない。クロードもベルのことをそのように見たことはないはずだ。
だが、自分のものを盗られるのは腹ただしい。
「婚約解消したところでお前にはいくらでも縁談があるだろう。大丈夫だ、ベル」
「……はい。父上」
自分が魅力的な容姿をしていることは自負している。だが、クロードと同等の条件を持ったものはそうそういない。
馬車に揺られながら物思いにふけっていたベルは背中の窓のカーテンを少し開け、様子を伺った。
数台ほど間を開け、同じ馬車がついてきている。
先ほどいなくなっていたのだが、こちらを油断させるため一時的に姿を隠したのだろう。
ベルは御者に声をかけた。
「ネズミがついてきているわ。追い払って」
「かしこまりました。ベル様、窓をお閉めください」
御者の答えにベルはすぐ窓を閉める。
窓のカーテンを開けて後ろの様子をうかがう。
ややあって真っ黒な煙幕が上がり、一瞬で視界がきかなくなる。
馬のいななきが聞こえ、後続の馬車が慌てて馬車を止める音がする。
御者がうまくやったのだろう。こちらのスピードは全く落ちないが、後続の馬車は煙幕が晴れるまでしばらくの間は走行できないはずだ。
たぶん無関係な馬車も巻き込まれたが、それはどうでもいい。
これでクロードはベルを追うことはできない。
ソフィアにもたどり着けない。
いずれたどり着くことがあるかもしれないが、それはソフィアと結婚できなくなった後だ。
そうしたらクロードはベルのもとに戻ってくる。
ベルは確信した。
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