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クロードの誕生日1(番外編)
「ジャン!」
待ち合わせ場所で待っているジャンを見つけ馬車を降りたソフィアが声をかけると、片手をあげて合図してくれる。
「姉上、こちらです」
ジャンは学校の友達などと過ごす用事などがなければ、学校の休みの日はたまにこうしてソフィアと会っている。
初夏の風がさわやかで暑すぎることのなく寒くもない気候は屋外でも過ごしやすい。街にはすっかり活気が戻っていて、ソフィアのいた街とは比べ物にならないほどの人が行き交っている。今日はジャンの休日に城下で買い物をすることになったのだ。
少し後ろから警護の騎士がついていてくれるが、多分いなくても大丈夫なほど治安はよくなった。クロードが着いてきたがったが、執務があって来られずせめて騎士を、と警護をつけられたのだ。(最後までついていこうとしてきたが、ライナスに捕まった)
……そもそも今日の目的の一つから言えば、クロードに来てもらっては困った。
何度かジャンは王宮に来たが最近はすっかり寄り付かなくなった。
メイドたちが「ソフィア様にそっくりで可愛らしいわ!」「きゃー!ジャン様がこちらをご覧になったわ!」とこそこそ様子を見に来るのに辟易したらしい。
「僭越ながらあなた方の業務は僕を観察することではないはずですが」などと言い放ったこともあったが、かわいらしい顔立ちでありながら辛辣な口調がうけているようで、もっと喜ばせる結果になった。
だが一番の原因は王宮で働いている子爵の子息だかにソフィアの妹だと勘違いされ、熱烈なプロポーズをされたせいだとソフィアはにらんでいる。
もちろんすぐさま「僕は男です」と苛ただしげに断っていたが、「……え!?それでもいい!せめて食事でも……」と食い下がられていた。
そのあと会うたびに声をかけられて嫌になったらしい。(後日クロードから「社交界でもないのに王宮内で声をかけるな!」とおとがめがあり、一応おとなしくなった)
ソフィアとジャンが二人で並んでいると目立つ。
道行く人々が振り返るのをソフィアは気づいてはいないだろう。以前はそのような視線ににらみ返したりもしていたが、そうすることで声をかけられやすくなるのだ。今日は護衛がついているからそのようなことになっても問題ないだろうが、近頃は例え声をかけられたとしてもジャンは無視するようにしていた。
馬車で移動したほうがいいのだろうが、今日の目的は買い物で特に買うものも確定していないので、徒歩の方が利便性がよいだろう。それに基本的に王宮で過ごし、外出しても目的地まで馬車のソフィアは運動不足を感じているらしく、歩きたいのだという。
とりあえず歩いて気になった店に入ろうということになった。
今日は明日のクロードの誕生日プレゼントを買いに来たのだ。わざわざクロードは教えることはなかったが、マリアが教えてくれたのだという。
「買うものは大体は決まっていますか?」
「それが検討がつかなくて。ジャンは同じ男性だから意見をもらえると嬉しいわ」
「とは言っても僕では年齢がはなれているので、参考にはならないかと思いますが……」
クロードの兄たちにはクロードの目の届かないところでの接触ができず、聞き出せなかったのだという。あの嫉妬深いクロードが身内とはいえ、男と二人きりになる機会を与えることはないだろう。
「マリアにでも聞いてもらえばよかったのではないですか?」
「……聞いてもらったのだけれど、お店で買えないものだったの」
ソフィアがミルク色の肌を朱色に染める。
クロードのことだから、「ソフィアの愛がほしい」だの「ソフィアと二人きりの時間が足りない」などと言ったのだろう。
「私が買えるようなものは持ってらっしゃるし」
ほう、とソフィアがため息をつく。悩む姉の姿に、クロードならばそのへんに生えている草をちぎって持って行っても喜ぶだろうと身も蓋もないことを思ったが黙っていた。ドライフラワーにでもさせるか、「永遠に枯れないようにしろ」などと家臣に無理難題を言うのが目に見える。
いろいろな店のショーウィンドウを覗いてもあまりピンとこないようだ。
「あの店は学校の上級生たちに人気がありますよ。僕よりは兄上と年が近いのでまだ参考になるかと」
ジャンが指さしたのは筆記用具など扱っている店だった。ジャンの通う王立学校は、貴族の子息が通う学校なので学生御用達の店と言えどわりと高級品が並んでいる。
「これなら執務で使っていただけるわ。ジャンありがとう」
ソフィアが選んだのは黒檀の万年筆だった。金色の装飾が施してある。クロードが使っていても特に違和感がないだろう。
「どういたしまして。姉上」
贈り物用に包んでもらい、近くの菓子店に寄ることにした。マカロンなどの焼き菓子が売っていて、店内で飲食もできるようだ。ジャンの好きなマカロンで有名な店だから選んでくれたらしい。
少女向けの内装で、客層も若い女性がほとんどだ。ソフィアがいなければこの店に絶対にかかわることはないだろう。
ソフィアは騎士も誘っていたがさすがに一緒に店内に入るのは拒まれ、押し付けるように買った菓子を渡していた。騎士は驚きつつも嬉しそうだった。貴族が使用人に何かしてもらうのは当然のことであり、感謝を示す主はまずいない。使用人に感謝をするなど眉を顰められるだろうが、ソフィアのそういうところはむしろ美徳だとジャンは思う。
「付き合ってもらったお礼よ。またお買い物しましょうね」
ソフィアとジャンの間のテーブルにはハーブティーと色とりどりのマカロンが並んでいる。
「僕も姉上と出かけるのは楽しいですから」
「お土産にも買っていきましょうか?お友達も好きでしょう?勉強で頭を使うと甘いものがほしくなるものね」
「いえ、お気持ちだけいただいて遠慮いたします。あまり甘いものを食べると太りますので」
ソフィアが申し出てくれて一瞬迷ったが断わる。
「やだ、そんなこと気にする必要ないじゃない」
ソフィアがくすくす笑うが、もちろんそれは本当の理由ではない。
女顔にコンプレックスがあり、女性向けの店にはまず行かないジャンがマカロンなど持っているのが見つかったら友人から問い詰められるだろう。そしてそれが姉の買ってくれたものだと分かったら取り合いが始まるだろう。ただでさえ「会わせろ」としつこいのだ。婚約者がいるとはいえ、王都にいるのが分かったらもっとしつこく詰め寄られるだろう。
ソフィアが残念そうにしているので、自分が食べきれるだろう量だけを買ってもらうことにした。
「では少しだけ買っていただけますか?限定のものだけ」
「ええ。もちろんいいわ」
姉弟とはいえ、クロードと結婚したら今ほど会うのは難しくなるだろう。ならばこれくらいの姉孝行をしても罰は当たるまい。
待ち合わせ場所で待っているジャンを見つけ馬車を降りたソフィアが声をかけると、片手をあげて合図してくれる。
「姉上、こちらです」
ジャンは学校の友達などと過ごす用事などがなければ、学校の休みの日はたまにこうしてソフィアと会っている。
初夏の風がさわやかで暑すぎることのなく寒くもない気候は屋外でも過ごしやすい。街にはすっかり活気が戻っていて、ソフィアのいた街とは比べ物にならないほどの人が行き交っている。今日はジャンの休日に城下で買い物をすることになったのだ。
少し後ろから警護の騎士がついていてくれるが、多分いなくても大丈夫なほど治安はよくなった。クロードが着いてきたがったが、執務があって来られずせめて騎士を、と警護をつけられたのだ。(最後までついていこうとしてきたが、ライナスに捕まった)
……そもそも今日の目的の一つから言えば、クロードに来てもらっては困った。
何度かジャンは王宮に来たが最近はすっかり寄り付かなくなった。
メイドたちが「ソフィア様にそっくりで可愛らしいわ!」「きゃー!ジャン様がこちらをご覧になったわ!」とこそこそ様子を見に来るのに辟易したらしい。
「僭越ながらあなた方の業務は僕を観察することではないはずですが」などと言い放ったこともあったが、かわいらしい顔立ちでありながら辛辣な口調がうけているようで、もっと喜ばせる結果になった。
だが一番の原因は王宮で働いている子爵の子息だかにソフィアの妹だと勘違いされ、熱烈なプロポーズをされたせいだとソフィアはにらんでいる。
もちろんすぐさま「僕は男です」と苛ただしげに断っていたが、「……え!?それでもいい!せめて食事でも……」と食い下がられていた。
そのあと会うたびに声をかけられて嫌になったらしい。(後日クロードから「社交界でもないのに王宮内で声をかけるな!」とおとがめがあり、一応おとなしくなった)
ソフィアとジャンが二人で並んでいると目立つ。
道行く人々が振り返るのをソフィアは気づいてはいないだろう。以前はそのような視線ににらみ返したりもしていたが、そうすることで声をかけられやすくなるのだ。今日は護衛がついているからそのようなことになっても問題ないだろうが、近頃は例え声をかけられたとしてもジャンは無視するようにしていた。
馬車で移動したほうがいいのだろうが、今日の目的は買い物で特に買うものも確定していないので、徒歩の方が利便性がよいだろう。それに基本的に王宮で過ごし、外出しても目的地まで馬車のソフィアは運動不足を感じているらしく、歩きたいのだという。
とりあえず歩いて気になった店に入ろうということになった。
今日は明日のクロードの誕生日プレゼントを買いに来たのだ。わざわざクロードは教えることはなかったが、マリアが教えてくれたのだという。
「買うものは大体は決まっていますか?」
「それが検討がつかなくて。ジャンは同じ男性だから意見をもらえると嬉しいわ」
「とは言っても僕では年齢がはなれているので、参考にはならないかと思いますが……」
クロードの兄たちにはクロードの目の届かないところでの接触ができず、聞き出せなかったのだという。あの嫉妬深いクロードが身内とはいえ、男と二人きりになる機会を与えることはないだろう。
「マリアにでも聞いてもらえばよかったのではないですか?」
「……聞いてもらったのだけれど、お店で買えないものだったの」
ソフィアがミルク色の肌を朱色に染める。
クロードのことだから、「ソフィアの愛がほしい」だの「ソフィアと二人きりの時間が足りない」などと言ったのだろう。
「私が買えるようなものは持ってらっしゃるし」
ほう、とソフィアがため息をつく。悩む姉の姿に、クロードならばそのへんに生えている草をちぎって持って行っても喜ぶだろうと身も蓋もないことを思ったが黙っていた。ドライフラワーにでもさせるか、「永遠に枯れないようにしろ」などと家臣に無理難題を言うのが目に見える。
いろいろな店のショーウィンドウを覗いてもあまりピンとこないようだ。
「あの店は学校の上級生たちに人気がありますよ。僕よりは兄上と年が近いのでまだ参考になるかと」
ジャンが指さしたのは筆記用具など扱っている店だった。ジャンの通う王立学校は、貴族の子息が通う学校なので学生御用達の店と言えどわりと高級品が並んでいる。
「これなら執務で使っていただけるわ。ジャンありがとう」
ソフィアが選んだのは黒檀の万年筆だった。金色の装飾が施してある。クロードが使っていても特に違和感がないだろう。
「どういたしまして。姉上」
贈り物用に包んでもらい、近くの菓子店に寄ることにした。マカロンなどの焼き菓子が売っていて、店内で飲食もできるようだ。ジャンの好きなマカロンで有名な店だから選んでくれたらしい。
少女向けの内装で、客層も若い女性がほとんどだ。ソフィアがいなければこの店に絶対にかかわることはないだろう。
ソフィアは騎士も誘っていたがさすがに一緒に店内に入るのは拒まれ、押し付けるように買った菓子を渡していた。騎士は驚きつつも嬉しそうだった。貴族が使用人に何かしてもらうのは当然のことであり、感謝を示す主はまずいない。使用人に感謝をするなど眉を顰められるだろうが、ソフィアのそういうところはむしろ美徳だとジャンは思う。
「付き合ってもらったお礼よ。またお買い物しましょうね」
ソフィアとジャンの間のテーブルにはハーブティーと色とりどりのマカロンが並んでいる。
「僕も姉上と出かけるのは楽しいですから」
「お土産にも買っていきましょうか?お友達も好きでしょう?勉強で頭を使うと甘いものがほしくなるものね」
「いえ、お気持ちだけいただいて遠慮いたします。あまり甘いものを食べると太りますので」
ソフィアが申し出てくれて一瞬迷ったが断わる。
「やだ、そんなこと気にする必要ないじゃない」
ソフィアがくすくす笑うが、もちろんそれは本当の理由ではない。
女顔にコンプレックスがあり、女性向けの店にはまず行かないジャンがマカロンなど持っているのが見つかったら友人から問い詰められるだろう。そしてそれが姉の買ってくれたものだと分かったら取り合いが始まるだろう。ただでさえ「会わせろ」としつこいのだ。婚約者がいるとはいえ、王都にいるのが分かったらもっとしつこく詰め寄られるだろう。
ソフィアが残念そうにしているので、自分が食べきれるだろう量だけを買ってもらうことにした。
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