昔助けた王子様に求婚されて外堀を埋められています

水無瀬雨音

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忘れ物2

 そういうわけで今日はソフィアは一人で部屋にこもっている。
 フランソワも近頃忙しいようで、ずっとソフィアにつきっきりというわけにはいかないらしい。時間の空いた時に覗いてくれるだけだ。
 一日や二日一人で部屋にこもることくらいなんでもないはずなのだが、ソフィアは無性に寂しくなった。最近は四六時中一緒にいるのが当たり前となっていたからだろう。
 クロードとは朝会ったきりだ。今はやっと昼食を食べたばかりなので、クロードと会えるのはまだ数時間先だ。
 とにかく何もしないでいるのは色々考えてしまうので、時間をつぶしてしまうのがよい。ソフィアは午睡することにした。食べた後すぐ横になるのはよくないが、今日くらいは目をつぶることにする。
 ベッドの上にはクロードが脱いだ夜着が残っていた。クロードが執務室に向かうとメイドがすぐ回収するのだが、ソフィアの夜着は持っていってくれているので回収し忘れてしまったのだろう。夕食の際食堂に向かうときにでもメイドに渡すことにしよう。

 クロードの夜着。
「……」
 今ならだれもいない。
 ソフィアは夜着をぎゅっと抱きしめた。石鹸の香りと微かな汗匂いの混じったソフィアの好きなクロードの匂いだ。
 目を閉じるとクロードを抱きしめている気分になる。
「クロード。……会いたい」
 クロードの耳に届かないのが分かっていてつぶやく。
 寂しさが紛れるかもと思ってクロードの夜着を抱きしめたものの、余計に寂しさが募ることになってしまった。

 コンコン
 扉が軽くノックされ、ソフィアは慌てて夜着をベッドの上に置いて振り向く。
 軽く握った手を口元に当て、笑いをこらえているクロードがそこにいた。なぜかすでに扉が開いており、クロードは開いた状態の扉をノックしたようだ。
 食器を下げてくれたメイドが扉を閉めてくれたのは確認した。
 なぜ?
 いやこの際それはどうでもいい。
 問題はクロードがだ。
「……み、見てませんよね」
「ずいぶんと興味深いことをしてくれたな?もう少し見たいところだったが、あまりの愛らしさにたまりかねてしまった」
 ソフィアはクロードに対して背中を向けていたわけで、はっきりとは見ていないのだろうから言い逃れられるのではないか。ソフィアは恥ずかしさから後から考えれば愚かにもそう思った。何もしていないと主張するために手のひらを向けて両手をあげる。
「私は何もしていません。何も言っていません。勘違いしていませんか。クロード」
「……ほう?」
 クロードが目を細めて近寄ってくる。
 ……失敗した。
 すぐに気づいたが、もう放ってしまった言葉は取り戻せない。

「この私が……そなたはそう言っているのか?」

 クロードは自分の行動に絶対の自信を持っている。だからそれをとがめるような者がいれば容赦はしない。ソフィアもまた例外ではない。同じくらいにソフィアに対しては甘いが。
 ソフィアはクロードの圧に耐えられず、後ずさりした。
「あ……いえあの……誤っているとは。ただ勘違いしているのでは、と」
「この夜着だが」
 クロードの目がベッドの上の夜着に注がれる。
「私はいつも脱いだ後は畳んでいるのだがな?メイドが触ったのであれば回収しているはずだ。では誰が触って何をしていたか、だが……」
 さらにクロードがにじりよってくる。
 ソフィアも後ずさるが、も背後にあるベッドにあたってしまった。これ以上は下がれない。
「ソフィアが話したくなるようにするとしよう」
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