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あなたが気になるので

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 登城の日。
 前のように会議は欠席し、食事会から参加した。
 オレは食事会で、シーズベルト様を探す。
「いないなー」
 まあ前来てたのがイレギュラーだったんだよな。
 仕事中かな?
 コンフェラートもいない。まぁこいつはどうでもいいんだけど。
 オレは会場を出て探してみることにした。
 っていってもさすがに、城の中枢は入れないけど……。シーズベルト様の部屋も入れないだろうな。そもそも場所うろ覚えだが。
 オレは静かな回廊を歩いて行った。にぎやかな会場の喧騒が、だんだんと遠ざかる。
 約束できなかったらまたセシルがうるさいんだろうなーと思うが、会えなかったら仕方ないよな。アーテルよりは居場所が分かってるけど、オレみたいな下っ端が簡単に会えるような相手じゃないから。
 ひとしきりオレがうろつけるエリアを探してみたが、会えなかった。時折通りすがる使用人にも聞いてみたが、誰も居場所は把握していないようだ。
 レオナルド殿下ならご存じだと思うが、王子様となるともっと会えるわけがない。
(できることはやったんだからいいだろ。戻ろう)
 歩き疲れたし、食事もとらずに探してたので、腹減った。

「こんなところで何してる」
 背後から声をかけられ振り返ると、
「シーズベルト様」
 仏頂面のシーズベルト様が立っていた。
「迷ったか?
 送ってやる」
 意外と親切だな、この人。
「ええとあの、シーズベルト様に用事があって」
「オレに?」
 シーズベルト様は怪訝そうな顔をする。
「オレの部屋に行くか?もう仕事は終わったから」
「あ、はい。よろしければ」
 できれば人に聞かれたくなかったので、願ってもない申し出だった。シーズベルト様の後を黙々とついていく。
 アーテルだと密室に二人きりになったら襲われそうな気がするけど、シーズベルト様なら根拠のない安心感がある。
 あ、いやでも前首筋にキスはされたな。あの時はでもリディアだったし、今男だから……大丈夫だよな?
「入れ」
 悶々としている間に、あっという間についてしまった。
 久しぶりのシーズベルト様の部屋。
 ソファーに座るよう言われ、シーズベルト様もオレと向かい合わせに座る。
「食事は?オレはまだなんだが」
「オレもまだです」
「そうか。じゃあ一緒に食べるか」
 呼び鈴でメイドを呼び出したシーズベルト様は、二人分の食事を頼んでくれた。
 ほどなくして、テーブルの上に食事が並べられる。
「さて。要件は?」
 メイドたちが出て行ったところで、シーズベルト様が切り出した。
 何か……すっげー言いづらいな。
 「結婚の挨拶に来てください」って言うのに近い気がする。オレとシーズベルト様は男同士で、結婚うんねんなど関係ないからもっと言いづらい。そもそも付き合ってすらいないし。
「言いづらいんですけど」
「前置きはいいから早く言え」
 シーズベルト様がイライラした口調で促すので、オレは意を決して言った。
「オレの家に来てもらえませんか?妹に会って欲しいんですけど」
 シーズベルト様は形の良い眉を顰めた。
「なぜ?」
(うん!そうなるよね!オレもいきなりそんなこと言われたらそうなる)
 特に親しくもない一伯爵子息の妹に、「いきなり会ってくれ」と言われたら、そりゃ困惑するだろう。結婚相手として狙われてるのかと思うのが普通だし、公爵ともなればそうそう簡単に足元すくわれそうなことはしないだろう。
「あの!妹と縁談をなんて恐れ多いことは考えていません!
 オレがシーズベルト様を気になってるのを見かねた妹が、どんな相手かお会いしたいと言うので!……あ」
 オブラートに包まなすぎて、これ逆に警戒されるだろ!墓穴堀った。
「……はぁ?君が?オレを?」
 案の定シーズベルト様は、困惑した顔をしている。
 そりゃそうだよ。
 男に気になってるって言われたら、オレだって「はぁ?」だよ。困惑するしかねぇ。
(あー。どんどん墓穴掘ってる。このままでは男が好きだと思われる)
 シーズベルト様は噂を吹聴するような人間ではないが、万一言いふらされたら、友達からは警戒され、女の子には遠巻きに見られてしまう。
(まだ女の子とキャッキャウフフしてないのに!現世こそはと思ってたのに!)
 仕方ない。
(この手だけは使いたくなかったが)
「ちょっと失礼します」
「あ?お、おい」
 オレはソファーから立ち上がって、シーズベルト様の膝の上に、向かい合わせになるように座った。
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