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桜の咲くころに 3
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ヴィオレットを見た瞬間、「あ、これアーノルド様のモロタイプだ」とコンラッドは思った。
小柄で華奢な体、水色の長い髪に、整った面立ち。口を開けば、声までもが可愛かったし、控えめな性格も気に入っていると思う。アーノルドの周りは、出世が早いことでぐいぐい来る肉食系の女性が多いから。
はっきりと女性のタイプを聞いたことはないのだが、本人のイカツイ外見に反して以外にも可愛らしいものが好きなのだ。
使用人の贔屓目も大いにあるかもしれないが、アーノルドのスペックは高い。初対面でプロポーズは普通ドン引きだが、主人なら案外大丈夫かもしれないと思ったのだが。
(うーん。これは厳しいな)
アーノルドの気に入った相手と結婚させられるにこしたことはない。彼女もアーノルドのことを気に入ってくれれば、上手くいけば大学を卒業と同時に結婚、と考えていた。さすがに高校を卒業したばかりの女性と結婚は外聞が悪いからだ。
だが、残念ながら彼女――ヴィオレットにとってアーノルドはタイプではないらしい。終始おびえたようにびくびくしている。
(まぁ、イケメンとはいえ強面だしな。小柄な女性にとっては、高身長な相手だと威圧感があるだろうし……)
残念だが、やっぱりコンラッドの方で結婚相手の選定をしよう。そう思っていたとき。
ヴィオレットがアーノルドの手を取って傷の手当てをしたのだ。絆創膏を貼っただけの簡易的なものだったが。
アーノルドは嬉しそうに顔をほころばせている。
(少なくとも嫌われてはいないんだろう)
コンラッドはほっと胸を撫でおろした。
帰り道、車の運転をしていたコンラッドは、赤信号に引っかかったので、バックミラー越しに後部座席に座っているアーノルドにちらっと眼を向けた。すぐに信号が変わり視線を戻す。
「……少し待ちますよ」
「……何を?」
「見合いを持ってくるのを、です。頑張ってヴィオレットさんを落としてください。まぁ半年くらいですかね」
コンラッドの言葉が意外だったらしい。アーノルドが驚いたような声を上げる。
「……彼女と結婚していいの?」
「せめて大学卒業してからですよ。外聞悪いんで。というか、あちらのご両親も納得されたらですけど。旦那様と奥様は大丈夫でしょうが」
「……分かった。頑張る」
アーノルドの声が嬉しそうだ。
本当ならば、年齢も離れている上、現時点では女子高生なので反対するべきなのだろう。だが、アーノルドが自分から女性に好意を持つのはほとんど初めてだった。ヴィオレットが良ければだが、成就してほしい。
(私も大概アーノルド様に甘いな)
「あ」
大事なことを言うのを忘れていた。
「いいですか? もし結婚前提でお付き合いをするようになっても、ヴィオレットさんが未成年のうちは清らか!な関係でいてくださいよ。清らか!な」
「……うるさい。そんなにバカでかい声で連呼しなくても分かってる」
大事なことなので釘を刺すと、ぶっきらぼうなアーノルドの声が飛んできた。
小柄で華奢な体、水色の長い髪に、整った面立ち。口を開けば、声までもが可愛かったし、控えめな性格も気に入っていると思う。アーノルドの周りは、出世が早いことでぐいぐい来る肉食系の女性が多いから。
はっきりと女性のタイプを聞いたことはないのだが、本人のイカツイ外見に反して以外にも可愛らしいものが好きなのだ。
使用人の贔屓目も大いにあるかもしれないが、アーノルドのスペックは高い。初対面でプロポーズは普通ドン引きだが、主人なら案外大丈夫かもしれないと思ったのだが。
(うーん。これは厳しいな)
アーノルドの気に入った相手と結婚させられるにこしたことはない。彼女もアーノルドのことを気に入ってくれれば、上手くいけば大学を卒業と同時に結婚、と考えていた。さすがに高校を卒業したばかりの女性と結婚は外聞が悪いからだ。
だが、残念ながら彼女――ヴィオレットにとってアーノルドはタイプではないらしい。終始おびえたようにびくびくしている。
(まぁ、イケメンとはいえ強面だしな。小柄な女性にとっては、高身長な相手だと威圧感があるだろうし……)
残念だが、やっぱりコンラッドの方で結婚相手の選定をしよう。そう思っていたとき。
ヴィオレットがアーノルドの手を取って傷の手当てをしたのだ。絆創膏を貼っただけの簡易的なものだったが。
アーノルドは嬉しそうに顔をほころばせている。
(少なくとも嫌われてはいないんだろう)
コンラッドはほっと胸を撫でおろした。
帰り道、車の運転をしていたコンラッドは、赤信号に引っかかったので、バックミラー越しに後部座席に座っているアーノルドにちらっと眼を向けた。すぐに信号が変わり視線を戻す。
「……少し待ちますよ」
「……何を?」
「見合いを持ってくるのを、です。頑張ってヴィオレットさんを落としてください。まぁ半年くらいですかね」
コンラッドの言葉が意外だったらしい。アーノルドが驚いたような声を上げる。
「……彼女と結婚していいの?」
「せめて大学卒業してからですよ。外聞悪いんで。というか、あちらのご両親も納得されたらですけど。旦那様と奥様は大丈夫でしょうが」
「……分かった。頑張る」
アーノルドの声が嬉しそうだ。
本当ならば、年齢も離れている上、現時点では女子高生なので反対するべきなのだろう。だが、アーノルドが自分から女性に好意を持つのはほとんど初めてだった。ヴィオレットが良ければだが、成就してほしい。
(私も大概アーノルド様に甘いな)
「あ」
大事なことを言うのを忘れていた。
「いいですか? もし結婚前提でお付き合いをするようになっても、ヴィオレットさんが未成年のうちは清らか!な関係でいてくださいよ。清らか!な」
「……うるさい。そんなにバカでかい声で連呼しなくても分かってる」
大事なことなので釘を刺すと、ぶっきらぼうなアーノルドの声が飛んできた。
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