異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第26話 加護その4

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 生命の揺り籠と呼ばれるカプセル。
 為次とターナが、それに入ってから1時間くらいのときが過ぎた。

 無言で見守る4人の前で、カプセルに変化が起きる。
 中を満たしていた生命の水が、少しづつ減ってきたのだ。

 正秀とマヨーラは為次のカプセルへと近づくと中を覗いて見る。 
 
 「お?」

 「終わったみたいねぇ」

 スレイブは黙ってターナのカプセルを見つめるだけであった。
 そして、カプセル内の生命の水が完全に無くなると自動的に蓋が開く。

 「うぇぇぇ、げぼぉぉぉ」

 カプセルから出て来たターナは、体内の水がをビシャビシャと吐き出した。
 そこへスレイブは近づき、大きなタオルを掛けてあげるのだ。

 「ありがとう……」

 「お疲れ、ターナ」

 「タメツグはどうかしら?」

 「あいつなら、まだ寝てるぜ」

 為次は寝ていた……
 昨夜は寝ていないのだから。
 カプセル内の水が無くなると、「ゲボぉ、ゲボぉ」と水を吐き出しながら、まだ寝ている。

 「汚ねぇ…… ま、一応は生きてるみたいだな」

 とりあえず安心した正秀。

 「ご主人様ぁ、ご主人様ぁ」
 
 スイはあるじを呼びながら、体を揺すって起こそうとしている。
 そうこうしている内に、為次はようやく目を覚ました。
 ゆっくりと上半身を起こし振り向く。
 直ぐ近くでスイが心配そうに「ご主人様ぁ」と、言っている。

 「ああ、スイ、おはよ…… うげぇぼぉぅ!」
 
 挨拶をしようとした為次は、体内の水を吐き出した。
 ギルドでスイから取り上げた洗面器飯と一緒に……

 「にゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 嘔吐物がスイの顔面にブッ掛かる!
 本日、2度目のブッ掛けだ、為次!

 「ゲホッ、ゲホッ」

 「スイちゃん……」

 「うわぁ…… もー汚いわねぇ」

 正秀とマヨーラは引いている。

 「うわぁぁぁぁぁーん、ごじゅじんざまー。うえぇぇぇーん」

 スイは泣きだしてしまい、為次に抱き付く。
 ゲロまみれで。

 「ちょ、ぎゃぁぁぁスイ。臭っせー!」

 「うわぁぁぁぁぁん、ごじゅじんざばー!」

 「ぎゃぁぁぁぁぁ」

 結局ゲロまみれの二人は一応タオルで拭いたものの、臭い、臭すぎる。
 その臭すぎる為次は裸で居る分けにも行かず、臭いまま服を着ることにした。
 そんなこんなで、生命の加護の儀式は終わったのであった。

 「見た感じ何も変わらないな」

 為次を見ながら、正秀はそう言った。

 「自分でも違いがわかるませぬ」

 「どっちだよ……」

 「気功士ですからね……」

 スイは言った。

 「手からビームとか出るんじゃね?」

 「じゃあ、やってみろよ」

 「うい」
 
 右手に意識を集中して、「はっ!」と掛け声と共に右手を突き出す為次。
 
 「何も起こらないね」

 「ああ、そうだな……」

 能力を持たずに永遠の命を手に入れてしまった為次にマヨーラは訊く 

 「本当にそれで良かったの? タメツグ」

 「まあ、いいかも、俺にはレオもデザもあるしね」

 「そう…… ならいいけど……」

 そんな、儀式の終わった為次が皆とゴチャゴチャしてるとこへ。
 タオル1枚の姿でターナがやって来た。

 うぉおお、すげぇ。

 と二人は思いながらターナをマジマジと見るのだ。

 「どうですの? タメツグ」

 「え? あ、ああ、そうね何も変わらないかも」

 「そうですわね、徐々に設定年齢に近づいて行きますけど、元の年齢が近ければ見た目も変わらないですわ」

 「そうなんだ。で、マサはどうすんの?」

 「俺か…… そうだな、為次だけって分けにもいかないしな。よし! じゃ、ターナ、俺もいいか?」

 「もちろん、よろしいですわ」

 「だから二人同時で良かったんだよ」

 スレイブはヤレヤレといった感じで正秀に言った。

 「そうかもな……」

 それでも終わったものは仕方がない。
 為次の使った隣のカプセルを指しながらターナは言う。

 「では、正秀。あちらの揺り籠でよろしくって」

 「ああ、問題ないぜ」

 そして、ターナは操作パネルの前に行き再び為次の時と同様に質問をするのだ。

 「では、正秀どうしますの? まずは年齢かしら」
 
 「俺も設定は為次と同じでいいぜ。ただし戦士にしてくれ」

 「分かりましたわ、それなら適性も調べなくて大丈夫ですわね」

 「ああ」

 「よかったねー、これであのヘンテコな大剣も使えるようになるかも」

 「ヘンテコじゃねーから、カッコいいだろ」

 「なんだ? もう大剣が買ってあるのか?」

 為次が大剣と言ったのを聞いてスレイブは正秀に訊いた。

 「そうだぜ、超カッコいいのがな」

 「加護受ける気、満々じゃねーかよ」

 「そういう分けでもなかったんだが……」

 「まあいいか。さっさと終わらせて、俺が稽古つけてやるよ。どうせ剣なんて使ったことないんだろ?」

 「おう、そうだな。頼んだぜ」

 「任せときな」

 そして、正秀は指定されたカプセルに入ると服を脱ぐ。
 ターナも機械を操作すると、再び裸体になり1つ離れた所にあるカプセルに入るのだ。
 蓋が閉まると、カプセル内は生命の水で満たされていく。
 慣れない正秀も最初は苦しそうにもがいていたが、しばらくすると液体呼吸ができるようになりリラックスし始めた。
 そんな正秀の入っているカプセルを、為次は意味もなくバンバン叩いて笑っていた。

 「ダメですよぉ、ご主人様ぁ」

 スイは意味不明の行動をする為次を制止する。
 為次も飽きたのか、叩くのを止めるとスイに言う。

 「スイも入った方がいいんじゃない?」

 「どうしてですか?」

 「ゲロ臭いの取れるかもだよ」

 「では、ご主人様も一緒に入りましょう」

 「お断りします」

 「なんでですかー、ご主人様おっぱい好きじゃないですか」

 「一緒にって同じポッドかよ。それに、おっぱいって…… はっ!」

 その言葉に為次は閃いた!

 「偉いぞスイ! そうだ! ターナを見に行こう!」

 「「タメツグ!!」」

 ターナのカプセルに行こうとした為次は、2人に取り押さえられてしまった。

 「やめろ! 放してくれ…… 俺は、俺は、秘密の花園に行くんだっ!」

 「暴れるんじゃねぇ! マヨーラ!」

 「分かったわ」
 
 スレイブとマヨーラは取り押さえている為次から離れる。
 そこへ、すかさずマヨーラは呪文を唱えるのだ。

 「らいとんぐぼるとぉ~」

 電撃が為次を直撃する、今回はちょっと強めだ。

 「あぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁぁ……」

 起き上がろうとしていた為次は、再び仰向けに倒れる。
 電撃で倒れたご主人様にスイは駆け寄るのだが、今回は慌てない。

 「ご主人様ぁ……」

 そして、今回はご主人様の前に立ちふさがらず、顔に洗面器をそっと被せておいた……

 再びときが過ぎる……

 ※  ※  ※  ※  ※

 ―― 1時間後

 為次は部屋の隅で、頭に洗面器を被りながら、ふて腐れて座り込んでいる。
 その横ではスイが為次を見張っていた。

 「終わったみたいだな」

 スレイブの言うようにカプセル内の水が抜けていく……
 中の水が無くなると2人のカプセルの蓋が開いた。
 すると、スレイブは新しいタオルを持ってターナに駆け寄る。
 
 「うぇぇぇ、げぼぉぉぉ」

 「大丈夫かターナ」

 「連続2回吐くのはきついですわ……」

 「大変だったな」

 再びターナに、優しくタオルを掛けてあげるのスレイブ。

 一方、正秀も飲み込んだ生命の水を吐き出していた。
 朝食を一緒に。
 為次は被っていた洗面器を正秀の前に置いてやるのだ。
 ここへ吐き出せと。

 「うえぇぇぇ、げぼぉ」

 「うわ、きったねー」

 洗面器にはゲロが溢れんばかりに溜まった。
 その嘔吐物の溜まった洗面器を見ながスイは言う。

 「これがスイの晩御飯なのでしょうか?」

 「違います」

 「げほっ、げぼっ、スイちゃん……」

 「はっ! こんなことしてる場合じゃない! ターナっ」

 為次は突如、重大事項を思い出すと、全身全霊でターナの方を振り向くのだ!
 なんと、ターナはタオルを外し、今まさに着替えようとしている!
 
 「うぉぉぉ、ターナの生着替え!」

 「なんだと!」

 正秀も為次の魂に呼びかけに、ターナをの方を振り向くのだ!

 「「パンツぁぁぁ! フォーぅぅぅ!」」

 謎の掛け声と供に、為次はターナ目がけ全力疾走で気合のダッシュをする!
 謎の掛け声と供に、正秀はとりあえず上着だけ着て下半身丸出しのままターナ目がけ跳躍する!

 「「うわぁぁぁぁぁ……」」

 ドンガラガッシャン! ビタン! ビタン!

 為次は予想外の瞬発力のせいで、壁の所にあった棚に頭から突っ込んでしまった……
 正秀は予想外の跳躍力のせいで、天井にぶつかり、そのまま弾かれて顔面から床に叩きつけられてしまった……

 マヨーラは正秀に近づいてみる。

 「男ってほんとバカね」

 スレイブとスイは為次に近づいてみる。

 「ったく、どうしようもないバカだな」

 「どれだけ、ご主人様がバカでアホでマヌケでも、スイが全力でお世話します。むっふー」

 マヨーラはスイを振り向き言う。

 「誰もそこまで言ってないわよ……」

 そして、ターナはそそくさと着替えた。

 しばらく皆は、倒れた二人を見ていたが動く気配が無い……
 
 「天に召されたのね、悲しい出来事でしたわ……」

 ※  ※  ※  ※  ※

 永らくのご愛読ありがとうございました。

 ※  ※  ※  ※  ※


 「終わってなーい、勝手に終わらすなぁ」

 流石に為次はこのまま終わるのはマズいと思い、頭から血を噴き出しながら起き上がるのだ。

 「なんだ、生きてたのか」

 スレイブは、ちょっと残念そうに言った。

 「すんません、生きてました。もう少しで打ち切りになるとこでした」

 「お前は何を言っているんだ?」

 マヨーラはまだうつ伏せで倒れている正秀を、杖の先で突っついてみるのだ。
 あまり反応が無いので、お尻を突き刺してみると微妙に動きだした。
 なんとか起き上がる正秀。
 しかし、顔面は血だらけだ。

 「うぶぶぶ…… 鼻血が止まらないぜ」

 「汚いわねぇ…… その貧相なモノも、早くしまいなさいよ」

 「そ、それよりヒールを…… 鼻血でおぼれそうだぜ」

 「自業自得よ、まったく」

 そう言いながらも、マヨーラは正秀の顔をハンカチで拭いてあげるのだった。

 そして、二人とも着替えの終わったターナにヒールをかけてもらい、すっかり元気になった。
 相変わらずヒールの効果は絶大であり、聞けば腕や脚がちょん切れても生えてくるそうだ。
 もっとも、生命の加護を受けた者は、この程度の怪我ならほっといても直ぐに治るらしい。

 そんな分けで、何やかんやと色々あったが、これで二人共儀式が終わった。
 生命の加護を無事に受けることができたのだ。

 正秀は嬉しそうにピョンピョン跳ねたりしてみると、その人間とは思えない運動能力に驚愕する。
 為次はさっきの瞬発力はなんだろうと、もう一度走ったり跳ねたりしてみるが、普通に運動神経の悪い人間のままであった。

 神の加護を受け、この世界に馴染んできた二人。

 本来の目的である帰ることを、しばし忘れているのであった……
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