異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第27話 加護その5

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 神の加護を授かった正秀と為次。
 今のとこ能力以外は特に変化は無い様子だ。
 とにかく無事に終わったので、一安心していた。

 それよりも、神殿……
 否、神殿と言うよりも、この施設が気になる。
 どう見てもファンタジーな世界とは場違いな、超科学文明な場所に思える。

 それと為次の先程、棚に突っ込んだ時の瞬発力も気になる。
 気功士は無能力者と聞かされていた。
 なのに、どう考えても能力としか思えないからだ。

 そんな分けで、色々と聞きたいことがある。
 早速、質問しまくりたい。
 だけどゲロ臭いのも、なんとかしたい為次とスイであった。

 「悪かったなターナ、2回も吐かせちまって」

 正秀は言った。

 「マサに構ってないで、美女の嘔吐シーンを見に行くべきでした。はい」

 「気になさらなくても大丈夫ですわ、あなた方も不安ですものね。タメツグは後でお仕置きですわね」

 「ごめんなさい……」

 「ご主人様はスイが嘔吐しているのを見たいのですね。分かりました」

 そう言うとスイは喉に指を突っ込みながら「うぇ、うぇ」と嘔吐えずき始めた。

 「ところで。スイと、お仕置きは置いといて、ちょっと聞きたいんだけどー」

 「奴隷はともかくですが、お仕置きはしますわ。それで何かしら? タメツグ」

 「あう…… えっとですね、俺は無能力じゃなかったの?」

 「そういや、お前も吹っ飛んで行ったもんな」

 正秀は自分が吹っ飛んだ時に、為次も異様な行動をしていたのを思い出した。
 そんな会話の最中さなか、スイはまだ頑張っていた。

 「うぉぇぇぇぇえ」

 頑張ったスイは、ようやくあるじの足元で吐き出したのだ。
 
 「……スイ」

 少し足に付いた嘔吐物を見た為次は困った様子だ。
 正秀もどうしていいのか分からない。

 「スイちゃん……」

 「吐かなくていいから……」

 と為次は言ってみる。

 「えー…… なのです」

 「えー。じゃなくてマジでいいから」

 「はぁい、では舐めて綺麗しておきますね」

 「マジで止めて下さい」
 
 せっかく為次の為に嘔吐したのに……
 ちょっとスネながら為次に抱きついて「むー、むー」と言い始めた。
 仕方ないので為次は腰を抱き頭をナデナデしながら皆と会話を続けるのだ。
 そんなスイを見たスレイブは言う。
 
 「そのやけに、タメツグに懐いたな」

 「んー」

 「まあいいか、それよりもターナも疲れてるんだ、聞きたいことがあれば手短にな」

 「あら、お気遣いは無用ですわ。ふふっ」

 儀式は慣れたものであろう、ターナは余裕そうではある。
 それでも美女にゲロを吐かせまくった後ろめたさから、正秀は申し訳なさそうに言う。

 「いや、俺達のせいで2回も儀式させちまったからな、スレイブの言う通りだぜ」

 そんな思いなど露知らず為次は訊く。

 「んじゃ、続きだけど俺はなんなの?」

 「気功士ですわ。魔道士と違って体内の秘められた力で能力を発揮するそうですの」

 「ちなみに、魔道士は体内のマナを使って、世界を満たしているエーテルを媒体として魔法を使うのよ」

 答えたターナの後にマヨーラが付け加えた。

 「え? ここってエーテル宇宙だったの?」

 「宇宙?」

 宇宙が何か知らないマヨーラは訊いた。
 しかし、為次は説明するのが面倒臭い。

 「ああ…… 気にしないで。それより、気功士は何すればいいの?」

 「分かりませんわ。何せ、気功士になった人は殆ど居ませんもの」

 「マジすか……」

 正秀も訊いてみる。

 「殆どってことは、少しは居るんだな?」

 「そうですわね…… 気功士は適性の調べ方が分かりませんわ。だから、適性を調べずに気功士の加護を受けた人々の殆どが、なんの能力も発現しないままでしたわ。だけど極一部に、その能力らしき力を発現できた人が居ますの。最後にそれが確認できたのが、以前にも説明した、天高く登った30年前の冒険者ですわ」

 「そういや、そんな冒険者のことも聞いたな。魔導艇を作った奴だったけな」

 「そうよ、その冒険者も別の世界から来たみたい」

 マヨーラの言葉に為次は驚く。

 「マジで?」

 「私は聞いただけなんだけど……」

 マヨーラは噂程度にしか知らないみたいだが、スレイブは意味深なことを言う。

 「お前らと同じだぜ、あの桜の木の下で俺達が拾った」

 「俺達?」

 「私も一緒でしたわ、あの頃はまだマヨーラは一緒じゃありませんでしたけど。確か…… あの方も、あなた方の乗って来た陸上艇に似たのに乗ってらしたわ」

 それを聞いた正秀と為次は驚く。
 レオパルト2に似た陸上艇とはいったい……

 「マジかよ……」

 「マジすか…… その冒険者って今は何処に居んの?」

 為次の問いにスレイブは答える。

 「ポンタの街だろうな、そこで魔導艇を造ってるはずだぜ」

 「いきなり、カワイイ名前の街ですな」

 正秀は街について訊いてみる。

 「その街は遠いのか?」

 「結構、距離はあるな。場所が知りたきゃサーサラに地図を貰えばいいぜ」

 「じゃあ、その街に行って訊けば俺の能力の使い方も分かるんかなぁ」

 と為次は言った。

 「そうかもな」

 「あ、でも、能力とか要らんし」

 「要らなきゃ使わないだけでいいだろ。それより使い方がわかってないと、また吹っ飛ぶぜ」

 「た、確かにそうね…… マサヒデの言う通りのだわ」

 マヨーラは正秀をチラリと見て同意した。
 しかし、等の本人はお気楽にしか考えていない。

 「んー、そうね…… じゃあ、一度会いに行った方がいいのかなー」

 「ああ、レオに似た陸上艇ってのも気になるしな。な、為次」

 「まあそうね」

 「その辺は、お前らの好きにすりゃいいだろ。それよりターナを休ませてやりたいんだが」

 「あら、私はまだ大丈夫ですわ」

 「ターナが大丈夫でも、こっちがヤバイんだけど」

 「ん?」

 正秀は何がヤバいのかと思い、見ると為次に抱きついたままのスイはグッタリしていたのだ。

 「うにゃ…… ご主人しゃま……」

 為次に寄り掛かったまま寝ていた。
 それを必死に支えている。

 「スイちゃん寝たのか……」

 「ぐ…… 重い……」

 「ちょっと、しゃがみな」

 「あ? うん」

 ゆっくりとスイを床に下ろしながら、言われた通りしゃがんだ。
 すると正秀はスイを持ち上げ、為次に背負わすのだ。

 「え? おんぶするの? 俺が?」

 「仕方ないだろ」

 「……マサは力も強くなったし、体力も上がってるんじゃないの?」

 「そうだぜ」

 「じゃあマサがおんぶしてよ」

 「お前の女だろ」

 「いや…… お前の女て……」

 「つべこべ言わずに、早くしろよ」

 「ぬぅ……」

 結局、為次は不満そうにしながらもスイをおんぶするハメになった。

 「じゃあそろそろ行くか」

 一段落付いた所でスレイブは帰ろうとした。
 だが、正秀はまだ何か訊きたい様子だ。

 「ちょっと待ってくれ、もう一ついいか?」

 「まだ何かあるのかよ」

 「何かしら?」

 「この神殿は?」

 「神殿がどうかしまして?」

 「えっと、アレだ……」

 言葉の詰まった正秀の代わりに為次が訊く。

 「なんでエレベーターがあったり、めっちゃ文明の進んだ機械があるの? ってこと」

 「えれべぇたぁ? きかい? ですの?」

 「ターナも知らないの? ナノマシンって知ってる?」

 「ナノマシンは、加護を授けて頂ける偉大なる神の名ですわ」

 「なんだそりゃ…… 変な神……」

 「なんだタメツグ、加護を受けといて神を冒涜するのか?」

 スレイブは神を侮辱され少々ご立腹だ

 「冒涜って分けじゃないけど、この部屋自体もう神殿の外とは違い過ぎるでしょ」

 「当たり前だろ、神がお造りになった部屋だからな」

 「神って……」

 「何か不満か?」

 「だってさ、おかしいでしょ」

 為次とスレイブが言い争いを始めそうな雰囲気に正秀は止に入る。

 「もういい為次。分かったぜスレイブ、悪かったな色々面倒かけさせちまったな。ターナもマヨーラもありがとな」

 「ちょ、マサ……」

 為次は何も解決していない疑問に不満があるみたいだ。
 腑に落ちない顔をしている。

 しかし正秀は、このまましつこく聞くのもどうかと思っている。
 為次が言い争ったり、ターナ達の機嫌を損ねるのはマズい。
 なにせ、今の所まったく知らない世界で頼りになるのは彼らしか居ないのだから。
 そんな分けで撤収することにした。
 ついでに、スイをおぶって大変そうにしている為次にも一応は気を使っている。

 「じゃあ行くか」

 正秀は言った。

 「そうですか、では戻りましょう」

 「おう、もう帰ろうぜ」

 「……うん」

 為次は返事をしながらも最後まで不満そうであった。
 それから皆は元来た通路を通り、エレベーターに乗って戻って行った。

 ※  ※  ※  ※  ※

 ファンタジーらしい神殿の階層へと戻って来た。

 そこでターナとスレイブは今日は神殿で別の用事があるからと、この場で分かれることになった。

 「用事って、何するの?」

 為次は訊いてみた。

 「神を信じない奴には教えれないな」

 「ぐぬぬぬ」

 「スレイブ、あまりタメツグをからかってはいけませんわ」

 「少しは信仰心ってのも教えといた方がいいぜ」

 「違う世界の神もられますのよ、スレイブ」

 「へぇ、そうかい」

 「私達はこの後、新しく身籠った女性へ祝福のお祈りをしますの」

 「スレイブも?」

 「俺は護衛だ」

 「よほど危険な、お祈りなのね」

 「言ってなかったが、俺はターナのお目付け役みたいなもんだ。人が集まる場所にターナが行く時は殆ど一緒だぜ」

 「そうなんだ、じゃあがんばってね」

 「ああ」

 「しかし、スレイブ達には世話になりっぱなしだな。ありがとな」

 「気にするなマサヒデ。ターナが世話好きだからしかたねぇよ」

 「ははっ、そうか。おかげでこっちは大助かりだ」

 為次も一応はお礼を言っておく。

 「ありがとうございました。ですです」

 「礼には及びませんわ、当然のことをしているだけですのよ」

 「ターナは優しいなぁ…… ターナのおっぱいが神様だったら毎日拝みに行くのに」

 「あら、そう言えば、お仕置きがまだでしたわね」

 「うぐっ、そ、そろそろ帰らないと……」

 「そうだな、また殴られる前に帰ろうぜ」

 「うん。別荘の2階の件もあるしね」

 「2階? ですか?」

 ターナは聞き直すと、正秀を睨む。
 バレるとまたお仕置きされそうなので、正秀は必死に誤魔化そうとするのだ。

 「い、いや、なんでもない、なんでもない。帰るぞ! 為次」

 「うい」

 「じゃあ、あたしも一緒に帰るわね。またねターナ、スレイブ」

 「おう、じゃあなマヨーラ」

 「ええ、気を付けてねマヨーラ、それとお二方も。ああ、それと2階はまた今度拝見させていただきますわ」

 「うがぁ…… わ、分かった…… じゃあな」

 そう言いながら正秀が手を振ると4人は帰路へとつくのであった……

 ※  ※  ※  ※  ※

 神殿を後にしての帰り道、4人は上級国民区画の中程まで来ていた。
 それまでに、すれ違う人は誰も居ない。
 それは、為次がお金を取りに行った時も、神殿に行く時もだった。
 賑やかな平民区画とは違い、上級国民区画はひっそりと静まり返っているのだ。

 そんな静かな帰り道であったが、珍しく誰かが近づいて来た。
 それは、金髪の美青年、ガザフだった。

 「やあ皆さん、今お帰りかな?」

 「ガザフ……」

 ガザフは為次を見ながら、嬉しそうに笑っているのだった……
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