異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第28話 食卓

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 神の加護を授かった正秀と為次。
 一緒に帰っているマヨーラと戦車クルーの三人は、その帰り道にガザフと出会った。
 レッドドラゴンのエレメンタルストーンを買い取り、スイを売り付けた超絶美青年である。
 先日、お金を取りに行った時は為次一人だったので、正秀とは初対面だ。

 「なんだ? コイツがガザフか?」

 「うん」

 「やあ、君がマサヒデ君かな」

 ガザフはニコニコしながら正秀を見て言った。

 「ああ、そうだぜ、よろしくな」

 「うん、よろしくね。ところで、その様子だと無事に加護を授けてもらえたようだね」

 「なんだ? もう知ってるのか」

 「ははっ、まあね…… ところで……」

 ガザフが何か言おうとした時だった……
 寝ているスイが目を覚ました。
 だが、目の前に為次の後頭部がある状況がよく分かっていない様子だ。
 しばらく辺りを見回すと、ようやく自分が為次におんぶされているのに気がつく。
 
 「あみゃ! みゃ! みゃ! ご、ご主人様ぁぁぁ!?」

 どういう状況か分からず、為次の背中で暴れだしてしまう。

 「こ、コラ、暴れるんじゃない」

 「ひゃわわわわわ!」

 為次は必死にバランスを取っているが、背中でスイがジタバタしているのでどうしようもない。
 見かねた正秀は、後からスイの両脇を抱えて引き離した。
 そして地面に降ろされたスイは、ようやく落ち着きを取り戻す。
 だが、目の前には以前のあるじであったガザフが居た……

 「あ…… ご主人様……」

 それは、為次ではなくガザフへ向けられた言葉であった。

 「君はもう僕の奴隷じゃないよ」

 「は、はい……」

 為次の背中に隠れるようにしながら返事をする。

 「ガザフ…… もう、スイをイジメないでほしいんだけど」

 「大丈夫だよ、そのはもうタメツグ君。君のものだからね」

 「…………」

 何も言わずにガザフを睨む為次に代わって正秀は訊く。

 「んで、何か用があるのか?」

 「お腹が空いているんじゃないかと思ってね。食べた物は、全部吐き出したんでしょ」

 「ああ、そうだな」

 「よかったらご馳走するよ、うちに寄って行かないかい?」

 「だってよ為次。どうする?」

 ガザフを見て自分の背中で怯えているスイを見ると、為次は迷った。
 せっかく元気に笑うようになってきたのに、ちょっと可哀想だとは思う。
 しかし、ガザフも何か知っているかも知れない。
 誰でもいい、聞きたいことは沢山あるのだ。

 「そうだねー、確かに腹減ってるし。ま、いいんじゃないの」

 「そうこなくちゃ」

 「んじゃ、ご馳走になるぜ」
 
 そんな食事の誘いに慌てたのは、マヨーラであった。
 完全に自分の存在を忘れられている……
 
 「ねぇ、ちょっとぉ、あたしも居るんですけどぉ」

 「あ、マヨマヨ居たんだ」

 「居るわよっ! ずっと一緒だったでしょ! 失礼ね、まったく……」

 「ははっ、忘れてないから安心しな。なあガザフ、マヨーラも一緒でいいだろ?」

 「ああ、もちろんだよ…… と、言いたいけど今回はご遠慮願おうかマヨーラ」

 「ええ!? なんでよっ」

 ガザフはマヨーラを睨みながら言う。

 「君はターナの仲間だろ、僕は彼らと大切な話があるんだ」

 「お、おい…… ガザフ……」

 「……はいはい、分かりました。お邪魔虫は消えますよ」

 どうやら、拗ねてしまった様子だ。

 「どうする為次、行くのやめるか?」

 「んー…… でも、大切なお話があるんなら、断れないでしょ」

 「そうか…… そうだな、分かったぜ。つーわけだ、悪りぃなマヨーラ」

 「別に気にしないで、ふんっ」

 気にするなと言いながらもマヨーラは、ふて腐れている。

 「じゃあ、先に帰るわね」

 「あ、ああ……」

 正秀は申し訳なさそうに言うが、為次は元気一杯でサヨナラするのだ。

 「バイバーイ、まったねー」

 「マヨマヨ様、また一人ボッチなのですね……」

 「うっさいわねっ! じゃあね! ふんっ」

 そして、マヨーラは一人トボトボと帰って行く。
 残った三人はガザフ邸へと向かうことになった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 ガザフ邸に着くと、三人は食堂へと案内された。
 食堂は広く、10数人は席に着けるであろう、長い食卓にゴージャスな椅子が備え付けてあった。
 その内の3つの席には、食器や前菜が既に並べらている。
 2つの席は並べて用意されており、残りの1つはそれに向かい合うように用意されていた。
 1人分の席が足らない……

 正秀と為次は2つ並んだ席へと案内され、ガザフはその対面の席に座った。
 スイは為次のかたわらに立っている。
 為次はスイの分も用意して欲しいが、流石にここでは野暮な考えかと思い、黙っておいた。

 既に用意されている食卓を見て正秀は言う。

 「なんだか、来るのが分かっていた感じだな」

 「待たせるのも悪いと思ってね、一応は用意させといたんだよ」

 「へー、そうかい」

 ガザフの言うように、二人が席に着くと直ぐに食事が運ばれて来る。
 この前、為次が訪れた時に玄関に立っていたメイドさんが運んで来てくれたのだ。

 それを見た為次は思う。

 ケータイ忘れてきたわ、写真撮れんお。
 
 などとバカな思いを余所に、次々と美味しそうな料理が運ばれて来る。
 どれも豪華な器に美しく盛り付けてあるが、見た感じスイの作る料理と見た目以外は違いはない。
 それどころか、屋台で売られている食べ物とも違わない。
 
 「どうぞ、遠慮なく食べてね」

 「そんじゃ、遠慮なく頂くぜ」

 「お酒も好きなのを申し付けてね」

 正秀は即答で言う。

 「ハイボールで」

 為次は少し悩んでみて……

 「んー…… んじゃ、俺は日本酒で」

 「ハイボールと日本酒だね、直ぐに用意させるよ」

 「「え?」」

 二人は目を合わせる。

 「どうかしたのかい?」

 為次は、わざと『日本酒』を頼んでみた。
 あるはずもない、お酒を……
 もっともハイボールだって怪しい。

 「日本酒があるのか?」

 日本酒が通じたこと驚く正秀は訊いた。

 「もちろんだよ、何かおかしいのかい?」

 「俺達の国の酒なんだぜ」

 「ああ、なるほどね、試された分けか」

 「まあ、そんな感じ」

 為次は言った。

 「それなら、後で一緒に説明しようか」

 「なんだ、色々と教えてくれるのか?」

 意外に親切そうな奴だなと思う正秀。

 「その為に誘ったからね」

 「「へー」」

 二人を見つめるガザフは、ニコニコと嬉しそうに笑っている。
 しかし、その美しい青い瞳だけは笑っておらず、何かを訴えかけようとしていた。

 「それじゃあ、何から話そうか?」

 「マサ、聞きたいことがあればどうぞ」

 「いや…… いい…… 為次が相手してくれ」

 正秀は知っていた、為次がマジで面倒くさがりなのを。
 そんな仲間に話をさせるのは正直ためらう。

 こんなことすら、俺は為次を頼りにするのか……
 肝心な時はいつもそうだ。
 車長に怒鳴られるのはいつも為次の役目だ。
 嫌な思いをするのはいつも為次の役目だ。
 それで生き延びてきたのは俺だ。
 さっきもそうだ、得体の知れない加護とやらの人体実験させて、俺は安心していた。
 正何がこの大剣で戦うだ、くそっ。

 と正秀は思った。

 「臆病者は俺の方だ……」

 「は?」

 自分の不甲斐なさに、思わず声に出していた。
 そんな突然、変意味不明なことを呟く正秀に為次は怪訝そうな顔をする。

 「どかしたの?」

 「いや…… なんでもない、なんでもないんだ……」

 「ふーん、まあいいや。なんかガザフって色々と知っとるっぽいから、順番に聞きたいんだけどー。そう思ったけど、やっぱ、めんどくさいから率直に言うわ」

 「何かな?」

 「ターナの仲間って理由でマヨーラを追い返したり、スイをイジメたりね。何より、その死んだ魚っぽい腐った目……」

 ホルスターからデザートイーグルを引く抜くと銃口をガザフに向ける。
 そして、安全装置を外しトリガーに指を掛けた。

 「胡散臭すぎ。ぶっちゃけアンタ敵っぽいんですがぁ」

 「お、おい、為次……」

 為次の突拍子もない行動に正秀は焦った。
 だが、何もできなかった。
 どうしていいのか、分からなかったから……

 「はははっ、いいねタメツグ君、実にいいよ」

 「そりゃどうも」

 「それは、君の世界の武器かい?」

 そう言いながら、デザートイーグルを指した。

 その瞬間であった……

 バーン!!

 銃撃音と共に、薄暗い食堂をマズルフラッシュが一瞬だけ辺りを照らす。

 ガザフはその激しい音と光に、何が起こったのか分からなかった。
 只、何者かに右肩を突き飛ばされた衝撃を受けただけである。
 違和感のある右腕を見ると、指を差したままの腕が肩から少し下の方で、皮一枚でブラブラしている……
 そして、そのまま右腕を見ていると、重力に引かれボトリと床に落ちた。
 右腕のあった所から大量の血が滴り落ちると同時に激痛が走った。

 「うっ、ぐぁぁぁがぁ!」

 右肩を押さえながら呻く。
 そんなガザフを見ていた為次は、ポケットから水の入った小瓶を取り出すとスイに渡した。

 「スイ、準備しろ」

 「え? あ…… はいっ。エンチャントブレス! エンチャントヘイスト!」

 手渡された小瓶を戦闘用ポーションにしていく。

 「ねえガザフ、痛いのは分からんでもないけど、あまり動かないでよ。次は頭かも」

 「うぐぁ…… わ…… はぁ、はぁ…… 分かった……」

 「その程度の出血なら、すぐにナノマシンが止血してくれるんでしょ」

 そうは言うものの、真っ白なテーブルクロスは赤黒く染まっている。

 「悪いけど、また指パッチンで変な鎖とか飛ばされたらたまらんし、黒服もおるだろうしね。ちょっとでも怪しかったら、独断と偏見で2発目を頭に撃ち込ませてもらうから。よろ」

 「だ、大丈夫だ…… ほんと…… ぐぁっ! 本当に何も、し、しない」

 その時であった、誰かが食堂に入ってくる。
 食事を持って来たメイドさんだ。

 「スイ!」

 「はい!」

 スイは戦闘用ポーションを飲む。

 「ご、ご主人様ぁぁぁっ」

 血だらけのガザフを見たメイドさんはマジびっくりだ。
 慌ててガザフに駆け寄る。

 「やめろ! 来るな!」

 「スイ、やれ!」

 「ご、ごめんなさい」

 謝りながらメイドさんに飛び蹴りを喰らわす。
 更に着地する前に体をひねり空中で回し蹴りをして追い討ちをかますのだ。
 パンツ丸見えな回し蹴りに為次はちょっとグッと来るものがあるが、とりあえず今は抑えるしかない。
 
 「ウギャァァ! ぐふぁっっ!」

 魔法によって強化された蹴りで、メイドさんはふっ飛びながら壁に打ちつけられ悲鳴をあげた。
 そこへスイは、とどめを刺そうと飛びかかりこぶしを振り上げた。

 「頼む! やめてくれ!」

 「スイ、ストップ、ストップ」
 
 メイドさんの頭を潰そうとしたスイのこぶしは、寸前で止まった……

 暫しの沈黙流れる……

 「じゃあ、そろそろ、お話しでもしよっか。スイ、もういいよ。こっちにおいで」

 「はい」

 「それとも、帰ったほうがいいのかな?」

 「いや…… 悪いのは僕の方だ、実は君達に頼みがあるんだよ……」

 「そうすか」

 「その武器を向けられている以上は、タメツグ君の思惑通り僕らは対等な立場だね」

 「…………」

 「僕が不審な行動をすれば殺される。だけど、そうすると君達はここから生きては出られない」

 「…………」
 
 そして、ようやくお話会が開かれるのであった……
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