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異世界編 2章
第73話 貞宗その1
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貞宗は話し始める……
「それでは、この異世界へと来た所から話すとするか」
「あ、はい」
「楽しみね」
「なのです」
「…………」
「ま、飛ばされた理由は、水谷、山崎と同じだし説明の必要も無いだろう」
「ねぇ、その前にミズタニがマサヒデで、ヤマザキがタメツグでいいの?」
貞宗が正秀と為次を呼ぶ名が変なのでマヨーラは訊いてみた。
「そうだよ」
と、為次は答えた。
「ふーん、なんでそんな違う名前で呼ぶのかしら? 分かり辛いわね」
「昔からそう呼んでいるんだ、気にするな」
「まあ、いいわ」
「んで、話を戻すと隊長さんがコッチに来たのも、あのミサイルっスね」
「そうだ山崎。あの時、俺は10式の補給をしていたのだが、警報が鳴って直ぐに乗り込んだ。他の隊員は、たまたま近くに居なかったので、俺1人だったんだが…… そして、不気味な嵐の中でも爆心地で平然とした様子を見せる桜の木。それを見た俺は、咄嗟に近づいたって寸法だ」
「俺達と同じですね」
正秀は言った。
「やはりそうか」
「隊長さんも居たんだ。気が付かなかったっスよ、他には居なかったのかなー?」
「俺が確認できたのは、確か他には2両で10式と87式だったと思う。もっとも、俺は直ぐに気を失ったので、彼らがどうなったかまでは定かではないが……」
「そっスかぁ」
「何を話しているのか、サッパリだわ」
「まあ、とにかくそんな訳で俺達は異世界にやって来たんだ。それで、気が付いたら見知らぬ世界でターナとスレイブに拾われた。これも、お前らと同じだな」
「時間が違う以外は同じ…… ですか」
「後は、マヨが居るか居ないか」
「サダムネが来た時は、まだ生まれてなかったのよ」
「スイも生まれてないです」
「うん」
「それから俺は帰る手立てを探した。どうにかして、日本に戻る方法は無いのかと…… 色々と走り回って探したさ。その最中に食物プラントで燃料の調達方法も手に入れたし、魔法に関する知識も手に入れた。弾薬がある内は、冒険者として働きながらな。しかし、と、ある1冊の本を読んだ時、俺は諦めたんだ。帰るのを……」
「本…… ですか?」
「ああ、リリステアルの王都ステュクスにある図書館で見つけた」
「何が書いてあったんです?」
「そう焦るな、水谷」
「はい……」
「その本は偶然に見つけた物だった。最初は生命の加護の資料を探していたんだ。こちらの異世界に来て直ぐに、ターナから生命の加護を受けないかと言われた。しかし、当初は帰れるなら帰るつもりだったから、返事を先送りにしといたんだ。それに、気功士ってやつも気になったしな。だが、弾薬が残り少なくにつれ、俺も段々と焦ってきたのさ。このままじゃ、この世界で生きて行くにはどうしようもないってな。それからは、生命の加護に関する資料を探しまくった。そんな折、見つけたのが先程話した1冊の本だ。ステュクスで見つけた本。あそこの図書館には、約千年前からの大量のが本が年代別に並べられている。膨大な量だ、当てもなく目的の本を探すにはそれこそ何年もかかるだろう。何処から手を付けて良いのか分からない俺は、とりあえず図書館に居た係員らしき人物に聞いてみた。生命の加護に関する本は無いのかってな。そうしたら、有るわ有るわ、これまた大量にあるんだ。その中から数冊は読んでみたものの、そう大したことは書いてない。大概が神より授かる奇跡だのなんだのってのが書いてある程度だ。期待外れもいいとこだった。そんな浮かない顔の俺を見たからなのかは知らないが、その時、係員が面白いことを教えてくれたんだ。この膨大な書庫には、数冊だけ読めない本があるんだってな。それも期待はしていなかったが、諦め半分で読んでみたのだが…… その中の1冊のだけは違った。何が違ったと思う?」
「もったいぶるっスねー」
「ははっ、そういう分けでもないが、話し辛いってのあるな。特に水谷にはな」
「俺には?」
「ああ、さっき俺が30年前に飛ばされたことを知った時に取り乱しただろ?」
「すいません……」
「別に謝る必要はない。しかしな、その本はそれどころじゃないぞ? 正直、今の正秀には話したくないが」
「……構いませんよ」
「ふむ…… 今度は取り乱すなよ? なにせ、俺が元の世界に戻るのを諦めた本だからな?」
「はい…… 大丈夫です」
「ふむ、いいだろう。先程、図書館の本は年代別に並べてあると話したな。その本は約300年近く前の本が並べてある本棚に置いてあったんだ。そして、その本が他のと違ったのは…… 日本語で書かれていた……」
「ええっ!? 日本語って……」
驚く為次。
「そんな昔に、日本人が異世界に来ていたんですか!?」
正秀も驚き訊いてみた。
「そうだな、今のガザフが次元を裂く装置を、2度目のガザフから受け取ったのが約300年前だ。今のガザフは既に転生の加護を受ける時期のはずだからな。装置を使ったのも、受け継いで直ぐ。つまり約300年前だ。そして、その本を書いた人物がだな……」
「ちょ、ちょっと待って……」
なんとなく貞宗の言おうとしていることが分かった為次は話を止めた。
「ん? どうした?」
「あの…… やっぱ、マサはあっちにでも行ってた方が良さげな気がするかも……」
「為次…… もういい、流石の俺でも何となく分かるぜ……」
「マサ……」
「なんにせよ知っておいた方がいい。どの道ショックを受けるなら、立ち直るのも早いほうがいいからな。まあ、お前らの予想通りだが、その本を書いた人物は俺の部下だ。87式自走高射機関砲の搭乗員だった隊員Bと隊員Cだ。その2人で本を書いたのは隊員Cだと思われる」
「くそ……」
「分かるだろ? まさか俺より遅くこっちの異世界に、お前らが飛ばされたとは思いもよらなかった」
「300年近いズレか……」
為次の言葉に正秀は何も言えず、ただ黙って俯くだけだ。
「…………」
「んで、その2人はドコ行ったんスか?」
「分からん、俺も探したが足取りすらも掴めん」
「じゃあ、帰ったんじゃないの? あんた達の世界に」
「それは無いと思う。本の最後に『この世界で生きていく』と、書いてあったからな」
「やはり帰れなかったのですか……」
正秀は益々落ち込んでしまった。
一方の為次は能天気に話す。
「それか、生命の加護を受けなくて死んじゃったか」
「いや、加護は受けたようだ。なにせ、本の内容で加護に関する情報が1番有用だったからな」
「何が書いてあったんスか?」
「大したことは書いて無かったぞ。日記…… いや…… 思い出の感想文って感じだ。知らない世界でターナと出会い、生命の加護を受け冒険者となった。俺達と同じだな。87式は整備が出来ずに放棄したようだ。場所までは書いて無かったが。そして、この世界で生きていく決心を付けるまでが綴られていた。興味があるなら、お前らも読みに行ってみるといいさ」
「彼らは帰ろうとしなかったんでしょうか……」
「水谷…… むしろお前に聞きたい。帰る方法があると思うのか?」
「……それは」
「モノポールリング」
それを聞いた正秀と貞宗は為次を見る。
「「!?」」
「今んとこ、その予定っス」
「アレか……」
「その必要もあって、サダムネさんって、スゲー冒険者に会いに来たんスよ」
「為次……」
「とりあえず、リングについては後で聞きたいんですけどぉ」
「うむ、聞かれても知らないがな」
「あー、行ったことはないんスよね」
「そうだ」
「じゃあ、行く方法とかぁ」
「それについては、ある程度の算段はある。協力はしてやろう」
「おおっ! 流石、隊長さんだぁ」
「ありがとうございます、隊長」
「と、その前にだ。生命の加護についても、教えておく必要があるな。アレ自体は高度な超科学文明によるナノマシンの移植なのは気が付いたか?」
「はぁ、なんとなくはっスけど」
「神殿の内部を見れば、あからさまに今の異世界文明とは違うからな」
「そっスね」
「何それ?」
マヨーラは訊いた。
「神の所業では無いと言うことだ」
「ふーん」
「まあいい、加護自体よりも職業についてだ。先程話した隊員Cの本に書いてあった加護に関する情報と言うのが、気功士の能力に関する記述なのだ。その内容だが…… 彼らは生命の加護を受ける際に、まず1人づつ受けることしたそうだ。得体の知れない儀式だからな、当然と言えば当然だ」
「そうですね、俺達の時も為次が先に受けてくれましたから」
「ふむ、そうは言っても、どうせ山崎の後に直ぐ水谷も受けたんだろ?」
「ええ、そうです」
「ま、お前達ならばそんなことだろうが、彼らは違った。とりあえず1人が受け、しばらく様子を見ることにしたらしい。最初に隊員Bが生命の加護を受けたそうだ。彼は魔法を使ってみたいと、まずは適正を調べてもらったそうだが、残念なことに魔導士の適正は無かったと書かれていた。仕方なく戦士としての加護を受けたのだろう。戦士として加護を受けた隊員B、彼らは戦士の能力を調べてみることにしたそうだ。戦士の能力については水谷も知っているだろう、その飛躍的な身体能力の向上だ。だが、色々と試している内に、それ以外にも能力があることが分かった。物理的な攻撃以外に謎の攻撃ができると……」
「マサの必殺技だねぇ」
「ん? 水谷はもう気孔士の能力も使えるのか?」
「気孔士の能力かは定かではありませんが、衝撃波が出せますね」
「ふむ、それなら話は早い。彼らも、その能力が気孔士のものではないのかと考えた。だから、隊員Cは無能力者であるはずの、気孔士として加護を受ける決心をしたそうだ。それでも、彼にしてみれば一つの賭だったかも知れない。もし違っていれば、無能力者として異世界で生きて行くことになるからな。だが、彼は手に入れることができた。気孔士の能力を…… そして、冒険者となり、この世界で生きて行くと綴られていた」
「そんで行方不明になっちゃったんスね」
「そうだな、無事だといいのだが…… しかし、俺が言いたいのは彼らのことではない。能力に関してだ。あの本を読んだからこそ、俺も気孔士となった。そして、その能力はお前達にも備わっている」
「俺達にも…… ですか……」
「そうだ水谷。もっとも、気孔士の能力は使い方にコツが要る。初めは俺も苦労したが、精神の集中が必要なのだ。後でお前達にも教えてやろう」
「あ、俺は別に大丈夫っス」
「うむ、みっちりと教えてやるから覚悟しとくんだな」
「あう……」
「では次に、俺が冒険者となってからの話をしよう」
貞宗が話そうとした時だった、横からクリスが話しかける。
「私との出会いかしら? ふふ」
「あ…… それも話すのか?」
「当然ですよ」
「う、うむ……」
「ちょっと、待ってほしいのです」
「む? どうした? 装填手の娘」
「そろそろ、文字数がいっぱいなのですよ」
「スイ、あなたは何を言ってるの……」
「気にしないでくれ、マヨーラ……」
「今回はスイの出番が殆ど無かったので、説明だけでも言うのです」
「うむ。任せたぞ、装填手の娘よ」
「コホン…… そして、サダムネはクリスと出会い、魔獣に挑んだ過去を話し始めるのであった」
お利口なスイは上手に説明してくれるのであった。
「です」
「それでは、この異世界へと来た所から話すとするか」
「あ、はい」
「楽しみね」
「なのです」
「…………」
「ま、飛ばされた理由は、水谷、山崎と同じだし説明の必要も無いだろう」
「ねぇ、その前にミズタニがマサヒデで、ヤマザキがタメツグでいいの?」
貞宗が正秀と為次を呼ぶ名が変なのでマヨーラは訊いてみた。
「そうだよ」
と、為次は答えた。
「ふーん、なんでそんな違う名前で呼ぶのかしら? 分かり辛いわね」
「昔からそう呼んでいるんだ、気にするな」
「まあ、いいわ」
「んで、話を戻すと隊長さんがコッチに来たのも、あのミサイルっスね」
「そうだ山崎。あの時、俺は10式の補給をしていたのだが、警報が鳴って直ぐに乗り込んだ。他の隊員は、たまたま近くに居なかったので、俺1人だったんだが…… そして、不気味な嵐の中でも爆心地で平然とした様子を見せる桜の木。それを見た俺は、咄嗟に近づいたって寸法だ」
「俺達と同じですね」
正秀は言った。
「やはりそうか」
「隊長さんも居たんだ。気が付かなかったっスよ、他には居なかったのかなー?」
「俺が確認できたのは、確か他には2両で10式と87式だったと思う。もっとも、俺は直ぐに気を失ったので、彼らがどうなったかまでは定かではないが……」
「そっスかぁ」
「何を話しているのか、サッパリだわ」
「まあ、とにかくそんな訳で俺達は異世界にやって来たんだ。それで、気が付いたら見知らぬ世界でターナとスレイブに拾われた。これも、お前らと同じだな」
「時間が違う以外は同じ…… ですか」
「後は、マヨが居るか居ないか」
「サダムネが来た時は、まだ生まれてなかったのよ」
「スイも生まれてないです」
「うん」
「それから俺は帰る手立てを探した。どうにかして、日本に戻る方法は無いのかと…… 色々と走り回って探したさ。その最中に食物プラントで燃料の調達方法も手に入れたし、魔法に関する知識も手に入れた。弾薬がある内は、冒険者として働きながらな。しかし、と、ある1冊の本を読んだ時、俺は諦めたんだ。帰るのを……」
「本…… ですか?」
「ああ、リリステアルの王都ステュクスにある図書館で見つけた」
「何が書いてあったんです?」
「そう焦るな、水谷」
「はい……」
「その本は偶然に見つけた物だった。最初は生命の加護の資料を探していたんだ。こちらの異世界に来て直ぐに、ターナから生命の加護を受けないかと言われた。しかし、当初は帰れるなら帰るつもりだったから、返事を先送りにしといたんだ。それに、気功士ってやつも気になったしな。だが、弾薬が残り少なくにつれ、俺も段々と焦ってきたのさ。このままじゃ、この世界で生きて行くにはどうしようもないってな。それからは、生命の加護に関する資料を探しまくった。そんな折、見つけたのが先程話した1冊の本だ。ステュクスで見つけた本。あそこの図書館には、約千年前からの大量のが本が年代別に並べられている。膨大な量だ、当てもなく目的の本を探すにはそれこそ何年もかかるだろう。何処から手を付けて良いのか分からない俺は、とりあえず図書館に居た係員らしき人物に聞いてみた。生命の加護に関する本は無いのかってな。そうしたら、有るわ有るわ、これまた大量にあるんだ。その中から数冊は読んでみたものの、そう大したことは書いてない。大概が神より授かる奇跡だのなんだのってのが書いてある程度だ。期待外れもいいとこだった。そんな浮かない顔の俺を見たからなのかは知らないが、その時、係員が面白いことを教えてくれたんだ。この膨大な書庫には、数冊だけ読めない本があるんだってな。それも期待はしていなかったが、諦め半分で読んでみたのだが…… その中の1冊のだけは違った。何が違ったと思う?」
「もったいぶるっスねー」
「ははっ、そういう分けでもないが、話し辛いってのあるな。特に水谷にはな」
「俺には?」
「ああ、さっき俺が30年前に飛ばされたことを知った時に取り乱しただろ?」
「すいません……」
「別に謝る必要はない。しかしな、その本はそれどころじゃないぞ? 正直、今の正秀には話したくないが」
「……構いませんよ」
「ふむ…… 今度は取り乱すなよ? なにせ、俺が元の世界に戻るのを諦めた本だからな?」
「はい…… 大丈夫です」
「ふむ、いいだろう。先程、図書館の本は年代別に並べてあると話したな。その本は約300年近く前の本が並べてある本棚に置いてあったんだ。そして、その本が他のと違ったのは…… 日本語で書かれていた……」
「ええっ!? 日本語って……」
驚く為次。
「そんな昔に、日本人が異世界に来ていたんですか!?」
正秀も驚き訊いてみた。
「そうだな、今のガザフが次元を裂く装置を、2度目のガザフから受け取ったのが約300年前だ。今のガザフは既に転生の加護を受ける時期のはずだからな。装置を使ったのも、受け継いで直ぐ。つまり約300年前だ。そして、その本を書いた人物がだな……」
「ちょ、ちょっと待って……」
なんとなく貞宗の言おうとしていることが分かった為次は話を止めた。
「ん? どうした?」
「あの…… やっぱ、マサはあっちにでも行ってた方が良さげな気がするかも……」
「為次…… もういい、流石の俺でも何となく分かるぜ……」
「マサ……」
「なんにせよ知っておいた方がいい。どの道ショックを受けるなら、立ち直るのも早いほうがいいからな。まあ、お前らの予想通りだが、その本を書いた人物は俺の部下だ。87式自走高射機関砲の搭乗員だった隊員Bと隊員Cだ。その2人で本を書いたのは隊員Cだと思われる」
「くそ……」
「分かるだろ? まさか俺より遅くこっちの異世界に、お前らが飛ばされたとは思いもよらなかった」
「300年近いズレか……」
為次の言葉に正秀は何も言えず、ただ黙って俯くだけだ。
「…………」
「んで、その2人はドコ行ったんスか?」
「分からん、俺も探したが足取りすらも掴めん」
「じゃあ、帰ったんじゃないの? あんた達の世界に」
「それは無いと思う。本の最後に『この世界で生きていく』と、書いてあったからな」
「やはり帰れなかったのですか……」
正秀は益々落ち込んでしまった。
一方の為次は能天気に話す。
「それか、生命の加護を受けなくて死んじゃったか」
「いや、加護は受けたようだ。なにせ、本の内容で加護に関する情報が1番有用だったからな」
「何が書いてあったんスか?」
「大したことは書いて無かったぞ。日記…… いや…… 思い出の感想文って感じだ。知らない世界でターナと出会い、生命の加護を受け冒険者となった。俺達と同じだな。87式は整備が出来ずに放棄したようだ。場所までは書いて無かったが。そして、この世界で生きていく決心を付けるまでが綴られていた。興味があるなら、お前らも読みに行ってみるといいさ」
「彼らは帰ろうとしなかったんでしょうか……」
「水谷…… むしろお前に聞きたい。帰る方法があると思うのか?」
「……それは」
「モノポールリング」
それを聞いた正秀と貞宗は為次を見る。
「「!?」」
「今んとこ、その予定っス」
「アレか……」
「その必要もあって、サダムネさんって、スゲー冒険者に会いに来たんスよ」
「為次……」
「とりあえず、リングについては後で聞きたいんですけどぉ」
「うむ、聞かれても知らないがな」
「あー、行ったことはないんスよね」
「そうだ」
「じゃあ、行く方法とかぁ」
「それについては、ある程度の算段はある。協力はしてやろう」
「おおっ! 流石、隊長さんだぁ」
「ありがとうございます、隊長」
「と、その前にだ。生命の加護についても、教えておく必要があるな。アレ自体は高度な超科学文明によるナノマシンの移植なのは気が付いたか?」
「はぁ、なんとなくはっスけど」
「神殿の内部を見れば、あからさまに今の異世界文明とは違うからな」
「そっスね」
「何それ?」
マヨーラは訊いた。
「神の所業では無いと言うことだ」
「ふーん」
「まあいい、加護自体よりも職業についてだ。先程話した隊員Cの本に書いてあった加護に関する情報と言うのが、気功士の能力に関する記述なのだ。その内容だが…… 彼らは生命の加護を受ける際に、まず1人づつ受けることしたそうだ。得体の知れない儀式だからな、当然と言えば当然だ」
「そうですね、俺達の時も為次が先に受けてくれましたから」
「ふむ、そうは言っても、どうせ山崎の後に直ぐ水谷も受けたんだろ?」
「ええ、そうです」
「ま、お前達ならばそんなことだろうが、彼らは違った。とりあえず1人が受け、しばらく様子を見ることにしたらしい。最初に隊員Bが生命の加護を受けたそうだ。彼は魔法を使ってみたいと、まずは適正を調べてもらったそうだが、残念なことに魔導士の適正は無かったと書かれていた。仕方なく戦士としての加護を受けたのだろう。戦士として加護を受けた隊員B、彼らは戦士の能力を調べてみることにしたそうだ。戦士の能力については水谷も知っているだろう、その飛躍的な身体能力の向上だ。だが、色々と試している内に、それ以外にも能力があることが分かった。物理的な攻撃以外に謎の攻撃ができると……」
「マサの必殺技だねぇ」
「ん? 水谷はもう気孔士の能力も使えるのか?」
「気孔士の能力かは定かではありませんが、衝撃波が出せますね」
「ふむ、それなら話は早い。彼らも、その能力が気孔士のものではないのかと考えた。だから、隊員Cは無能力者であるはずの、気孔士として加護を受ける決心をしたそうだ。それでも、彼にしてみれば一つの賭だったかも知れない。もし違っていれば、無能力者として異世界で生きて行くことになるからな。だが、彼は手に入れることができた。気孔士の能力を…… そして、冒険者となり、この世界で生きて行くと綴られていた」
「そんで行方不明になっちゃったんスね」
「そうだな、無事だといいのだが…… しかし、俺が言いたいのは彼らのことではない。能力に関してだ。あの本を読んだからこそ、俺も気孔士となった。そして、その能力はお前達にも備わっている」
「俺達にも…… ですか……」
「そうだ水谷。もっとも、気孔士の能力は使い方にコツが要る。初めは俺も苦労したが、精神の集中が必要なのだ。後でお前達にも教えてやろう」
「あ、俺は別に大丈夫っス」
「うむ、みっちりと教えてやるから覚悟しとくんだな」
「あう……」
「では次に、俺が冒険者となってからの話をしよう」
貞宗が話そうとした時だった、横からクリスが話しかける。
「私との出会いかしら? ふふ」
「あ…… それも話すのか?」
「当然ですよ」
「う、うむ……」
「ちょっと、待ってほしいのです」
「む? どうした? 装填手の娘」
「そろそろ、文字数がいっぱいなのですよ」
「スイ、あなたは何を言ってるの……」
「気にしないでくれ、マヨーラ……」
「今回はスイの出番が殆ど無かったので、説明だけでも言うのです」
「うむ。任せたぞ、装填手の娘よ」
「コホン…… そして、サダムネはクリスと出会い、魔獣に挑んだ過去を話し始めるのであった」
お利口なスイは上手に説明してくれるのであった。
「です」
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