異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第76話 戦車改修案

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 戦車野郎どもは酔っていた……
 貞宗秘蔵のパーフェクトグレーンって変な名前のウイスキーを、ストレートでガブガブ飲んでいたから。

 テーブルに散らばった洗面器飯の残骸を肴にしながら……

 「それじゃ気を取り直して、お前達のこれからの行動についてだが……」

 「とにかく、レオを直したいんっスけどぉ」

 「すまねぇ、為次」

 「うむ。それについてだが、お前達は宇宙に行きたいんだよな?」

 「そっスね」

 「故障個所はどこなんだ?」

 「APU補助動力装置が動かないのと、後は全体的に結構な衝撃を受けた感じっスかね」

 「すまねぇ、為次」

 「ふむ。では、バラして整備とパワーパックの改造だな」

 パワーパックとはエンジンとトランスミッションを一体化させた物で、故障や被弾により壊れた時は丸ごと交換可能なユニットである。
 これによりエンジンや駆動系のトラブルでの稼働不能状態から、パックの交換により30分強で再稼働できる。
 レオパルト2にはMTU社製のユーロ―パワーパックが搭載されているのだ。

 「パワーパックの改造?」

 「ああそうだ、魔道機関を搭載する」

 「え!? そんなことできるんスか?」

 「もちろんだ、10式も改造してある」

 「でも…… 大丈夫なんスか?」

 「宇宙へ行くんだろ?」

 「何か関係あるんですか? 宇宙と」

 正秀は訊いた。

 「ああ、俺は一度かなりの高度まで上がったことがある。飛行艇でな」

 「ええ、その噂は聞いてますし、先程も聞きましたよ」

 「そうだったな。しかし、気圧や酸素、それに気温など諸々の問題が当然ある分けだ」

 「あの木でできた船じゃねぇ」

 為次はポンタに来る途中に見た、王宮飛行艇を思い出していた。

 「ああ、だが、水中にも潜れる戦車ならどうだ?」

 それを聞いた為次は、思わず口に含んだウイスキーを吹き出してしまう。

 「ぶふぉっ」

 「汚ねぇな、まったく」

 文句を言う正秀は飛んできた飛沫を為次の服で拭った。

 「隊長がアホなこと言うから…… 酔い過ぎじゃねっスか」

 「確かに水中と宇宙は違うよな」

 「そうだが、気密性は高いはずだ」

 レオパルト2の潜水深度は1.2メートルである。
 しかも、シュノーケルを装備すると4メートルまで潜れる。
 レオパルト2の全高が3.03メートル、つまり完全に水中に潜った状態で走行ができるのだ。

 「確かに、気密は完璧でも60トンを飛ばすのはどうかと……」

 「魔法があるだろ?」

 「魔法…… そりゃ魔法で飛ばすことはできるかもだけど……」

 「隊長には考えがあるんですか?」

 「ふふっ、いいか? よく聞けよ」

 そして、貞宗は戦車を飛ばす方法を話してくれる。

 貞宗の説明はこうである……

 まず壊れたAPUを魔道機関に換装して、酸素無しでも魔法による駆動を可能にさせる。
 これはエクスプロージョンを応用してして可能にさせるらしい。

 方法は至って単純であった。
 本来、ディーゼルエンジンはシリンダー内に軽油を噴霧し点火、爆発を起こして動かしている。
 だが、この爆発をエクスプロージョンで直接シリンダー内に起こしてエンジンを動かす。
 タイミングを合わせて、連続で爆発させれば可能だと貞宗は言う。

 更に、エクスプロージョンの魔法はどうやら爆発に必要な元素を生成するらしいのだ。
 貞宗の調べだと、何らかのガス…… 多分水素かも知れない。
 そのガスと酸素を作り出して爆発させているそうだ。

 これのお陰で、酸素の無い場所でも爆発を起こすことができる。
 そして、魔法を発動させた際に、酸素を過剰に生成させる。
 余った酸素を車内に送り込むことによって、生命維持に必要な酸素も同時に供給しようとの考えらしい。

 もちろん、これだけでは飛べないので飛ばすにリバースグラビティを使う。
 これは為次も考えてはいたことではある。
 重力さえ無ければ、重さなど関係ないのだ。

 しかし、リバースグラビティにも問題があるとのことだ。
 どうも重力が減るほどリバースグラビティの効果も減って行くそうだ。
 そこで、無重力に近くなったところで、ブースターを使う。

 為次と正秀の乗って来たレオパルト2の両サイドには、増加装甲を付ける為の窪みがある。
 そこへブースターを装着するのが良いと貞宗は言う。
 ブースターには別の魔道機関を内蔵し、各所に付けられた反射プレートへエクスプロージョン連続使用する。
 これは、核パルスエンジンの核爆発をエクスプロージョンで代用する考えで、原理的には爆発の反作用を推進エネルギーにするだけの単純なものだ。
 後方の大型反射プレートをメインブースターとし、前後左右斜めに装着した小型の反射プレートで姿勢制御をする方法だそうだ。

 後は無重力でターレットリングが外れたりしないようなど、所々改装すれば大丈夫らしい。

 貞宗の説明はこんな感じであった。

 「ま、ざっと説明すればこんなものだな」

 「うーん、話だけ聞けば行けそうな気がする」

 「どの道、やるしかないぜ。為次」

 「うん、そだね」

 「隊長! 手伝ってもらえますか?」

 「ああ、当然だ!」

 「じゃあ、整備も兼ねて改造作業かなぁ」

 「だが、お前達にもやってもらうことがあるぞ?」

 「なんです?」

 「ターナの魔獣の件だ」

 「隊長も知っているんですか?」

 「当たり前だ」

 貞宗は近くに置いてあった、ブルーストーンの箱を開けると中から手紙を取り出し、読み始めた。

 「ふむふむ……」

 「なんて?」

 内用が気になる為次。

 「ふっ、思った通りだ…… ポンタの街付近に危険な魔獣が現れるかも知れない。だそうだ」

 「ああ、それね」

 「戦力も集めたし、ブルーストーンも渡したからなんとかしろと。まったくふざけた女だ」

 「人型だってニクが言ってたっスよ」

 「肉? ニクミか?」

 「そっス」

 「あの野郎もイマイチ掴み処の無い奴だな…… それにマヨーラは監視役ってとこか……」

 「マヨーラが……」

 「……マヨ」

 「まあいい、とにかく魔獣退治は手伝ってもらうぞ」

 「頑張ってね、マサ」

 「は?」

 「お前もやるんだよ! 山崎!」

 「え~」

 「えー、じゃない! 気功士の能力が完璧に使えるよう、みっちりしごいてやるからな!」

 「頑張れよ、為次」

 「やだよぉ」

 「気功士の能力が使えなかったら、宇宙行きはお預けだ。分かったな?」

 「うにゅにゅ……」

 「そうと決まれば、しばらくはポンタに滞在だな。泊まる場所も確保しないとだぜ」

 「それなら、この家でいいだろう。部屋もいっぱい空いているからな」

 「よろしいのですか?」

 「構わんぞ、戦車もここで改造するし丁度いいだろう」

 「隊長さんと一緒に生活すんの……」

 「その方が都合がいいだろ。為次」

 「不満か山崎? あ?」

 「い、いえ……」

 「まったく、お前は変わらんな奴だな。だいたい山崎は…… ぶつぶつ……」

 と、亀田隊長による、山崎隊員への小言が始まってしまった。

 そうやって、3人はウイスキーをガブ飲みしながら、これからのことや思い出話に花を咲かせていた。
 そこへ、お風呂から上がったスイとマヨーラがやって来た。
 貞宗の小言にウンザリしていた為次にとっては、渡りに船ではあるが……

 「ふー、さっぱりし……」

 リビングの惨状を見たマヨーラのセリフは、途中で途切れてしまった。

 「はうっ!? スイのご飯が散乱してるです」

 「ちょっと、あんた達は何やってんのよっ!」

 「おう上がったか、どうだ? 広くていい風呂だったろ」

 「どうだ…… じゃないわよっ! なんなのこれは一体!」

 「風呂から上がって、早々に何を言ってるんだぜ?」

 「風呂に入っても、ヒステリックは治らんね。マヨは」

 「バカ言ってんじゃないわよ、こんなに散らかして…… クリスさんにしかられても知らないわよ」

 「隊長さんの小言が終わったと思ったら、今度はマヨか」

 「なんだと?」

 「なんですって?」

 「ぬぉ、しまった……」

 「要らないこと言うなよ、バカだな為次は」

 「すまそ」

 「と・に・か・く、早く片付けなさいよ」

 「何をだ?」

 貞宗は訊いた。

 「あんた達の食い散らかしたテーブルよ! 見れば分かるでしょっ」

 マヨーラに指摘され、野郎どもは無言で自分達の周りを見てみる。
 改めて見ると確かに汚い。
 食いカスや汁がテーブルに散乱しているし、その周りの床も酷い。
 しかも、自分達の服まで、なんだか分からないモノがこびり付いてカピカピだ。

 「「「…………」」」

 酔ってはいるが、次第に状況のヤバさが分かってきた……

 「確かに汚いと言われれば汚いぜ」

 「うむ、これがまずいな……」

 「キタナイキタナイ」

 貞宗の目がキョドっている……
 心無しか、冷や汗もかいている感じもするのだ。

 「隊長、顔色が悪いですよ、少し飲み過ぎなのでは」

 「い、いや、大丈夫だ…… それより早く片付けないと、クリスに見つかったら……」

 貞宗がそう言ったのと、同時であった……

 ガチャリ

 リビングの奥にある扉が開くと、誰か入って来た。
 皆の視線が扉へと向けられる。
 入って来た人物はクリスであった。
 まるで、見計らったの如く戻ってきてしまったのだ。

 「ふぅ、ようやく片付いたわ」

 「お…… ク、クリス……」

 「あら、皆さんお揃いで」

 クリスの目線がテーブルへと向けられる。

 「あら、あらあら、まぁまぁ、あらあら……」

 美しく優しそうなクリスの表情がみるみる内に、鬼の形相へと変わって行く。

 「あ、俺は風呂行ってきま」

 為次は立ち上がると咄嗟に逃げ出そうとする。

 「あ、逃げた」

 正秀は為次を捕まえようとするが……

 「待ちなさい」
 
 正秀よりも早くクリスに襟元を後ろから掴まれてしまった。

 「ぐぇ」

 「あ、捕まった」

 「何処へ行かれるのかしら? タメツグさん」

 「あ、いや、違うんです。これは」

 「何が違うのかしら? 説明してちょうだい」

 「こ、これは、その…… 隊長命令…… そう! 隊長命令なんすよ!」

 「そうなの? あなた」

 「き、きたねぇぞ山崎、嘘までついて、お前だけ助かろうってのか?」

 「はぁ? 部下を助けるのは上官の務めでしょ」

 「なんだと! だいたい、洗面器の残飯をひっくり返したのはお前だろ!」

 「残飯じゃないです、スイとご主人様のご飯です」

 「あ、そうだ。スイが洗面器をこんなとこに投げっぱなしにしとくから」

 「はうぅ! なんですと!?」

 「為次、流石にそれはスイちゃんが可哀想ってもんだぜ?」

 「あなた達……」

 「そうだ、人のせいにするのは良くないぞ。山崎」

 「いや…… 俺は悪くない…… はず」

 「バカ言うんじゃない! 山崎が最初から大人しくテーブルを拭いておけば良かったんだぞ」

 「はぁ!? それは隊長の仕事でしょ!」

 「なんだと! 山崎、俺に……」

 貞宗のセリフは途中までしか聞こえなかった……
 その代わりに部屋中に恐怖を覚えるほどの甲高い声が響き渡る。

 「いい加減に、しなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 その叫び声は、周囲の空気を切り裂くかと思われる程だ。
 野郎どもは一瞬で酔いも覚め、恐怖の眼差しでクリスを凝視するのであった……

 ……………
 ………
 …

 ―― その後

 野郎3人は床に正座をさせられていた。
 何か喋ろうとしようものなら、クリスの鉄拳制裁が飛んで来る。
 なので只々ただただ、黙ってうつ向くしかなかった。

 クリスの説教は、小一時間続くのであった……
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