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異世界編 2章
第78話 的士
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貞宗の家を飛び出した正秀とマヨーラ。
二人はモンスターの襲撃から街を守りに行った貞宗とクリスを援護する為に、正門へと向かって走っていた。
ポンタの街は住民の数の割に意外と広い。
貞宗の考えた街の計画のせいで、一軒の建物が大きいのだ。
これは、建物その物を防護壁にする為である。
碁盤の目になっている道は、遠くまで見渡せる……
「はぁ…… はぁ…… 遠いな」
「はぁ…… そ、はぁ…… そうね」
結構、走ったつもりだが同じ街並みの続く道は一向に進んだ気配がしない。
走っても、走っても、景色の変化は無く、まるで同じ場所をグルグル回っているかのように思えてくる。
「ちょっと、はぁ…… 休憩しましょ」
「はぁ…… そ、はぁ…… そうだな」
ハァハァと肩で息をする二人は疲れたので走るのをやめた。
貞宗の家は正門から見て奥の方にあるから、街の外に出るには結構な距離があるのだ。
「なんだか、俺達が行く頃にはケリが付いていそうだぜ」
「同感よ。ねぇ、どうするの? 本当に行く?」
「うーん、そうだな……」
正秀は、しばし考えた。
考えたところで行くか? 行かないか? のどちらかでしかない。
だが、唐突にグッドアイディアを思い付いた。
「そうだ!」
「どうしたの? 突然」
「へへっ、任せときな」
早速、手に持っていた無線機のスイッチを入れる正秀。
発信ボタンを押すと話し始める。
「おーい、為次、聞こえるか?」
その問い掛けに、無線機から為次の声が聞こえてくる。
「んー? もしもしぃ、なにぃ?」
「ちぃっと、ヤバイことになっちまったぜ! 助けてくれ!」
と、切羽詰まった感じでわざとらしく言った。
「もしもしぃ、大丈夫なのー?」
「もう駄目だ! 早く来てくれ!」
「もしもしぃ、どこー?」
「えっと、確か…… 隊長の家を出て、一本目右で、確か…… まあ、そっから2、3本程十字路を越えたとこだぜ」
「もしもしぃ、近いね。直ぐ行くわー」
「おう、頼んだぜ」
「もしもしぃ、りょかーい」
正秀は無線機を切ると、マヨーラを見ながら握りこぶしに親指を立てグッジョブする。
「よしっ、タクシー呼んだぜ」
「そう、良かったわね。タクシーが何か知らないけど」
「タクシーを知らないのか……」
山崎タクシー(個人)が来るまで暇なので、正秀はタクシーの説明をしながら待つことにした。
それを、興味なさそうに聞くマヨーラであったが、正秀と二人っきりのお喋りに気分は上々なのでした。
…………
………
…
待つこと約3分、山崎タク…… レオパルト2はやって来た。
マヨーラは先程教えてもらった、タクシーの乗り方を実践する為に片手を上げながら立っている。
楽しそうにお話する、手を上げたマヨーラと正秀を見る為次は怪訝そうな顔をしながらハッチから頭を出して運転していた。
誰がどう見ても、ヤバそうな状況ではないから。
「着いた」
「ちょっと、遅いわよっ」
「ええっ!? まだ5分も経ってないよ」
「つべこべ言ってないで、早くドアを開けなさい」
「へ? 上のハッチは手動だよ?」
「タクシーのドアは運転手が開けるものよ、さっきマサヒデから聞いたわ」
「なぬ? まさか……」
為次は気が付いた。
マヨーラのタクシーと言うセリフで……
自分は足代わりに呼ばれたのだと。
「早くなさいよ」
「ぐぬぬぬ、マサめ俺をタクシーの代わりにしたな!」
「へへっ、バレたか」
「タクシーってなんでしょうか?」
スイも一緒に乗っていた。
「人を運ぶ車…… 陸上艇だよ」
「なるほど、です」
「悪りぃ、悪りぃ、なんか遠くてさ。いいだろ? ちょっとくらい」
「んもぅー、せっかくゴロゴロしてようと思ったのにぃ」
結局、為次はブツブツ言いながらも正秀とマヨーラを戦車で運ぶことになった。
ドアは自分達で開けろとの条件で。
※ ※ ※ ※ ※
徒歩で行くには遠い距離も、車ならばものの数分であった。
レオパルト2は正門の前で停車した。
門が閉まってるので止まった。
「着いた」
「お疲れ。為次」
「閉まってるのです」
「モンスターが居るから当然よ」
サイクスを出た時のように、ぶち破ろうと思えばいくらでも出来る。
だが、流石にモンスターが襲来しているし、後で隊長にどやされるのが目に見えているのでやめた。
壁の向こうからは、モンスターの鳴き声だろうか?
「ギャーギャー」と異様な声が聞こえる。
他にも魔法を放つ音や、人の叫び声も聞こえて来るのだ。
壁の上には魔道士らしき人影もチラホラ見えていた。
「んねぇ、行かないの?」
早く行けと言わんばかりの為次だが、正秀は開けていいのか悩む。
「勝手に開けて大丈夫なのか?」
「ほら、人はあそこから出入りするのよ」
マヨーラが何処か指をしているようだが、基本的にスイの位置からしか見えない。
砲手席に居る正秀も振り向けば見えるが、パンツが見えてしまうので遠慮しているのだ。
だが、正秀も照準装置越しに巨大な門扉を見ると、一部に小さな扉が付いているのが確認できた。
「ああ、あそこから出られるのか」
「じゃあ、行きましょ」
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいませです」
そして、正秀とマヨーラが降車しようとした時であった。
向こうから戦士風の装備をした男性2人が駆け寄って来る。
「おーい、お前ら!」
戦車に向かって叫び、走りながら手を振っている。
「誰か来たわよ」
「誰なんだ?」
正秀は訊くも、マヨーラだって知らない。
「知らないわ」
戦士風の男性2人は、レオパルト2の横に立つと、上半身をハッチから出しているマヨーラに話しかけたきた。
「コイツを持って来てくれたのか、助かる」
「なんなの?」
「君達はサダムネキャノンを持って来てくれたのでは?」
もう一人の男が言うに、戦車砲を当てにしているらしい。
「違うわよ」
「なんだと? 違うのかよ、期待させやがって」
「期待外れで悪かったわね」
「このサダムネキャノンは、使えないのかい?」
「どうかしらね? 聞いてみるわ」
マヨーラは取り敢えず確認してみようと、車内に潜ろうとする。
しかし、まだマヨーラが居る狭いハッチに正秀が身を乗り出して来た。
「きゃっ」
「おっと、悪りぃ」
「(ち、近いわね…… 嬉しいけど)」
正秀もマヨーラと一緒に車長ハッチから身を乗り出すと、今しがたやって来た戦士風の人物を見る。
彼らは銀色に輝く豪華な装飾の施されたブレストプレートを着て、背中には大剣よりは細身のツーハンデットソードを背負っていた。
「うおぅ! なんてカッコイイ装備なんだ」
その装備を見た正秀は自分も欲しくなった。
今すぐにでも買いに行きたい。
だが、今はそれどころではない。
「よう、カッコイイなその装備」
「あん? 誰だ?」
「俺か? 俺は…… 車長だぜ!」
「車長ってなんだ?」
「えっと…… 船長みたいな者だな。多分」
「あなたが、この陸上艇の船長かい? それなら、その陸上艇で外の戦闘を手伝ってくれないかな?」
「……そうだな、俺は構わないがアレだ、前から頭を出している奴に聞いてくれ」
「「ん?」」
戦士の2人は正秀に言われたように、レオパルト2の前に回り込むと、頭だけ出している為次と目が合った。
「こんにちは」
とりあえず挨拶が基本の為次。
片方の戦士も挨拶を欠かさない。
「やあ、こんにちは」
「こんばんわだぞ。それより、さっきの話は聞いてたろ? 手伝ってくれるか?」
「お断りします」
「なんでだよ!」
「船長は構わないって言ってたよ?」
「あの人は船長じゃないよ、代理モドキだよ」
「へへっ、バレちまったぜ」
「なんだと! じゃあ船長を出せよ!」
「300年と2週間前くらいに死んだと思うけど……」
「「…………」」
戦士2人は顔を見合わせた。
「悪いことを聞いたのは謝るよ。だからなんとか頼めないかな」
「正直、外は結構ヤバイ感じなんだ。街の中に進入されるとお前だって困るだろ?」
「うーん、確かに」
「援護はしてやるから、な?」
「お願いだよ」
「ほんとにぃ?」
「ああ、約束する」
「しょうがないなー、分かったよ」
「いいのか!? それじゃ頼むぜ」
「ありがとう、サダムネキャノンがあれば心強いよ」
「それじゃ、左側の門だけ開けるから、そこから出てくれ」
「りょかーい」
戦士の2人は巨大な門に近づくと、ゆっくりと押し始める。
通常、これほどの大きさならば人が押した程度ではビクともしないだろう。
しかし、戦士の能力を授かった力は常識を逸する。
門はゴリゴリと開いて行くのだ。
「そんじゃ、俺達も戦闘準備だな」
そう言うと正秀は砲塔の上に登り、さっき食品の山に突き刺しておいた大剣を手にした。
それに続いてマヨーラも砲塔に登り、車長ハッチを閉めといた。
二人とは逆に為次は、出していた頭を引っ込めると視界を肉眼からペリスコープに切り替える。
「おーい、スイ」
「なんですかー? タメツグ様」
「ヘッドセット付けといて」
「はいです」
スイは返事をすると、教えてもらっていたヘッドセットを装着する。
「もしもしぃ、聞こえる?」
「聞こえますよ」
「同軸機関銃の撃ち方は大丈夫?」
「はいです、一応は教わってますです」
「撃ち過ぎないように気を付けてね、弾が補充できないから」
「分かりましたぁ」
「じゃあ準備しといて」
「はいです」
返事をしながら、スイはゴソゴソと砲手席へと移動した。
そうして、皆が戦闘の準備をしていると戦車が通れるほどに門が開いた。
為次はゆっくりと、レオパルト2を前進させ門をくぐり街の外に出る。
その光景は凄まじいものであった……
正秀とマヨーラは砲塔の上で驚いた様子で見ている。
「なんだこりゃ……」
「かなりの数ね」
もの凄い数の緑色をした不気味な小さなおっさんと、人間達が入り乱れて戦っている。
斬撃と魔法が飛び交う戦場は、まるでストラテジーゲームでも見ているかのようである。
為次も、うようよ居る緑色の怪物に驚きを隠せない。
「うお、変なのがいっぱい居るわ」
「ゴブリンさんなのですよ」
「これがゴブリンかぁ、少しだけ茶色のも居るね」
「茶色いのはコボルトさんです」
壮観な戦闘風景を見ていると、再び正門が閉ざされる。
皆はその時に気が付いた、倒れているのはモンスターだけではない。
腕や足が千切れ、のた打ち回っている人や完全に事切れているであろう人が結構居るのだ。
そんな光景を見ながら為次は思う。
こりゃ、戦車1輌じゃ、どうしようもないわ
と……
二人はモンスターの襲撃から街を守りに行った貞宗とクリスを援護する為に、正門へと向かって走っていた。
ポンタの街は住民の数の割に意外と広い。
貞宗の考えた街の計画のせいで、一軒の建物が大きいのだ。
これは、建物その物を防護壁にする為である。
碁盤の目になっている道は、遠くまで見渡せる……
「はぁ…… はぁ…… 遠いな」
「はぁ…… そ、はぁ…… そうね」
結構、走ったつもりだが同じ街並みの続く道は一向に進んだ気配がしない。
走っても、走っても、景色の変化は無く、まるで同じ場所をグルグル回っているかのように思えてくる。
「ちょっと、はぁ…… 休憩しましょ」
「はぁ…… そ、はぁ…… そうだな」
ハァハァと肩で息をする二人は疲れたので走るのをやめた。
貞宗の家は正門から見て奥の方にあるから、街の外に出るには結構な距離があるのだ。
「なんだか、俺達が行く頃にはケリが付いていそうだぜ」
「同感よ。ねぇ、どうするの? 本当に行く?」
「うーん、そうだな……」
正秀は、しばし考えた。
考えたところで行くか? 行かないか? のどちらかでしかない。
だが、唐突にグッドアイディアを思い付いた。
「そうだ!」
「どうしたの? 突然」
「へへっ、任せときな」
早速、手に持っていた無線機のスイッチを入れる正秀。
発信ボタンを押すと話し始める。
「おーい、為次、聞こえるか?」
その問い掛けに、無線機から為次の声が聞こえてくる。
「んー? もしもしぃ、なにぃ?」
「ちぃっと、ヤバイことになっちまったぜ! 助けてくれ!」
と、切羽詰まった感じでわざとらしく言った。
「もしもしぃ、大丈夫なのー?」
「もう駄目だ! 早く来てくれ!」
「もしもしぃ、どこー?」
「えっと、確か…… 隊長の家を出て、一本目右で、確か…… まあ、そっから2、3本程十字路を越えたとこだぜ」
「もしもしぃ、近いね。直ぐ行くわー」
「おう、頼んだぜ」
「もしもしぃ、りょかーい」
正秀は無線機を切ると、マヨーラを見ながら握りこぶしに親指を立てグッジョブする。
「よしっ、タクシー呼んだぜ」
「そう、良かったわね。タクシーが何か知らないけど」
「タクシーを知らないのか……」
山崎タクシー(個人)が来るまで暇なので、正秀はタクシーの説明をしながら待つことにした。
それを、興味なさそうに聞くマヨーラであったが、正秀と二人っきりのお喋りに気分は上々なのでした。
…………
………
…
待つこと約3分、山崎タク…… レオパルト2はやって来た。
マヨーラは先程教えてもらった、タクシーの乗り方を実践する為に片手を上げながら立っている。
楽しそうにお話する、手を上げたマヨーラと正秀を見る為次は怪訝そうな顔をしながらハッチから頭を出して運転していた。
誰がどう見ても、ヤバそうな状況ではないから。
「着いた」
「ちょっと、遅いわよっ」
「ええっ!? まだ5分も経ってないよ」
「つべこべ言ってないで、早くドアを開けなさい」
「へ? 上のハッチは手動だよ?」
「タクシーのドアは運転手が開けるものよ、さっきマサヒデから聞いたわ」
「なぬ? まさか……」
為次は気が付いた。
マヨーラのタクシーと言うセリフで……
自分は足代わりに呼ばれたのだと。
「早くなさいよ」
「ぐぬぬぬ、マサめ俺をタクシーの代わりにしたな!」
「へへっ、バレたか」
「タクシーってなんでしょうか?」
スイも一緒に乗っていた。
「人を運ぶ車…… 陸上艇だよ」
「なるほど、です」
「悪りぃ、悪りぃ、なんか遠くてさ。いいだろ? ちょっとくらい」
「んもぅー、せっかくゴロゴロしてようと思ったのにぃ」
結局、為次はブツブツ言いながらも正秀とマヨーラを戦車で運ぶことになった。
ドアは自分達で開けろとの条件で。
※ ※ ※ ※ ※
徒歩で行くには遠い距離も、車ならばものの数分であった。
レオパルト2は正門の前で停車した。
門が閉まってるので止まった。
「着いた」
「お疲れ。為次」
「閉まってるのです」
「モンスターが居るから当然よ」
サイクスを出た時のように、ぶち破ろうと思えばいくらでも出来る。
だが、流石にモンスターが襲来しているし、後で隊長にどやされるのが目に見えているのでやめた。
壁の向こうからは、モンスターの鳴き声だろうか?
「ギャーギャー」と異様な声が聞こえる。
他にも魔法を放つ音や、人の叫び声も聞こえて来るのだ。
壁の上には魔道士らしき人影もチラホラ見えていた。
「んねぇ、行かないの?」
早く行けと言わんばかりの為次だが、正秀は開けていいのか悩む。
「勝手に開けて大丈夫なのか?」
「ほら、人はあそこから出入りするのよ」
マヨーラが何処か指をしているようだが、基本的にスイの位置からしか見えない。
砲手席に居る正秀も振り向けば見えるが、パンツが見えてしまうので遠慮しているのだ。
だが、正秀も照準装置越しに巨大な門扉を見ると、一部に小さな扉が付いているのが確認できた。
「ああ、あそこから出られるのか」
「じゃあ、行きましょ」
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃいませです」
そして、正秀とマヨーラが降車しようとした時であった。
向こうから戦士風の装備をした男性2人が駆け寄って来る。
「おーい、お前ら!」
戦車に向かって叫び、走りながら手を振っている。
「誰か来たわよ」
「誰なんだ?」
正秀は訊くも、マヨーラだって知らない。
「知らないわ」
戦士風の男性2人は、レオパルト2の横に立つと、上半身をハッチから出しているマヨーラに話しかけたきた。
「コイツを持って来てくれたのか、助かる」
「なんなの?」
「君達はサダムネキャノンを持って来てくれたのでは?」
もう一人の男が言うに、戦車砲を当てにしているらしい。
「違うわよ」
「なんだと? 違うのかよ、期待させやがって」
「期待外れで悪かったわね」
「このサダムネキャノンは、使えないのかい?」
「どうかしらね? 聞いてみるわ」
マヨーラは取り敢えず確認してみようと、車内に潜ろうとする。
しかし、まだマヨーラが居る狭いハッチに正秀が身を乗り出して来た。
「きゃっ」
「おっと、悪りぃ」
「(ち、近いわね…… 嬉しいけど)」
正秀もマヨーラと一緒に車長ハッチから身を乗り出すと、今しがたやって来た戦士風の人物を見る。
彼らは銀色に輝く豪華な装飾の施されたブレストプレートを着て、背中には大剣よりは細身のツーハンデットソードを背負っていた。
「うおぅ! なんてカッコイイ装備なんだ」
その装備を見た正秀は自分も欲しくなった。
今すぐにでも買いに行きたい。
だが、今はそれどころではない。
「よう、カッコイイなその装備」
「あん? 誰だ?」
「俺か? 俺は…… 車長だぜ!」
「車長ってなんだ?」
「えっと…… 船長みたいな者だな。多分」
「あなたが、この陸上艇の船長かい? それなら、その陸上艇で外の戦闘を手伝ってくれないかな?」
「……そうだな、俺は構わないがアレだ、前から頭を出している奴に聞いてくれ」
「「ん?」」
戦士の2人は正秀に言われたように、レオパルト2の前に回り込むと、頭だけ出している為次と目が合った。
「こんにちは」
とりあえず挨拶が基本の為次。
片方の戦士も挨拶を欠かさない。
「やあ、こんにちは」
「こんばんわだぞ。それより、さっきの話は聞いてたろ? 手伝ってくれるか?」
「お断りします」
「なんでだよ!」
「船長は構わないって言ってたよ?」
「あの人は船長じゃないよ、代理モドキだよ」
「へへっ、バレちまったぜ」
「なんだと! じゃあ船長を出せよ!」
「300年と2週間前くらいに死んだと思うけど……」
「「…………」」
戦士2人は顔を見合わせた。
「悪いことを聞いたのは謝るよ。だからなんとか頼めないかな」
「正直、外は結構ヤバイ感じなんだ。街の中に進入されるとお前だって困るだろ?」
「うーん、確かに」
「援護はしてやるから、な?」
「お願いだよ」
「ほんとにぃ?」
「ああ、約束する」
「しょうがないなー、分かったよ」
「いいのか!? それじゃ頼むぜ」
「ありがとう、サダムネキャノンがあれば心強いよ」
「それじゃ、左側の門だけ開けるから、そこから出てくれ」
「りょかーい」
戦士の2人は巨大な門に近づくと、ゆっくりと押し始める。
通常、これほどの大きさならば人が押した程度ではビクともしないだろう。
しかし、戦士の能力を授かった力は常識を逸する。
門はゴリゴリと開いて行くのだ。
「そんじゃ、俺達も戦闘準備だな」
そう言うと正秀は砲塔の上に登り、さっき食品の山に突き刺しておいた大剣を手にした。
それに続いてマヨーラも砲塔に登り、車長ハッチを閉めといた。
二人とは逆に為次は、出していた頭を引っ込めると視界を肉眼からペリスコープに切り替える。
「おーい、スイ」
「なんですかー? タメツグ様」
「ヘッドセット付けといて」
「はいです」
スイは返事をすると、教えてもらっていたヘッドセットを装着する。
「もしもしぃ、聞こえる?」
「聞こえますよ」
「同軸機関銃の撃ち方は大丈夫?」
「はいです、一応は教わってますです」
「撃ち過ぎないように気を付けてね、弾が補充できないから」
「分かりましたぁ」
「じゃあ準備しといて」
「はいです」
返事をしながら、スイはゴソゴソと砲手席へと移動した。
そうして、皆が戦闘の準備をしていると戦車が通れるほどに門が開いた。
為次はゆっくりと、レオパルト2を前進させ門をくぐり街の外に出る。
その光景は凄まじいものであった……
正秀とマヨーラは砲塔の上で驚いた様子で見ている。
「なんだこりゃ……」
「かなりの数ね」
もの凄い数の緑色をした不気味な小さなおっさんと、人間達が入り乱れて戦っている。
斬撃と魔法が飛び交う戦場は、まるでストラテジーゲームでも見ているかのようである。
為次も、うようよ居る緑色の怪物に驚きを隠せない。
「うお、変なのがいっぱい居るわ」
「ゴブリンさんなのですよ」
「これがゴブリンかぁ、少しだけ茶色のも居るね」
「茶色いのはコボルトさんです」
壮観な戦闘風景を見ていると、再び正門が閉ざされる。
皆はその時に気が付いた、倒れているのはモンスターだけではない。
腕や足が千切れ、のた打ち回っている人や完全に事切れているであろう人が結構居るのだ。
そんな光景を見ながら為次は思う。
こりゃ、戦車1輌じゃ、どうしようもないわ
と……
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