異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第95話 親子

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 ―― その日の夜

 ちょっとおかしな姉妹を含めた皆は、貞宗宅で晩ご飯を食べていた。
 あれから、クリスのお小言が終わると女性陣は和食の作り方を教わる為に、夕飯の準備をお手伝いをした。
 その、ついでにと姉妹も一緒にご馳走になっていたのだ。

 「えー、本日はお日柄も良く~」

 「どうした為次? 突然に」

 「また頭が、おかしくなったのかしら?」

 頭が変な人に思われる為次だが、一応はまともであることを主張する。
 そうしなければ常に変人と思われてしまうから。

 「微妙に正常な気はするかも」

 「それで、お日柄がどうかしたのか?」

 貞宗は訊いた。

 「いやまあ、みんな集まってるしちょうどいいかな、って」

 戦車クルーがやって来てからは、リビングで食事をするようになった。
 食卓は別の部屋にあるのだが、少し狭い。
 何よりも男達がソファーから動こうとはしないのが、一番の理由ではあるが。

 「掃除当番でも決てくれるのかしら?」

 クリスの言葉を聞いた男達は、しばし無言で箸を進める……

 「掃除洗濯はスイにお任せ下さい」

 「あら、スイちゃんは偉いわねー」

 「えへへへ、です」

 「あ、あたしも手伝うわよ!」

 「まあ助かるわスイちゃんもマヨーラちゃんも。ね、あなた?」

 「う、うむ……」

 「それで為次、何か言いたいことでもあるんじゃなかったのか?」

 「うん、ちょっとね聞きたいこととか」

 「俺にか?」

 「まあ、隊長さんにもね」

 「言ってみな」

 「……あのね、まずスイのことなんだけどさ」

 「スイがどうかしましたか?」

 「スイは隊長さん…… 貞宗さんの子供だそうで……」

 「えっ!? うそ?」

 マヨーラは驚いた。

 「はい、私のお父さんは貞宗様、お母さんはターナ様と書いてあったのです」

 「ううう嘘ぉ! 本当なの!?」

 マヨーラは更に驚いた。
 皆も一様に驚いてはいるが、シャルだけは冷静である。

 「中々に興味深い話ではあるな」

 「書いてあった、とは?」

 貞宗の問いに、正秀は答える。

 「ある人から貰った手紙ですよ、読みますか? スイちゃんが良ければですがね」

 「いや、いい…… なるほど、あの時の子か…… 通りで奴隷が戦魔道士な分けか」

 「ねぇ、クリスさんの前で話すようなことじゃ……」

 マヨーラは手紙のことが気になるが、それよりもクリスに気を使った。

 「いや、構わんさ、別にターナと寝た分けではないからな」

 「聞かせてもらえるっスか? 隊長さん」

 貞宗は横目でクリスの顔を見る。
 別段、普段とは変わらない様子だ。
 すました顔で味噌汁をすすっていた。

 「今日のお味噌汁の塩加減はどうかしら? シムリちゃんが作ってくれたのよ」

 「あ、ああ…… 初めてにしては上出来だ」

 「やったー、嬉しいんだよ」

 少し前までは、鬼の形相で怒られていたのだが、今は何時もの優しそうなクリスである。

 「別にお前達に、隠すようなことでもないからな」

 「そうスか」

 「簡単な話だ、スイはターナの転生モデルの一体だ」

 「それは知ってるっス、聞いたから」

 「ふむ。ま、いわゆる試作品だな」

 「スイは、試作品なのですか」

 「マンガやアニメだとプロトタイプは性能いいから、気にしなくていいよスイ」

 「やりました、スイは高性能なのです」

 「頭がちょっと弱いけどね」

 「弱くないのです!」

 「俺の子供と言っても、例のカプセルで造ったモノだ。多分、遺伝子を掛け合わせたんだと思う」

 「でも、それだけじゃ無い気がするんだけど。昨夜の魔獣はスイを狙ってた…… 造る時になんかしたっスか?」

 貞宗は返答せずにイカリングっぽいのを摘み、口に放り込む。
 それに釣られて、正秀も同じ物を食べてみる。

 「もぐもぐ…… ん?」

 予想とは違った食べ物に、正秀はつい怪訝そうな顔をしてしまった。

 「どうかしました? 口に合わないかしら?」

 「い、いえ…… 玉ネギなんですね」

 「イカリングと思ったか?」

 「ははっ、その通りですよ隊長」

 「イカリングってなんなのかな?」

 シムリは訊いたが、為次は答えずに呟く。

 「イカも居ないってか……」

 「でも、クラーケンが居るのでは?」

 クリスの昔話を思い出して、正秀は訊いた。

 「マサヒデ君。クラーケンは魔獣だ、食べられないぞ」

 「魔獣って食えないんだ」

 魔獣が食べれないと知って少し残念そうな為次。
 と、そこへ貞宗は意外なことを言う。

 「食えないが、合成はできた」

 「!? ……まさか」

 「そのまさかだ山崎。スイを造る時にはもう一つカプセルを使った。そこには、魔獣の核を入れた。入れたのはターナだぞ」

 「核ってなんスか?」

 「俺も良くは知らないが、魔獣の脳の中央付近のにある結晶体だ」

 「只の黒い塊よ、特に価値はないわね」

 マヨーラが説明してくれた。

 「へー、それが原因なのかな?」

 「なんの原因なのよ?」

 「さっき言ったみたく、魔獣が集まるのとか、禁忌魔法の使い手とかね」

 「まぁ! スイちゃんは禁忌魔法まで……」

 クリスは禁忌魔法のことを知っているのだろうか?
 驚いた様子であった。

 「なんだか難しいお話なんだよ」

 「スイ、あんたも色々と大変ね」

 「です」

 貞宗はご飯を箸で口に運び、そのまま唾の付いた箸の先をマヨーラに向ける。

 「マヨーラ、お前は安心していいぞ」

 「あなた、お行儀悪いですよ」

 「あ、ああ、すまん……」

 「どうして、あたしが安心するのよ?」

 「分からないのか?」

 「もしかして、マヨも転生モデル?」

 「正解だ、山崎」

 「嘘…… でしょ……」

 最早、マヨーラは驚くどころの騒ぎではない。
 衝撃の事実に言葉も出なかった。

 「スイとは姉妹ってとこだな」

 「ターナは何体、作ったんでしょうね?」

 正秀は訊いた。

 「さあな、それは知らんが、俺が関わったのは二体だけだ」

 「姉妹ねぇ、一体は手元に置いて、もう一体は処分っスか」

 「ふざけないで……」

 バンッ!!
 
 マヨーラはソファーから立ち上がり、テーブルに片手を叩き付けた。

 「あたしとスイが姉妹!? ふざけないでよっ!」

 思わず叫んでしまった。
 慌てて正秀は、なだめようとする。

 「お、おい、マヨーラ落ち着け」

 「冗談じゃないわ! おかしいじゃない!」

 「べ、別におかしくはだろ……」

 「じゃあ、なんであたしだけ…… あたしだけ貧乳なのよぉ!!」

 食卓に絶叫が木霊する……

 「マヨーラよ何を言って……」

 貞宗は困惑した。
 他の皆も同様だ。

 「お、おい……(意味が分からないぜ)」

 「ふむ(そこが大切であるか)」

 「マヨーラちゃん……(くじけちゃダメなんだよ)」

 「まあ……(あらあら、可愛そうに)」
 
 皆はマヨーラと目が合わないようにと、一斉に料理を取り始める。
 しかし、為次だけは違った……
 澄ました顔でマヨーラを見る。

 「この前、池の畔で揉んであげたでしょ、少しは大きくなったんじゃない?」

 ぷちゅっ

 マヨーラは為次の目玉を手に持っているフォークでぶっ刺してしまった。

 「うぎゃぁぁぁ! 目がぁ! 目がァァァっ!」

 元の世界ならば大惨事であるが、加護を受けた者であれば、この程度の傷などほっとけば直ぐに治る。
 だから皆は、為次を無視して黙々と食べるのであった。

 「変態……」

 マヨーラは呟きながら、為次を睨んだ……

 「ぎぃやぁぁぁぁぁ! 目から血がぁ!」

 片目を押さえ、のた打ち回る為次を見るマヨーラは少しだけスッキリした。
 再びソファーに座ると、突き刺さったフォークを抜き取り玉ネギフライを食べる。
 少し血の味がした。

 「それで、何が安心なのよっ」

 「う、うむ。お前には魔獣の核は使っていない」

 「あら、そうなのね」

 「意外な事実であるな」

 「ところで、どっちがお姉さんなの?」

 「確か数時間程マヨーラが、お姉ちゃんだぞ」

 「ふふっ、スイ。今度からあたしのことはお姉様と呼ぶのよ、いいわね?」

 「分かったのです、マヨお姉様」

 「にしても、良かったじゃないか二人共両親が見つかって」

 正秀は当然のことを言ったつもりだったが、マヨーラは不思議そうな顔をしている。

 「え? なんで?」

 「なんでって…… 嬉しくないのかマヨーラは?」

 「……どうでもいいわ」

 「私もどうでもいいのです、ご主人様が居ればいいです」

 「…………」

 二人の言葉に正秀は何も言えなかった。

 「親を気にする人なんて居ないんだよ」

 「妹の言う通りだ。当たり前のことだな」

 「でも…… 両親なんだぜ?」

 「水谷よ、この世界じゃぁな、親を知っている方が珍しいんだよ」

 それを聞いた為次と正秀は、また思い出した。

 ガザフの言葉を……

 『この世界の人間はもうダメだよ、なんの疑問も抱かなくなった』

 「この世界の人間は……」

 「壊れた世界……」

 正秀と為次は呟いた。

 「はぁ、一杯呑むかな」

 なんだか気が滅入った為次は立ち上がり、車庫への扉に向かおうとした。
 だがクリスは、それを制止する。

 「タメツグさん、食事中はダメですよ」

 為次は扉を開けようとした手を止めてクリスを見る。

 「クリスさん、あんたは俺の母親じゃないから」

 「…………」

 「好きにさせてもらうよ、自分達の酒取って来るし」

 「なんだ山崎、その言い草はっ」

 「隊長さんだってさ、何時まで隊長づらしてんの?」

 「なんだと、貴様……」

 「だってそうでしょ」

 「何がだ……」

 「例え自分の感情が抑えられなくとも、自衛官として少しは抗おうとはしないの?」

 「っ! ……俺だってだな!」

 「隊長、すいません」

 「ん?」

 「俺もちょっとばかし、為次に付き合って来ますよ」

 正秀もソファーから立ち上がり、隊長に向かって軽く敬礼をした。
 すると、スイも立ち上がり為次を見る。

 「ではでは、スイもお供するのです」

 その時だった……

 バンッ!!

 大きな音と共に、テーブルに置かれたグラスが2つ倒れた。
 今度はクリスが両手でテーブルを叩いたのだ。

 「分かりました、今夜だけですよタメツグさん」

 「え?」

 「食事の場は、喧嘩をする所ではありません。お酒は私が持って来ますから、あなた方は座りなさい」

 「「「…………」」」

 3人は顔を見合わせ、大人しく席に着いた。
 それからは、クリスの持って来たお酒を飲みながら普通に食事を終えた。

 別段コレと言った会話も無く……

 ……………
 ………
 …

 食事が終わった後に、貞宗は訊ねた。
 それは、女性達が後片付けをしている最中だった。

 「なあ山崎、俺にも、って言ってたよな?」

 「何が?」

 「他の誰かにも、何か聞きたかったのか?」

 「ああ…… マヨにちょっとね」

 為次は思い出したように、刺された目玉を押さえる。
 ヒールしてもらう雰囲気ではなかったので、自然回復だ。

 「マヨーラがどうかしたのか?」

 正秀は訊いた。

 「あの時さ、昨夜魔獣と戦ってる時にターナが主犯格っぽいって話したんすよ」

 「ほう」

 「怒ってたね」

 「ああ、怒ってたな」

 「そん時はジョーダンで済ませたけどさ……」

 「事実だったら、どうするか? と?」

 「んまぁ、そんなとこっスね」

 「分かった、俺も機会があれば、それなりに訊ねてみる」

 「ん」

 こうして、長かったような1日が過ぎ去ろうとして行く。

 「明日から特訓だぞ、早く寝るんだぞ」

 終わってしまえば、一瞬の出来事のような1日。

 「はー、めんどくさ」

 時の流れは、待ってはくれない……
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