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異世界編 2章
第94話 麻雀
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彼女達が貞宗宅に帰って来たのは昼も過ぎ……
それから、更にしばらく経ってからであった。
お昼ご飯は外ですませ、シャルが通りすがりの陸上艇を確保してくれた。
おかげで必要以上の買い物もでき、持ちきれない程の荷物を抱えていた。
陸上艇の船長は去り際に「てめぇら、覚えとけよ!」と捨て台詞を吐き、行ってしまったのだった。
「ただいまー、帰ったわよ」
マヨーラが車庫とリビングの扉を足で開けると、少女達はゾロゾロと荷物を運び入れる。
一通り運び終わると、新しい服を見せびらかそうとリビングでゴロゴロしてる野郎共の元へとやって来た。
「ただいま戻りましたです」
「お待たせなんだよ、タメツグさん」
「今戻った」
しかし、野郎共はチラリと女性陣を見ると……
「ああ」
「うん」
「おう」
生返事をして、直ぐに手に持っているタブレットに夢中になる。
麻雀の真っ最中であった……
インターネットには繋がらないタブレットだが、端末同士を繋げて三麻で遊ぶことにした。
昼食後にクリスが買い物に出掛けると、隙を見計らって酒を取り出し遊び始めていた。
戦車から持って来たお菓子をつまみに……
「あ、それロン、にひひひ」
「くそ! 山崎、てめぇ!」
「役牌1000点だお」
「またか山崎! こっちはもう少しで役満なんんだぞ! いい加減にしやがれ!」
「隊長…… 落ち着いて下さい」
「ふざけるなっ! あいつ喰いタンと役牌ばっかなんだぞ!」
「そうですが……」
「七対子もタマにあるお、おっ」
「てめぇ…… 山崎っ! 次で取り返してやるからな! 覚悟しとけよ!」
「そんなにムキにならなくても……」
「うるさい! 黙れ水谷! さっさと次だ、次ぎっ!」
「隊長……」
再び麻雀に夢中になる男達を、少女4人は呆れた顔で見る。
しかも、テーブルの周りは食い散らかされたお菓子と溢れたお酒で汚く、見るに耐えない。
為次の為に着替えたつもりのスイとシムリは、段々とムカついてきた。
せめて可愛いだの綺麗だのと言ってやれば良かったが、完全にアウトオブ眼中なのだ。
「むむむー!」
スイはソファで寝転びながら麻雀をする為次の前に行くと、仁王立ちでタブレットへと手を伸ばす。
「うにゃ―ぁ!」
叫びながら、タブレットを取り上げてしまった。
「あ?」
一瞬、為次は何が起きたのか理解できなかった。
突然、手に持っていたタブレットが消えたかと思えば、見上げる目線には怒ったスイの顔がある。
「むぅぅぅ!」
「へ?」
「おい山崎、お前の番だぞ」
「ちょっち待って、スイが」
為次は必死にタブレットを取り返そうとする。
一応は必死なのだが、起き上がろうとはせずに手を伸ばしてパタパタするだけだ。
「返してよー」
「何をしてるんだ?」
貞宗は振り向くと、為次とスイがじゃれ合っている。
……ように見えた。
「遊んでるのか? こっちは真剣に勝負してるんだぞ」
「違うよ、スイが、スイが」
「スイちゃん、どうしたんだ?」
と、正秀もタブレットから目を離し、為次の方を見る。
「ご主人様がスイを見てくれないのです! 新しい服を買ってもらったのですぅ!」
「なるほど、確かにおめかししても為次にシカトされちゃつまんねーよな」
「うぅ…… 違うのです!」
スイは自分でも分からなかった……
自分の主が困ることなどやってはならない。
それは頭では分かっている。
しかし、何故かどうにも我慢できない。
胸が苦しく締め付けられる思いに、戸惑うばかりだ。
好きと言う気持ちは理解しているが、人を愛する感情を知らなかったから。
「そうじゃないのです……」
そんなスイの気持ちをシムリは知ってか、少し悲しそうな目で見る。
「スイちゃん……」
「おい為次、なんか言ってやれよ」
「それどころじゃないって、明日も遊ぶ為には勝たねばならぬぞ」
為次と貞宗は、明日の特訓を賭けて対戦しているのだった。
為次が勝てば明日の特訓はとりあえずお預けにし、貞宗の奢りで街にて豪遊予定である。
貞宗が勝てば朝から晩まで猛特訓なうえに、便所と風呂の掃除である。
ついでに正秀は、そのしょーもない賭けに付き合わさせられていた。
「せっかく、お前の為に着替えて来てくれたんだぜ。為次」
仕方なく為次は、面倒臭そうにチラリとスイを見ると……
「んもー、はい、はい、カワイイ、カワイイ、良かったね」
褒めたつもりらしい。
「さっ、タブレット返してー」
「ムキィーなのですぅ!」
バチコーン!
「ぶへぇっ!」
スイは寝っ転がる主の顔面を、タブレットっで思いっ切り叩き付けてしまった。
ダメだと分かっていても、我慢ならなかった。
為次の無頓着な態度と言葉に、思わず切れてしまったのだ。
「スイちゃん!?」
突然のスイの行動に、流石の正秀も驚いた。
片や貞宗は呆れている。
「ったく、何やってんだ」
為次は顔面にめり込んだタブレットを、必死に取り剥がそうとしている。
それをスイは涙目で見ていた。
「うぐぐぐ…… スイは悪くないのです」
「そうよスイ、あんたは悪くないわ」
「タメツグさん、いくらなんでも酷いんだよ」
「女を敵に回すと、後で厄介だぞ山崎」
しかし、為次は今それどころではない。
「むぐぐぐぅ…… 取れにゃい」
「どれ、私が取ってやろう」
ベリ ベリ ベリ
シャルが力任せにタブレットを引っ剥がす。
無理に引っ張っても、一緒に為次が起き上がってくるので頭を押さえながら……
すると、その下からは四角い痕に潰れた為次の顔が出てきた。
「うぶぶぶ」
謎の効果音を発しながら鼻血を流していた。
タブレットの画面も鼻血で赤く染まっている。
「大丈夫か……?」
「自業自得よ。心配してやる必要なんてないわ、マサヒデ」
「くそっ! んも、返せっ」
そう言いながら、為次はタブレットを引ったくる。
その時、間近に見るシャルは実にセクシーであった。
何せ、引き締まった豊満な体にビキニ姿なのだ。
そこで為次はようやく気が付いた……
女性陣が何やら悩ましい格好をしている。
さっきまで麻雀に必死になっていたのだが……
今度は少女達に興味津々で、舐め回すように見つめるのだ!
泥と血にまみれたマヨーラを除いて。
「ぬぉっ! ぶふふっ!」
鼻血を流す為次は、更に鼻血を吹き出す!
慌ててタブレットで鼻を押さえてしまう。
「汚ねぇーな、ったくよ」
「大丈夫か……?」
「キモイわねぇ」
「なんだか、急にタメツグさんの目つきがいやらしくなったんだよ」
「はうぅ?」
為次は大ピンチであった。
このままでは女性に免疫が無いことが……
「それはもういい…… ぶふっ」
……で、それは第14話 奴隷その1を参照なのだ。
「どうしたんだ? 為次」
「なんでもないよ。と、とにかく…… その…… もう少し普通の格好をだね……」
「お気に召しませんか?」
「そうじゃないけど……」
為次は、つい顔を赤くして下を向いてしまう。
「あれれ? もしかして照れてるのかな? かな?」
シムリが言い寄って来た。
「!? 違っ」
「へーそうなんだー」
シムリは為次の隣に座り、腕に抱きついて上目遣いで見つめた。
為次の腕には柔らかな感触が伝わる。
見ると、肩のあらわになった着物から、豊かな胸のによって作られた谷間が姿を現している。
もう少し着物を下にズラせば先っぽの魅惑の果実まで……
思わず凝視してしまう。
「ぬっ、シムリ様だけズルイのです!」
スイも負けじと為次の隣に座ると、もう一方の腕に抱きついた。
その衝撃にシムリの胸の谷間から、スイのおっぱいに目線を移す為次。
そこはパラダイスであった!
腕に抱き付いた拍子に、ノースリーブ着物の横がちょっとめくれている。
今しがたまではトップからの攻撃であったが、次はサイドアタックだ。
これには、溢れそうな桃を掴み上げたい衝動に駆られてしまうのも致し方あるまい。
だが、それ以上のヤバイのは桃であった…… 否! 腿である!
ミニ着物の裾とニーハイ足袋が織りなす和風絶対領域!
それは最早芸術と言って良いであろう。
男ならば股間がビッゲストになること間違いない。
しかも、スイはその脚を絡ませようとしてくるのだ。
「ぬおおぉ、これは……」
「にゅふふふ、なのです」
「タメツグさん、コッチも見てほしんだよ」
ゴキッ!
シムリは為次の頭を掴むと、無理矢理自分の方へと向ける。
「ぐはっ! 首がぁ…… しかし、これはこれでぇ……」
「えへへ、だよぉ」
「私もなのですぅ」
右に左に忙しい為次。
しかも、正面にはビキニのお姉ちゃんが立っている。
鼻の下を伸ばし、デレデレになった為次に、スイとシムリはすっかりご機嫌だ。
「良かったな、スイちゃん、シムリちゃん」
ご機嫌になったスイとシムリに正秀も納得の様子だ。
「でも、こんな和風の服がよーあったなぁ」
為次はデレデレしながら訊いた。
「サダムネブランドよ」
と、マヨーラ。
「おう、どうだ? 俺のデザインした服は」
「はぁ!? 隊長さんがぁ!?」
「た、隊長が……?」
「中々のものだろ?」
「「…………」」
貞宗は自慢げであるが、正秀と為次はなんと答えていいのか分からなかった。
「……ま、まあいいや、とにかく鼻血が止まんないからヒールを」
「分かりましたです、エンチャントヒール」
スイはヒール付与する。
タブレットの画面にべっとりと付いた鼻血に。
「ささっ、ご主人様、遠慮せずにペロペロするです」
「あ、うん、ペロペロしちゃおっかな」
なんだかキャバクラ気分の為次は、タブレットの画面を舐め回す。
幸い軍用品の丈夫な物なので、壊れてはいないようだ。
だが、とんでもないミスを冒してしまった。
先程、タブレットを引き剥がそうとした時に気が付いていなかった。
電源ボタンを指で抑えっぱなしになっていたことを。
血で見えない画面には『電源を切る』と、表情されているのだ。
そんなこととは露知らず、ペロペロタップをしてしまった。
「おい山崎。お前、通信切れたぞ」
「は?」
為次は画面を見ると、確かにタブレットの電源は落ちている。
「ああっ、なんでぇ!?」
「こりゃ、勝負は無効だな」
「えー、俺のが勝ってたでしょ!」
「結果は最後まで分からんぞ」
「そうだぜ、それに落ちたのは為次だろ」
「ぬぐぐぐ」
結局、賭けは無効となり明日は当初の予定通りに特訓と改修作業となった。
ガッカリする為次ではあるが、両手に花でご満悦状態でもある。
そんなイチャイチャする3人を羨ましそうに見るマヨーラ。
自分も褒めてもらいたいと思っていた。
そんな想いが通じたのだろうか?
正秀が呼び掛けてくる。
「なあマヨーラ」
「え? え? 何かしら!(もしかして、あたしに見惚れちゃった!?)」
「着替えて来たらどうだ?」
マヨーラは陸上艇に撥ねられ、泥と血だらけなのを思い出した。
「そうね…… そうするわ……」
呟きながら、トボトボと着替えに行くのであった。
……………
………
…
その後……
買い物から帰って来たクリスは、食い散らかしと鼻血で汚れたリビングを見て激怒していた。
皆は小一時間、こっ酷く叱られるのだった……
それから、更にしばらく経ってからであった。
お昼ご飯は外ですませ、シャルが通りすがりの陸上艇を確保してくれた。
おかげで必要以上の買い物もでき、持ちきれない程の荷物を抱えていた。
陸上艇の船長は去り際に「てめぇら、覚えとけよ!」と捨て台詞を吐き、行ってしまったのだった。
「ただいまー、帰ったわよ」
マヨーラが車庫とリビングの扉を足で開けると、少女達はゾロゾロと荷物を運び入れる。
一通り運び終わると、新しい服を見せびらかそうとリビングでゴロゴロしてる野郎共の元へとやって来た。
「ただいま戻りましたです」
「お待たせなんだよ、タメツグさん」
「今戻った」
しかし、野郎共はチラリと女性陣を見ると……
「ああ」
「うん」
「おう」
生返事をして、直ぐに手に持っているタブレットに夢中になる。
麻雀の真っ最中であった……
インターネットには繋がらないタブレットだが、端末同士を繋げて三麻で遊ぶことにした。
昼食後にクリスが買い物に出掛けると、隙を見計らって酒を取り出し遊び始めていた。
戦車から持って来たお菓子をつまみに……
「あ、それロン、にひひひ」
「くそ! 山崎、てめぇ!」
「役牌1000点だお」
「またか山崎! こっちはもう少しで役満なんんだぞ! いい加減にしやがれ!」
「隊長…… 落ち着いて下さい」
「ふざけるなっ! あいつ喰いタンと役牌ばっかなんだぞ!」
「そうですが……」
「七対子もタマにあるお、おっ」
「てめぇ…… 山崎っ! 次で取り返してやるからな! 覚悟しとけよ!」
「そんなにムキにならなくても……」
「うるさい! 黙れ水谷! さっさと次だ、次ぎっ!」
「隊長……」
再び麻雀に夢中になる男達を、少女4人は呆れた顔で見る。
しかも、テーブルの周りは食い散らかされたお菓子と溢れたお酒で汚く、見るに耐えない。
為次の為に着替えたつもりのスイとシムリは、段々とムカついてきた。
せめて可愛いだの綺麗だのと言ってやれば良かったが、完全にアウトオブ眼中なのだ。
「むむむー!」
スイはソファで寝転びながら麻雀をする為次の前に行くと、仁王立ちでタブレットへと手を伸ばす。
「うにゃ―ぁ!」
叫びながら、タブレットを取り上げてしまった。
「あ?」
一瞬、為次は何が起きたのか理解できなかった。
突然、手に持っていたタブレットが消えたかと思えば、見上げる目線には怒ったスイの顔がある。
「むぅぅぅ!」
「へ?」
「おい山崎、お前の番だぞ」
「ちょっち待って、スイが」
為次は必死にタブレットを取り返そうとする。
一応は必死なのだが、起き上がろうとはせずに手を伸ばしてパタパタするだけだ。
「返してよー」
「何をしてるんだ?」
貞宗は振り向くと、為次とスイがじゃれ合っている。
……ように見えた。
「遊んでるのか? こっちは真剣に勝負してるんだぞ」
「違うよ、スイが、スイが」
「スイちゃん、どうしたんだ?」
と、正秀もタブレットから目を離し、為次の方を見る。
「ご主人様がスイを見てくれないのです! 新しい服を買ってもらったのですぅ!」
「なるほど、確かにおめかししても為次にシカトされちゃつまんねーよな」
「うぅ…… 違うのです!」
スイは自分でも分からなかった……
自分の主が困ることなどやってはならない。
それは頭では分かっている。
しかし、何故かどうにも我慢できない。
胸が苦しく締め付けられる思いに、戸惑うばかりだ。
好きと言う気持ちは理解しているが、人を愛する感情を知らなかったから。
「そうじゃないのです……」
そんなスイの気持ちをシムリは知ってか、少し悲しそうな目で見る。
「スイちゃん……」
「おい為次、なんか言ってやれよ」
「それどころじゃないって、明日も遊ぶ為には勝たねばならぬぞ」
為次と貞宗は、明日の特訓を賭けて対戦しているのだった。
為次が勝てば明日の特訓はとりあえずお預けにし、貞宗の奢りで街にて豪遊予定である。
貞宗が勝てば朝から晩まで猛特訓なうえに、便所と風呂の掃除である。
ついでに正秀は、そのしょーもない賭けに付き合わさせられていた。
「せっかく、お前の為に着替えて来てくれたんだぜ。為次」
仕方なく為次は、面倒臭そうにチラリとスイを見ると……
「んもー、はい、はい、カワイイ、カワイイ、良かったね」
褒めたつもりらしい。
「さっ、タブレット返してー」
「ムキィーなのですぅ!」
バチコーン!
「ぶへぇっ!」
スイは寝っ転がる主の顔面を、タブレットっで思いっ切り叩き付けてしまった。
ダメだと分かっていても、我慢ならなかった。
為次の無頓着な態度と言葉に、思わず切れてしまったのだ。
「スイちゃん!?」
突然のスイの行動に、流石の正秀も驚いた。
片や貞宗は呆れている。
「ったく、何やってんだ」
為次は顔面にめり込んだタブレットを、必死に取り剥がそうとしている。
それをスイは涙目で見ていた。
「うぐぐぐ…… スイは悪くないのです」
「そうよスイ、あんたは悪くないわ」
「タメツグさん、いくらなんでも酷いんだよ」
「女を敵に回すと、後で厄介だぞ山崎」
しかし、為次は今それどころではない。
「むぐぐぐぅ…… 取れにゃい」
「どれ、私が取ってやろう」
ベリ ベリ ベリ
シャルが力任せにタブレットを引っ剥がす。
無理に引っ張っても、一緒に為次が起き上がってくるので頭を押さえながら……
すると、その下からは四角い痕に潰れた為次の顔が出てきた。
「うぶぶぶ」
謎の効果音を発しながら鼻血を流していた。
タブレットの画面も鼻血で赤く染まっている。
「大丈夫か……?」
「自業自得よ。心配してやる必要なんてないわ、マサヒデ」
「くそっ! んも、返せっ」
そう言いながら、為次はタブレットを引ったくる。
その時、間近に見るシャルは実にセクシーであった。
何せ、引き締まった豊満な体にビキニ姿なのだ。
そこで為次はようやく気が付いた……
女性陣が何やら悩ましい格好をしている。
さっきまで麻雀に必死になっていたのだが……
今度は少女達に興味津々で、舐め回すように見つめるのだ!
泥と血にまみれたマヨーラを除いて。
「ぬぉっ! ぶふふっ!」
鼻血を流す為次は、更に鼻血を吹き出す!
慌ててタブレットで鼻を押さえてしまう。
「汚ねぇーな、ったくよ」
「大丈夫か……?」
「キモイわねぇ」
「なんだか、急にタメツグさんの目つきがいやらしくなったんだよ」
「はうぅ?」
為次は大ピンチであった。
このままでは女性に免疫が無いことが……
「それはもういい…… ぶふっ」
……で、それは第14話 奴隷その1を参照なのだ。
「どうしたんだ? 為次」
「なんでもないよ。と、とにかく…… その…… もう少し普通の格好をだね……」
「お気に召しませんか?」
「そうじゃないけど……」
為次は、つい顔を赤くして下を向いてしまう。
「あれれ? もしかして照れてるのかな? かな?」
シムリが言い寄って来た。
「!? 違っ」
「へーそうなんだー」
シムリは為次の隣に座り、腕に抱きついて上目遣いで見つめた。
為次の腕には柔らかな感触が伝わる。
見ると、肩のあらわになった着物から、豊かな胸のによって作られた谷間が姿を現している。
もう少し着物を下にズラせば先っぽの魅惑の果実まで……
思わず凝視してしまう。
「ぬっ、シムリ様だけズルイのです!」
スイも負けじと為次の隣に座ると、もう一方の腕に抱きついた。
その衝撃にシムリの胸の谷間から、スイのおっぱいに目線を移す為次。
そこはパラダイスであった!
腕に抱き付いた拍子に、ノースリーブ着物の横がちょっとめくれている。
今しがたまではトップからの攻撃であったが、次はサイドアタックだ。
これには、溢れそうな桃を掴み上げたい衝動に駆られてしまうのも致し方あるまい。
だが、それ以上のヤバイのは桃であった…… 否! 腿である!
ミニ着物の裾とニーハイ足袋が織りなす和風絶対領域!
それは最早芸術と言って良いであろう。
男ならば股間がビッゲストになること間違いない。
しかも、スイはその脚を絡ませようとしてくるのだ。
「ぬおおぉ、これは……」
「にゅふふふ、なのです」
「タメツグさん、コッチも見てほしんだよ」
ゴキッ!
シムリは為次の頭を掴むと、無理矢理自分の方へと向ける。
「ぐはっ! 首がぁ…… しかし、これはこれでぇ……」
「えへへ、だよぉ」
「私もなのですぅ」
右に左に忙しい為次。
しかも、正面にはビキニのお姉ちゃんが立っている。
鼻の下を伸ばし、デレデレになった為次に、スイとシムリはすっかりご機嫌だ。
「良かったな、スイちゃん、シムリちゃん」
ご機嫌になったスイとシムリに正秀も納得の様子だ。
「でも、こんな和風の服がよーあったなぁ」
為次はデレデレしながら訊いた。
「サダムネブランドよ」
と、マヨーラ。
「おう、どうだ? 俺のデザインした服は」
「はぁ!? 隊長さんがぁ!?」
「た、隊長が……?」
「中々のものだろ?」
「「…………」」
貞宗は自慢げであるが、正秀と為次はなんと答えていいのか分からなかった。
「……ま、まあいいや、とにかく鼻血が止まんないからヒールを」
「分かりましたです、エンチャントヒール」
スイはヒール付与する。
タブレットの画面にべっとりと付いた鼻血に。
「ささっ、ご主人様、遠慮せずにペロペロするです」
「あ、うん、ペロペロしちゃおっかな」
なんだかキャバクラ気分の為次は、タブレットの画面を舐め回す。
幸い軍用品の丈夫な物なので、壊れてはいないようだ。
だが、とんでもないミスを冒してしまった。
先程、タブレットを引き剥がそうとした時に気が付いていなかった。
電源ボタンを指で抑えっぱなしになっていたことを。
血で見えない画面には『電源を切る』と、表情されているのだ。
そんなこととは露知らず、ペロペロタップをしてしまった。
「おい山崎。お前、通信切れたぞ」
「は?」
為次は画面を見ると、確かにタブレットの電源は落ちている。
「ああっ、なんでぇ!?」
「こりゃ、勝負は無効だな」
「えー、俺のが勝ってたでしょ!」
「結果は最後まで分からんぞ」
「そうだぜ、それに落ちたのは為次だろ」
「ぬぐぐぐ」
結局、賭けは無効となり明日は当初の予定通りに特訓と改修作業となった。
ガッカリする為次ではあるが、両手に花でご満悦状態でもある。
そんなイチャイチャする3人を羨ましそうに見るマヨーラ。
自分も褒めてもらいたいと思っていた。
そんな想いが通じたのだろうか?
正秀が呼び掛けてくる。
「なあマヨーラ」
「え? え? 何かしら!(もしかして、あたしに見惚れちゃった!?)」
「着替えて来たらどうだ?」
マヨーラは陸上艇に撥ねられ、泥と血だらけなのを思い出した。
「そうね…… そうするわ……」
呟きながら、トボトボと着替えに行くのであった。
……………
………
…
その後……
買い物から帰って来たクリスは、食い散らかしと鼻血で汚れたリビングを見て激怒していた。
皆は小一時間、こっ酷く叱られるのだった……
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