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異世界編 2章
第112話 異界その5
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「どうぞ、こちらです」
お食事の終わった為次は、ティティに連れられ正秀の元へ。
木々に張り巡らせられた吊り橋の道を通って、3本先の木に建つ来客用の建物へと向かっていた。
辺りには、エルフがウロウロしながら木の実を取ったり、洗濯などをしている。
「ねぇ、ティティ達は千年以上も、ここで生活してるんでしょ?」
「もっと昔かららしいですよ、何万年も経っているそうです」
「まじすか? その割には文明が発達してないね」
「私達は自然と共に生きる種族ですから」
「へー」
一応は納得したつもりの為次。
しかし、自然とか関係無いだろうと思う。
何万年も経ってこのような原始的な生活なのかと。
人間、もとい寿命を知らない知的生命体は進化を忘れたのだろうか?
それとも、争い事も無く外敵の居ない種族とは、このようなものかも知れない。
何れにせよ、自分には関係の無いことである。
だから、それ以上は聞かなかった。
「しっかし、こんなことならレオを持って来れば良かった」
「レオ? あの戦車ですか?」
「そうだよ、って、戦車は知ってるんだ?」
「はい、原始的な陸上兵器ですよね」
「は? 今なんて?」
「えへへー」
ティティは笑って誤魔化すだけで、為次の質問には答えなかった。
「ねぇ! 原始的っ言ったよね! 今言ったよね?」
「そうでしたっけ?」
「何それ、意味分かんない。レオは現代技術の粋を集めた最強兵器なんだよ!」
そう言った後に小声で「設計は古いけど……」と、付け加えた。
戦車のことになると、ちょっとムキになる為次。
昔は戦車不要論などと下らない考えもあった。
それでも、第三次世界大戦が始まり、地上戦が主流になると必要不可欠な兵器と再認識されたのだ。
それを原始的などと言われてしまった。
しかも、こいつら原始的な生活送ってんな、などと考えていた直後だ。
「ほら、あそこですよ」
話をはぐらかし、目的地を指すティティ。
「えっ…… あ、うん」
「えへ……」
「…………」
それ以上は答えてくれず、建物の前まで着いてしまった。
入口の前に立つと、中からミミィの声が聞こえてくる。
何やら、正秀に話しかけているようだが……
「ん? ミミィ居るのか?」
「そのようですね」
ガチャ
扉を開け中の様子を伺うと、床で正秀が転がっている。
その傍らではミミィが、しゃがみ込んでブツブツ言っている。
部屋の片隅にはジャスティスプリンスと特売品が立て掛けてあった。
「ぐぉ~、ぐぉ~、むにゃむにゃ」
「起きて下さい! 仕事ですよ! マサヒデさん!」
バシッ! バシッ!
どうやら、寝ている正秀を必死に叩き起こそうとしているみたいだ。
だが、一向に起きる気配は無い。
「何してんの? ミミィ」
為次の声に振り向くミミィ。
「はっ!? タメツグ。何しに来たのですか?」
「何って、ミミィに襲われている仲間を助けに」
「誰が襲っているのですか! 起こしているだけです。適当なことを言わないで下さい!!」
「あ、そう」
「くっ、あなたと言いう人は……」
部屋の中を見回すと、他には誰も居ない。
2人だけらしい。
「マサは一人で呑んでたのかな?」
「先程までは、他の方がお相手をしていたはずですが……」
「うん」
「マサヒデさんが寝てしまったので、戻ったみたいですね」
「相手ってお姉さん?」
「はい、3人程いらっしゃましたが」
「マサ一人にお姉さん3人」
「はい」
「マジか…… 俺の相手は子供とババァかよ」
「ミミィさんも居ましたよ」
「論外」
「なんですって!」
「まあまあ、それよりミミィさんもマサヒデさんに用があるんじゃないですか?」
「べ、別に用って分けでは……」
「ミミィもマサに魔獣退治をさせたくて、起こしてるんじゃないの?」
「それは……」
「1人じゃ危ないもんねー、俺も手伝おうか?」
「結構です! あなたの力は借りません!」
「そすか」
「タメツグさん、初めから手伝う気は無いですよね」
「どうだろうねー」
「ふんっ、あの程度の魔獣如き、私1人でじゅうぶんです!」
「じゃあ、なんでマサを」
「……あれです、こんな所で寝て、風邪を引くといけないと思いまして」
「加護を受けてるから大丈夫だろうけどね。ミミーは、やーさしーなぁー」
「…………」
ミミィは無言で立ち上がると、玄関扉へ。
「もう、結構です」
「なんにせよ、マサが寝てるから討伐は明日かな」
「ふんっ!」
そっぽを向いて扉を開ける。
「なぁ、少しは素直になれよ」
「…………」
バタンッ!
何も言わずにミミィは出て行ってしまった。
「ティティ」
「はい?」
「俺は嫌な奴だよな」
「…………」
何も答えてはくれなかった……
……………
………
…
それからしばらく、正秀が起きるのを待っていた。
しかし、全く起きる気配は無い。
「全然、起きないね」
「ですね」
「ミミィ何処に行ったかな?」
「気になりますか?」
「さあ……」
「きっと、その辺で稽古でもしていますよ」
「そう」
「様子を見に行ってみますか?」
「別に、いいや」
「素直じゃないのは、どちらでしょうか?」
「俺は素直でなくとも、最低限の選択はできるつもりだよ。勝手に行ってなきゃいいけど……」
「ミミィさんは真面目ですから」
「ねぇ、魔獣ってどんな奴?」
「エキドナは、ご存知ですか?」
「エキドナ? 知らん」
「上半身は女性の姿で下半身がヘビです」
「上半身は女性?」
「はい」
「女性?」
「……はい」
「マサが起きたら一緒に見に行こう、そうしよう」
「タメツグさん…… 相手は化物ですよ……」
そんなどうしようもない会話の途中だった。
バタンッ!
突然、扉が勢いよく開いた。
同時に男のエルフが血相を変えて入って来た。
「マサヒデさんは居ますか!?」
為次を放り投げて、腹を蹴っ飛ばしたエルフだ。
「お、あんたか」
「何かありました?」
「そ、それが大変なんです! ミミィ様が1人で魔獣を討伐に……」
「まぁ、それは確かに大変ですね」
「はい、リリーナ様に報告したところ、マサヒデさんとタメツグ…… タメツグさんにお知らせするようにと」
「タメツグでいいよ」
男エルフは気まずそうに為次を見ている。
どうやら、魔獣討伐の依頼を頼んだことを聞かされたらしい。
「はい…… マサヒデさんは?」
為次は転がっている正秀を指す。
「ほら、寝てる」
正秀に駆け寄る男エルフ。
「マサヒデさん! 起きて下さい! マサヒデさん!」
必死に起こそうと男エルフは正秀を揺さぶる。
しかし、相変わらず起きる気配は無い。
「色々やったけどねー、全然起きないの」
「私達も困っていました」
「ま、起きるまで待つしかないよ。明日には起きるでしょ」
「そんな悠長なことを! それではミミィ様が!」
「じゃあ、早く行って連れ戻せばいいじゃない」
「我々が言って聞くような方ではありません。それに、今度こそ全滅する可能性も……」
「なんだぁ、痛い目に合ってるのか」
「はい……」
「こんなことなら、やっぱりレオを持ってくれば良かったのに」
「マジックシールド持ちですから効果ありませんよ」
ティティは言った。
「ふふっ、何を隠そう砲弾にはアンチマジックシールドが付与してあるのだ」
「そうんなんですか」
「どうだ! 戦車の偉大さを見直したか!」
まだ、戦車をバカにされたことを根に持っていたらしい。
ここぞとばかりに、自慢げにほざく。
「戦車さえあれば、魔獣など一撃なのだよ、うわはははっ」
「でも、今から取に行っても間に合いませんね」
「そだねー、諦めるしかないね」
それを聞いた男エルフは為次の前に立つ。
「お願いしますタメツグさん! ミミィ様を助けて下さい!」
そう言いながら、頭を下げた。
「……俺なんかが行っても」
「今、頼れるのはタメツグさんだけなんです!」
頭を上げると、目をつむる男エルフ。
「どうぞ殴って下さい、あなたにやったことは謝ります! だから……」
「うーん……」
どうして良いのか分からない為次は困った顔でミミィを見た。
そこには、澄ました顔で何かを言おうとしている姿がある。
「タメツグさんは戦車が無いと、何もできないのです」
「……? ……あ! そ、そんなことはないのだー」
為次は気が付いた。
自分はミミィを助けに行きたいが、何かしらの言い訳が欲しかった。
散々悪態を付いて、今更はい分かりましたと素直に言うのが恥ずかしい。
それをティティはすぐに感じ取り芝居をしてくれている、と。
「さっきから戦車、戦車って子供みたいです」
「なにおー」
「一人じゃ何もできないから、言い訳ばかりですね」
「くそー、バカにしたなー、それなら俺様が強いとこを見せてやるぜ」
男エルフを見ると、右手を振り上げる。
ぺちり
頬を撫でる様に叩いた。
目を開けた男エルフは呆けた顔で為次を見る。
「……?」
「よ、よし、仕返しはこのくらいで許してやろう」
「何を言って?」
「俺は今から魔獣を退治してくる」
「え?」
「お前の為じゃないぞ! そこの生意気な小娘に目に物を見せてやるのだ」
「タメツグさん……」
「よし、じゃあ案内よろ」
「はい! 分かりました!」
「あ、それと、マジで呼び捨てでいいから」
「は、はい」
「あー、あと敬語も止めて、キモイから」
「そうですか…… あ、いや…… そうか分かったタメツグ」
親指を立ててグッジョブする為次。
「んじゃ、ちょっと行ってくるわ」
とミミィに言った。
「はい。行ってらっしゃいませ」
「よし、こっちだ付いて来てくれ」
「はいはい」
為次は立て掛けてある特売品を掴むと男エルフの後を追い、外へと駆け出す。
「タメツグさーん!」
後ろから、ティティの叫ぶ声が聞こえる。
「なーにー?」
「マサヒデさんが起きたら、私達も直ぐに追いかけますから!」
「はいはーい」
「それまで、なんとか持ちこたえて下さーい」
「はーい」
走って行く2人を見送るティティは呟く。
「ほんと、素直じゃないですね」
と。
そんなことを言われているのを知らない為次。
横で一緒に走る男エルフを見ながら思うのだ。
こいつにも名前付けてやれよ。
……と。
お食事の終わった為次は、ティティに連れられ正秀の元へ。
木々に張り巡らせられた吊り橋の道を通って、3本先の木に建つ来客用の建物へと向かっていた。
辺りには、エルフがウロウロしながら木の実を取ったり、洗濯などをしている。
「ねぇ、ティティ達は千年以上も、ここで生活してるんでしょ?」
「もっと昔かららしいですよ、何万年も経っているそうです」
「まじすか? その割には文明が発達してないね」
「私達は自然と共に生きる種族ですから」
「へー」
一応は納得したつもりの為次。
しかし、自然とか関係無いだろうと思う。
何万年も経ってこのような原始的な生活なのかと。
人間、もとい寿命を知らない知的生命体は進化を忘れたのだろうか?
それとも、争い事も無く外敵の居ない種族とは、このようなものかも知れない。
何れにせよ、自分には関係の無いことである。
だから、それ以上は聞かなかった。
「しっかし、こんなことならレオを持って来れば良かった」
「レオ? あの戦車ですか?」
「そうだよ、って、戦車は知ってるんだ?」
「はい、原始的な陸上兵器ですよね」
「は? 今なんて?」
「えへへー」
ティティは笑って誤魔化すだけで、為次の質問には答えなかった。
「ねぇ! 原始的っ言ったよね! 今言ったよね?」
「そうでしたっけ?」
「何それ、意味分かんない。レオは現代技術の粋を集めた最強兵器なんだよ!」
そう言った後に小声で「設計は古いけど……」と、付け加えた。
戦車のことになると、ちょっとムキになる為次。
昔は戦車不要論などと下らない考えもあった。
それでも、第三次世界大戦が始まり、地上戦が主流になると必要不可欠な兵器と再認識されたのだ。
それを原始的などと言われてしまった。
しかも、こいつら原始的な生活送ってんな、などと考えていた直後だ。
「ほら、あそこですよ」
話をはぐらかし、目的地を指すティティ。
「えっ…… あ、うん」
「えへ……」
「…………」
それ以上は答えてくれず、建物の前まで着いてしまった。
入口の前に立つと、中からミミィの声が聞こえてくる。
何やら、正秀に話しかけているようだが……
「ん? ミミィ居るのか?」
「そのようですね」
ガチャ
扉を開け中の様子を伺うと、床で正秀が転がっている。
その傍らではミミィが、しゃがみ込んでブツブツ言っている。
部屋の片隅にはジャスティスプリンスと特売品が立て掛けてあった。
「ぐぉ~、ぐぉ~、むにゃむにゃ」
「起きて下さい! 仕事ですよ! マサヒデさん!」
バシッ! バシッ!
どうやら、寝ている正秀を必死に叩き起こそうとしているみたいだ。
だが、一向に起きる気配は無い。
「何してんの? ミミィ」
為次の声に振り向くミミィ。
「はっ!? タメツグ。何しに来たのですか?」
「何って、ミミィに襲われている仲間を助けに」
「誰が襲っているのですか! 起こしているだけです。適当なことを言わないで下さい!!」
「あ、そう」
「くっ、あなたと言いう人は……」
部屋の中を見回すと、他には誰も居ない。
2人だけらしい。
「マサは一人で呑んでたのかな?」
「先程までは、他の方がお相手をしていたはずですが……」
「うん」
「マサヒデさんが寝てしまったので、戻ったみたいですね」
「相手ってお姉さん?」
「はい、3人程いらっしゃましたが」
「マサ一人にお姉さん3人」
「はい」
「マジか…… 俺の相手は子供とババァかよ」
「ミミィさんも居ましたよ」
「論外」
「なんですって!」
「まあまあ、それよりミミィさんもマサヒデさんに用があるんじゃないですか?」
「べ、別に用って分けでは……」
「ミミィもマサに魔獣退治をさせたくて、起こしてるんじゃないの?」
「それは……」
「1人じゃ危ないもんねー、俺も手伝おうか?」
「結構です! あなたの力は借りません!」
「そすか」
「タメツグさん、初めから手伝う気は無いですよね」
「どうだろうねー」
「ふんっ、あの程度の魔獣如き、私1人でじゅうぶんです!」
「じゃあ、なんでマサを」
「……あれです、こんな所で寝て、風邪を引くといけないと思いまして」
「加護を受けてるから大丈夫だろうけどね。ミミーは、やーさしーなぁー」
「…………」
ミミィは無言で立ち上がると、玄関扉へ。
「もう、結構です」
「なんにせよ、マサが寝てるから討伐は明日かな」
「ふんっ!」
そっぽを向いて扉を開ける。
「なぁ、少しは素直になれよ」
「…………」
バタンッ!
何も言わずにミミィは出て行ってしまった。
「ティティ」
「はい?」
「俺は嫌な奴だよな」
「…………」
何も答えてはくれなかった……
……………
………
…
それからしばらく、正秀が起きるのを待っていた。
しかし、全く起きる気配は無い。
「全然、起きないね」
「ですね」
「ミミィ何処に行ったかな?」
「気になりますか?」
「さあ……」
「きっと、その辺で稽古でもしていますよ」
「そう」
「様子を見に行ってみますか?」
「別に、いいや」
「素直じゃないのは、どちらでしょうか?」
「俺は素直でなくとも、最低限の選択はできるつもりだよ。勝手に行ってなきゃいいけど……」
「ミミィさんは真面目ですから」
「ねぇ、魔獣ってどんな奴?」
「エキドナは、ご存知ですか?」
「エキドナ? 知らん」
「上半身は女性の姿で下半身がヘビです」
「上半身は女性?」
「はい」
「女性?」
「……はい」
「マサが起きたら一緒に見に行こう、そうしよう」
「タメツグさん…… 相手は化物ですよ……」
そんなどうしようもない会話の途中だった。
バタンッ!
突然、扉が勢いよく開いた。
同時に男のエルフが血相を変えて入って来た。
「マサヒデさんは居ますか!?」
為次を放り投げて、腹を蹴っ飛ばしたエルフだ。
「お、あんたか」
「何かありました?」
「そ、それが大変なんです! ミミィ様が1人で魔獣を討伐に……」
「まぁ、それは確かに大変ですね」
「はい、リリーナ様に報告したところ、マサヒデさんとタメツグ…… タメツグさんにお知らせするようにと」
「タメツグでいいよ」
男エルフは気まずそうに為次を見ている。
どうやら、魔獣討伐の依頼を頼んだことを聞かされたらしい。
「はい…… マサヒデさんは?」
為次は転がっている正秀を指す。
「ほら、寝てる」
正秀に駆け寄る男エルフ。
「マサヒデさん! 起きて下さい! マサヒデさん!」
必死に起こそうと男エルフは正秀を揺さぶる。
しかし、相変わらず起きる気配は無い。
「色々やったけどねー、全然起きないの」
「私達も困っていました」
「ま、起きるまで待つしかないよ。明日には起きるでしょ」
「そんな悠長なことを! それではミミィ様が!」
「じゃあ、早く行って連れ戻せばいいじゃない」
「我々が言って聞くような方ではありません。それに、今度こそ全滅する可能性も……」
「なんだぁ、痛い目に合ってるのか」
「はい……」
「こんなことなら、やっぱりレオを持ってくれば良かったのに」
「マジックシールド持ちですから効果ありませんよ」
ティティは言った。
「ふふっ、何を隠そう砲弾にはアンチマジックシールドが付与してあるのだ」
「そうんなんですか」
「どうだ! 戦車の偉大さを見直したか!」
まだ、戦車をバカにされたことを根に持っていたらしい。
ここぞとばかりに、自慢げにほざく。
「戦車さえあれば、魔獣など一撃なのだよ、うわはははっ」
「でも、今から取に行っても間に合いませんね」
「そだねー、諦めるしかないね」
それを聞いた男エルフは為次の前に立つ。
「お願いしますタメツグさん! ミミィ様を助けて下さい!」
そう言いながら、頭を下げた。
「……俺なんかが行っても」
「今、頼れるのはタメツグさんだけなんです!」
頭を上げると、目をつむる男エルフ。
「どうぞ殴って下さい、あなたにやったことは謝ります! だから……」
「うーん……」
どうして良いのか分からない為次は困った顔でミミィを見た。
そこには、澄ました顔で何かを言おうとしている姿がある。
「タメツグさんは戦車が無いと、何もできないのです」
「……? ……あ! そ、そんなことはないのだー」
為次は気が付いた。
自分はミミィを助けに行きたいが、何かしらの言い訳が欲しかった。
散々悪態を付いて、今更はい分かりましたと素直に言うのが恥ずかしい。
それをティティはすぐに感じ取り芝居をしてくれている、と。
「さっきから戦車、戦車って子供みたいです」
「なにおー」
「一人じゃ何もできないから、言い訳ばかりですね」
「くそー、バカにしたなー、それなら俺様が強いとこを見せてやるぜ」
男エルフを見ると、右手を振り上げる。
ぺちり
頬を撫でる様に叩いた。
目を開けた男エルフは呆けた顔で為次を見る。
「……?」
「よ、よし、仕返しはこのくらいで許してやろう」
「何を言って?」
「俺は今から魔獣を退治してくる」
「え?」
「お前の為じゃないぞ! そこの生意気な小娘に目に物を見せてやるのだ」
「タメツグさん……」
「よし、じゃあ案内よろ」
「はい! 分かりました!」
「あ、それと、マジで呼び捨てでいいから」
「は、はい」
「あー、あと敬語も止めて、キモイから」
「そうですか…… あ、いや…… そうか分かったタメツグ」
親指を立ててグッジョブする為次。
「んじゃ、ちょっと行ってくるわ」
とミミィに言った。
「はい。行ってらっしゃいませ」
「よし、こっちだ付いて来てくれ」
「はいはい」
為次は立て掛けてある特売品を掴むと男エルフの後を追い、外へと駆け出す。
「タメツグさーん!」
後ろから、ティティの叫ぶ声が聞こえる。
「なーにー?」
「マサヒデさんが起きたら、私達も直ぐに追いかけますから!」
「はいはーい」
「それまで、なんとか持ちこたえて下さーい」
「はーい」
走って行く2人を見送るティティは呟く。
「ほんと、素直じゃないですね」
と。
そんなことを言われているのを知らない為次。
横で一緒に走る男エルフを見ながら思うのだ。
こいつにも名前付けてやれよ。
……と。
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