異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第113話 蛇女その1

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 目の前には紫色に輝く結晶石エレメンタルストーンが鎮座している。
 その石には得体のしれない怪物が長い胴体を巻き付け、1人の女性エルフを睨んでいた。

 「今度こそあなたを打ち倒してみせます! 覚悟して下さい」

 彼女の言葉を怪物は理解しているのだろうか?

 上半身は羽の生えた美しい女性の姿ではある。
 だが、その頭からは「フシュー、シュルシュル」と鳴く声が聞こえる。
 下半身が毒蛇であり、異形の姿を醸し出していた。
 それこそが、魔獣エキドナの本質かも知れない。

 「仲間達の無念、今こそ果たしてみせます!」

 ミミィは1人、エキドナの討伐に来ていた。
 里から北東へ行った、4つある結晶石の内の一つだ。
 尚、この島には東西南北は無い。
 ただ単に、地図上で右上の端に位置する場所である。

 「行きます!」

 片手剣を構え、果敢に立ち向かう。
 それを嘲笑うかのように「ヒィィヒヒィッ」と、鳴きながらエキドナは地面を滑り出した。

 「はぁっ!」

 向かい来るエキドナに鋭い斬撃を繰り出す。

 ブンッ ドカッ!!

 「ぎぃぁぁぁっ!」

 剣は確実に胴体を捉えていた。
 しかし、ガキッと金属にでも当たるかのように弾かれる。
 そのまま体当たりをされ、ミミィの体ごと弾き飛ばされてしまった。

 あまりにも体格差が違いすぎる。
 エキドナの上半身が人間女性の姿と言えども、ミミィの数倍はあった。
 下半身の大蛇を入れれば雄に30メートルは超えるだろう。

 「あぐっ、ぐぁぁぁ」

 衝突による凄まじい衝撃が襲い。
 更には地面に叩きつけられ、呼吸もまともにできない。
 苦しみ悶えるミミィ。

 「はぁ、はぁ……」

 それでも、戦士としての意地で力を振り絞る。
 膝を付きながらも、剣を支えに細い腕で立ち上がろうとする。

 「やはり、剣だけでは通用しませんか……」

 高レベル魔獣特有のマジックシールド。
 インパクト攻撃もエネルギー攻撃も防ぐことが可能だ。
 とは言え、万能でもない。
 ある程度の力を加えれば、打ち破ることもできる。
 問題なのは常時発動状態であることだ。
 シールドブレイクさせても、同時に新たなシールドを展開されてしまう。
 特にエネルギー攻撃に有効であり、ほぼ全ての攻撃を拡散させてしまうのだ。

 ミミィの力程度では、どうすることもできない。
 それでも、必死に立ち上がると目を閉じて精神を集中する。

 「精霊達よ……」

 すると、体の周りに幾つもの光の玉が現れる。
 その光の玉が左手へと集まった。
 精霊魔法バージョンのアンチマジックシールドである。

 「やぁぁぁぁぁっ!」

 再び果敢に迎え撃つ。

 エキドナは「ヒヒィヒィー」と笑いながら攻めて来た。
 蛇のように地面を這いずりながら、鋭い爪の付いた手でミミィを切り刻もうとする。

 ブォンッ

 間一髪で避けることができた。
 その隙きに懐へ潜り込むと、左手から光の玉を放つ。
 同時に同じ箇所へ斬撃が走る!

 ザシュッ!

 お腹を斬られてしまったエキドナ。
 「ぎいやぁぁぁイヒィ」と不気味な叫びを上げる。

 どうやら、怒っている様子だ。
 「ギギギギィ」と鳴きながら、ミミィを睨む。

 今度は両手振りかざし、留めどない猛攻を繰り出してきた!

 ブンッ ブンッ ブンッ

 辛うじて避けるミミィ。
 それでも、隙きを見ては魔法と斬撃で反撃をしかける。

 「やっ! はぁ! とうっ」

 僅かづつではあるが、エキドナを斬りつけることができた。

 ……………
 ………
 …

 ―― 30分後

 「ハァ、ハァ、ハァ……」

 斬っても、斬っても、エキドナは倒れる様子を見せない。
 攻撃が表面にしか届いていない。
 肩で息を切らしながら、なんとか攻撃をしのいではいるが……

 「くっ(脚に力が…… でも、ここでくじける分けには行きません)」

 体力にも限界があった。
 焦りの表情が顔に浮かぶ。

 その時だった……

 ブシュ!

 疲れた体が回避を鈍らせた。
 エキドナの爪が太ももをえぐる。

 「ぎゃあああぁぁっ!」

 切られた箇所から血が吹き出る。
 内側広筋以外の筋肉と血管が切断されてしまった。
 激痛が襲い、無残にも倒れてしまう。

 「ぐぁぁあぁ! あ、足がぁぁぁ! ひぎぃぃぃ……」

 とめどなく流れ出る血を小さな手で押さえ、もがき苦しむ。
 先程まで手に持っていたはずの剣は、かたわらに転がっていた。

 そんな無惨な姿を晒すミミィにエキドナは近づき、舐め回すように見つめる。
 そして、「ひひひぃ」と不気味な笑い声を上げ、尻尾を巻き付けてきた。

 「ああああっ! いぎっ! あぎゃぁ!!」

 蛇に絡まれ、宙に吊るされるとジワジワと締め付けられる。
 その力に全身の骨が軋みを上げる。

 ギシッ ギシッ バキッ ボキッ!

 腕の骨が折れ、あばら骨が、一つ、また一つと砕ける。

 「ガハッ! ウゲェッ!」

 最早もはや、悲鳴にならない叫び声を上げ、死の恐怖が襲い来る。
 それでも戦士としての誇りやプライドは失ってはいない。
 無様な最後は晒すまいと、必死に耐え凌いでいた。

 次第に意識が遠のいて行く……

 そんな時だった……

 何故だかは分からない。
 ふと、為次が最後に言った言葉が頭をよぎる。

 「なぁ、少しは素直になれよ」と。

 「うぅ……(素直に……)」

 どうしてだろう?
 突如として涙が溢れだす。

 「嫌だ……(死にたくない)」

 もう、自分でも何を叫んでいるのかは分からなかった。
 否、知りたくはない。

 だけど……

 叫ばずにいられなかった。

 「嫌だぁ、痛い! 痛いっ! 死にたくない! 助けて! お願い! 誰かぁ、誰かぁ!いやぁぁぁ! 助けてぇ! タメツグ!!」

 無意識の内に、大嫌いな男の名前を叫んでいた。
 顔も見たくない奴だったのに。

 ―― 斬 ――

 次の瞬間……

 不意に体が軽くなった。
 締め付けられていた苦しみから解き放たれる。

 「え?」

 何が起こったのか分からなかった。
 ドサリと地面へ落ちたのは分かるが……
 痛みよりも、今起こったことが理解できずに混乱する。

 「あ……」

 先程まで自分を苦しめていたエキドナを見ると……
 尻尾の3分の1くらいが切断され、のた打ち回っていた。
 その前には、見たくも無い男が転びそうになりながら立っている。

 ドサッ

 「あいた」

 転んだ。

 「タメツグ……」

 駆け付けた為次は、いつもの空中回転斬りで尻尾を切断した。
 だけど、勢い余って着地時に転びそうになったのだ。
 まあ、結局は転んだけど。

 「あ、はい」

 返事をしながら、起き上がると振り向く為次。
 その顔は苦悶に満ちている。

 「タメツグ…… どうして、ここに」

 「まあ」

 ミミィの問いには答えず、再びエキドナに目を向ける為次。

 「許さん! 許さんぞぉ!」

 エキドナを睨むその目は怒りに満ちている。
 あまりにも衝撃的だった。
 悔しくて、悔しくて、仕方がない。

 「なんだ貴様はっ!」

 そう言いながら、エキドナに刀を向ける。

 「何故だ! 何故、ブラをしている!」

 事実、エキドナは上半身のおっぱいに、ビキニのようなのを着ていた!
 あまりにも、衝撃的であった。
 期待して、楽しみにしていたのに、このザマである。
 怒らずにはいられない。
 しかも、全身が血まみれでキモイ。
 ミミィにちょこちょこと斬られたからだ。

 「魔獣のくせに、服とか着るんじゃない!」

 まさに正論としか言いようがない!

 「バカ…… なのですか……?」

 「はぁ?」

 「だいたい、何をしに来たのですか」

 「何って、助けてっつってるから助けてあげたでしょ」

 「だ、誰が、助けてなどと……」

 「…………」

 「ううぅ…… ぐすっ」

 涙が止まらない。
 それは痛みや恐怖の涙では無かった。
 嫌いな男を見ると嬉しくてたまらない。
 抑えきれない涙が溢れだすのだ。

 「ミミィ様」

 「え?」

 いつの間にだろう?
 傍らには男エルフが寄り添っている。

 「男エルフ……」

 「直ぐにヒールをかけます」

 「ありがとう、男エルフ」

 「ちょ待って、そいつのことミミィも男エルフって呼ぶの……?」

 あまり突っ込んでほしくないことを為次は訊いてしまった。

 「ああ、私は男エルフだからな」

 「いやいやいや、おかしいでしょ!」

 「そうか?」

 「もういいよ! お前には俺の友人の名前を付けてやるよ」

 「なんと」

 「お前はピコ(仮)だ」

 「そうか、私はピコ(仮)か」

 尚、為次の友人とはゲーム機である。
 ピコピコから取った、ピコらしい。

 「まったく」

 なぜゆえに名前を付けないと悩む為次。
 それは単純に面倒なだけとは知る由もない。

 それはともかく。

 「精霊よ…… ヒール」

 優しい光が、ミミィを包み込む。
 すると、見るみる内に傷が治って行く。

 「ありがとう、ピコ(仮)」

 「ご無事で何よりです」

 「まあいい、とにかく、さっさと逃げようか」

 ミミィが動ける程度には回復したのを確認した為次は、さっそく逃げる算段を提案した。
 もちろんミミィは納得行かない様子である。

 「逃げるのですか!?」

 「だって、マサが来てないんだもん」

 「だもんって…… あっ、危ない!」

 「ん?」

 振り向くと、直ぐそばまでエキドナが迫っていた。
 尻尾を結構切られて、激怒している様子だ。
 鋭い爪が為次に襲い掛かる。

 「あぶね」

 間一髪で避ける。
 と、同時にパチンと納刀した。

 ズシャッ!

 エキドナの腕から血が流れ、ボトリと地面に落ちる。
 避けながら、腕を抜刀斬りで切断したのだ。
 右腕を失い「ヒギィヒヒヒィ」と悲痛な鳴き声で叫けんでいる。

 「す、凄い……」

 「彼は想像以上ですね、ミミィ様」

 「ええ……」

 もう、エキドナは怒りに我を忘れ、為次に突進してくる。
 それをヒラリと避けながら腹を斬る。
 既に痛みも感じないのだろうか?
 斬られた腹から腸を垂れ流しながら、襲って来るのだ。

 「ちぇ、逃がしてくれないのかぁ」

 エキドナと対峙する為次。

 今ここで、決着を付けようとするのであった。
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