異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 2章

第117話 帰宅

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 レオパルト2は森の一泊旅行を終え、ポンタの街へと到着した。

 直接、貞宗宅の前に降りようかと思ったが、今日は風が強いので一旦街の外で着陸をしての帰還であった。
 ポンタの街の道幅は広いのだが、風に流されて建物にぶつかるのを懸念したからだ。
 建物が壊れるのは構わないが、戦車が壊れるのは避けたい。
 もっとも戦車本体は建物程度で壊れる心配は無いだろうが、ブースター部分が脆いのだ。

 「着いた」

 「1日しか経ってないのに、なんだか久しぶりな気分だぜ」

 「10話使ったからね」

 「お、おう……」

 家の前では、エンジン音を聞き付けたのだろうか?
 貞宗とマヨーラが出迎えてくれている。
 早速、ハッチから身を乗り出して手を振る正秀。

 「隊長! 只今、帰還しましたぁ!」

 「ああ、ご苦労だったな」

 「お帰りなさい、正秀」

 「おう、ただいまなんだぜ。マヨーラ」

 為次は、まだハッチを閉めたまま車内からペリスコープを覗いていた。
 スイが見当たらないのが、少し不安だったから……
 代わりに正秀が訊いてくれる。

 「スイちゃんは?」

 「スイなら、ほらそこよ」

 そう言いながら、マヨーラは少しだけ開いた車庫の大扉を指す。

 「何処だ?」

 見ると両開きの扉が僅かに開いている。
 その隙間から目を光らせて、こちらを睨むスイが居た。

 「スイ! いい加減に出て来なさいよっ」

 マヨーラがスイに向かって叫んだ。

 「むむむっ、ご主様は薄情なのです。直ぐに戻って来るって言ってたのです!」

 「昨日の今日じゃない」

 「それに、出て来てくれないのです!」

 「あんたが睨んでるからでしょ……」

 「むむー」

 ウィィィン

 レオパルト2を睨んでいると、運転手ハッチが開き始めた。
 そこから、目の所まで為次が頭を覗かせる。

 「はうっ、ご主人様!」

 「!」

 あるじの頭を見たスイは、いても立っても居られずに駆け出してしまう。
 
 すると……

 ウィィィン

 頭を引っ込めて、またハッチが閉まり始める。

 「なうっ!?」

 慌てて猛ダッシュするスイ。
 ハッチが閉まる寸前に、ガシッと押さえた。

 ヴヴヴグィィィン

 スイのバカ力で掴まれたハッチは閉まるに閉まれない状態となり、変な音を立て始めた。

 「ぬぬぬ、逃がさないのですぅぅぃ」

 「うわ、止めろスイ。モーターが逝かれるってば」

 「だったら、今直ぐ出て来てスイを抱きしめるのですぅぅくぁぁぁ!」

 「ちょっと意味分かんない」

 運転席のスライド電動ハッチが唸りを上げる。
 それでも、スイは無理矢理こじ開けようと踏ん張るのだ!

 「うぎぎぎぎぃ……」

 「分かった、分かったから、手を離してよ」

 流石にこのままだと壊れそうなので、仕方なくハッチを開く。
 ようやく開いたかと思えば、スイは手を突っ込んで為次の胴体を掴んだ。

 「やりました! 捕まえたのです」

 「ちょ」

 「ささっ、お疲れでしょう。出て来てスイと一緒に寝床へっ!」

 早く出て来て欲しいので、引っ張り始める。

 「痛たたたた、待って、ちょっと待っぁががが!」

 「ご主人…… 様……!」

 シートは密閉時の位置にある。
 それでなくとも狭いので、普段からその辺に頭をぶつけてしまう。
 その為、緩衝材が付けてある程だ。

 グキッ! ゴキ! グキ!

 突然、無理に引っ張られてしまったので、ハッチ脇に頭が引っ掛かって出るに出れない。
 首が変な方に曲がっている……

 「あががが…… 首がぁ……」

 「は、早くスイにお世話をさせるのです」

 「大丈夫なのか?」

 正秀は装填手席から、様子を伺ってみた。

 「痛い、痛い」

 「むぎぃぃぃ」

 「お、おい…… 為次、首が変に曲がってるぜ」

 このままでは本当に首の骨が折れてしまいそうだ。
 ……なんだかヤバそうな感じである。
 加護を受けた人間ならば首の骨が逝った程度では死なないであろう。
 しかし、しばらくは半身不随であろうし、車内で糞尿を垂れ流されては堪ったものではない。

 「スイちゃん……」

 正秀は仕方なさそうに降車すると、車体正面へ回りスイの両脇を抑えた。
 それでも、手を離そうとはしない。
 せっかく捕まえたのに、ここで逃してはならないとスイも必死なのだ。

 「離すんだスイちゃん! 為次はすぐに外に出すから!」

 「イヤなのですー! ご主人様と一緒がいいのです!」

 「分かってる、一緒だから、な?」

 「うごぉ、だじげでぇ」

 「帰って早々何やってるのよ……」

 「ったく、どうしようもねーな」

 出迎えてくれた2人も呆れ気味だ。

 そんなこんなで、しばらく謎の格闘が続いた……

 ……………
 ………
 …

 「はぁ、死ぬかと思ったわ」

 スイを抱きしめながら呟いた。
 なんとか説得して引き離すことができ、為次も無事に降車できた。
 かと思えば、降車したのを見るや否やスイは猛ダッシュして抱き付いて来たのだ。
 涙目で抱き付きながら為次を見上げる瞳は真っ赤に充血し、目の下にはクマができていた。

 「寝てないの?」

 「うー、ご主人様もつばい様もスイを置いて、どっか行ってしまうからです」

 「んー」

 「ですぅ…… うにゅ……」

 あるじが戻って来て安心したスイは急に眠気がきてしまった。
 しがみ付いたまま、うつらうつらしている。

 「為次、スイちゃん寝かせて来いよ」

 「うん、そうね」

 「一晩中、泣いてたみたいだから……」

 とマヨーラに聞かされて、少し可哀想にも思える為次。

 「…………」

 「レオは俺がしまっといてやるぜ」

 「絶対に止めて」

 「なんでだよ……」

 「水谷は操縦があまり上手くねぇからなぁ」

 「うっ、隊長まで……」 

 「仕方ない、俺がしまっとくから、みんなは中に入れ」

 「はい……」

 「ええ、そうね。行きましょ正秀」

 「はぅー、むにゃむにゃ」

 「スイ、ここで寝ないで……」

 皆はぞろぞろとリビングへと向かう。
 スイは眠気MAXなせいで、自分で歩こうとしなかった。
 仕方なく為次がお姫様抱っこして連れて行くのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 リビングに入りソファーに座ると、スイは為次に寄り添ったまま寝てしまった。
 正秀も持って帰ったエレメンタルストーンをテーブルにゴトゴトと置くと、なんだか疲れたと言った表情で腰掛ける。
 そこへ、クリスがティーセットを持って奥の部屋からやって来た。

 「二人とも、お疲れだったわね」

 「ああ、クリスさんただいま」

 「どうぞ、これでも飲んでゆっくりしてちょうだい」

 皆が揃うと、クリスは紅茶を淹れてくれる。
 とは言ってもパパがまだ車庫入れ中だが。

 「ありがとうございます」

 「ありがとう」

 「あ、ども」

 とりあえず紅茶を飲み一息つく。

 「なんだか、こうして落ち着くと急に疲れた感じだぜ」

 「しょうがないよ、訳の分からない出来事だったし」

 「だな」

 「それより、お腹空いた」

 「俺もだぜ」

 「あら? お昼はまだなの?」

 クリスは訊いた。

 「うん」

 「それなら、何か作ってくるわね」

 「あー、後でいいよ」

 「お茶飲んで、休憩してからでいいですよ、クリスさん」

 「そう、分かったわ」

 しばらく何もせずに呆けていた。
 話すことは色々とあるのだが、貞宗がまだ戻って来ない。
 だから皆は申し合わせたように待っているのだった。

 そうこうしている内に、レオパルト2を駐車し終わった貞宗もリビングへと戻って来た。
 為次が投げ飛ばされてできた壁の穴は、まだ修復されておらず、そこから入って来る。

 「あっ、隊長。お疲れ様です」

 「あなたの紅茶も、今淹れますから」

 正秀とクリスの言葉は貞宗には届いていなかった。

 「っ!?」

 真っ先に目に入ったテーブルの上に置かれているエレメンタルストーンに驚いたから……
 ブルーストーンですら貴重な物なのに、その横には赤紫のエレメンタルストーンが置かれているのだ。

 「な、なんだそれは……」

 「隊長? どうしました?」

 テーブルへ近づくと、エレメンタルストーンに触れてみる。

 「こんな物、何処で手に入れた?」

 「森の中ですよ、隊長」

 「森だと?」

 「変わった色のエレメンタルストーンね」

 マヨーラも興味があるらしい

 「完全ではないが、おそらく賢者の石だな……」

 「へぇ、これが…… 売ったらいくらになるのかしら」

 「売り飛ばそうなんて考えるんじゃねぇ」

 「精霊界にでも行って来たのですか?」

 「は? クリスさん知ってるの? 精霊界」

 神の世界であるらしい、精霊界との言葉が出てきて為次は驚いた。
 そんな怪しげな世界が、ここでは周知の事実なのかと……

 「噂程度ですよ」

 「どんな?」

 「神々の住まう世界と……」

 「へぇ、なるほどね」

 そのクリスの一言はリリーナの説明と同じであった。
 正直、今でも夢物語くらいにしか思っていなかった。
 しかし、噂でも精霊界は認知されているならば現実であったのかとも思える。
 それに賢者の石のことだって貞宗ですら知っている。

 「何があった?」

 「隊長! 聞きたいですか!?」

 「ああ、詳しく聞かせてくれるか?」

 「はい! もちろんですよ! 俺の…… 水谷マンの活躍を!!」

 正秀はここぞとばかりに、目を輝かせて貞宗をみつめている。
 もう、自慢したくて堪らない。
 ジャスティスプリンスと水谷マンの活躍を!

 「は? みず、水谷…… まん?」

 「マサ……」

 「マサヒデの活躍を聞かせてくれるの?」

 マヨーラだけは聞きたそうであるが、他は引き気味だ。

 「おうっ! 聞かせてやるぜ、俺の武勇伝をなっ!」 

 「まてまて、その話は長くなるのか?」

 「はい! 永遠に語り継がれること間違い無しですよっ、隊長!」

 「……ぐ」

 貞宗は焦った。
 このままでは、意味不明な話を聞かされるのが目に見えている。
 そもそも、長くなるのか? と聞いているのに、語り継がれるとか、もう会話にすらなっていない。
 なんとかしなくては、ならないと思う。

 「水谷、その話は後でいい」

 「そんな遠慮しなくてもいいですよ」

 「あ、いや…… あれだ、晩酌の時にでもゆっくりと聞きたいと思ってな」

 「そうなんですか」

 「ああ、もっと落ち着いて聞きたいからな! うん、そうだそうだ」

 「なるほど、確かに楽しみは後にとっておいた方がいいですね」

 「うむ」

 「分かりました。では、後でたっぷりと聞かせてあげますよ」

 「あ、ああ……」

 「……う(絶対に逃げよう)」

 「楽しみね」

 「では、まずは山崎の話から聞くかな、うん」

 「あ、はい」

 とりあえずこの場は凌いだと思い、貞宗もソファーに座る。
 そして、差し出された紅茶に口を付けると、赤紫のエレメンタルストーンにもう一度触れてみた。

 そんな貞宗を見る為次は、スイのよだれを拭きながら話始めるのであった……
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