125 / 183
異世界編 2章
第118話 土産
しおりを挟む
雪山調査と能力及び車両試験を終えた正秀と為次。
雪山は上空から眺めただけだが、一応は結果報告を手短に話した。
正秀が武勇伝を話そうとするので、面倒なのを我慢して為次が説明した。
あのままでは、正秀英雄譚を延々と聞かされそうだったから……
「斯々然々って分けでした」
「ふむ、かくかくしかじかか」
「カクカクだぜ」
「説明が手抜き過ぎるわね」
と、マヨーラは一言多い。
「気にしてはダメよ、マヨーラちゃん」
「えぇ……」
話した内容は、かなり端折っていた。
当然である、女子を人質にしたり女性の手を拳銃で吹っ飛ばしたこと、その他諸々話せる分けもない。
所々で正秀がバラそうとしたが、なんとかキレぎみに話して誤魔化せたつもりらしいが。
「どうにも、イマイチ信じれんな」
「そりゃそうっスよ、俺自身ですら半信半疑なのに」
「だよな」
マヨーラはテーブルに置かれているエレメンタルストーンをペチペチと叩いてみる。
「でも本当だとしたら、この石が人や動物の魂……」
何も変化は起こらない。
只、不気味な輝きを放つだけだ。
「つまりターナは、この石を集めて神様を呼びたいのか?」
「これをね…… それ本当なの?」
「それは知らんけど、この世界には神が居ないとリリーナは言ってたよ」
「確かに、それだったら辻褄も合うんだぜ。神様の居ない、この世界に神様を呼ぶんだぜぇってさ」
「んー、神様ねぇ……」
「連れて来て、何をしたいのかは知らないけどな」
「うん」
「でも、精霊界に関しては、誰でも噂程度には知っているわ」
と、クリスは言うが、為次にとってはどうにも胡散臭い話だ。
「噂ねぇ……」
「なんにしても、解らないことだらけなんだぜ」
「もう少しリリーナに聞いとけば良かったかなぁ」
「そのリリーナってエルフも、モノポールリングに行けば何か分かるといってたんだろ?」
「うん」
「それなら、もう行くしかないだろ」
「っスね」
「ところで、このエレメンタルストーンは貰っていいのか?」
赤紫のエレメンタルストーンを、物珍しそうに見ながら貞宗は尋ねた。
「どうぞ、お土産ですから。いいだろ? 為次」
「うん」
「おっ、そうか悪いな。じゃあ遠慮なく貰うぞ」
「俺達が持っていても、役に立ちませんから」
「ねぇ、ちょっと……」
「ん? どうした?」
「あたしのお土産は?」
「あっ……!」
すっかり忘れていた。
マヨーラがお土産をせがんでいたと言ったのは自分であった。
だが、何も用意していなかった。
仕方ないのでエレメンタルストーンと一緒に添えてあった木の実でいいだろうとなったはずである。
しかし、その木の実も帰りに半分くらい食べてしまったのだ。
元々、十数個しか無かったのに。
「やばい(もう5個くらいしか残って無いぜ……)」
甘くて意外と美味しかったので仕方が無い。
「何よ、あっ! って……」
「い、いや……」
「まさか忘れたの?」
必死に目を逸らそうとする正秀を、マヨーラはジト目で睨んでいる。
「そ、そんなことは無いぜ。当然お土産はマヨーラにもちゃんとあるぜ」
「ふーん、ならいいけど」
「ぐ……」
覚悟を決めたと言った表情で、ポケットから葉っぱに包んである木の実を取り出す。
「ほら」
マヨーラに差し出した。
「何これ?」
怪訝そうな顔をしながら受け取ると、葉っぱを広げてみる。
中からは5個の木の実と半分になったのが1個入っていた。
「豆?」
「木の実だぜ……」
半分になっているのは、これ以上食べたら無くなると思い齧ったとこで戻しておいた物だ。
木の実を見るマヨーラの顔が、だんだんと神妙な面持ちとなってきた。
1つ摘まむと顔の前に寄せ、じっくりと見始める。
「ふーん……」
「……うぐ」
お土産が木の実の食べ残しなどと言語道断である。
文句を言われること間違い無しな状況に、正秀は覚悟を決める。
「ねぇ」
「お、おう……!」
しかし、正秀の心配をよそに、その返答は意外なものである。
「本当にコレ貰っちゃっていいの?」
「え!?」
クリスも1つ摘んでみる。
「あら、これって……」
「本物なら、とんでもない物を持って来てくれたわね」
「なんだ? ただの豆じゃないのか?」
貞宗も興味を持ってきたらしい。
せっかくなので味の感想を教えてあげる為次。
「美味しいよ」
「……まさかタメツグ、食べたの?」
「え、あ、うん、ちょっとだけ」
「バカねぇ」
それを聞いて少し不安になる正秀。
「食べちゃヤバイのか?」
「そうじゃないけど……」
「これは、魔力の実ね」
クリスは言った。
「生なんだぜ」
「生じゃなくて、マナよ…… 確かに生だけど」
「凄いもんなの?」
よく分からないジョークをスルーして為次は訊いてみた。
するとクリスとマヨーラが教えてくれる。
「ええ、精霊界にだけ育つと言われる魔力の木、それの実なのよ」
「これを食べると体内でエーテルが生成できると言われいるわ」
「どう言うことなんだ?」
一応は食べても大丈夫そうな豆だと分かり、正秀も一安心していた。
だけど、イマイチ理解できていない様子であった。
「そうね、簡単に説明すると……」
マヨーラの説明によると、魔道士は自身のマナを使い周囲のエーテルに作用させることによって魔法を発動する。
もっとも、これは以前にも聞いた話だ。
そして、この魔力の実を食べると、先程言ったようにエーテルすらも体内で生成することが可能らしい。
その作られたエーテルはマナと融合し直接魔法として使用ができる。
これによって、エーテルの希薄な地域でも存分に魔法を使うことが可能となる。
また、潜在的な魔力の量も著しく増えるそうなのだ。
「……と、言うことよ」
「へー、なるほどな」
「つまり、魔道士以外が食べても意味が無いのよ」
「流石マヨーラ、詳しいぜ」
「あたしも実物を見るのは初めてね、文献を読んで知ってるだけよ」
「そんなに凄いんなら、スイにも1個食わせてよ」
「そうね、ここの3人で分けて、1個はターナにあげましょ」
「食べかけがあるわね」
クリスは半分になっている魔力の実を摘み上げた。
「あ、それマサの食いかけ」
「こ、こら! 言うんじゃねぇ為次」
「マサヒデの食べ残し……」
「悪りぃマヨーラ、そいつは俺食っとくぜ」
「っ! だ、ダメよ! これはあたしのよっ」
「ふふっ(食べたいのね)」
「はっ(食いてぇのか)」
「あぁ……(舐め回すつもりか)」
「お、おう……」
「残りの一つは、あたしが預かっとくわ、高く売れるし」
「じゃあ1個ちょ、スイに食わせるから」
「ええ」
魔力の実を一つ受け取ると、寄りすがって寝ているスイの口元へと持って行く。
寝ているので食べそうにもないが、グリグリと涎を垂らす口の中へと押し込んでみる。
「ほらスイ、おやつだよー」
「はみゅ~、むにゃむにゃ」
「起きてからでもいいだろ」
正秀の言うとおりである。
「めんどくさいから今でいいの」
「しょうがないわねぇ……」
マヨーラも呆れていた。
「ほらほら甘いよ、あーんして」
甘い香りに誘われてなのだろうか、口の中に含むと寝ながらボリボリと食べ始めた。
「うにゅ~、美味しいですぅむにゃ~」
「おっ、食った」
「あたしも食べよっと」
そう言いながら、マヨーラはチラっと正秀を見る。
「マサヒデ! 食べるわよっ」
「お、おう?」
「食べる…… わよ……」
「ふふっ(食べさせてほしいのね)」
「はっ(食べさせてもらいてーのか)」
「あぁ……(指にむしゃぶりつく気だな)」
「食べないのか?」
「食べるわよっ!」
「え? なんか怒ってる?」
「怒ってないわよっ、まったく……」
「お、おう……」
仕方なく、自分で食べるマヨーラ。
確かに甘くて美味しい。
正秀に食べさてもらえば、更に甘いのだろうと思うのであった。
「クリスさんもどうぞ、ボリボリ」
「ありがとう、頂くわ」
クリスも食べ、皆は紅茶をすすると一時の安らぎを覚える。
結局は謎が増えただけのような気もするが、もはや些細なことなのかも知れない。
元居た地球から見れば、この世界は全てにおいて信じられないことばかりなのだ。
まともな思考など到底できない。
「んじゃ、話も、お土産も終わったし休むかな」
「だな、俺も疲れたぜ」
「おう、ご苦労だったな」
為次はスイを連れて立ち上がろうとした。
しかし、何かを思い出したらしくスイを置くと貞宗を見る。
「あ、隊長」
「ん?」
「そういや、お願いしたいことがあったんっスが」
「お願い? 山崎がか? 珍しいな」
「ちょっと待ってて」
為次は車庫へ向かうと、手にタブレットを持って直ぐに戻って来た。
「これ」
自分のタブレットを貞宗に差し出す。
「なんだ?」
画面を見ると英語の文字や図形、グラフなどが書かれている。
正秀も横から覗いて見た。
「これは……」
「なんだこりゃ?」
「超次元振動弾の説明書っス」
「「は?」」
「名古屋に持って行くチップのデータだよ」
「「!?」」
「もう300年も経ってるし時効でしょ」
「為次……」
「これをどうするんだ?」
「翻訳してほしいの、帰るヒントになるかもだし」
「あぁ……」
英語で書かれているので機械翻訳しても殆ど読めなかった。
だから、ほっぽったままであった。
ここ最近は戦車の改修や修行、その他諸々で忙しかったのもあり忘れていたのもある。
紅茶を飲んで一息ついたら、貞宗が英語を読めるのとデータの存在を思い出したのだ。
「いいっスか?」
「分かった、これは暫く俺が預かろう」
「よろっス」
「ああ」
「マサも見る? もう、戻っても自衛隊は無いだろうし」
「……いや、俺が見たとこで分からないしな」
「そう……」
「なんなの?」
マヨーラは訊いた。
「俺達が吹っ飛ばされた原因の情報みたいなもん」
「ふーん」
「そうじゃないぜ為次」
「?」
「俺達をマヨーラや他のみんなと出会わせてくれたんだぜ」
それを聞いた為次は、少し笑うと頷くのであった……
「明日行こうか、モノポールリングへ」
「おう」
それから、正秀と為次はお昼ご飯を食べると部屋で休むことにした。
スイは為次が離れると、目を覚まし怒り始めるので仕方なく一緒にベットへと連れて行った。
もっとも、出会ったあの日以来、寝る時は殆ど一緒なのだが。
起きた頃には既に、夕飯時だった。
おかげで、中々寝付けない夜を過ごす三人であった。
夜空には月とリングが星の大河に輝いていた……
雪山は上空から眺めただけだが、一応は結果報告を手短に話した。
正秀が武勇伝を話そうとするので、面倒なのを我慢して為次が説明した。
あのままでは、正秀英雄譚を延々と聞かされそうだったから……
「斯々然々って分けでした」
「ふむ、かくかくしかじかか」
「カクカクだぜ」
「説明が手抜き過ぎるわね」
と、マヨーラは一言多い。
「気にしてはダメよ、マヨーラちゃん」
「えぇ……」
話した内容は、かなり端折っていた。
当然である、女子を人質にしたり女性の手を拳銃で吹っ飛ばしたこと、その他諸々話せる分けもない。
所々で正秀がバラそうとしたが、なんとかキレぎみに話して誤魔化せたつもりらしいが。
「どうにも、イマイチ信じれんな」
「そりゃそうっスよ、俺自身ですら半信半疑なのに」
「だよな」
マヨーラはテーブルに置かれているエレメンタルストーンをペチペチと叩いてみる。
「でも本当だとしたら、この石が人や動物の魂……」
何も変化は起こらない。
只、不気味な輝きを放つだけだ。
「つまりターナは、この石を集めて神様を呼びたいのか?」
「これをね…… それ本当なの?」
「それは知らんけど、この世界には神が居ないとリリーナは言ってたよ」
「確かに、それだったら辻褄も合うんだぜ。神様の居ない、この世界に神様を呼ぶんだぜぇってさ」
「んー、神様ねぇ……」
「連れて来て、何をしたいのかは知らないけどな」
「うん」
「でも、精霊界に関しては、誰でも噂程度には知っているわ」
と、クリスは言うが、為次にとってはどうにも胡散臭い話だ。
「噂ねぇ……」
「なんにしても、解らないことだらけなんだぜ」
「もう少しリリーナに聞いとけば良かったかなぁ」
「そのリリーナってエルフも、モノポールリングに行けば何か分かるといってたんだろ?」
「うん」
「それなら、もう行くしかないだろ」
「っスね」
「ところで、このエレメンタルストーンは貰っていいのか?」
赤紫のエレメンタルストーンを、物珍しそうに見ながら貞宗は尋ねた。
「どうぞ、お土産ですから。いいだろ? 為次」
「うん」
「おっ、そうか悪いな。じゃあ遠慮なく貰うぞ」
「俺達が持っていても、役に立ちませんから」
「ねぇ、ちょっと……」
「ん? どうした?」
「あたしのお土産は?」
「あっ……!」
すっかり忘れていた。
マヨーラがお土産をせがんでいたと言ったのは自分であった。
だが、何も用意していなかった。
仕方ないのでエレメンタルストーンと一緒に添えてあった木の実でいいだろうとなったはずである。
しかし、その木の実も帰りに半分くらい食べてしまったのだ。
元々、十数個しか無かったのに。
「やばい(もう5個くらいしか残って無いぜ……)」
甘くて意外と美味しかったので仕方が無い。
「何よ、あっ! って……」
「い、いや……」
「まさか忘れたの?」
必死に目を逸らそうとする正秀を、マヨーラはジト目で睨んでいる。
「そ、そんなことは無いぜ。当然お土産はマヨーラにもちゃんとあるぜ」
「ふーん、ならいいけど」
「ぐ……」
覚悟を決めたと言った表情で、ポケットから葉っぱに包んである木の実を取り出す。
「ほら」
マヨーラに差し出した。
「何これ?」
怪訝そうな顔をしながら受け取ると、葉っぱを広げてみる。
中からは5個の木の実と半分になったのが1個入っていた。
「豆?」
「木の実だぜ……」
半分になっているのは、これ以上食べたら無くなると思い齧ったとこで戻しておいた物だ。
木の実を見るマヨーラの顔が、だんだんと神妙な面持ちとなってきた。
1つ摘まむと顔の前に寄せ、じっくりと見始める。
「ふーん……」
「……うぐ」
お土産が木の実の食べ残しなどと言語道断である。
文句を言われること間違い無しな状況に、正秀は覚悟を決める。
「ねぇ」
「お、おう……!」
しかし、正秀の心配をよそに、その返答は意外なものである。
「本当にコレ貰っちゃっていいの?」
「え!?」
クリスも1つ摘んでみる。
「あら、これって……」
「本物なら、とんでもない物を持って来てくれたわね」
「なんだ? ただの豆じゃないのか?」
貞宗も興味を持ってきたらしい。
せっかくなので味の感想を教えてあげる為次。
「美味しいよ」
「……まさかタメツグ、食べたの?」
「え、あ、うん、ちょっとだけ」
「バカねぇ」
それを聞いて少し不安になる正秀。
「食べちゃヤバイのか?」
「そうじゃないけど……」
「これは、魔力の実ね」
クリスは言った。
「生なんだぜ」
「生じゃなくて、マナよ…… 確かに生だけど」
「凄いもんなの?」
よく分からないジョークをスルーして為次は訊いてみた。
するとクリスとマヨーラが教えてくれる。
「ええ、精霊界にだけ育つと言われる魔力の木、それの実なのよ」
「これを食べると体内でエーテルが生成できると言われいるわ」
「どう言うことなんだ?」
一応は食べても大丈夫そうな豆だと分かり、正秀も一安心していた。
だけど、イマイチ理解できていない様子であった。
「そうね、簡単に説明すると……」
マヨーラの説明によると、魔道士は自身のマナを使い周囲のエーテルに作用させることによって魔法を発動する。
もっとも、これは以前にも聞いた話だ。
そして、この魔力の実を食べると、先程言ったようにエーテルすらも体内で生成することが可能らしい。
その作られたエーテルはマナと融合し直接魔法として使用ができる。
これによって、エーテルの希薄な地域でも存分に魔法を使うことが可能となる。
また、潜在的な魔力の量も著しく増えるそうなのだ。
「……と、言うことよ」
「へー、なるほどな」
「つまり、魔道士以外が食べても意味が無いのよ」
「流石マヨーラ、詳しいぜ」
「あたしも実物を見るのは初めてね、文献を読んで知ってるだけよ」
「そんなに凄いんなら、スイにも1個食わせてよ」
「そうね、ここの3人で分けて、1個はターナにあげましょ」
「食べかけがあるわね」
クリスは半分になっている魔力の実を摘み上げた。
「あ、それマサの食いかけ」
「こ、こら! 言うんじゃねぇ為次」
「マサヒデの食べ残し……」
「悪りぃマヨーラ、そいつは俺食っとくぜ」
「っ! だ、ダメよ! これはあたしのよっ」
「ふふっ(食べたいのね)」
「はっ(食いてぇのか)」
「あぁ……(舐め回すつもりか)」
「お、おう……」
「残りの一つは、あたしが預かっとくわ、高く売れるし」
「じゃあ1個ちょ、スイに食わせるから」
「ええ」
魔力の実を一つ受け取ると、寄りすがって寝ているスイの口元へと持って行く。
寝ているので食べそうにもないが、グリグリと涎を垂らす口の中へと押し込んでみる。
「ほらスイ、おやつだよー」
「はみゅ~、むにゃむにゃ」
「起きてからでもいいだろ」
正秀の言うとおりである。
「めんどくさいから今でいいの」
「しょうがないわねぇ……」
マヨーラも呆れていた。
「ほらほら甘いよ、あーんして」
甘い香りに誘われてなのだろうか、口の中に含むと寝ながらボリボリと食べ始めた。
「うにゅ~、美味しいですぅむにゃ~」
「おっ、食った」
「あたしも食べよっと」
そう言いながら、マヨーラはチラっと正秀を見る。
「マサヒデ! 食べるわよっ」
「お、おう?」
「食べる…… わよ……」
「ふふっ(食べさせてほしいのね)」
「はっ(食べさせてもらいてーのか)」
「あぁ……(指にむしゃぶりつく気だな)」
「食べないのか?」
「食べるわよっ!」
「え? なんか怒ってる?」
「怒ってないわよっ、まったく……」
「お、おう……」
仕方なく、自分で食べるマヨーラ。
確かに甘くて美味しい。
正秀に食べさてもらえば、更に甘いのだろうと思うのであった。
「クリスさんもどうぞ、ボリボリ」
「ありがとう、頂くわ」
クリスも食べ、皆は紅茶をすすると一時の安らぎを覚える。
結局は謎が増えただけのような気もするが、もはや些細なことなのかも知れない。
元居た地球から見れば、この世界は全てにおいて信じられないことばかりなのだ。
まともな思考など到底できない。
「んじゃ、話も、お土産も終わったし休むかな」
「だな、俺も疲れたぜ」
「おう、ご苦労だったな」
為次はスイを連れて立ち上がろうとした。
しかし、何かを思い出したらしくスイを置くと貞宗を見る。
「あ、隊長」
「ん?」
「そういや、お願いしたいことがあったんっスが」
「お願い? 山崎がか? 珍しいな」
「ちょっと待ってて」
為次は車庫へ向かうと、手にタブレットを持って直ぐに戻って来た。
「これ」
自分のタブレットを貞宗に差し出す。
「なんだ?」
画面を見ると英語の文字や図形、グラフなどが書かれている。
正秀も横から覗いて見た。
「これは……」
「なんだこりゃ?」
「超次元振動弾の説明書っス」
「「は?」」
「名古屋に持って行くチップのデータだよ」
「「!?」」
「もう300年も経ってるし時効でしょ」
「為次……」
「これをどうするんだ?」
「翻訳してほしいの、帰るヒントになるかもだし」
「あぁ……」
英語で書かれているので機械翻訳しても殆ど読めなかった。
だから、ほっぽったままであった。
ここ最近は戦車の改修や修行、その他諸々で忙しかったのもあり忘れていたのもある。
紅茶を飲んで一息ついたら、貞宗が英語を読めるのとデータの存在を思い出したのだ。
「いいっスか?」
「分かった、これは暫く俺が預かろう」
「よろっス」
「ああ」
「マサも見る? もう、戻っても自衛隊は無いだろうし」
「……いや、俺が見たとこで分からないしな」
「そう……」
「なんなの?」
マヨーラは訊いた。
「俺達が吹っ飛ばされた原因の情報みたいなもん」
「ふーん」
「そうじゃないぜ為次」
「?」
「俺達をマヨーラや他のみんなと出会わせてくれたんだぜ」
それを聞いた為次は、少し笑うと頷くのであった……
「明日行こうか、モノポールリングへ」
「おう」
それから、正秀と為次はお昼ご飯を食べると部屋で休むことにした。
スイは為次が離れると、目を覚まし怒り始めるので仕方なく一緒にベットへと連れて行った。
もっとも、出会ったあの日以来、寝る時は殆ど一緒なのだが。
起きた頃には既に、夕飯時だった。
おかげで、中々寝付けない夜を過ごす三人であった。
夜空には月とリングが星の大河に輝いていた……
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる