異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

文字の大きさ
127 / 183
異世界編 3章

第120話 宇宙

しおりを挟む
 この世界に来てから、いつものように見上げていた空に浮かぶリング。
 そこへ行けば何かあると皆が一様に言う。
 千年前からモノポールリングと呼ばれ、別の世界に繋がると噂されている。

 真偽の程は定かではない……

 それでも、向かうしかない。
 地球へ帰還する為に。

 僅かな望みに賭けて……

 ※  ※  ※  ※  ※

 現在レオパルト2は水平を保ったまま、垂直に上昇している。
 推進力は全てリバースグラビティに依存している状態だ。
 砲塔をクルクルと回しながら……

 「なあマヨーラ、ちょっとそっちに行ってもいいか?」

 「へ? べ、別に構わないけど」

 許可を貰うと、正秀は狭い車内をゴソゴソと砲手席から車長席へと移動した。
 密着状態でちょっとドキドキのマヨーラである。

 「外が見たいんだ、サイトからだと水平線しか見えないんだぜ」

 どうやら、外の様子が見たくて射撃サイトを覗きながら砲塔を回していたらしい。

 「そうね、あたしも小窓からだと水平線しか見えないわ」

 「だろ? せっかくだからハッチから見ようぜ」

 「そうね、そうしましょ」

 「え? 開けるの?」

 ハッチを開けることに対して為次は躊躇った。

 「ちょっとくらい、いいだろ?」

 「んー、……まあ、まだ成層圏じゃないし……」

 「へへっ、良しっ、開けるぜ」

 「もうちょっとで対流圏を出るかもだから! すぐに閉めてよ!」

 「分かった、分かった」

 「タメツグは細かいのよ」

 「んもぅ」

 ハッチを開ける正秀。
 風圧で結構重たいはずだが、軽々と開ける。

 ビュォォォォォ~

 二人は同じハッチから身を乗り出すと吹き付ける軽やかな風の中、眼下を眺めた。
 その目に映った光景に正秀は驚愕する。

 「なっ! なんだ、こりゃぁぁぁ!」

 「真っさおね」

 「え? 何? ナニ? どうしたの?」

 「おい! 為次も見てみろよっ」

 「んー?」

 興味の湧いた為次も、運転席のハッチ開けてシートを上げ外を見る。
 その光景に驚かずにはいられない。

 「マジっすか……」

 「どうなってんだ、この星は……」

 上空から見下ろす景色は青かった。
 空も星も全てが青い。
 あまりにも異様な光景に、恐怖すら覚える。
 焦った為次は車体のピッチを下げ、真下を確認してみる。

 「あれが……」

 「なぁ為次。確か、大陸って言ってたよな?」

 「うん……」

 星、全体が海であった。
 遠くに少し雲が見える程度で、他は全て海である。
 かろうじて、真下に小さくなった島が確認できる程度だ。
 おそらくは、その島こそが先程まで居た陸地であろう。
 それしか無いのだから……

 「ただの島じゃねーか」

 「北海道よりも小さいなぁ」

 「四国くらいだぜ、多分」

 「どうだろう? それよりは大きいかな……」

 「マヨーラは知ってたのか?」

 「大陸がどうなってるかんなて、そんなの知らないわ」

 「お、おう?」

 とにかく、いつまでもビックリしている分けにも行かないので、車体を水平に戻そうとする。
 と、その時だった。

 「あ、あれ? ……っ!?」

 手が思うように動かせない。
 為次は慌てて気を使い、無理矢理に体を動かしハッチを閉めた。

 「や、やばい! マサ! 早く閉めろっ!!」

 「なんだよ、もう少しくらい…… あれ?」

 「なんだか動けないわね」

 「気を使えって! 早く!」

 「なんで為次に気を使わなくちゃならないんだよ」

 「冗談言ってる場合じゃないって!」

 「お、おおう!? うらぁぁぁっ!」

 気合を入れて体を動かし、マヨーラを押し込みハッチを閉める正秀。
 どさどさと車長席に転がり込んだ。
 とても息苦しい。
 どうやら気が付かない内に、かなり空気が薄くなっていたようだ。

 「酸素を…… はぁはぁ」

 コンスクを操作して魔道機関からの酸素の供給量を上げる。
 すると、皆は次第に落ち着きを取り戻し始めた。

 「や、やばかった……」

 「はぁ、なんだったんだ?」

 「動けるようになったわね」

 「もうかなり空気が薄いみたい」

 「体が動かなくなったんだぜ」

 「多分ナノマシンのせいだわ」

 「ナノマシンの?」

 「本来なら酸素不足で先に意識を失うはずなんだけど……」

 「けど?」

 「けど、何よ?」

 「おそらく脳への酸素供給を最優先させて、身体機能をフリーズさせたのかと」

 「へー、そうなんだ」

 「へー、そうなの」

 「別に分かんないなら、いいけど……」

 「スイは大丈夫だった? ねぇ、ちょっとスイ」

 砲尾を挟んで横に居るスイにマヨーラは話しかけるが、動く気配がない。

 「動かないわね」

 「え? スイ大丈夫なの?」

 「スイちゃん、どうかしたのか?」

 「ぐぅ~、ぐぅ~、むにゃぁ~」

 見るとよだれを垂らして寝ている。

 「寝てるわ」

 「寝てるぜ」

 「そう…… とりあえず、ハッチはもう開けないで」

 「だな」

 ちょっと死にそうになったが、車体を水平に戻し更に上昇して行く。
 成層圏を越え、宇宙は目前であった。

 ……………
 ………
 …

 地上を飛び立ってから3時間以上が過ぎた。
 ペリスコープからは星の輪郭が見える。

 「もう宇宙のはずなんだけど」

 「そうか?」

 「ほんとに丸いのね、大地って」

 「フワフワしないぜ?」

 「……うん」

 何かがおかしい……
 宇宙に来たはずなのに無重力にならない。
 それに、ここまで来るのに3時間もかかっている。

 「ねぇ、マサのタブレット貸して、辞典入ってたでしょ」

 「お? いいぜ、ほら」

 為次は自分のタブレットを貞宗に渡したままなので、正秀から借りると何やら調べ始めた。
 インターネットにこそ繋がらないが、辞書や辞典など色々とアプリは入っているので、ある程度は調べ物や計算は可能だ。

 「うーん……」

 「どうした?」

 「どうやら速度が遅すぎるみたい」

 「そうなのか?」

 「一応、説明しとくと……」

 為次の説明によると、リバースグラビティに頼りっきりなのがマズかったらしい。
 調べてみると、地球の重力は加速度で毎秒9.81メートル増加すると書いてあった。
 リバースグラビティは200パーセントの出力で発動したので1Gの加速度を得る。
 今思えば、地上を飛び立った時は即座に加速した。
 それこそ、加速度を感じなくなるまでに1秒も有ったかどうかだったと思う。
 その一瞬こそが、車体に反重力分のエネルギーを与える時間だ。
 つまり、早い方のキリが良いとこで考えても速度的には秒速10メートル、時速で36キロであるかないか程度までしか加速していない可能性がある。
 下手をすればもっと遅い可能性もあるのだ。

 「そんな分けで、40キロも出てないと思うの」

 「へー、よく分かんないが、原チャリで宇宙まで来たようなものか?」

 「そだね、てっきり加速するものだと思ったけど違うみたい」

 「ブースターにはならないのか」

 「どうにもリバースグラビティで反重力を得るんじゃなくて、その効果は運動エネルギーを与えるだけみたいね」

 「んん?」

 「一度引っ張りの力に対して反対方向にエネルギーを与えると、後は均一にエネルギーを保つだけって」

 「? とにかく遅かったんだな」

 「そうそう、だから隊長は上空に行くほどリバースグラビティの効果が悪くなると勘違いしてたんだろうね」

 「確かに周りに何も無いと速度感が無くなるよな」

 「うん」

 「んで、それとフワフワしないのは関係あるのか?」

 「加速してないので、衛星軌道に乗ってないの。成層圏を越えて熱圏に入っても、星の重力は9割以上残ってるよ」

 「へー、まあいいぜ」

 「まあ、そうね……」

 正秀はイマイチ分かっていない様子であった。
 単純に無重力になる為の遠心力が、働いていないだけなのだが……

 「それで、どうするんだ?」

 「とりあえず加速して、低軌道で第1宇宙速度にするわ」

 「おう、よろしくな運転手さん」

 「あ、はい」

 まずは宇宙空間で異常が発生しないのを確認したい。
 だから、あまり星から離れない場所で衛星軌道に乗ることにした。
 それにモノポールリングも探さないとならないから。

 「よしゃ、行くお」

 早速、水素パルスエンジンを点火して加速を始めた。
 予想以上にパワフルなエンジンであった。
 凄まじい加速に体がシートへ押し付けられる。

 「うぉぉぉ、スゲぇぜ」

 「きゃゃぁぁぁぁぁ!」

 戦士の正秀は、なんとかGに耐えることができる。
 しかし、非力なマヨーラは後ろの無線機に顔面から押し付けられてしまう。

 「いだだだだっ、いぎぃ!」

 「だ、大丈夫なのか? マヨーラ」

 「だ、大丈夫じゃ…… ぐぎぎ」

 「仕方ないな、こっちに来な」

 なんだか可愛そうなので、正秀はマヨーラを抱き寄せると自分の膝の上に乗せてやった。

 「え? ちょ、マサヒデっ」

 「少し大人しくしてるんだぜ」

 「あ、あうう…… でも……」

 「どうかしたか?」

 マヨーラを抱える腕が思いっきり、おっぱいを押さえていた。
 思わぬハプニングに嬉しいのか、恥ずかしいのか分からない。

 「ひゃぁぁぁ! んんっ、ね、ねぇ……」

 「我慢してな」

 「あああああっ! ずっとこのままでもいいわっ!」

 そんな嬉しそうなマヨーラを横目に、スイは後ろにある弾薬庫扉ので呻いていた。
 流石に、この衝撃で目が覚めたらしい。

 「うにゅにゅにぃっ、何事ですかぁぁぁ!」

 「お、スイちゃん起きたか」

 「ここはパラダイスよ、スイ! ああんっ!」

 「にぎぃぃぃ、体が重いのですぅぅう!」

 そんなこんなで暫しの間、加速が続くのであった……

 ……………
 ………
 …

 加速による高G体験は思ったより直ぐに終わった。
 そして、無重力によって体がフワフワと車内を漂い始める。

 「マ、マサヒデ……」

 「おう?」

 抱きしめられる腕が離されると、マヨーラはみずから正秀に抱き付いていた。
 その顔には丸い玉となって浮かぶよだれまとわり付いている。
 しかも、なんだかイッちゃってる表情だ。
 加速のせいなのか、おっぱいだけでイッのかは本人しか分からない。
 どうでもいいことなのだ。

 「ぬぬぬ? フワフワして気持ち悪いのです」

 「あたしは気持ち良かったわ」

 「どうなったんだ?」

 「低軌道に乗れたみたいかも」

 「ふむ」

 ペリスコープからは真っ青な星が、半分だけ太陽に照らされているのが見える。
 とうとう、念願の宇宙へと辿たどり着いたのだ。

 しかし、それは始まりにしか過ぎない。
 目指すは目的のモノポールリング。

 そんな宇宙で色々と初めての体験をしたマヨーラは思うのだ。

 ナイスよタメツグ!

 と……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

処理中です...