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異世界編 3章
第120話 宇宙
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この世界に来てから、いつものように見上げていた空に浮かぶリング。
そこへ行けば何かあると皆が一様に言う。
千年前からモノポールリングと呼ばれ、別の世界に繋がると噂されている。
真偽の程は定かではない……
それでも、向かうしかない。
地球へ帰還する為に。
僅かな望みに賭けて……
※ ※ ※ ※ ※
現在レオパルト2は水平を保ったまま、垂直に上昇している。
推進力は全てリバースグラビティに依存している状態だ。
砲塔をクルクルと回しながら……
「なあマヨーラ、ちょっとそっちに行ってもいいか?」
「へ? べ、別に構わないけど」
許可を貰うと、正秀は狭い車内をゴソゴソと砲手席から車長席へと移動した。
密着状態でちょっとドキドキのマヨーラである。
「外が見たいんだ、サイトからだと水平線しか見えないんだぜ」
どうやら、外の様子が見たくて射撃サイトを覗きながら砲塔を回していたらしい。
「そうね、あたしも小窓からだと水平線しか見えないわ」
「だろ? せっかくだからハッチから見ようぜ」
「そうね、そうしましょ」
「え? 開けるの?」
ハッチを開けることに対して為次は躊躇った。
「ちょっとくらい、いいだろ?」
「んー、……まあ、まだ成層圏じゃないし……」
「へへっ、良しっ、開けるぜ」
「もうちょっとで対流圏を出るかもだから! すぐに閉めてよ!」
「分かった、分かった」
「タメツグは細かいのよ」
「んもぅ」
ハッチを開ける正秀。
風圧で結構重たいはずだが、軽々と開ける。
ビュォォォォォ~
二人は同じハッチから身を乗り出すと吹き付ける軽やかな風の中、眼下を眺めた。
その目に映った光景に正秀は驚愕する。
「なっ! なんだ、こりゃぁぁぁ!」
「真っ青ね」
「え? 何? ナニ? どうしたの?」
「おい! 為次も見てみろよっ」
「んー?」
興味の湧いた為次も、運転席のハッチ開けてシートを上げ外を見る。
その光景に驚かずにはいられない。
「マジっすか……」
「どうなってんだ、この星は……」
上空から見下ろす景色は青かった。
空も星も全てが青い。
あまりにも異様な光景に、恐怖すら覚える。
焦った為次は車体のピッチを下げ、真下を確認してみる。
「あれが……」
「なぁ為次。確か、大陸って言ってたよな?」
「うん……」
星、全体が海であった。
遠くに少し雲が見える程度で、他は全て海である。
辛うじて、真下に小さくなった島が確認できる程度だ。
おそらくは、その島こそが先程まで居た陸地であろう。
それしか無いのだから……
「ただの島じゃねーか」
「北海道よりも小さいなぁ」
「四国くらいだぜ、多分」
「どうだろう? それよりは大きいかな……」
「マヨーラは知ってたのか?」
「大陸がどうなってるかんなて、そんなの知らないわ」
「お、おう?」
とにかく、いつまでもビックリしている分けにも行かないので、車体を水平に戻そうとする。
と、その時だった。
「あ、あれ? ……っ!?」
手が思うように動かせない。
為次は慌てて気を使い、無理矢理に体を動かしハッチを閉めた。
「や、やばい! マサ! 早く閉めろっ!!」
「なんだよ、もう少しくらい…… あれ?」
「なんだか動けないわね」
「気を使えって! 早く!」
「なんで為次に気を使わなくちゃならないんだよ」
「冗談言ってる場合じゃないって!」
「お、おおう!? うらぁぁぁっ!」
気合を入れて体を動かし、マヨーラを押し込みハッチを閉める正秀。
どさどさと車長席に転がり込んだ。
とても息苦しい。
どうやら気が付かない内に、かなり空気が薄くなっていたようだ。
「酸素を…… はぁはぁ」
コンスクを操作して魔道機関からの酸素の供給量を上げる。
すると、皆は次第に落ち着きを取り戻し始めた。
「や、やばかった……」
「はぁ、なんだったんだ?」
「動けるようになったわね」
「もうかなり空気が薄いみたい」
「体が動かなくなったんだぜ」
「多分ナノマシンのせいだわ」
「ナノマシンの?」
「本来なら酸素不足で先に意識を失うはずなんだけど……」
「けど?」
「けど、何よ?」
「おそらく脳への酸素供給を最優先させて、身体機能をフリーズさせたのかと」
「へー、そうなんだ」
「へー、そうなの」
「別に分かんないなら、いいけど……」
「スイは大丈夫だった? ねぇ、ちょっとスイ」
砲尾を挟んで横に居るスイにマヨーラは話しかけるが、動く気配がない。
「動かないわね」
「え? スイ大丈夫なの?」
「スイちゃん、どうかしたのか?」
「ぐぅ~、ぐぅ~、むにゃぁ~」
見ると涎を垂らして寝ている。
「寝てるわ」
「寝てるぜ」
「そう…… とりあえず、ハッチはもう開けないで」
「だな」
ちょっと死にそうになったが、車体を水平に戻し更に上昇して行く。
成層圏を越え、宇宙は目前であった。
……………
………
…
地上を飛び立ってから3時間以上が過ぎた。
ペリスコープからは星の輪郭が見える。
「もう宇宙のはずなんだけど」
「そうか?」
「ほんとに丸いのね、大地って」
「フワフワしないぜ?」
「……うん」
何かがおかしい……
宇宙に来たはずなのに無重力にならない。
それに、ここまで来るのに3時間もかかっている。
「ねぇ、マサのタブレット貸して、辞典入ってたでしょ」
「お? いいぜ、ほら」
為次は自分のタブレットを貞宗に渡したままなので、正秀から借りると何やら調べ始めた。
インターネットにこそ繋がらないが、辞書や辞典など色々とアプリは入っているので、ある程度は調べ物や計算は可能だ。
「うーん……」
「どうした?」
「どうやら速度が遅すぎるみたい」
「そうなのか?」
「一応、説明しとくと……」
為次の説明によると、リバースグラビティに頼りっきりなのがマズかったらしい。
調べてみると、地球の重力は加速度で毎秒9.81メートル増加すると書いてあった。
リバースグラビティは200パーセントの出力で発動したので1Gの加速度を得る。
今思えば、地上を飛び立った時は即座に加速した。
それこそ、加速度を感じなくなるまでに1秒も有ったかどうかだったと思う。
その一瞬こそが、車体に反重力分のエネルギーを与える時間だ。
つまり、早い方のキリが良いとこで考えても速度的には秒速10メートル、時速で36キロであるかないか程度までしか加速していない可能性がある。
下手をすればもっと遅い可能性もあるのだ。
「そんな分けで、40キロも出てないと思うの」
「へー、よく分かんないが、原チャリで宇宙まで来たようなものか?」
「そだね、てっきり加速するものだと思ったけど違うみたい」
「ブースターにはならないのか」
「どうにもリバースグラビティで反重力を得るんじゃなくて、その効果は運動エネルギーを与えるだけみたいね」
「んん?」
「一度引っ張りの力に対して反対方向にエネルギーを与えると、後は均一にエネルギーを保つだけって」
「? とにかく遅かったんだな」
「そうそう、だから隊長は上空に行くほどリバースグラビティの効果が悪くなると勘違いしてたんだろうね」
「確かに周りに何も無いと速度感が無くなるよな」
「うん」
「んで、それとフワフワしないのは関係あるのか?」
「加速してないので、衛星軌道に乗ってないの。成層圏を越えて熱圏に入っても、星の重力は9割以上残ってるよ」
「へー、まあいいぜ」
「まあ、そうね……」
正秀はイマイチ分かっていない様子であった。
単純に無重力になる為の遠心力が、働いていないだけなのだが……
「それで、どうするんだ?」
「とりあえず加速して、低軌道で第1宇宙速度にするわ」
「おう、よろしくな運転手さん」
「あ、はい」
まずは宇宙空間で異常が発生しないのを確認したい。
だから、あまり星から離れない場所で衛星軌道に乗ることにした。
それにモノポールリングも探さないとならないから。
「よしゃ、行くお」
早速、水素パルスエンジンを点火して加速を始めた。
予想以上にパワフルなエンジンであった。
凄まじい加速に体がシートへ押し付けられる。
「うぉぉぉ、スゲぇぜ」
「きゃゃぁぁぁぁぁ!」
戦士の正秀は、なんとかGに耐えることができる。
しかし、非力なマヨーラは後ろの無線機に顔面から押し付けられてしまう。
「いだだだだっ、いぎぃ!」
「だ、大丈夫なのか? マヨーラ」
「だ、大丈夫じゃ…… ぐぎぎ」
「仕方ないな、こっちに来な」
なんだか可愛そうなので、正秀はマヨーラを抱き寄せると自分の膝の上に乗せてやった。
「え? ちょ、マサヒデっ」
「少し大人しくしてるんだぜ」
「あ、あうう…… でも……」
「どうかしたか?」
マヨーラを抱える腕が思いっきり、おっぱいを押さえていた。
思わぬハプニングに嬉しいのか、恥ずかしいのか分からない。
「ひゃぁぁぁ! んんっ、ね、ねぇ……」
「我慢してな」
「あああああっ! ずっとこのままでもいいわっ!」
そんな嬉しそうなマヨーラを横目に、スイは後ろにある弾薬庫扉の上で呻いていた。
流石に、この衝撃で目が覚めたらしい。
「うにゅにゅにぃっ、何事ですかぁぁぁ!」
「お、スイちゃん起きたか」
「ここはパラダイスよ、スイ! ああんっ!」
「にぎぃぃぃ、体が重いのですぅぅう!」
そんなこんなで暫しの間、加速が続くのであった……
……………
………
…
加速による高G体験は思ったより直ぐに終わった。
そして、無重力によって体がフワフワと車内を漂い始める。
「マ、マサヒデ……」
「おう?」
抱きしめられる腕が離されると、マヨーラは自ら正秀に抱き付いていた。
その顔には丸い玉となって浮かぶ涎が纏わり付いている。
しかも、なんだかイッちゃってる表情だ。
加速のせいなのか、おっぱいだけでイッのかは本人しか分からない。
どうでもいいことなのだ。
「ぬぬぬ? フワフワして気持ち悪いのです」
「あたしは気持ち良かったわ」
「どうなったんだ?」
「低軌道に乗れたみたいかも」
「ふむ」
ペリスコープからは真っ青な星が、半分だけ太陽に照らされているのが見える。
とうとう、念願の宇宙へと辿り着いたのだ。
しかし、それは始まりにしか過ぎない。
目指すは目的のモノポールリング。
そんな宇宙で色々と初めての体験をしたマヨーラは思うのだ。
ナイスよタメツグ!
と……
そこへ行けば何かあると皆が一様に言う。
千年前からモノポールリングと呼ばれ、別の世界に繋がると噂されている。
真偽の程は定かではない……
それでも、向かうしかない。
地球へ帰還する為に。
僅かな望みに賭けて……
※ ※ ※ ※ ※
現在レオパルト2は水平を保ったまま、垂直に上昇している。
推進力は全てリバースグラビティに依存している状態だ。
砲塔をクルクルと回しながら……
「なあマヨーラ、ちょっとそっちに行ってもいいか?」
「へ? べ、別に構わないけど」
許可を貰うと、正秀は狭い車内をゴソゴソと砲手席から車長席へと移動した。
密着状態でちょっとドキドキのマヨーラである。
「外が見たいんだ、サイトからだと水平線しか見えないんだぜ」
どうやら、外の様子が見たくて射撃サイトを覗きながら砲塔を回していたらしい。
「そうね、あたしも小窓からだと水平線しか見えないわ」
「だろ? せっかくだからハッチから見ようぜ」
「そうね、そうしましょ」
「え? 開けるの?」
ハッチを開けることに対して為次は躊躇った。
「ちょっとくらい、いいだろ?」
「んー、……まあ、まだ成層圏じゃないし……」
「へへっ、良しっ、開けるぜ」
「もうちょっとで対流圏を出るかもだから! すぐに閉めてよ!」
「分かった、分かった」
「タメツグは細かいのよ」
「んもぅ」
ハッチを開ける正秀。
風圧で結構重たいはずだが、軽々と開ける。
ビュォォォォォ~
二人は同じハッチから身を乗り出すと吹き付ける軽やかな風の中、眼下を眺めた。
その目に映った光景に正秀は驚愕する。
「なっ! なんだ、こりゃぁぁぁ!」
「真っ青ね」
「え? 何? ナニ? どうしたの?」
「おい! 為次も見てみろよっ」
「んー?」
興味の湧いた為次も、運転席のハッチ開けてシートを上げ外を見る。
その光景に驚かずにはいられない。
「マジっすか……」
「どうなってんだ、この星は……」
上空から見下ろす景色は青かった。
空も星も全てが青い。
あまりにも異様な光景に、恐怖すら覚える。
焦った為次は車体のピッチを下げ、真下を確認してみる。
「あれが……」
「なぁ為次。確か、大陸って言ってたよな?」
「うん……」
星、全体が海であった。
遠くに少し雲が見える程度で、他は全て海である。
辛うじて、真下に小さくなった島が確認できる程度だ。
おそらくは、その島こそが先程まで居た陸地であろう。
それしか無いのだから……
「ただの島じゃねーか」
「北海道よりも小さいなぁ」
「四国くらいだぜ、多分」
「どうだろう? それよりは大きいかな……」
「マヨーラは知ってたのか?」
「大陸がどうなってるかんなて、そんなの知らないわ」
「お、おう?」
とにかく、いつまでもビックリしている分けにも行かないので、車体を水平に戻そうとする。
と、その時だった。
「あ、あれ? ……っ!?」
手が思うように動かせない。
為次は慌てて気を使い、無理矢理に体を動かしハッチを閉めた。
「や、やばい! マサ! 早く閉めろっ!!」
「なんだよ、もう少しくらい…… あれ?」
「なんだか動けないわね」
「気を使えって! 早く!」
「なんで為次に気を使わなくちゃならないんだよ」
「冗談言ってる場合じゃないって!」
「お、おおう!? うらぁぁぁっ!」
気合を入れて体を動かし、マヨーラを押し込みハッチを閉める正秀。
どさどさと車長席に転がり込んだ。
とても息苦しい。
どうやら気が付かない内に、かなり空気が薄くなっていたようだ。
「酸素を…… はぁはぁ」
コンスクを操作して魔道機関からの酸素の供給量を上げる。
すると、皆は次第に落ち着きを取り戻し始めた。
「や、やばかった……」
「はぁ、なんだったんだ?」
「動けるようになったわね」
「もうかなり空気が薄いみたい」
「体が動かなくなったんだぜ」
「多分ナノマシンのせいだわ」
「ナノマシンの?」
「本来なら酸素不足で先に意識を失うはずなんだけど……」
「けど?」
「けど、何よ?」
「おそらく脳への酸素供給を最優先させて、身体機能をフリーズさせたのかと」
「へー、そうなんだ」
「へー、そうなの」
「別に分かんないなら、いいけど……」
「スイは大丈夫だった? ねぇ、ちょっとスイ」
砲尾を挟んで横に居るスイにマヨーラは話しかけるが、動く気配がない。
「動かないわね」
「え? スイ大丈夫なの?」
「スイちゃん、どうかしたのか?」
「ぐぅ~、ぐぅ~、むにゃぁ~」
見ると涎を垂らして寝ている。
「寝てるわ」
「寝てるぜ」
「そう…… とりあえず、ハッチはもう開けないで」
「だな」
ちょっと死にそうになったが、車体を水平に戻し更に上昇して行く。
成層圏を越え、宇宙は目前であった。
……………
………
…
地上を飛び立ってから3時間以上が過ぎた。
ペリスコープからは星の輪郭が見える。
「もう宇宙のはずなんだけど」
「そうか?」
「ほんとに丸いのね、大地って」
「フワフワしないぜ?」
「……うん」
何かがおかしい……
宇宙に来たはずなのに無重力にならない。
それに、ここまで来るのに3時間もかかっている。
「ねぇ、マサのタブレット貸して、辞典入ってたでしょ」
「お? いいぜ、ほら」
為次は自分のタブレットを貞宗に渡したままなので、正秀から借りると何やら調べ始めた。
インターネットにこそ繋がらないが、辞書や辞典など色々とアプリは入っているので、ある程度は調べ物や計算は可能だ。
「うーん……」
「どうした?」
「どうやら速度が遅すぎるみたい」
「そうなのか?」
「一応、説明しとくと……」
為次の説明によると、リバースグラビティに頼りっきりなのがマズかったらしい。
調べてみると、地球の重力は加速度で毎秒9.81メートル増加すると書いてあった。
リバースグラビティは200パーセントの出力で発動したので1Gの加速度を得る。
今思えば、地上を飛び立った時は即座に加速した。
それこそ、加速度を感じなくなるまでに1秒も有ったかどうかだったと思う。
その一瞬こそが、車体に反重力分のエネルギーを与える時間だ。
つまり、早い方のキリが良いとこで考えても速度的には秒速10メートル、時速で36キロであるかないか程度までしか加速していない可能性がある。
下手をすればもっと遅い可能性もあるのだ。
「そんな分けで、40キロも出てないと思うの」
「へー、よく分かんないが、原チャリで宇宙まで来たようなものか?」
「そだね、てっきり加速するものだと思ったけど違うみたい」
「ブースターにはならないのか」
「どうにもリバースグラビティで反重力を得るんじゃなくて、その効果は運動エネルギーを与えるだけみたいね」
「んん?」
「一度引っ張りの力に対して反対方向にエネルギーを与えると、後は均一にエネルギーを保つだけって」
「? とにかく遅かったんだな」
「そうそう、だから隊長は上空に行くほどリバースグラビティの効果が悪くなると勘違いしてたんだろうね」
「確かに周りに何も無いと速度感が無くなるよな」
「うん」
「んで、それとフワフワしないのは関係あるのか?」
「加速してないので、衛星軌道に乗ってないの。成層圏を越えて熱圏に入っても、星の重力は9割以上残ってるよ」
「へー、まあいいぜ」
「まあ、そうね……」
正秀はイマイチ分かっていない様子であった。
単純に無重力になる為の遠心力が、働いていないだけなのだが……
「それで、どうするんだ?」
「とりあえず加速して、低軌道で第1宇宙速度にするわ」
「おう、よろしくな運転手さん」
「あ、はい」
まずは宇宙空間で異常が発生しないのを確認したい。
だから、あまり星から離れない場所で衛星軌道に乗ることにした。
それにモノポールリングも探さないとならないから。
「よしゃ、行くお」
早速、水素パルスエンジンを点火して加速を始めた。
予想以上にパワフルなエンジンであった。
凄まじい加速に体がシートへ押し付けられる。
「うぉぉぉ、スゲぇぜ」
「きゃゃぁぁぁぁぁ!」
戦士の正秀は、なんとかGに耐えることができる。
しかし、非力なマヨーラは後ろの無線機に顔面から押し付けられてしまう。
「いだだだだっ、いぎぃ!」
「だ、大丈夫なのか? マヨーラ」
「だ、大丈夫じゃ…… ぐぎぎ」
「仕方ないな、こっちに来な」
なんだか可愛そうなので、正秀はマヨーラを抱き寄せると自分の膝の上に乗せてやった。
「え? ちょ、マサヒデっ」
「少し大人しくしてるんだぜ」
「あ、あうう…… でも……」
「どうかしたか?」
マヨーラを抱える腕が思いっきり、おっぱいを押さえていた。
思わぬハプニングに嬉しいのか、恥ずかしいのか分からない。
「ひゃぁぁぁ! んんっ、ね、ねぇ……」
「我慢してな」
「あああああっ! ずっとこのままでもいいわっ!」
そんな嬉しそうなマヨーラを横目に、スイは後ろにある弾薬庫扉の上で呻いていた。
流石に、この衝撃で目が覚めたらしい。
「うにゅにゅにぃっ、何事ですかぁぁぁ!」
「お、スイちゃん起きたか」
「ここはパラダイスよ、スイ! ああんっ!」
「にぎぃぃぃ、体が重いのですぅぅう!」
そんなこんなで暫しの間、加速が続くのであった……
……………
………
…
加速による高G体験は思ったより直ぐに終わった。
そして、無重力によって体がフワフワと車内を漂い始める。
「マ、マサヒデ……」
「おう?」
抱きしめられる腕が離されると、マヨーラは自ら正秀に抱き付いていた。
その顔には丸い玉となって浮かぶ涎が纏わり付いている。
しかも、なんだかイッちゃってる表情だ。
加速のせいなのか、おっぱいだけでイッのかは本人しか分からない。
どうでもいいことなのだ。
「ぬぬぬ? フワフワして気持ち悪いのです」
「あたしは気持ち良かったわ」
「どうなったんだ?」
「低軌道に乗れたみたいかも」
「ふむ」
ペリスコープからは真っ青な星が、半分だけ太陽に照らされているのが見える。
とうとう、念願の宇宙へと辿り着いたのだ。
しかし、それは始まりにしか過ぎない。
目指すは目的のモノポールリング。
そんな宇宙で色々と初めての体験をしたマヨーラは思うのだ。
ナイスよタメツグ!
と……
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