異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

文字の大きさ
131 / 183
異世界編 3章

第124話 開放

しおりを挟む
 お茶が旨い。

 「ふぅ、やぱっりお茶はいいぜ」

 正秀はお茶を飲みながら至福の一時を味わっていた。
 当然、為次も同意である。

 「うむ」

 「あたしが淹れたのよ、感謝なさい」

 「マヨマヨ様はお茶博士なのです」

 「最高だぜ。マヨーラ」

 正秀に褒められて、マヨーラはご満悦だ。

 「マ、マサヒデが飲みたいなら、いつでも淹れてあげるわ」

 「おう、サンキューな」

 なんのお茶かは分からない。
 この世界では仕方のないことだ。
 それでも、良い香りを醸し出すお茶には違いない。

 しかし……

 「あたしは、この香りが大好きなのよ」

 「じゃあ、思いっ切り嗅いでみてよ」

 為次に言われるとマヨーラは黙ってコップを見つめる。

 「…………」

 はっきり言って臭い。
 率直に言えば糞便の臭いしかしないのだ!
 中途半端なお茶の香りなど、車内の異臭にすべてが掻き消される。

 「うんこ茶、美味しいねー」

 「………ギャァァァァァ! もう嫌! いつまでこんなとこに居なくちゃいけないの!?」

 とうとうマヨーラは喚き始めてしまった。

 彼らは現実逃避をする為に、お茶会を開くことにしたのだ。
 まったくもって無計画な宇宙の旅に行き詰まったからだ。
 目の前には扉を開けれそうなレバーがある。
 だが、真空の宇宙では手が届かない。

 「そうだわ! もう、外に出るしかないわ!」

 突然、立ち上がりハッチに手を掛けるマヨーラ。

 「うわっ、やめろ! マサ! マヨを止めるんだっ」

 「お、おう!」

 正秀は慌てて振り向くと、マヨーラの腰を掴んで引っ張る。

 「やめるんだ! マヨーラ! 死んでしまうぜ」

 「こんなとこに居るくらいなら死んだ方がマシよっ!」

 「落ち着け、落ち着くんだ!」

 「もう、どうしようもないのよ! いつかはウンコに塗れて溺れ死ぬのよっ」

 「くそっ! クソだけに」

 埒が明かないので、正秀は車長席へと移動すると、無理矢理ハッチからマヨーラを引き離す。

 「いやぁぁぁ、止めないでマサヒデ」

 「いいから、こっちへ来るんだ」

 「にゃぁぁぁぁぁ!」

 勢い余って、おっぱいを鷲掴みにする正秀。
 もっとも、当の本人は気が付いていない。

 「ふにゃぁぁぁぁぁ! ちょっとマサひぃ…… あ、ああん」

 「こっちへ来るんだ!」

 「分かったから! あの、ん…… あんっ」

 おっぱいを揉みしだかれて、ようやくマヨーラはハッチから離れた。
 車長席へと移動していた正秀の膝に座り込む。

 「少し落ち着いてくれ」

 「も、もう大丈夫よ。マサヒデ」

 耳まで顔を真っ赤にしてマヨーラは俯いていた。

 「はぁ…… まあ、マヨーラじゃないけど確かに外の空気が吸いたいぜ」

 「確かに」

 為次も同意らしい。

 「スイもお外に出たいのです」

 「そうね、外の風にあたりたいわ」

 マヨーラはすっかり大人しくなっていた。
 正秀におっぱいを揉まれ、膝の上でドキドキである。

 「風が吹いていても、外が宇宙じゃどうしようもないぜ」

 「出た瞬間に死ぬから出ないでよ」

 「だよな。どうにかならねーか? 為次」

 「どうにかって…… ん? 今なんて?」

 正秀の言った言葉が何か引っ掛かる。

 「え? どうしようもないんだぜ」

 「違う! その前」

 「えっと、風が吹いてるぜ?」

 「はぁ!? 何言ってんの!?」

 「何と言われてもなぁ、風速計が少し動くんだぜ」

 正秀の言葉に為次はゴクリと唾を飲み込み、ハッチを見つめる。

 「まさか…… 空気があるのか……」

 「どうしたの? ここから出られるの?」

 マヨーラは訊いた。

 「どうだろうな?」

 「ねぇマサ。今も風速計動いてる?」

 「んー、今は無風だぜ。だけどレオが走ると風が吹くんだぜ」

 「まじか……」

 「まじだぜ」

 「風があるなら空気もあるよね?」

 「ああ、そういやそうだな」

 「よし、ちょっと走らせてみるから、見ててよ」

 「おう」

 試しにレオパルト2を走らせてみる。

 ブロロロ……

 「どう?」

 「間違いないぜ」

 「うーむ」

 確認が終わると再びレバーの手前で停車する。
 風速計が動くならば何かしらの気体が存在しているのは確かだ。
 しかし、それが人の呼吸可能な空気だとは限らない。
 当然だが故障の可能性も拭えない。
 湖畔で吹っ飛んだ時のダメージが心配だ。

 「どうする為次? 試しにちょっとだけ開けてみるか?」

 「うーん……(ナノマシンのおかげで意識を失うのは遅れるはずだ、それだったら少しだけなら)」

 「ねぇ、開けれるの?」

 また、マヨーラはイラついてきた。
 実際は皆が同じ気持ちである。
 いつまでもウンコ臭い車内でお茶会をしていては何も進展は無い。

 決断をするしかなかった。
 本来それは車長の仕事であるが、為次が言う。

 「よし、こっちを開けてみる。ここなら電動だからすぐに閉めれるし、圧を抜けば空気が漏れるか分かるから」

 「おう」

 為次は振り返り、正秀を見ようとしたが二人の足しか見えなかった。
 そんな為次の動作に正秀は気が付いたのかは分からないが……

 「大丈夫だ、お前を信用してるから」

 笑いながら言った。

 「はいはい」

 適当な返事をしながらも為次は緊張していた。
 密閉されたハッチ圧を抜いてみる。

 プシュ

 「「「「…………」」」」

 静寂が車内を包み込む。
 空気の抜ける音はしない。
 只、エンジンの音が響くだけである。
 どうやら車内と同程度の気圧が存在すると思われる。

 「じゃ、開けるわ」

 「おう」

 「と、その前にスイ。ヒールポーションちょうだい」

 「はいです」

 スイはポーションセットから1瓶取り出すとヒールを付与した。

 「どうぞなのです」

 「うん、ありがと」

 ヒールが有毒ガスなどに効果が有るのかは分からない。
 それでも、御守のような物だ。
 少し安心する。

 「みんなは息を止めててね、俺が合図するまで出ちゃダメだよ」

 「おう」

 「早くしてよね」

 「はいなのです」

 運転手ハッチを開放する為次。

 ウィィィン……

 開いた瞬間、頭を出すと恐る恐る深呼吸をしてみる。

 「はぁ、はぁ(息ができる……)」

 酸素供給量と排気を最大にし、スイを押し退けると外へと飛び出した!
 すぐにハッチを閉める。

 「おおおっ!」

 銀色の床を走り回ってみるが、まるで地上に居るかのようだ。
 重力もあれば呼吸も可能だ。

 「よっしゃ!」

 レオパルト2に向って親指を立てながらグッジョブする。
 その合図を皮切りに車長ハッチが開き、皆がぞろぞろと出て来た。
 
 マヨーラは真っ先に飛び出る。

 「あー、なんて素晴らしいの! ここは天国だわっ」

 「良かったなマヨーラ」

 「ええ……(マサヒデと密着してるのも捨て難いけどね)」

 「しかし、空気があるなんてな。思いもよらなかったぜ」

 「こんなことなら、早く出ておけば良かったわ」

 「だな」

 そして、スイも出ようと頭を出した時だった。
 マヨーラが叫ぶ。

 「スイ! あんたは糞溜まりの箱をどっかに捨てなさい!」

 「なぅー、スイも早く出たいのです」

 「いいから、遠くへ捨てるのよっ!」

 「え? トイレ捨てちゃうの…… 帰りが……」

 為次は戸惑い気味に言った。

 「当たり前でしょ、帰りも臭いなんて冗談じゃないわ。まったく」

 「しょうがないなー」

 「スイ! さっさとなさい」

 「はうー」

 スイは渋々車内に戻ると、糞便の詰まった箱を拾い上げ装填手ハッチから再び出て来た。

 「どりゃぁぁぁ!」

 スイの馬鹿力で箱を投げ飛ばす。
 かなりの飛距離だ。
 溝で囲われた巨大な四角の中央付近まで飛んで行った。
 落下の衝撃によって箱が粉砕し、中身が飛び散るのが遠くに見受けられる。

 「捨てたのです」

 「あーあ、帰りにどうなっても知らないよ」

 「あんたが飲めばいいのよ」

 「だってさマサ」

 「俺か?」

 「ひゃぁぁぁ、な、な、何を言ってるのよ! あたしのオシッコが飲みたいって…… で、で、でもマサヒデがどうしてもって言うなら…… きゃぁぁぁ! 大丈夫よ! どんな趣味でも受け止めてみせるわぁぁぁ!」

 「マヨーラは何を言ってるんだ?」

 「さあ?」

 なんだかマヨーラは正秀の前でスカートをたくし上げようとしている。
 しかも息遣いが凄く荒い。

 「はぁ……! はぁ……! あたし頑張るわ!!」

 「マヨーラ……」

 正秀はどうしていいのか分からず、為次を見る。

 「まあ、マヨはほかっといてレバー動かしてみようよ」

 「おう、そうだな」

 少しパンツの見えているマヨーラは置いといて、正秀と為次は目的のレバーに近寄る。
 良く見ると回し方も書いてあった。
 どうやら少し上に引いて右に回せばいいらしい。

 「右に動かせばいいんだな。よし、やってみるぜ」

 「よろ」

 「とりゃ」

 レバーを握ると引っ張ってからグリグリと力いっぱい回す正秀。
 180度程回転したところで、それ以上は動かない。

 「これで一杯だぜ」

 「そうすか」

 ゴゴゴゴゴ……

 地の底から響くような音が聞こえてくる。

 ゴゴゴゴゴ…… ゴウン ゴウン……

 数百メートルはあろう、巨大な四角い溝の中央付近から左右に床が開放して行く。
 予想通りであった。
 とうとう入口が開く。

 その光景にマヨーラも正気に戻り、皆は驚愕する!

 「な、なんなのよ……」

 「なんてことをしたんだスイちゃん……」

 「あーあ、スイがあんなとこに……」

 「違うのです! スイは悪くないのです!」

 なんと、スイの投げた便所箱がちょうど開放する境目に落ちていたのだ!
 ウンコや汁が開いた所へと落ちて行く。

 最早、手の付けようもなく見守るしかなかった……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

処理中です...