異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 3章

第129話 代償

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 スクリーンに映っていた美しい星を見ていた正秀は何も言えなかった。

 一筋の光線が星を貫いた…… 瞬間、砕け散る。
 目に見える衝撃波が生命の叫びのように拡がる。
 まるで出来の悪いB級映画でも見ているかのようだ。

 「……なんだよ、……これ」

 ようやく口を開いた正秀だが、何を言っていいのか分からない。
 一方のマヨーラは何が起こっているのか、いまいち理解していない様子だ。

 「青い玉が砕けちゃったわね。バァーって広がる波紋が綺麗だわ」

 「と、まあ、テラの連中にとっては星の1つや2つ風船みたいなもんだね」

 「ふざけるなよ…… なんでこんなことを……」

 「星間戦争。敵母星をモノポールキャノンの射程に収めた方が勝つみたいだね」

 「こんなの狂ってるぜ…… はっ!? まさか……」

 「どうかしたの? マサヒデ」

 「魔獣は魂の寄り添った存在…… ってことは」

 「その通りだよマサ。こいつらは星間戦争おっぱじめて星ごと命を奪い去った。その代償が宇宙魔獣の存在」

 「くそっ……」

 「戦争が終わったのはいいけど、今度は魔獣に襲われ始めた。なんとか撃退はするも、通常兵器では効果が薄い魔獣相手では損害が大きくなり過ぎちゃったんだね。しかも、延々と終わらない戦い…… それならば魔獣をもって魔獣を制すってね」

 「それがターナの実験か……」

 「だから言ったでしょ、アクアの生命体なんて塵にも等しい」

 「そんな分けねーだろ!!」

 思わず正秀はスクリーンを殴りつけてしまった。
 だが、空中に投影されているだけで実体は無い。

 ゴチン!

 「いぎゃぁぁぁっ!?」

 「あっ、しまった!」

 振り上げた拳は行き先を失い、勢い余ってスイの頭を殴りつけてしまった。

 「ちょっとマサヒデ…… いくらなんでもスイが可哀想よ」

 「あうう…… マサヒデ様が酷いのですぅ」

 頭を抑えながスイは為次に訴えかけた。

 「あー、スイ。マサは酷い野郎だねー」

 「ち、ち、違うんだ。スイちゃんすまねぇ」

 「はうー」

 殴られたスイの頭を撫でる為次を横目に、正秀は必死に誤魔化そうとする。

 「そ、それより。なんでこんなに凄い兵器を持ってるのに、魔獣相手に苦戦するんだ?」

 しかし、いじの悪い為次は聞いてない振りをするのだ。

 「痛いの痛いの飛んでけー」

 「なぅー」

 「悪かったから! 謝るから許してくれよスイちゃん」

 「だってさ。スイ」

 「怒ってないのです。これくらい慣れてるのです」

 「お、おう……」

 「まあ、マサの暴力は置いといて。兵器に関してだけど、こいつらは魔法を持ってないんじゃないのかな」

 「何? 魔法が使えないの?」

 マヨーラは訊いた。

 「多分ね」

 「ふーん」

 「魔法が使えないとダメなのか?」

 「映像でターナが言ってた特殊シールドってやつ。多分、マジックシールドのことでしょ」

 「ああ、アンチシールドもディスペルマジックも使えないのね」

 「きっとそうだね。マヨ」

 「戦車砲も効かなかったからな。厄介だぜあれは」

 「うん。マジックシールドそのものは、ある程度の攻撃で破れるけど、強力な魔獣だとシールドを持続的に展開するんだったよね」

 「ええ、そうよ」

 「だからアクアの連中はシールドを無効化するのと同時に攻撃して対処してたんだけど、それができなければ高エネルギーを持続的に照射するか、大質量で強引に押し潰す……」

 「……それで船をぶつけたのか」

 「その特攻も惑星上だからできたんだろうね。大地って大質量と重力ってエネルギー。それを利用して船の質量を持続的に与える。ところが宇宙になれば大質量の物体同士で挟み込む必要がある…… けど難しいだろうね。結果的に攻撃方法はモノポールキャノン程ではないだろうけど、それなりのエネルギーを当て続けないとならない…… どれだけの速度かは知らんけど動く相手にね」

 「そりゃ大変だぜ。苦戦する分けだな」

 「うん」

 「だけど、わっかんねーな」

 「何が?」

 「昔のターナは対魔獣用の魔獣を作りたかったんだよな?」

 「うん」

 「じゃあ、今のターナは何をやってるんだ?」

 「さあね。転生で記憶がどうなってるかだと思うけど」

 「そうか……」

 「でも、ほらこれ見て」

 為次は宇宙船の映像を切り替えて、スクリーンに見たこと無い装置を表示させた。
 それは、黒い玉からケーブルが何本も生えている不思議な物体だ。
 半分ほど透視図になっており、中には蜘蛛の巣ような糸がクリスタルらしき物に絡みついているのが確認できた。

 「何よ、これは?」

 「なんだこりゃ?」

 マヨーラと正秀は変な物を見るようにスクリーンを覗き込んだ。
 当然、見ただけでは分からないので、為次は説明する。

 「これが例のマインドジェネレーターってやつだね」

 「ああ、手記に書いてあったやつか。確か壊れて困ったとかだったよな」

 「ねぇ、その手記や手紙ってなんなの?」

 マヨーラが訊くので、為次は答える。

 「マヨは知らなかったね、ガザフから貰った昔話だよ。記憶を失う前の出来事が書いてあるの」

 「あんた達、そんなの手に入れてたのね……」

 「別に隠すつもりは無かったんだがな、すまねぇマヨーラ」

 「ううん、別にいいのよ。マサヒデ」

 「ま、それの真偽も確かめたかったからね。それもあって、ここに来た分けで」

 と、為次は言った。

 「ふーん」

 なんだかマヨーラはあまり興味が無さそうであった。

 「んで、さっきマサが言ったように、このマインドジェネレーターが壊れちゃったのがマジでヤバイみたいだね」

 「どうヤバイんだ?」

 「これの説明を読んだんだけど…… テラの連中はナノマシンで人間を不老不死にする技術を手に入れた。体の細胞をすべてベストな状態の保つ訳けだね」

 「凄い技術だぜ…… 俺達もその恩恵を受けている分けか」

 「そだね。そこまではいいんだけど…… 当然、脳味噌も常に最高な状態にしてしまう。別に悪いことではなさそうだけど、困ったことに人間の脳は情報を処理する能力には限界がある。通常、人間は古い記憶を薄れさせ脳のオーバーフローを防いでいるんだけど、なのにナノマシンは古い記憶まで忘れることなく鮮明に覚えさせえしまう」

 「そうなのか? その割には昨日の飯もあまり覚えていないんだぜ」

 「そこは連中の技術の凄いとこだろうね。擬似的にファジカルな振る舞いをさせているらしい」

 「なんだ分からねーが、すげーぜ」

 「そんで、記憶がいっぱいになると脳に負担が掛かり過ぎて死んでしまう。だけど、ナノマシンが死なせてはくれない。結果的に本能剥き出しの狂った人間になるらしい」

 「それがバーサーカーの正体って分けか」

 「ちょっと何を言ってるのか、さっぱりだわ……」

 「スイも、また眠たくなってきたのです……」

 「うん…… とにかく、その記憶をバックアップして、登録者と通信しながら必要に応じて出したり入れたりするのがマインドジェネレーターだってさ。それによって脳に負担を掛けないようしてる。バンクの切り替えみたいなもんだね」

 「じゃあ、そのマインなんちゃらが無くなると記憶も無くなるのか?」

 「いや…… そうじゃないような…… ちょ待って。俺も全部を読んだ分けじゃ……」

 為次は面倒臭そうにスクリーンに触れて、画面をスクロールさせる。

 「えーっと、どれだったかなファッキュー」

 「FAQだろ……」

 「まあ、そうとも言うかな」

 「ファッキューは駄目だろ……」

 「あった、これこれ。えーナニナニ……」

 「どうだ? なんて書いてあるんだ?」

 「うん。一応は大丈夫みたい。一応ね」

 「なら、サーサラさんも元に戻れば大丈夫だな」

 皆はバーサーカーとなった受付嬢を思い出した。
 為次にとっては、あまり良い思い出では無い。
 殺されかけ、挙げ句には木に吊るされたから……

 「サーサラも戻れるの? でも、バーサーカーなった人は……」

 マヨーラは少し悲しそうに、言いかけた言葉を途中で飲み込んでしまった。

 「んー、さっき言ったように一応なんだよね……」

 「どういうことなの?」

 「記憶を圧縮して体内のナノマシンが非常用に保存してるみたいだけど…… なんていうのかなぁ、非可逆圧縮ってやつ? 圧縮率が上がる程に記憶が断片的に破壊されていくって、それは元に戻せない」

 「「…………」」

 「ぐー、ぐー、ムニャムニャ」

 正秀とマヨーラは何も言えなかった。
 そんな中、スイのイビキだけが静かな部屋に響いていた。

 「スイちゃん寝てしまったな」

 「あたしも、タメツグの話を聞いてたら眠くなってきたわ。ふあぁ~ぁ」

 「今なん時だ?」

 腕時計を見る正秀。
 針は12時3分を指していた。

 「24時回ってるぜ。そろそろ寝ないか? 向こうにベッドの置いてある部屋もあったぜ」

 「うん。先に寝てていいよ、俺はもう少しここに居るから」

 「そうか…… あまり無理はするなよ、為次」

 「うい」

 「スイちゃんは…… そのまま為次の上で寝かせといた方がいいかな」

 「ちょっと重いけど一人で寝かせとくと、すぐに起きて怒るからなぁ」

 「ははっ、だな。行こうぜマヨーラ」

 「そうね。行きましょ」

 コントロールルームから出て行く正秀とマヨーラ。

 「マサヒデ達っていつも中途半端に時間を言うわね」

 「そうか?」

 「そうよ」

 後には、寝息を立てるスイと為次が残った。

 自分の周りに浮いている複数の情報を見ながら為次は呟く。

 「くぐるしかないか……」

 と……
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