異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 3章

第130話 選択

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 ガクッ

 「ふがぁ?」

 為次はシートに座った状態で眠っていた。
 寝返りで打とうとしたのだろうか? 首がガックリした拍子に目を覚ましてしまった。
 スイは既に起きていたようだ、膝の上で為次をジッと見つめている。

 「おはようございます。タメツグ様」

 少し重いが、寝起きに抱き寄せると柔らかい感触が気持ちいい。

 「ああ…… おはよ」

 空中投影されたスクリーンが昨晩のまま浮いている。
 色々と読んでいる内に寝てしまったようだ。
 煩わしいので、手で触れながら向こうへ追いやると消えた。

 「なん時かな…… 7時過ぎか……」

 昼か夜かも分からない。
 腕時計を見ながら為次は呟いた。

 「えっと……(あれから1ヶ月以上経ったし、どうしようかな……)」

 こちらの世界に来てから、朝の適当な時間に正秀と時計を合わせた。
 日本時間はレオパルト2の車内時計が記憶してくれている。
 飛ばされた時の時間がズレていたので、こちらの時間に合わせた。
 しかし、困ったことに進数が違う。
 地球では12進数と60進数で時間を計っていた。
 この世界では10進数と100進数になっている。
 つまり夜の10時なると日付が変わってしまうが、時計の針は24時少し前で1日が終わる。

 「どうかされました?」

 「うん。アクアの自転周期が分かったから、時計をどうしようかなって」

 「はい」

 返事をするスイだが、イマイチ理解していない様子だ。

 「約3分31秒だけ早く回ってるんだよ」

 「はい」

 もっとも、考えたところで手持ちの時計は24時間周期でしか時を刻んでくれない。

 「ま、いっか」

 「はい」

 「シャワーでも浴びてくるかな……」

 「私も一緒に行くです」

 「いいけど、一緒には入らないよ」

 「……はぃ」

 館内図にシャワールームと洗濯機らしき物があったので向かうことにした。
 トイレの臭いが染み付いているので洗濯もしたい。

 「じゃ、行こっか」

 プシュー

 扉の前に立つより早く開いた。

 「よう為次、ここだったか」

 「あ、マサマヨ」

 正秀とマヨーラが入って来る。

 「あんた、ずっとここに居たの?」

 「んー、あのまま寝ちゃった」

 「風邪引くぜ」

 「引きたくても、引けんよ」

 「……だな」

 「それよりも、ちょっとシャワー浴びて来る」

 「俺達は昨日入ったぜ」

 「洗濯した?」

 「洗濯? してないぜ。洗濯機でもあるのか?」

 「あるっぽい」

 「よし、みんなで行くか」

 「そうね、あたしも臭いままだし……」

 こうして皆は、朝からシャワーと洗濯に行くのでした。

 ※  ※  ※  ※  ※

 「着いた」

 シャワールームは個室が3箇所設置してあり、湯船は無い。
 横には引き戸の付いた棚がある。
 あまり広くはないが、シャワーがあるだけでもマシだ。
 戦車内と比べれば居住環境は遥かに良い。

 「洗濯機はどれだ?」

 「これだよ」

 と、為次は棚の引き戸を開けた。

 「ただの棚だぜ?」

 「服を入れて横の操作パネルで動かすみたい」

 言われて、正秀は操作パネルに触れる。

 「これも画面が宙に浮くのか」

 「どうもスタンダードなシステムみたいだね」

 「よし! 俺も、もう一回シャワー浴びて綺麗になった服でサッパリするか!」

 「そうね、あたしもそうするわ」

 「あ、マヨとスイは待ってよ」

 「はう?」

 「何よタメツグ」

 「二人はレオを掃除してよ」

 「はぁ!? なんであたしが掃除すんのよ!」

 「だって、俺めんどくさいもん」

 「ふざけないでっ! バカじゃないの?」

 「だってー、マヨも帰りに臭いのヤダでしょ?」

 「それはそうだけど……」

 「スイはつばい様も綺麗にするです」

 「スイは偉いなー」

 「えへへぇー」

 為次に褒められてスイはとても嬉しそうだ。

 「マヨはお部屋のお掃除もしてくれない人、っと」

 「ぐっ」

 マヨーラはチラリと正秀を見た。
 為次も正秀を見る。

 「ねーマサ。掃除のできるお嫁さんと、できないのと、どっちがいい?」

 「お、俺に訊くのか……」

 「ねー、ねー」

 「あああ! もうっ、分かったわよ。やればいいんでしょ! やればっ!」

 「やたー、流石マヨ。いいお嫁さんになれるね。ね、マサ」

 「お、おう…… そうだな……」

 「タメツグ~、後で覚えてらっしゃい……」

 怒っているマヨーラを無視して、為次は棚の方へと向かう。
 そこには、白い布状の物が積み重ねて置いてあった。
 それを数枚ほど手に取る。

 「じゃあ、これ」

 と、マヨーラに差し出した。

 「……この雑巾で拭けばいいのね」

 「お水と、たらいも欲しいのですが…… 洗面器でいいのでしょうか?」

 「いや、スイ。洗面器は、まだ食い物が入ってるから駄目だよ」

 「そうですか」

 「じゃあ乾拭からぶきだけでいいの?」

 マヨーラは訊いた。

 「ふふ、実はその雑巾。なんと! 拭くだけで超ピカピカになるスーパー雑巾なのだ。しかも臭いも取れるし、除菌仕様ですぞ。説明によればね」

 「へー、これがね」

 ゴシゴシゴシ……

 試しにマヨーラは為次の顔を拭いてみた。

 「ぬおぉ…… 何故、俺の顔を……」

 「少しは綺麗になるんじゃないかいと思って。だけど、相変わらずの間抜けづらね」

 「ぬぅ……」

 「まあいいわ、行きましょ。スイ」

 「はいです。マヨ姉様」

 「すまないな、マヨーラ。それにスイちゃんも」

 「気にしないで、マサヒデ。あたしは掃除も得意なのよっ」

 「お、おう……」

 こうして、少女二人は車内清掃の為に戦車へと向かうのであった。
 残された野郎二人は早速、シャワーを浴びようと服を脱ぐのだが……

 「ねぇ、マサ」

 「なんだよ、やっぱり人払いか?」

 「……あー、うん……(バレたか……)」

 「で、何か分かったのか?」

 「うん。安心したよ、ターナは悪者じゃないってね。事故だったから、しょうがないってね……」

 「おう、俺も同感だぜ。為次」

 「そんで、これからどうするかなんだけど」

 「どうするんだ?」

 「……まあ」

 「なんだよ……」

 正秀は脱いだ服を、ぽいぽいと洗濯機棚に入れた。
 パンツも脱ごうとしたところで、手を止めて為次を睨む。

 「見捨てる気なのか?」

 「なんつーか、それも選択肢だよね……」

 「それなら、俺は残るぜ」

 「分かった、分かった。それも選択肢の1つだけって話だよ」

 「俺には、その選択肢は無いぜ」

 「うん。とにかく、どちらにしろリングを潜る必要があるんだよ。助けるには海にバラ撒かれたナノマシンを駆除するか、新しいマインドジェネレーターを持ってくるか」

 「リングの向こうには、あるのか?」

 「それが分からない。千年経った今でもテラが存在して、星の人々が技術を保ったまま生存しているかどうか…… それに、好意的に協力もしてくれるか……」

 「そんなの、行ってみないと分からないんだぜ」

 「まあそうね。だから、もし助ける方法無かった時に…… マサはこの星を…… アクアを……」

 「…………」

 正秀は何も言わずにパンツを脱いで全裸になると、洗濯機棚へと入れた。

 「リングは使えるのか?」

 「それは大丈夫だと思う。リングの維持はナノマシンがやってくれている。生体ナノマシンの性能をみれば問題無いかも。起動方法も分かったし」

 「じゃ、行ってから考えるぜ。ダメだった時にな」

 「……うん。後…… あの二人は……」

 「マヨーラなら大丈夫だぜ。昨晩話しといた」

 その言葉に為次は意外そうな顔で正秀を見つめる。

 「へぇ……」

 「指輪を渡しに行くから、それまで待ってくれってな。ああ、もちろん他にいい人が現れたなら、そんな約束を気にする必要も無いともな」

 「知ってたんだ……」

 「当たり前だろ……」

 「じゃあ、いいか」

 「良くないぜ。スイちゃんはどうするんだ?」

 「ああ、まあ判断はスイに任せるよ、アクアが助からなかったらね。助けることができたならお別れかな。隊長が面倒見てくれるみたいだし」

 「……そうか。スイちゃんにとってはアクアが滅んだ方がいいのかもな」

 「とにかく、今後の方針は決まりってことでいいかな?」

 「おう」

 「んじゃ、簡単に説明しとくよ」

 為次によるアクア救助作戦はこうであった……

 まずはモノポールリングの起動である。
 これが不可能であった場合、すべては終わりだが、それについては大丈夫だろうとのことだ。

 それよりも、ワームホールが開き予定通りにテラ宙域へとワープできてからが問題だ。

 一番好ましいパターンはテラ星人とコンタクトでき、尚且つ友好的であり超越した技術力を持って協力してくれれることである。
 そうであれば、何も問題は無い。

 次にテラ星人が滅亡していたパターンである。
 この場合、当然だが奴らの協力は仰げない。
 だからといって悲観するのは、まだ早い。
 必ずしも知的生命体と接触する必要はない。
 残された遺産をちょうだいすればいいだけの話である。
 ナノマシンによって保守管理されているシステムは、何千年経っても壊れる可能性は極めて低いから。

 問題は宇宙空間で戦車を運用しながら遺産探しをするのは限界があることだ。
 戦車は空も宇宙も飛ぶようには、できていないので当然である。
 そこでモノポールリングを活用する。
 モノポールリングは2つでワンセットとなっており、向こう側にも同じ物があると考えられる。
 しかも自立航行が可能で、短距離ワープもこなす。
 これを母船とし惑星や周辺宙域の探索をして、ナノマシンの技術やマインドジェネレーターを探し出すのだ。

 最後に最悪のパターンである。
 すべてが消滅していたら……
 奴らは惑星すらも一撃で消し去る力を持っている。
 戦争などで、モノポールリングは愚かその他施設、母星まで消滅していたらどうしようもない。
 更には宇宙魔獣と呼ばれる怪物の巣窟になっている可能性すら否定できない。
 はたまた、寸断されたワームホールから目的地外に投げ出されるかも知れない。
 そうなればアクアへ戻ることすらできないであろう。

 との内容であった。

 「って、そんなとこかな」

 「おう、つまり行ってみないと分からないってことだな」

 「まあ……」

 「それなら早く行こうぜ」

 「その前に一旦、アクアに戻るよ。あの二人も、どうするか聴かないとだし。残るってなら送り返さないとだから」

 「おう」

 「それに次の人型魔獣も気になる」

 「へへっ」

 フルチンの正秀は手を越しに当て笑った。

 「なんすか?」

 「為次も意外とアクアが気に入ってるなって」

 「はぁ? 何それ」

 「ま、気にするな。それよりシャワーを浴びしまおうぜ、のんびりし過ぎてるとスイちゃんとマヨーラが戻って来るぜ」

 「ああ、うん。そうね」

 そうして、二人は手っ取り早くシャワーを浴びるのであった。

 勢いよく出て来るお湯を頭から被る為次は、後ろめたい気持ちを少しでも流そうとしていた。
 スイのことに関しては正秀に嘘をついてしまったから……

 ※  ※  ※  ※  ※

 その頃……

 レオパルト2車内では少女二人が掃除を頑張っていた。

 「何これ!? 凄いわ! 軽く拭くだけでピカピカなるわ。しかも、雑巾が全然汚れないわね」

 「これなら、お掃除もラクラクなのです」

 「この雑巾、残ってるのも全部持って帰るわよスイ」

 「はいです。マヨ姉様」

 スーパー清掃アイテムをゲットして、喜んでいるのでした……
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