異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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テラ宙域編 4章

第14話 下らない願い 止まらない思い

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 あれから1時間くらい経ったであろうか?
 エーマは三人から魔法についての講義を受けていた。
 その際に、違う星から来た正秀と為次は気と呼ばれる、魔法とは違った能力の説明もしておいた。
 他にもマインドジェネレーターの喪失によるバーサーカーの発生、及びターナの行った対応策なども話した。

 「ふむ…… おおむね把握はできた。生物学者の妹らしい発想ではあるな」

 「ターナって生物学者だったんだ」

 為次は言った。

 「ああ。魔獣が生命の集合体である説もターナが唱えたものだ」

 「それって本当なの? 魂とかあるわけ?」

 「ふっ、どうだろうな…… 確証は無い。だが、理論上は辻褄が合う。気になれば論文を読んでみるといい」

 「んー、めんどくさいから別にいいけど…… でも、それなら対策とかは考えなかったの?」

 「対策とは?」

 「例えば、回収したエレメンタルストーンを保存して魔獣の元を無くすとか。千年もあったなら相当回収できるでしょ」

 「あの石か。あれは勝手に消滅してしまうぞ?」

 「え? まじで? じゃあスイのライトブレードも使えなくなるの?」

 「ライトブレード?」

 エーマが訊くと、スイは腰に付けていたライトブレードを手に持って見せる。

 「これがライトブレードなのです。タメツグ様に買ってもらいました」

 「見せてもらってもいいかい?」

 「どうぞなのです」

 と、エーマに渡した。
 物珍し気に見ながら、トリガーをカチャカチャしてみるが何も起こらない。

 「それは戦魔導士しか使えないのです」

 「ああ、先程聞いた付与魔法の使える者だな」

 「です」

 「ではスイ君が使ってみせてくれ」

 「はいです」

 ライトブレードを返してもらうと、トリガーを引くスイ。
 ブヨーンと音が鳴り光の刃が伸びた。

 「ビームブレードみたいだな、ビームジェネレーターを内蔵している分けではないのか?」

 「ないない。そんな高度な機械は無いよ。エレメンタルストーンが入ってるだけみたい」

 顔の前で手を振りながら為次は教えてあげた。

 「エレメンタルストーンによって生成されるか……」

 「だから消滅するってんならその内に使えんくなるのかなぁ……」

 「封印してあるので大丈夫だと思いますです」

 「え? 封印?」

 「はい、エレメンタルストーンは回収してスティフナの魔法をかけるです。その後で小さいのはシンセシスの魔法でくっ付けて大きくするのです。処理を施したのは消滅すると聞いたことは無いのですが……」

 「そうだったんだ……」

 「はぃ」

 「なんだ、タメツグ君も知らなかったのか」

 「うん、まあ」

 「しかし、それが事実なら対策も可能か……」

 「でしょ」

 「ああ。タメツグ君の言うように全てのエレメンタルストーンを回収すればいいが、なんにせよアクアへ行く必要があるな」

 皆が魔法についてアレコレ話しているが、あまり理解していな正秀は大人しくしていた。
 だが、それも飽きたらしく、ようやく口を開く。

 「なー、もういいだろ。早くレオを改造してアクアへ戻ろうぜ」

 「マサは、どっかに遊びにいっててもいいのに」

 「俺だけ仲間外れにするなよ……」

 「んま、確かにレオの改修をさっさと始めたいけど」

 「そう焦らないでくれ。1日、2日で終わるものでもないぞ」

 「え? そうなの?」

 「当然であろう」

 「はぁ…… 仕方ないか。で、何処で改修してくれるのかな?」

 「ここだが」

 「マジ…… この汚い部屋で……」

 「オートファクトリーは、いま戦車が置いてある所だ。ここから操作する」

 「大丈夫かなぁ……」

 「安心してくれ。少し散らかっているが問題ない」

 「少しねぇ……」

 爆発で吹き飛んだゴミを見ながら為次は言った。

 「とにかく今日は休んだらどうだ? なんでもサラマンダーを倒して来たばかりだそうじゃないか」

 「おう! 颯爽と現れた水谷マンの必殺技で一撃だったぜ」

 「スイもお手伝いしたです」

 「そうだねー」

 「では戦車の改造は明日からだ」

 「うい」

 「よし、昼飯がまだだったな。みんなで食いに行こうぜ」

 「僕もまだ食べていなかったな。食堂へ案内しよう」

 「おう、頼むぜエーマさん」

 結局、レオパルト2の改修は明日からとなった。
 早くアクアへと戻りたい気持ちもあるが、焦ったところでどうしようもない。
 なので今日は大人しく、ゆっくすることにしたのだった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 ―― 食堂

 艦内の移動は一両編成の小さな電車みたいな乗り物だった。
 ガタンゴトンと音はならずにとて静かで速い。
 あえて言うならば、速いリニモみたいなのであった。

 尚、リニモとは愛知万博に合わせて造られたリニアモーターカーである。
 藤ヶ丘から|人けの無い八草を結ぶ為に常に赤字路線だ。

 「お、ユーナちゃん」

 「ぼっち飯か」

 食堂に入るとユーナが1人、食事を摂っていた。
 比較的に広いが今のところ他には誰も居ない。
 皆はぞろぞろとユーナの食卓へと近づいた。

 「ユーナちゃんも今頃飯かい」

 正秀は言った。

 「うん」

 「1人なら俺達も一緒にいいか?」

 「構わない」

 「じゃあ俺達も取りに行こうぜ」

 「うい」

 「です」

 「こっちだ」

 と、エーマに連れられて各々の食事を取りに行った。
 食事が出てくる機会はモノポールリングやエクステンペストなどの、それとあまり違いは無い。
 それでも台数は多かった。
 30台はあろうか、電子レンジのような機械が所狭しと並べられているのだった。

 ……………
 ………
 …

 「魚は普通にあるね」

 為次は焼魚を突っつきながら、身をほぐしている。

 「おう」

 「魚が珍しいのかい?」

 エーマは訊いた。

 「いや、そうじゃなくって、アクアのご飯作る機械が魚とか水生生物全般が削除してあったの」

 と、為次が言うと正秀も続けて言う。

 「魚を全部殺してまで魔獣を造ったんだよな」

 「そうそう、記憶を失った後は存在しないモノを出すのはマズイと判断したかもね。誰か知らんけど」

 「ふむ……」

 エーマは興味深そうに聞いていた。
 一方のユーナはあまり興味は無さそうである。
 話半分に正秀を見ていた。

 「マサヒデ。どうして昨日は居なくなったの?」

 「いっ!? い、いや…… あれは…… その……」

 なんだか、しどろもどろになっている正秀。
 口に運ぼうとしていた唐揚げっぽいのをポロリと落としてしまった。

 「ゲットなのですっ!」

 目の前に転がって来た唐揚げモドキを、スイは嬉しそうに握り取った。
 バカ力のせいで指の隙間からムニュムニュと出て来る。

 「ちょ、スイ」

 「スイちゃん……」

 「食べてもいいですか?」

 と、何故か為次に訊いた。

 「う、うん……」

 「マサヒデの無くなった」

 「ユーナちゃん、気にしなくていいんだぜ」

 「ううん、ダメ」

 そう言うと、ユーナは自分の肉団子をフォークで刺して、正秀の口元にやった。

 「ユーナちゃん?」

 「あーん、して」

 「ええっ!?」

 「あーん」

 「良かったねマサ」

 為次は恋人同士がやるアレを、羨ましそうに見ていた。
 横ではスイが手のひらに、べっとりと付いた唐揚げだったらしき物をペロペロと舐めている。

 「嫌なの?」

 上目使いで聞いてくるユーナに正秀は焦りを隠せない。

 「ま、待ってくれユーナちゃん。実は俺…… 婚約者が居るんだ。だから昨日の夜も……」

 「そうなんだ、それなら私は2番目」

 「なんで、そうなるんだよっ!」

 「マサヒデ君。聞いてないのか? 僕達の星は男性が圧倒的に少ない。1人の男が複数の女性を相手にするのは当たり前のことだ」

 「確か3パーセントとか言ってたような」

 エーマの説明を聞いて、為次は艦長の言っていたことを思い出した。

 「はい、あーん」

 「おっぐ……」

 あまりにも正秀が食べようとしないので、横から為次がしゃしゃり出て来る。

 「マサが要らないなら、代わりに俺が食べてあげよう」

 かぶり付こうとするが、サッと避けられてしまった。

 「為次はダメ」

 「あっ。なんでマサばっかり……」

 「仕方ない、為次に盗られる前に食うぜ」

 為次に女の相手をさせると、いつも禄なことにならないと判断した正秀はついに心を決めた。

 「うん。あーん」

 「おう、あーんだぜ」

 パクリと食べると、急に恥ずかしさが込み上げてきた。

 「モグモグ…… サンキューなユーナちゃん。美味しいぜ」

 恥ずかしそうに食べる正秀をユーナは嬉しそうに見ている。
 普段はあまり表情に変化は無いが、今は微笑んでいた。

 「ありがとう」

 そっと呟いた。

 「ん? ユーナちゃん、どうかしたのか?」

 ユーナの頬には瞳から溢れ出た涙が伝っていた。

 「あー、マサが泣かした」

 ユーナ本人も気が付いていなかったのだろうか?
 為次の茶化した言葉にハッとして頬を拭った。

 「ち、違うの…… これは……」

 「具合でも悪いのか?」

 心配そうに訊く正秀。

 「ううん。そうじゃない……」

 「困ったことでもあるなら言ってくれよ。俺で力になれることなら、なんだってするぜ……」

 正秀の優しさに涙が更に溢れ出す。

 「嬉しいだけ……」

 「嬉しい?」

 「夢が叶ったから……」

 「夢?」

 「うん。素敵な男の人とこんなことできるなんて思って無かった。だから」

 「…………」

 正秀は何も言えなかった。
 命がけの戦いに身を投じる少女の願いが、この程度のことなのかと思った。
 涙を流してまで喜ぶ願いが、こんな下らないことでいい分けがないと、半分怒りも込み上げてくる。

 「俺は……」

 やっと気が付いた。
 昨晩、一緒に寝たいと言ったのは男と女の関係だけではない。
 助けてほしかったのだと……

 「ごめんなさい。もう行く」

 そう言うと、ユーナは立ち上がり食堂を出て行く。
 正秀は引き止めようと立ち上がり手を伸ばすが……

 「ユーナちゃん! 待ってくれ」

 正秀の掛け声にも振り向かず、駆け出して行くのだった。

 「ユーナちゃん……」

 「あっれー、こういう時って追いかけるもんじゃないの?」

 「ふぅ……」

 一息つくと為次を見ながら座る正秀。

 「まあな。お前の言う通りかもな。だけどな、為次の気持ちもなんとなく分かったぜ」

 「はぁ? 何が?」

 「会ったばかりの娘に好きだと言われても、俺達は地球に帰るんだ。違う世界に住む人に何処まで関わっていいのかってな」

 「ああ…… じゃあ好きにするしかないね」

 「なんだよ、他人事みたいに…… お前はスイちゃんと一緒に居られるからいいだろうけどな」

 「はぁ!? ちょ、何言ってんのっ」

 「スイはタメツグ様とずっと一緒なのです」

 スイは嬉しそうに、横に居るあるじに抱き付いた。
 それを見たエーマは少しガッカリした表情で言う。

 「なんだ、君達はそういう関係なのか……」

 「です」

 「ちがっ」

 「まあいいか。ところでマサヒデ君」

 「なんだよ」

 「ユーナ君達…… エクステンペストは明日にも出発予定だ」

 「……!? どうして俺に……」

 「特に深い意味は無い。お別れするなら早目にと思っただけだ」

 「お別れって…… 二度と会えないような言い方だな」

 「かも知れないな……」

 「エンジェル全員を助ける。残念だが俺にはそこまでの力は無い。ユーナちゃんだけを特別扱いする分けにも……」

 「はいはい、んじゃ。さっさと飯を食って今日はのんびりしますか」

 「……おう」

 ……………
 ………
 …

 その後、皆は食事を終えると各自の部屋を用意してもらい何をする分けでもなかった。

 明日からは念願のレオパルト2の改造作業が始まる。
 為次は一人わくわくして夜も眠れなかった。

 正秀もなかなか眠れない夜を過ごした。
 胸を締め付けるような苦しさが、夢の世界への入り口を阻んでいたから……

 ユーナの残して行った食事が脳裏から離れなかった……
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