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テラ宙域編 4章
第15話 迷い 戸惑い 忘れ物
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今朝は早くからラボへと集まっていた。
予定通り、レオパルト2を宇宙仕様に改造する為だ。
為次は終始ニコニコとご機嫌状態なのは当たり前だが、正秀はユーナのことを気にしているのだろう。
なんだか神妙な面持ちであった……
「みんな揃ったな」
「はーい」
「はいです」
元気一杯なお返事の為次とスイだ。
基本的に面倒臭いことは考えない野郎と頭の弱い娘だから仕方が無い。
「なんだか酷いことを言われた気がするのです」
「そうだねー」
「訳の分からないことを言ってないで、改造手順を説明するから良く聞いてくれ」
「おけおけ」
「はいです」
「では、まず初めに……」
エーマの説明によると、改造装置の使い方は以下の方法らしい。
ラボに併設されているオートファクトリー。
これをラボの端末から操作し必要なデータを入力する。
後は完成を待つだけと、口で言えば簡単極まりない。
「うぉぉ、楽勝じゃん」
「です。これでつばい様も元気になるです」
「そう慌てるな、最後まで聞いてくれ」
「はーい」
「でーす」
装甲などの直接なんらかの機械に影響を与えない素材は任意の物を選べる。
基本的にはカーボンを使用するのが一般的であり、軽量かつ耐熱であり衝撃にも強くとても便利な素材だ。
単にカーボンと言っても普通の炭素ではない。
同素体によって様々な効果を得ることが可能なのだ。
特にテラで使用されるカーボン装甲素材は、全方向に対してカーボンナノチューブの引っ張りを上回る強度を持っているらしい。
そのせいもあり、装甲に傷を付けることもできないインパクト兵器は廃れてしまったとのことだ。
「ああ…… それで、アイちゃんはレオの戦車砲を馬鹿にしてたのか……」
「ふふっ、資料を見せてもらったが火薬によって金属弾を撃ち込むだけのモノらしいな」
「まあ、そうね」
「そんなモノで魔獣を撃退すれば、皆が驚くのも無理はないな」
「なんつーか、スイのお陰だけど……」
「えへへへー、です」
他の機械関係の素材については、既に登録済みの素材を強制的に使用しなければならない。
例えばエンジンなら基本構造は既存の物を選び、機械が収納スペースに合わせて構築し、素材等の諸々を勝手に適した物質で組み上げてくれる。
「楽ちんでいいね」
「力仕事は無いが、ずっとスクリーンとにらめっこだ」
「にらめっこ…… あるんだ……」
兵器や動力などに関して、登録されていない物は自分で作る必要があるらしい。
作ると言っても、製造自体は機械がやってくれる。
人のやることは設計だけだ。
コンピューターを使って任意の構成を入力してあげればいい。
一から作るのが面倒臭ければ、既存の物を改造することもできる。
「ちょっと、めんどくさそう」
「教えてやるから、自分でやってみるといい」
「うん」
その他にも、今現在レオパルト2に使用されている物質を原子転換によって好きな原子として使うことも可能である。
足らない物質はナノマテリアルを自動供給してくれるのだ。
「と、まあ後は実践を踏まえて操作方法を教えよう」
「うぉー! すげぇ…… マジで宇宙戦車になっちゃう」
「楽しみだろう? ふふっ」
「やったー! ねぇ、ねぇ、マサはどうしたい? 波動砲とか付けちゃう?」
「…………」
「マサ……?」
正秀は浮かれる為次の問いかけには答えず、何かを考えている様子だ。
眼球こそエーマを見ていたが、心あらずといった感じで呆けている。
「マサ」
呼びかけながらポンと正秀の肩に手をやった。
「お? どうした? もう飯か?」
気が付いたようだが、為次を見て放った言葉は意味不明であった。
まるで痴呆老人みたいだ。
「いやいや、さっき朝飯食ったばかりでしょ……」
「マサヒデ様はご飯を食べたいのです」
「そうだねー」
「悪りぃ、悪りぃ、そうだったな。飯は食べたぜ。で、なんだ?」
「なんだって…… エーマが改修システムの説明してくれてるでしょ」
「お、おう…… だったな……」
「はぁ……」
為次は大きく溜め息をつくと、スイの頭に手を乗せてナデナデした。
「スイはいいこだねー」
「はう? えへへへー」
いきなり頭を撫でられて褒められたスイは意味が分からなかったが、主に良く思われることに嬉しそうにしていた。
そんな様子を正秀は訝し気に見ている。
「なんだよ為次、急に……」
「俺はスイを助けた。その気は無かったけどね…… それいが、いいことか悪いことかは分からない」
「何言ってんだよ、いいことしたに決まってんだろ。スイちゃんも嬉しそうにしてるし」
「スイは器として産まれ、奴隷としての生活を送っていた。本人は辛いだろうが、アクアでは当たり前のことだったはず。それをよそ者の俺達が干渉すべきではなかったかも知れない」
「よそ者って…… ターナ達、テラから来た連中だってよそ者だろ」
「確かに彼らだってよそ者だよ。だけどね、ターナが居なければ…… 事故が起きなければスイは産まれてこなかった。スイの存在は今のアクアがあってこそなんだ」
「そりゃそうだが……」
「だから最初はスイを連れて行くことに反対した。結果的には俺の独りよがりで連れて来てしまったけど……」
「それでも…… 人を助けるのは悪いことじゃないぜ」
「うん。自分の不甲斐無さと勝手な都合で助け、連れて来た。スイだけをね」
「……?」
「アクアには、まだまだ沢山の奴隷が居るはずだ、あのアンカーの下にはね。だけど助けたのはスイだけなんだよ」
「っ!?」
「自分の都合で、自分に便利な人間だけを助けて善人ぶってるなんて、只の偽善者じゃないのかな?」
「そ、そんなことはねーよ! 現にスイちゃんを見てみろよ、嬉しそうにしてるだろっ。なっスイちゃん」
「はい、スイはタメツグ様と出会えて幸せです」
「うん。スイはいい子だもんね」
「はいです」
「ほら、助けたことは正しいはずだぜ」
「そう思うんならさ…… ユーナを特別視してもいんじゃないの? 助けたい人が居るのに助けない。それは偽善以下の卑怯な行為。とてもヒーローなんかなじゃないよ。ユーナは…… エンジェル達は常に恐怖と戦っている。マサより力の無い彼女達はね」
「あっ……」
その時、正秀はようやく気が付いた。
自分は何故ユーナを助けに行こうとしなかったかを……
単純に怖かっただけだ……
一人で行くのが怖かった。
レオパルト2から離れるのが怖かった。
日本での戦闘で生き残れたのも、異世界で魔獣相手に戦えたのも為次が一緒だったから。
戦車という心の拠り所があったから。
と、心の中で呟いた。
「だよな…… 俺は何をしてんだろーな。ははっ」
「ヒーロー見習いでしょ」
「ああっ! 俺はまだまだ見習いだぜ。ちょっと修行に行って来るぜ! エーマさんユーナ達はっ?」
「間もなく出発の予定だが」
「サンキュー。悪りぃな為次、レオの改造はお前に任せるぜ」
「うい」
駆け出す正秀だが、為次が引き止める。
「あ、ちょっと待って」
「なんだよ」
「やっぱ心配だわ」
「大丈夫だって、俺にかかれば魔獣なんてイチコロだぜ」
「でもなー」
と、為次はスイを見た。
「はう?」
それを頼むのは心苦しかった。
危険な戦場に自分の傍から離してスイを送り込むのは避けたかった。
頼めば文句を言いながらも言ってくれるに違いないが、同時にスイを道具として扱ってしまうことになる。
為次は悩んだ。
顔に出ていたのだろうか……
スイは為次を見ながら笑っていた。
「はい。タメツグ様とは離れたくありませんが仕方ないですね。マサヒデ様のお手伝いは私にお任せ下さい」
自ら申し出てくれた。
何も言っていないのに……
堪らずスイを抱きしめる。
「ありがとう、スイ。ごめんね」
「いいのか? 為次」
「さすがにマサだけだと、ねぇ……」
「俺だけだとなんだよ…… ったく」
「タメツグ様、なるべく早く迎えに来てくださいね」
「うん」
「よし、行こうぜスイちゃん」
「はいです」
そして二人はエクステンペストへと向かう。
今、自分達が助けることができる人を助ける為に。
「アイ艦長には連絡を入れておく」
エーマは言った。
「おう、頼んだぜ」
「です」
ウィーン……
扉が開くと走り出す。
行ってしまった……
ラボには為次とエーマだけが残された。
「良かったのかい? 二人だけで行かせて」
「ここでウジウジしてるよりマシでしょ。それにレオの改造に邪魔だし」
「酷いなタメツグ君は……」
「合理的と」
「そういう事にしておこう」
そう言ってエーマは通信端末を取り出し、エクステンペストと連絡を取るのだった。
…………
………
…
モニターでエクステンペストの出発を見送っていた。
通信は可能だが、特に連絡を取ることはしなかった。
レオパルト2の改造が終われば、すぐにでも会いに行けるのだから。
「アイちゃんに昨日、また後でねって言ってたけど、しばらくは会えないね」
「なんだ? 名残惜しいのかい?」
「そうじゃないけどさ…… 出発する時は何か言ってくると思ったけど」
「彼女もエンジェルだ」
「は?」
「能力の低い個体は、予備として使う。その為に、艦の乗員は予備隊で構成されている。最終的な手段として特殊シールドに穴を開けてスマートボムを押し込むのだよ」
「へー…… で?」
「通常のエンジェルのように武器へ能力を与えることができない。直接、特殊シールドを中和させている間に爆発させる。もちろん魔獣から離れればシールドはすぐに回復してしまうので、爆弾を抱えたままだ」
「それって……」
「アイ艦長はユーナ君のお陰で生き永らえて来たと言ってもいいだろう、彼女は強いからな。しかし、いつ失う命かも分からない。それはアイ艦長も同じだ、あまり未練は持ちたくないのだろう……」
「…………」
いつしかモニターに映っていたエクステンペストは消えていた。
新たな任務に向けてワープをしたのだろう。
為次は隣のオートファクトリーへ行くとレオパルト2を見つめる。
急いで正秀を送り出してしまったことに後悔した。
砲塔に登りながら為次は思う。
あーあ、大剣忘れて行っちゃったよ……
と……
予定通り、レオパルト2を宇宙仕様に改造する為だ。
為次は終始ニコニコとご機嫌状態なのは当たり前だが、正秀はユーナのことを気にしているのだろう。
なんだか神妙な面持ちであった……
「みんな揃ったな」
「はーい」
「はいです」
元気一杯なお返事の為次とスイだ。
基本的に面倒臭いことは考えない野郎と頭の弱い娘だから仕方が無い。
「なんだか酷いことを言われた気がするのです」
「そうだねー」
「訳の分からないことを言ってないで、改造手順を説明するから良く聞いてくれ」
「おけおけ」
「はいです」
「では、まず初めに……」
エーマの説明によると、改造装置の使い方は以下の方法らしい。
ラボに併設されているオートファクトリー。
これをラボの端末から操作し必要なデータを入力する。
後は完成を待つだけと、口で言えば簡単極まりない。
「うぉぉ、楽勝じゃん」
「です。これでつばい様も元気になるです」
「そう慌てるな、最後まで聞いてくれ」
「はーい」
「でーす」
装甲などの直接なんらかの機械に影響を与えない素材は任意の物を選べる。
基本的にはカーボンを使用するのが一般的であり、軽量かつ耐熱であり衝撃にも強くとても便利な素材だ。
単にカーボンと言っても普通の炭素ではない。
同素体によって様々な効果を得ることが可能なのだ。
特にテラで使用されるカーボン装甲素材は、全方向に対してカーボンナノチューブの引っ張りを上回る強度を持っているらしい。
そのせいもあり、装甲に傷を付けることもできないインパクト兵器は廃れてしまったとのことだ。
「ああ…… それで、アイちゃんはレオの戦車砲を馬鹿にしてたのか……」
「ふふっ、資料を見せてもらったが火薬によって金属弾を撃ち込むだけのモノらしいな」
「まあ、そうね」
「そんなモノで魔獣を撃退すれば、皆が驚くのも無理はないな」
「なんつーか、スイのお陰だけど……」
「えへへへー、です」
他の機械関係の素材については、既に登録済みの素材を強制的に使用しなければならない。
例えばエンジンなら基本構造は既存の物を選び、機械が収納スペースに合わせて構築し、素材等の諸々を勝手に適した物質で組み上げてくれる。
「楽ちんでいいね」
「力仕事は無いが、ずっとスクリーンとにらめっこだ」
「にらめっこ…… あるんだ……」
兵器や動力などに関して、登録されていない物は自分で作る必要があるらしい。
作ると言っても、製造自体は機械がやってくれる。
人のやることは設計だけだ。
コンピューターを使って任意の構成を入力してあげればいい。
一から作るのが面倒臭ければ、既存の物を改造することもできる。
「ちょっと、めんどくさそう」
「教えてやるから、自分でやってみるといい」
「うん」
その他にも、今現在レオパルト2に使用されている物質を原子転換によって好きな原子として使うことも可能である。
足らない物質はナノマテリアルを自動供給してくれるのだ。
「と、まあ後は実践を踏まえて操作方法を教えよう」
「うぉー! すげぇ…… マジで宇宙戦車になっちゃう」
「楽しみだろう? ふふっ」
「やったー! ねぇ、ねぇ、マサはどうしたい? 波動砲とか付けちゃう?」
「…………」
「マサ……?」
正秀は浮かれる為次の問いかけには答えず、何かを考えている様子だ。
眼球こそエーマを見ていたが、心あらずといった感じで呆けている。
「マサ」
呼びかけながらポンと正秀の肩に手をやった。
「お? どうした? もう飯か?」
気が付いたようだが、為次を見て放った言葉は意味不明であった。
まるで痴呆老人みたいだ。
「いやいや、さっき朝飯食ったばかりでしょ……」
「マサヒデ様はご飯を食べたいのです」
「そうだねー」
「悪りぃ、悪りぃ、そうだったな。飯は食べたぜ。で、なんだ?」
「なんだって…… エーマが改修システムの説明してくれてるでしょ」
「お、おう…… だったな……」
「はぁ……」
為次は大きく溜め息をつくと、スイの頭に手を乗せてナデナデした。
「スイはいいこだねー」
「はう? えへへへー」
いきなり頭を撫でられて褒められたスイは意味が分からなかったが、主に良く思われることに嬉しそうにしていた。
そんな様子を正秀は訝し気に見ている。
「なんだよ為次、急に……」
「俺はスイを助けた。その気は無かったけどね…… それいが、いいことか悪いことかは分からない」
「何言ってんだよ、いいことしたに決まってんだろ。スイちゃんも嬉しそうにしてるし」
「スイは器として産まれ、奴隷としての生活を送っていた。本人は辛いだろうが、アクアでは当たり前のことだったはず。それをよそ者の俺達が干渉すべきではなかったかも知れない」
「よそ者って…… ターナ達、テラから来た連中だってよそ者だろ」
「確かに彼らだってよそ者だよ。だけどね、ターナが居なければ…… 事故が起きなければスイは産まれてこなかった。スイの存在は今のアクアがあってこそなんだ」
「そりゃそうだが……」
「だから最初はスイを連れて行くことに反対した。結果的には俺の独りよがりで連れて来てしまったけど……」
「それでも…… 人を助けるのは悪いことじゃないぜ」
「うん。自分の不甲斐無さと勝手な都合で助け、連れて来た。スイだけをね」
「……?」
「アクアには、まだまだ沢山の奴隷が居るはずだ、あのアンカーの下にはね。だけど助けたのはスイだけなんだよ」
「っ!?」
「自分の都合で、自分に便利な人間だけを助けて善人ぶってるなんて、只の偽善者じゃないのかな?」
「そ、そんなことはねーよ! 現にスイちゃんを見てみろよ、嬉しそうにしてるだろっ。なっスイちゃん」
「はい、スイはタメツグ様と出会えて幸せです」
「うん。スイはいい子だもんね」
「はいです」
「ほら、助けたことは正しいはずだぜ」
「そう思うんならさ…… ユーナを特別視してもいんじゃないの? 助けたい人が居るのに助けない。それは偽善以下の卑怯な行為。とてもヒーローなんかなじゃないよ。ユーナは…… エンジェル達は常に恐怖と戦っている。マサより力の無い彼女達はね」
「あっ……」
その時、正秀はようやく気が付いた。
自分は何故ユーナを助けに行こうとしなかったかを……
単純に怖かっただけだ……
一人で行くのが怖かった。
レオパルト2から離れるのが怖かった。
日本での戦闘で生き残れたのも、異世界で魔獣相手に戦えたのも為次が一緒だったから。
戦車という心の拠り所があったから。
と、心の中で呟いた。
「だよな…… 俺は何をしてんだろーな。ははっ」
「ヒーロー見習いでしょ」
「ああっ! 俺はまだまだ見習いだぜ。ちょっと修行に行って来るぜ! エーマさんユーナ達はっ?」
「間もなく出発の予定だが」
「サンキュー。悪りぃな為次、レオの改造はお前に任せるぜ」
「うい」
駆け出す正秀だが、為次が引き止める。
「あ、ちょっと待って」
「なんだよ」
「やっぱ心配だわ」
「大丈夫だって、俺にかかれば魔獣なんてイチコロだぜ」
「でもなー」
と、為次はスイを見た。
「はう?」
それを頼むのは心苦しかった。
危険な戦場に自分の傍から離してスイを送り込むのは避けたかった。
頼めば文句を言いながらも言ってくれるに違いないが、同時にスイを道具として扱ってしまうことになる。
為次は悩んだ。
顔に出ていたのだろうか……
スイは為次を見ながら笑っていた。
「はい。タメツグ様とは離れたくありませんが仕方ないですね。マサヒデ様のお手伝いは私にお任せ下さい」
自ら申し出てくれた。
何も言っていないのに……
堪らずスイを抱きしめる。
「ありがとう、スイ。ごめんね」
「いいのか? 為次」
「さすがにマサだけだと、ねぇ……」
「俺だけだとなんだよ…… ったく」
「タメツグ様、なるべく早く迎えに来てくださいね」
「うん」
「よし、行こうぜスイちゃん」
「はいです」
そして二人はエクステンペストへと向かう。
今、自分達が助けることができる人を助ける為に。
「アイ艦長には連絡を入れておく」
エーマは言った。
「おう、頼んだぜ」
「です」
ウィーン……
扉が開くと走り出す。
行ってしまった……
ラボには為次とエーマだけが残された。
「良かったのかい? 二人だけで行かせて」
「ここでウジウジしてるよりマシでしょ。それにレオの改造に邪魔だし」
「酷いなタメツグ君は……」
「合理的と」
「そういう事にしておこう」
そう言ってエーマは通信端末を取り出し、エクステンペストと連絡を取るのだった。
…………
………
…
モニターでエクステンペストの出発を見送っていた。
通信は可能だが、特に連絡を取ることはしなかった。
レオパルト2の改造が終われば、すぐにでも会いに行けるのだから。
「アイちゃんに昨日、また後でねって言ってたけど、しばらくは会えないね」
「なんだ? 名残惜しいのかい?」
「そうじゃないけどさ…… 出発する時は何か言ってくると思ったけど」
「彼女もエンジェルだ」
「は?」
「能力の低い個体は、予備として使う。その為に、艦の乗員は予備隊で構成されている。最終的な手段として特殊シールドに穴を開けてスマートボムを押し込むのだよ」
「へー…… で?」
「通常のエンジェルのように武器へ能力を与えることができない。直接、特殊シールドを中和させている間に爆発させる。もちろん魔獣から離れればシールドはすぐに回復してしまうので、爆弾を抱えたままだ」
「それって……」
「アイ艦長はユーナ君のお陰で生き永らえて来たと言ってもいいだろう、彼女は強いからな。しかし、いつ失う命かも分からない。それはアイ艦長も同じだ、あまり未練は持ちたくないのだろう……」
「…………」
いつしかモニターに映っていたエクステンペストは消えていた。
新たな任務に向けてワープをしたのだろう。
為次は隣のオートファクトリーへ行くとレオパルト2を見つめる。
急いで正秀を送り出してしまったことに後悔した。
砲塔に登りながら為次は思う。
あーあ、大剣忘れて行っちゃったよ……
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