異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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テラ宙域編 4章

第16話 戦車のためならエンヤコラ

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 正秀とスイがドック艦ヒマワリを離れてから十数日が経った。
 残された為次はレオパルト2の改造に明け暮れているのであった。

 説明を聞いていた限りでは、殆どがコンピューター任せで楽チンチンの余裕なんて思っていた。
 教えてもらったことは、不思議なくらいに良く覚えれた。
 ナノマシンの影響なのであろう、記憶を失うことは無く必要な情報は初めから知っていたかのように湧いて来る。

 しかし、実際に作業を始めると非常に面倒臭い。
 レオパルト2の形を変えるつもりは無いので、既存パーツの規格がことごとく合わない。
 とにかく狭い車内へアレやコレやと詰め込む必要があるので、何もかも小型化しなければならないのだ。

 エンジンに至ってはツインエンジンで設計を行っている。
 通常、一部の特殊な艦艇を除いては対消滅機関が用いられている。
 これは物質と反物質をぶつけてやると、お互いに消滅する現象を利用するものだ。
 対消滅の際に質量がエネルギーに変換されることを利用している。
 小型化もでき、大きなエネルギーを生み出すので、小型機等にも利用されている便利なエンジンだ。

 当然、レオパルト2にも対消滅機関を搭載するのだが、もう1つモノポールドライブも搭載することにしたのだ。
 こちらは対消滅機関よりも更なるエネルギーを生み出せるのだが、扱いが難しい。
 エンジンを始動させるだけでも、別のモノポールドライブを使用する必要がある。
 一度始動させてしまえば動き続けるのだが、今度は停止させるのが困難となってしまう。
 その為に通常時はエネルギーの放出を抑えアイドル状態にしておく。

 再起動においては対消滅機関をイグニッションとして使用が可能となっている。
 起動させると莫大なエネルギーを封じ込めるのに、強力なシールドが必要となってくる。
 対消滅機関はモノポールドライブを始動させると、ほぼすべてのエネルギーをシールドへと使用することになるのだ。
 更には熱量も半端ないので常時冷却も必要であり、小型化にも不向きとなっている。

 「本気なのかい? タメツグ君は」

 エーマは為次の設計するモニターを覗き見ながら言った。

 「絶対多分大丈夫かも」

 「ふむ…… 不安しかないな」

 戦車にモノポールドライブを積むことにエーマは不安を感じていた。
 いや、不安というよりも、むしろ呆れていた。
 搭載だけなら可能だろうが、起動のさせようがないのだ。
 数パーセント程度の出力で動かしても、車体ごと融解するのは目に見えていたから。

 それでも為次には1つのアイディアがあった。

 「だってさ、テラのビーム兵器じゃ魔獣は倒せないんでしょ」

 「ああ、そうだ。だが、それとなんの関係があるのかと」

 「簡単なことだって、魔獣を倒せないのは特殊シールドのせい。だったらそのシールドで封じ込めをすればいいだけだよ」

 「ははっ、そんなことできる分けなかろう。あのシールドが使えるのは魔獣だけだ」

 「それが使えるんだよねー。魔法の説明はしたでしょ」

 「聞いたには聞いたが、一定以上の力を与えると効果を失うのであろう?」

 「普通はね。だけどレオは違う。魔獣と…… いや、それ以上の魔法が使える石が積んであるの」

 「あのエレメンタルストーンか…… それでも熱暴走の対策も必要となるが……」

 「んま、それもアイス系の魔法でなんとかなるでしょ」

 「……成功すれば前代未聞だな」

 「そうなんだ」

 「ああ」

 はっきり言えばモノポールドライブなど必要は無い。
 対消滅機関ですら有り余る程のエネルギーを供給してくれるから。
 それでも意地になって搭載するのには訳があった。

 それはモノポールリングで見た星をも消滅させる兵器。
 為次はモノポールキャノンがどうしても欲しかったのだ。
 別に星を破壊しようなどとは思ってはいない。
 只、最強にしたいだけなのだ。
 誰に自慢できる分けでもないが、戦車を馬鹿されたのを未だに根に持っていただけだ。
 否、それ以前にアニメや映画などで、やられメカにされるのが我慢ならなかったのだ!

 「それにしても……」

 最強兵器を作ろうと四苦八苦する為次には疑問があった。 

 「ん? 何かな?」

 「あ…… いや……」

 聞くべきかどうか迷っていた。

 何故、ここまでの技術を提供してくれるのかと。
 アクティブ・アーマー・スーツだってそうだ。
 いくら一般的に使用される宇宙服だからといっても、普通は武装までくれるはずもない。
 しかも、いま作っているのは星すらも破壊できるであろう超兵器なのだ。
 そんなものをホイホイと渡すなど尋常ではない。

 だから理由を聞こうかとも思うが、「やっぱりやめた」などと言われるのが怖い。
 貰えるものは黙って貰ってしまった方がいいに決まっている。
 貰ってしまえば後で何か言われてもトンズラこけばオッケーだ。

 だが…… それでも気になった……

 「ねぇ……」

 「なんだい?」

 「どうして…… こんな凄い物をくれるの?」

 スクリーンパネルを操作する手を休めて為次は訊いた。

 「どうしてもこうしても当たり前のことだろう?」

 「は?」

 「僕達にも、ようやく希望が見えてきた。この千年もの間、有効な手段も無く魔獣と戦い続けてきた。そこへ現れたのが君達さ」

 「あぁ……」

 「マサヒデ君とスイ君の活躍も素晴らしいぞ。上層部も偉く評価している。何せエクステンペストの被害は現状皆無だ。先日はSクラスの討伐まで果たしたとの報告も受けている」

 「へぇ。意外と頑張ってんのね、あいつら」

 「タメツグ君の欲しがっているマインドジェネレーターも製造中だ、戦車の改造が終わり次第アクアへと向かう。無論、性能評価をした後になるが…… 連中はすっかり臆病風に吹かれて慎重になり過ぎている。すまないな」

 「マジで…… そこまで話が進んでんのか」

 為次はなんとなく理解した。
 テラの住民は疲弊しきっていたのだと。
 周囲の敵性生物を一掃し、侵略されることもすることも無くなった。

 後に残ったのは終わらない戦いだけ……

 命を創り出し、道具として扱い、兵器として散らして行く。
 そんな虚しい作業を延々と繰り返していた。

 そこへ突如としてやって来た得体の知れない連中。
 何者であっても魔獣を倒すすべを持っているのならば、どうしても手に入れたいのであろう。

 「君達には期待しているよ、僕も含めてね」

 「期待ねぇ…… 期待もいいけどさ、移住とかは考えなかったの?」

 「もちろん考えていたさ。しかしだ、そう簡単に移住先が見つかるものではない。候補はあるがそのままで使える星は少ないし、移住可能な星は先住民族も居る。生物のあまり居ない星はテラフォーミングをしなけれならない。が、まだ実験段階だ」

 「色々と大変なんだ……」

 「それに、全人類を別の星へと移すなど途方も無い作業だぞ」

 「いやまあ、確かに……」

 「だから早く作業を進めてくれ」

 「はいはい」

 無駄話が終わると再び設計を再開する為次。
 せっかく超技術を思う存分使えるので、ついでに地球に帰る手段も頂いておく。
 ワープ航法もその内の1つだ。
 通常ワープの他に深深度次元ワープとワームホール生成システムも頂戴する。

 ワープの概念は真っ先にエーマに聞いていた。
 答えは至って単純であった。
 光より早く飛ぶ、それだけだ。
 言うは簡単であるが、光速を超えるには無限大のエネルギーを必要とする。
 モノポールドライブを使用すれば、無限に近いエネルギーを得ることも可能であろうが、無限であるが故に上限がない。
 つまり、永遠に光速を超えることはない。

 だがそれは、今我々が居る宇宙での屁理屈であり、まったく概念の異なる次元ならば話は違ってくる。
 例えば初めから光速を超えた空間、すべての物質が光速より速く運動している空間へ行ってしまえば光速を超える必要が無い。
 その空間へ行った時点で既に光速を超えているのだ。

 他にも純粋に光速を超えることが可能な空間などもある。
 物理法則が異なる次元だ。
 素粒子を構成するげんの違いにより、通常空間では考えられない現象が発生する。

 それらの次元は、今居る次元より離れる程に摩訶不思議な法則を持つ。
 しかし、離れた次元に行く程に特殊な力が加わってしまう。
 宇宙船が深く次元に潜ると、まるでよそ者を排除するかの如く空間的外圧がかかってしまうのだ。
 船体の外殻とシールドによって、ある程度までは耐えることができるのだが限界はある。
 体積が増大するにつれて加わる力が増すので、大型船はより速く移動可能な空間に潜ることができない。
 そこで開発されたのが、深深度潜行が可能な次元潜行艦である。
 また、ワームホール内での次元潜行は、空間外圧が壁として存在する為に潜行に特化した船しか潜れないのだ。

 そんな説明を聞いた時に、ようやく分かった。
 ガザフの拾った次元を裂く装置は、異次元に潜った船の故障時などに人だけ元の次元へ戻す機械なのだと。
 要救助者が使用する場合はインに設定して使う、救助する者が外部から使う場合はアウトに設定する。
 只、それだけの装置であった。

 「ぬぅ…… これどうしよう?」

 そんな訳でワープユニットと一緒に次元シールド発生器までも搭載しなければならない。
 しかし、狭い本当に狭い。
 なんとかジェネレーターとメインエンジンとワープユニットを一体化させたパワーパックを検討しているがスペースがきつい。

 「どうせモノポールドライブは通常使用しないであろう? ならば対消滅機関とバイパスを統一してみてはどうか?」

 「ああ、なるへそ。そうすりゃここんとこが空くね。さすがエーマだは」

 「そもそもモノポールドライブが要らないのだが……」

 「てへへ……」

 地球帰還へ目指して、もう1つ重要な物が必要だった。
 センサーである。
 途方も無い宇宙を彷徨う上で、為次には地球を探すアイディアがあった。
 その為には光学センサーが必要不可欠である。
 なので、その他のセンサーも必要だが重点は光学センサーを重要視している。
 感度を高める必要があるので、本来RWSを付けるスペースの即用弾薬庫の上にセンサーユニットを設置した。
 円盤状のユニットを立てた感応部と円盤後部に付いているセンサー制御装置にて構成された物だ。

 「そいじゃレーダーのも、こっちから引っ張るかな」

 「ん? 弾薬庫に被るぞ」

 「うっ…… くそ…… 仕方ない、一本減らすかぁ」

 「大丈夫なのか? それでなくとも車体の弾薬庫を減らしているのに」

 「だってぇ…… どうしようないもん……」

 「反対側はどうだ?」

 「いや、そっちはパノラマサイトあるし。それこそ無いと戦闘に支障をきたすよ」

 「ふむ、やっかいなものだな」

 まだまだ搭載する物は沢山ある。

 砲弾を自動生成してくれる砲弾メーカー。
 搭乗員専用のマイクロマインドジェネレーター。
 重力制御ユニットにシールドユニット、各種スラスター等々、盛りだくさんだ。

 他にも日本から異世界に飛ばされた原因である、超次元振動弾のデータも砲弾メーカーに入力しなければならない。
 せっかく貞宗が翻訳してくれたし、何かに使えるかも知れないので是非とも手に入れたい。
 もっとも、これだけはエーマに内緒でこっそり入力している。

 色々と忙しいが、それでも一刻も早く二人を迎えに行きたい気持ちがあった。
 だから、為次は不眠不休で作業に没頭していた。

 大好きなお酒を飲むことすら忘れて……

 「タメツグ君。はやる気持ちも分かるが、食事くらいは摂ったらどうだ? もうお昼時おひるどきだぞ」

 エーマに言われて、さっきはかしたくせにと思いながらも腕時計を見る為次。
 改造作業に入る直前にレオパルト2の車内時計と合わせておいた。

 日本時間を覚えていてくれたから……

 改造によって失う分けにはいかない、大切な時間だ。

 「お昼か……」

 時計の針は午前3時を指し示していた……
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