異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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テラ宙域編 4章

第17話 ここ数日の正秀君の動向

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 俺の名前は水谷正秀。
 陸上自衛隊の三等陸尉なんだぜ。

 日本で戦争をしていた頃は10式戦車ってやつの砲手をやっていた。
 やっていたってのは、みんなも知っての通り敵の攻撃を受けて異世界へと飛ばされたんよな。
 今ではレオパルト2ってドイツの戦車で砲手謙車長をやっている。

 ところが、その戦車が壊れちまったんだ。
 おっと、壊したのは俺じゃないぜ。
 為次…… 山崎為次って部下が壊したんだ。
 あいつは二等陸士でぺーぺーもいいとこなんだ。
 俺が付いてやらないと何もできない困った奴だぜ、まったく……

 それでだ……

 今はあいつ…… 為次に戦車の修理をさせている。
 自分で壊したんだから、責任持って修理してもらわないとだぜ。

 ん? 俺かい? 俺は何をしてるかって?
 俺は今、宇宙を救う正義のヒーローをしてるのさっ!
 驚いただろう?

 え? さっき自分で砲手謙車長をやっていると言ってたって?
 おいおい、そんな細かいことは気にしちゃダメなんだぜ。

 それより自分で言うのもなんだが、俺は容姿端麗、頭脳明晰、運動抜群と非の打ちどころの無い男なんだ。
 おかげでエクステンペストじゃぁ毎日のように女の子から言い寄られて、ちょっと困ってんだぜ、ははっ。
 エクステンペストってのは宇宙の平和を脅かす怪獣退治の為に造られたふねだ。
 まっ、実際に怪獣を倒すのはヒーローである俺の仕事だけどな。
 言い換えれば俺の為のふねってな。

 だから今日も平和を守るために出撃するのさ。

 今はその為の身支度みじたく中だ。

 ゴシ ゴシ ゴシ……

 ……………
 ………
 …

 ゴシ ゴシ ゴシ……

 などと妄想しながら正秀は鏡の前で歯を磨いていた。

 ゴシ ゴシ ゴシ……

 「うぉぇっ!」

 えずきながらも頑張って歯を磨く正秀は、一部のクルーしか入れない特別区画の豪華な部屋にいた。
 一般居住区ではエンジェルやクルーによる夜這いの恐れがあるとの艦長の計らいだ。

 ヒマワリで為次と別れてから十数日、朝の歯磨きは日課である。
 女性しか居ないこの艦では身だしなみも大切だと思ってる正秀なのだ。
 エチケットもバッチリである。

 「ガラガラガラ…… べっ!」

 うがいが終わると次は朝食を摂る。
 朝の食事が一番大切であり、力の源であるとの信念からだ。
 こればかりは正秀が正しい。
 相方の為次は食い意地が張っている割には、面倒臭い眠いとの理由で朝は滅多に食べない。

 「ふぅ、今朝は何にしようかな…… やはりタンパク質が一番だぜ、うん」

 部屋の中に食事が出て来る装置が備わっている。
 いつでも好きな時に好きな物を飲み食いし放題なのだ。
 特別区画の居住区は、とにかく色々と優遇されている。
 朝からカツ丼を出すとご満悦だ。

 「いっただきまーす」

 ガツッ ガツッ ガツッ

 豪快にカツ丼を掻き込む。
 この艦には箸が無いので、修理デッキに転がっていた金属の棒を二本拾ってきた。
 今では愛用の箸である。

 「ふー。食った、食った。さてと……」

 朝食が終わると艦橋へと向かう。
 艦橋と言っても艦中央付近から上に伸びた塔ではない。
 シャトルのように艦前方にあるコックピットだ。

 ※  ※ ブリッジ ※  ※

 プシュー

 「みんな! おはようっ!」

 自動ドアが開くと元気いっぱいに挨拶をかます正秀。

 ブリッジクルーが一斉に振り向き「おはようと」返してくれる。
 そんな中、一人だけ挨拶もせずに何かをブツブツ言っている少女が一人。

 「オハヨウ オハヨウ タメツグサマ オハヨウ ナノデス……」

 スイであった。
 為次と別れてから数日経つと、寝不足とストレスから情緒不安定になっていた。
 最近では為次か奪い取っていたパンツをいつも頭から被っている。
 何に使っているのだろうか? やけにシミだらけになっていた。

 「スイちゃん…… 大丈夫か?」

 「タメツグサマ オハヨウ ナノデス…… ナノデス……」

 「ふぅ…… 為次の奴いつになったら……」

 スイの調子を心配する正秀であるが、こればかりは為次が来ないとどうしようもないことは分かっている。
 なので、そっと見守るしかなかった。
 幸い戦闘には問題が無かった。
 サポートもキッチリしてくれるので、とても助かっている。

 「マサヒデ、本日の戦闘情報だ」

 スイの心境をよそに、艦長は討伐予定の魔獣データをメインスクリーンに映し出す。

 「おう」

 正秀は一言だけ返事をしてセリナへと近付き、ポンッとセリナの肩に手を乗せた。

 「まずはガーゴイルですよ。B級ですのでマサヒデさんなら楽勝ですね」

 「なるほど、この蛇野郎か」

 スクリーンに表示されているデータは慣れていないと見辛い。
 ごちゃごちゃと数字やグラフが描かれていて、何がなんだか分からない。
 だから情報官のセリナに聞いた方が早いのだ。

 「全長も11メートル程度です。コアはいつも通りの頭部になっています」

 セリナは顔を赤らめ、チラチラと正秀を見ながら色々と説明してくれる。
 本日は午前中がガーゴイルで午後からはゴブリン集団らしい。
 合間には都合によって別の艦への応援もあるとのことだ。

 基本的に宇宙魔獣はどれもこれもが蛇みたいになっている。
 上半身はアクアでの魔獣のようになっているのが多いが、下半身はニョロニョロと長く足が無い。

 「よし、だいたい分かったぜ」

 「それではマサヒデ。今日も頼んだぞ」

 「おう! 任せてくれ、アイちゃん艦長。じゃ、また後でな」

 一通り魔獣のデータと出撃時間を確認するとブリッジを後にする。
 次はロビーへと向かい、エンジェル達にも挨拶とブリーフィングをする予定だ。

 ※  ※ ロビー ※  ※
 
 プシュー

 「みんな! おはようっ!」

 自動ドアが開くと元気いっぱいに挨拶をかます正秀。

 お話の途中だったエンジェル達が一斉に振り向き「おはようと」返してくれる。

 「マサヒデ。ここ」

 早速、ユーナが自分の隣を勧めてきた。

 「いつもユーナばかりずるいよ」

 「そうそう、今日は私の隣にして」

 「ダメ。私がマサヒデの2番目」

 「なんで勝手に決めてんのっ!」

 「じゃあ私が3番目だよ」

 いつもの正秀奪い合いが始まる。
 この時ばかりは正秀も困惑気味だ。

 「ま、まあ。みんな落ち着いてくれ。順番にな、なっ?」

 お相手は毎日ローテンションで変える。
 そう決めてはいるが、中々上手く行かないものだ。

 なんだかんだと揉めて、ようやく落ち着くとブリーフィングが始まる。
 もっともブリーフィングと言っても、正秀のサポート役を決めるだけだ。
 皆、大好きな正秀の隣に居たいからだが、実際には一番安全な位置だとなんとなく気が付いているのもあった。

 本来、エンジェル隊は3人一組で小隊を組むが、正秀とスイが参戦するようになってからは4人一組の小隊×2と正秀隊の3人一組の一個小隊で編成されるようになった。
 正秀隊にはスイ居るので、残りは誰か1人が毎日交代で入る。
 1人減った小隊は別の小隊に1人づつ振り分けられる。

 と、まあこんな調子で毎度ながら飽きもせずに揉めるので、スイはエンジェル達から相当妬まれているのだった。
 それでも皆は楽しそうだった。
 戦闘が始まるまで、わいわいガヤガヤと下らない話をする。
 そんなブリーフィングになっていないブリーフィングが日課であった。

 楽しそうな少女達を見守る正秀。
 ユーナも最近でよく笑うようになっていたのを嬉しく思うのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 ―― 夕刻

 魔獣討伐をしてお昼を食べて、また魔獣討伐をする。
 そんな1日は、あっと言う間に過ぎてゆく。

 「俺にかかれば魔獣なんてイチコロだぜ! どうだい? 今日の武勇伝を聞いてみないか?」

 「きゃー、聞きたいわ」

 「マサヒデさんの戦いは、いつ見ても素敵よね」

 「早く話してよ」

 「おう、そう慌てないでくれ。へへっ」

 夕食は皆と一緒に食べる正秀。
 当然の如くエンジェル達に囲まれていた。
 ここぞとばかりに本日の戦闘結果を得意げに話し始める。
 アクアでは誰もまともに聞いてくれなかったが、こちらでは皆が目を輝かせ聞いてくれる。
 ご満悦を通り越して有頂天状態の毎日であった。

 「そこで俺はやつの攻撃をかわし、こうズバッと斬り込んだのさっ」

 「はぁぁぁ! 堪らないわ。それで、それで、どうなったの?」

 「おう! で、斬撃が決まった瞬間にダイナマイトスラッシュをこうやって……」

 左手に持っていたナイフをブレードに見立てて大立ち回りをする。

 ブン ブン ブン

 右へ左へと空を斬りながら話す。

 「ヤツが体をクネらせると同時にドーンだぜ!!」

 「きゃぁぁぁぁぁ!」

 「かっこいいわぁ……」

 「いつ聞いてもマサヒデの話は最高よ」

 「本当は俺の愛剣ジャスティスプリンスさえあれば、もっと戦えるんだが……」

 何を話しても褒め称えてくれる。
 気分は絶好調だが、自慢の大剣を忘れて来たことだけが気掛かりであった。
 仕方ないのでエンジェル用ブレードの予備を借りている。

 お喋りしながらの食事は遅い。
 むしろ、わざと遅くさせていると言っても過言ではない。
 少しでも至福の一時を多く過ごしたいのだ。

 ……………
 ………
 …

 「ふぅ…… 今日はこれくらいで勘弁してくれ」

 「もっと聞きたいけど仕方ないわね」

 「うん。マサヒデも休まないとだも」

 喋り疲れた頃に、ようやく食事が終わる。
 すると、当然のように夜のお誘いが引っ切り無しに来るが、今の所はすべてお断りしていた。
 やはり日本人として生まれた以上は、どうにも一夫多妻制というのは受け入れられなから。

 すべては、もう居ないであろう婚約者に指輪を渡してからと決めていた。

 ※  ※  ※  ※  ※

 自室に戻り、再び一人になる……

 シャワーを浴びる正秀は今日も充実した1日だったと思う。

 しかし、生粋の戦車兵だからであろう。
 レオパルト2が早く迎えに来てくれないかと、寂しくもあった……
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