異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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惑星アクア編 終章

第7話 七転八転

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 日の光が後少しで手に届く……

 為次達の3人は瓦礫の中を這い上がり脱出は目前であった。

 「はぁ、やっと出れそ」

 「まったく…… 服が砂まみれだわ」

 「結構、落ちてしまったのです」

 「お風呂に入りたいわね」

 「私も入りたいのです」

 「じゃあ俺も一緒に」

 「タメツグ、あんたもう一度突き落としてほしいの?」

 「……ご遠慮します」

 ピー ピー ピー

 と、そこへ通信が入ってきた。

 「うぉ? 誰だこんな時に」

 『タメツグさん、聞こえますか?』

 どうやらエクステンペストかららしい、声の主は通信士のメイであった。
 脱出寸前でよじ登る手足を止め交信する為次。

 「なんだメイか、どかしたん?」

 「ちょっと止まらないでよ、邪魔ねぇ」

 足元からマヨーラの文句が聞こえてくるも、そこは無視してメイからの通信内容に耳を傾ける。

 『大変です、ユーナさんがやられました』

 「は? 死んじゃったの?」

 『いえ、生命反応はありますが動ける状態ではないようです。サダムネと呼ばれる男に深手を負ってしまった模様です』

 「えぇ、でもスーツ装着してたよ?」

 『はい…… ですが……』

 「いくらおっさんが強くてもプロジェクタや光学迷彩を使えば一方的じゃぁ……」

 A.A.S.には透明化できる光学迷彩や自分から位置をずらして残像を空間描画するミラープロジェクターシステムが備わっている筈であった。
 それらを使用すれば肉眼による攻撃はほぼ無効と言っても過言ではない。

 『ユーナさんが、それらを使用した形跡はありませんでした……』

 「なんだあのバカ、油断してたんか」

 『はい、そのようで。とにかくこちらも今、救援を降ろしましたので到着まで後23分の予定です』

 「あ、はい」

 『それと、サダムネが為次さん達のすぐ近くに居ますので気を付けて下さい。ユーナさんも一緒です』

 「まじすか…… っとにめんどくさいおっさんだな、もう」

 『交信終わります』

 「あーちょっと待って」

 『はい?』

 「マインドジェネレーターの状況はどうなってんの? 記憶が戻るどころか頭おかしくなってんだけど」

 『少々お待ち下さい。スラスキアスに替わります』

 「あ、はい」

 『よう、タメツグ元気か?』

 「グレイか」

 『俺だぜ。マインドジェネレーターの進行具合が聞きたいんだよな?』

 「うい」

 『あまり芳しくないな、簡単に説明するとだな……』

 グレイの説明によれば一部のナノマシンが誤作動を起こしているらしい。
 なんでもナノマシン同士でニューロネットワークを形成してしまい、1つの巨大な脳みたいになってしまっているそうだ。
 おかげで外部からのリンクを不正アクセス、いわば洗脳行為とみなし精神防御システムを可動させてしまっている。

 原因としてはナノマシンの重複登録によるものであった。
 圧縮された記憶を古いナノマシンが保持している所へ新しいナノマシンが入って来る。
 しかし、マインドジェネレーターには未登録な上、記憶を展開するスペースが不足しているせいで受け取れなかった。
 困ったナノマシンは解決策として、よそから記憶を貰うことにしたのだ。

 まず、他人の情報から自分の担当する人間の情報を取得し大まかな記憶を生成する。
 しかし、これでは曖昧な記憶しか創ることができない。
 そこで別の人間とも記憶を共有し、お互いに辻褄合わせをしようとしたのだ。
 ベースとなる記憶はマザーナノマシンを持つターナを中心とした情報であり、それを元に性格ではなく思考の統一化を行ない同時に圧縮率の効率化も図った。
 結果的に転生者の増加に伴い集団ネットワークを構築するに至った。

 もっとも、この巨大な脳を分解するのにマインドジェネレーター側もただ単に手をこまねいているだけではない。
 防御システムへ対して執拗にアタックを仕掛け解除コードを送り込もうとしている。
 そんなネットワーク争奪戦をやっているせいで、ニューロネットワークがかなり乱れているらしい。
 おかげで人々はバーサーカーに近い本能剥き出しの状態になっているそうだ。

 『……ってな分けで、記憶が戻るにはしばらく時間が掛かりそうだな』

 「へー、この短時間でよく解析できたねぇ」

 『そんなのスキャンして機械にかけりゃ一瞬だろ』

 「確かに極亜空間光量子コンピュータはバケモンだからなぁ……」

 極亜空間光量子コンピュータとは、光コンピュータを基本とし光の速さである光子ビットを更にチップ内にて空間転移ワープをさせて光速を超えた演算能力を持つ計算機である。
 しかも、多重次元で同時演算すらも可能であり、単純速度を要しない計算であれば人間の理解を超えた速さで処理してくれる。
 これは、亜空間論によってテラの開発した重要な技術の1つであった。
 当然ながらレオパルト2にも搭載されている。

 『ま、こんなもので納得したか? タメツグ』

 「おけ、ありがちょ」

 ようやく為次は納得できた。
 マヨーラやスレイブは、まだナノマシンの重複登録は行なっていない。
 だから自我を保ったままでいられるのだと。

 『へへっ。気を付けろよ、奴はすぐ上だぞ』

 「…………」

 為次は交信を終わらせると、瓦礫の中からゆっくり頭を覗かせる。
 辺りを見回し貞宗の姿を確認するとスイに向かって言うのだ。

 「スイ、変身して待機しといて」

 「は、はいっ」

 足元から照らすスイの変身する光が眩しい。
 マヨーラは何事かと驚いた様子であった。

 「あ、よいしょっと」

 と、瓦礫の上に立つ為次。
 少し離れた場所では貞宗がこちらを睨んでいた。

 「山崎よ、遅かったじゃないか」

 「すまそ」

 「こっちは、こんなつまらん物と遊んでいたんだぞ?」

 そう言いながら、手に持っていた物を見せびらかすように差し出した。

 ……それはユーナであった。

 「ユーナ……」

 「ぁ…… ぁぁ、タメ…… ッ……」

 かろうじて何か言おうとしているのが聞こえる。
 きっと、こちらを見て名前を呼ぼうとしているだろうと為次は思ったが、言葉にはなっていなかった。

 四肢を切断された無残な姿を晒している。
 髪を掴まれ、ゆらゆらと揺れる身体を細い首だけで支えているので項垂うなだれることすらできない。
 ただ涙を流すことしかできなかった。

 「ふう…… やっと出れたわ。あらサダムネじゃない…… って!? ユーナどうしたの!?」

 後から這い上がって来たマヨーラも目の前の異様な光景に驚いた。

 「ふはははっ。なぁにマヨーラの譲ちゃんにお人形でもやろうと思ってだな。ほらっ」

 と、ユーナをマヨーラに向かって放り投げた。

 ドサッ

 「あぐっ」

 「…………」

 足元に転がるユーナを見てマヨーラは何も言えなかった。
 いったい何が起こっているのだろうと考えるが、無残に転がる恋のライバルをの当たりにして思考が上手く回らない様子だ。

 「へぇ、ここまでやっといて殺さなかったんだね。隊長さん」

 為次はそう言いながらホルスターのデザートイーグルをそっと抜き取りズボンのお尻へと挟んだ。

 「ああ、だってそうだろう? 殺してしまったら山崎は俺と遊んでくれないのだろう?」

 「……ええ、もちろんッスよ。悪い子とは遊ばないってね」

 「俺はいい子だよな? なっ? なぁっ山崎ぃぃぃ!」

 「はいはい、いい子、いい子」

 「ならどうしてオモチャを持ってこなかった? お前も持ってないと遊べないだろう?」

 玩具とは特売品のことだとすぐに理解できた。
 仕方なく辺りを見回す為次。
 するといびつに曲がった鉄の棒が落ちていたので手に取る。
 何処かの手摺りだろうか? それとも旗でも付けてあったのか、元が何か分からない。
 しかし、今はそんなことどうでもいい。
 それを武器として選んだのだ。

 「これでじゅうぶんかな、特売品を使うと強過ぎるからねぇ。うへへ」

 「ほぅ…… 言うではないか。ならば早速見せてもらおうか、いいよなぁ?」

 「…………」

 黙って笑うだけの為次を見た貞宗は、刀を構え突如として斬撃を繰り出す。

 「はぁぁぁっ!!」

 ガキィィィン!

 為次は鉄の棒に一瞬だけ気を送り込み弾き返すも、すかさず奇跡を変えて襲い来る刃。
 だが、気を集中し再び弾き返す。

 ガキン! ガキン!

 刀と鉄の棒が交錯する度に、ぶつかり合った気と気が弾け飛ぶ。
 時折、貞宗の属性である雷が空を切り裂く。

 「どうした! その程度か!?」

 「…………」

 強がってはみたものの、防戦一方の為次は不利であった。
 鉄の棒を刀身として使うのに結構な気力を消費してしまう。
 しかも、抜刀斬りしかやったことないので片手剣状態は厳しい。

 「楽しいよなぁ山崎よ。人同士で殺し合う興奮は堪らないぞ」

 「本能ねぇ……… っと、うりゃ」

 ガキン

 「しかしなぁ。守ってばかりではどうかと思うぞ? ほらほら、もっと打ってこんかっ」

 ガキン ガキィン

 「はいはい、ってね!」

 と、次の斬撃は弾かずに避けた。
 そのまま鉄の棒を振り上げ頭を目掛けて叩き付ける。

 が……

 あっさりと受け止められてしまう。
 だが為次はニヤリと笑っていた。
 まるで勝ちを確信したかのように。

 鉄の棒から気を抜いたその時であった。

 ドンッ!

 火薬の破裂音が響き渡る。
 と、同時に両者は吹き飛ばされ瓦礫の地面へと転げてしまった。

 「ぐあぁ!?」

 「スイ! 回収だっ!!」

 咄嗟に立ち上がり為次は叫んだ。
 すると瓦礫の中からスイが飛び出して来る。

 「はいなのでーす! どりゃぁぁぁ!」

 「きゃぁっ、ちょっとスイ!?」

 「ス…… ィ……」

 スイは元気一杯にクローラーダッシュをしてマヨーラとユーナを担ぎ上げた。
 次に為次へと近づくとスイタンクへと変形し言うのだ。

 「タメツグ様。ささっ、どうぞなのです」

 「スイは偉いなー」

 と、足の上に飛び乗った。
 爆走するスイタンク。
 華奢な体に3人も乗せているのでバランスが悪いけどお構いなしだ。

 「スイ上だ上。あっちにレオがある」

 「はいですっ、行きますよー」

 何処かへ行ってしまう為次を見て貞宗は慌てて叫ぶ。

 「山崎ぃぃぃ!! 逃げるんじゃねぇ!!」

 と、立ち上がろうとしたが……

 バタンッ

 起き上がることができずに、顔面から倒れてしまった。

 「じゃーねー隊長さん。あひゃひゃぁ……」

 為次の下品な笑いが遠ざかってゆく……

 「山…… 崎……」

 右足に違和感を感じる貞宗。
 見ると太腿ふとももから先が無くなっていた。

 「な…… なんだこれは……」

 思考が追いつかない。
 何が起こったのか分からなかった。

 あの音はデザートイーグルの発砲音だったかと思い返す。

 少し離れた所には、今しがたまで自分の物であった右足が千切れた傷口を無残に晒しているのであった……
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