乙女ゲーの王子に転生したけどヒロインはマジでお断りです

きょんきち

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事前準備の少年時代

婚約者との初対面と砂糖と塩と香辛料

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 昼食を終えて午後の授業だ。午後は剣術の予定だったけど昨日の一件でいきなり激しい運動をする事を心配され軽い素振りと走り込みだけとなった。

その時の記憶が反映された動きとなってしまい、何やらアルフレッド先生に感心されてしまった。

あ、アルフレッドが剣術の先生の名前だ。王国近衛騎士団の副団長を務めている。

気をつけないとところどころで異世界の経験が出てきてしまうな。

そんな感じで授業も早めに終わり、空いた時間に庭でお茶をして寛いでいると、来客があった。

「ご機嫌麗しくございます。ブランシュタイン殿下。昨日お伏せになられたと伺い心配しましたわ。」

濃い茶色の髪を巻いた可愛らしい少女。それはの記憶にある資料に描かれた悪役令嬢オプスキュリテの幼少期そのものだった。

声の調子と大きくてややつり目の瞳が彼女の性格がきついものと連想させるがそれは彼女が本気で僕を心配してくれているだけなのだ。

「ご心配をおかけして申し訳ありませんオプスキュリテ嬢。この通り、すっかり元気になりましたよ。」

笑顔でそう答え、対面の席にお誘いすると彼女はほっとしたような顔を一瞬浮かべ、カーテシーして席に着いた。

「本当でございますわ。殿下はご自身が次代の王となる事をもう少しご自覚ください。」

ぷりぷりと苦言を言う彼女に思わず苦笑する。こういう物言いを誰にでもするため、あのゲームのファンには口うるさいイメージを持たれているらしい。

前世の姉もよく『小姑女』とか言ってたな。小姑自体に女性の意味が含まれてるのにさらに女をつけるって意味なくないか?

彼女のお茶と追加のお茶菓子を用意しようとするシェーラにふと彼女の設定を思い出す。

「シェーラ、彼女のお茶菓子は甘さ控えめでお願いします。」

彼女は甘いものがあまり好きではない。それが原因でゲーム内のイベントでトラブルを引き起こすのだ。

僕の突然の行動に彼女は驚いた顔を見せた。

「どうして私が甘いものが苦手な事をご存知なのですか?」

問いかけられあっと思ってしまう。の記憶を呼び起こして上手い言い訳を探さないと。

「その、以前同じようにこうしてお茶をさせていただいた時に、あまりお茶菓子をお召し上がりにならなかったので。」

砂糖が貴重なこの世界だ。当然お茶に砂糖を入れる習慣はない。その分貴族はお茶の際自分の裕福さを誇示するかのように砂糖たっぷりの甘いお茶菓子を用意する。

そんな砂糖まみれのお茶菓子を彼女はほとんど口にしなかった事を思い出した。

「じろじろと観察する様な事をして申し訳ないです。その、要らぬ気遣いでしたか?」

やってしまってから余計なお世話だったかもしれないと気付いた。弱みを知られて彼女に迷惑をかけたかもしれない。

「いえ、お気遣いありがとうございます。」

顔を伏せ、小声でそう答えて貰えたのでよかった。しかしほんと気をつけないとな。

 その後はお互いの近況を話し合う。僕となってまだ2日目だがだった時の記憶もちゃんと引き継いでいるから会話に困る事はない。

「あら、随分と長居をしてしまい申し訳ありません。そろそろお暇させていただきますね。」

日が陰りだしたことに気付いた彼女が慌てた様子でそう切り出した。

「いえ、私もオプスキュリテ様と色々お話出来てとても楽しかったです。

また近いうちにお茶会をしましょう。今度はオプスキュリテ嬢のお口に合うお茶菓子を用意させますので。」

スイーツ脳女子を姉に持つと色々作らさせられる。の記憶から色々レシピは憶えているし料理長に頼めば再現もできそうだ。

彼女を見送ると、シェーラがにやにやとした目でこっちを見てきた。

「うふふ、ブランシュタイン様ったらいつの間にそんなに女性を口説く術を身につけたんです?

あのオプスキュリテ様を終始顔を真っ赤にさせるなんて。」

「僕は僕の思った事を素直に彼女に伝えただけだよ。ほら、暗くなる前に城内に戻ろう。」

遇らう僕にシェーラは終始ニヤつきっぱなしだ。やりすぎたか?いや、でも本心なのは事実だしなぁ。

 部屋に戻ると紙を用意させて2・3レシピを記憶から書き写す。の記憶からこの世界の文字の読み書きは当然余裕だ。

当然の記憶もあるからあっちの文字も書ける。書いたレシピはシェーラに手渡し、料理長に後で持っていってもらう。

上手くいけば次に彼女が来た時は彼女好みのお茶菓子が用意できるだろう。

そしてそれが終わるとシェーラに父上の執務室の訪問を確認する。

この時間の父上はまだ執務室で国政を行なっているはずだからだ。

----------

 父上との面会は夕食後すぐに設けられた。

ちなみにレシピを見た料理長は初めて見るものだったらしく確認を含めて試してみてくれるらしい。

「で、ブランよ。私に話とはなんだ?」

執務室にやってきた僕に対して、側に宰相のシュバルツ様を控えさせる父上は昨日見せた父の顔ではなく、この国の王の顔をしている。

「はい。お目通りいただきましたのは、昨日の私の身に起きた事の顛末についてです。」

エリュシオン先生に言われた通り異世界の記憶については父上にも話すつもりはない。

しかしその中の一部の知識でこの国に有用となる物はうまく活用するべきだ。

「ほう。聞かせてみよ」

「はい。まず、昨日朝の事です。目覚めると同時にこの世界の真理とも言える情報が流れ込んできました。

それはこの世界を構成する様々な物事の知識で私はあまりにもの情報量からの負荷に耐えきれず気を失い、一部の情報しか受け取ることができませんでした。」

あまりに荒唐無稽な出だしに2人とも戸惑っていた。

「これはその時に得た知識の1つ。海水を利用した塩の効率的な生成法です。」

の記憶から、この世界でも海水から塩が取れるのは認識されている。

しかし海水には不純物が非常に多く、しかも取れる割合が非常に少ない為、活用しきれていなかった。

そこでの知識である。サバイバルが趣味だったため、当然のように海水から食塩を生成する方法は知っていた。

まぁ手間が多いのでやった事はなかったのだが知識があればそれをこの世界に合わせて応用もできる。

植物紙の発明はされているがまだまだ異世界には及ばない。濾過するのはもっぱら布袋だが食塩を作るにはそれで十分だ。

それに錬金術を使えば物質と液体を分けることも可能だ。

そして海水から食塩を取り除ければ蒸発した水蒸気から飲料水を作り出すこともできる。

それは川の水よりもよっぽど安全な水である。それらの知識が一通り記載された紙をシュバルツ様に渡すと書かれた内容に驚愕の表情を浮かべた。

「殿下、これが真実である確証はございますか?」

異世界知識によるものだ。確証などあるわけがない。僕は当然首を振る。

「私は得た知識をただ書き記しただけです。」

「むむむ、陛下。ここに書かれている事が真実であれば我が国の塩事情は大きく改善されます。

それどころか一大事業として他国貿易の切り札になりえますぞ。」

僕の答えにシュバルツ様は思わず呻き声をあげ、父上にそう答えた。

「それ程か。ならばシュバルツよ。早急に実証させよ。王命としても構わん。」

「は、直ちに。」

それに対して父上は即座にそう答えた。これで塩事情は改善しそうだ。それならこれも追加いけるだろうか。

「陛下、もう1つお話があります。」

「ほう、まだあるのか。」

「はい。砂糖に変わる安価な甘味の作成法と無毒ですが食用に適さないとされてきました木の実、魔除けや獣避けに使用されていた薬草の食事活用法です。」

「詳しく聞かせい!」

 僕の伝えた異世界の知識はやはりどれも有効ということで早速真偽が検証されることとなった。

これが上手くいけば食事文化は大きく改善されるだろう。大慌てな父上とシュバルツ様を尻目に僕はホクホクとした顔で自室に戻るのだった。
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