20 / 36
二章・波乱万丈の夏休み!?
第20話 冷姫とハプニング
しおりを挟む
「やっと滑れるね~」
ウォータースライダーの待機列の先頭に並ぶ朱莉は嬉しそうに言う。
「やっとだな」
琉生も嬉しそうに言うが、朱莉とは嬉しそうな理由が違う。
楽しみにしていたウォータースライダーに滑れることに嬉しそうにしている朱莉な対して、琉生は周りからの視線がやっと少なくなることに嬉しそうにしているのだ。
「こちらは三人用の浮き輪となっています」
とスタッフに言われ、三人は初めて気づく。先に滑っている人は、丸型の浮き輪に一~三人で乗っている。
「どうする、俺だけ別で乗るか?」
「大丈夫、大丈夫。後ろも少し並んでるから三人で乗ろ」
「そうね。後ろ並んでるからね」
琉生は二人。主に唯に気を使って言ったが、二人にすぐに却下される。琉生は内心「そこまで並んでないが?」と思ったがあえて黙っておいた。
「それでは、行ってらっしゃ~い!」
スタッフに力強く押され、三人の乗る浮き輪は急降下する。
「「きゃ~!!」」
琉生の左隣からは二人の叫び声が聞こえる。
ちなみに並びは左から朱莉、唯ときて琉生だ。
隣には朱莉が座ると思っていたが、唯が隣に座り、琉生は叫ぶ所ではなかった。
景色が早く進む。
あと少しでゴール。といった時に、事件は起きた──。
「うわっ!!」
琉生は左から驚くような声を聞いたと思うと、腕に衝撃が加わる。
いた、くわない。なぜなら……。
たわわに実った果実が当たっていて、痛いどころか柔らかい。
チラリと隣に目を向ければ、唯は胸を押し付けるように琉生の腕にしがみついている。
「……」
琉生は先程唯の水着姿を前にした時以上に、脳が思考停止する。
気づいた時には水の中。本気で溺れるかと思い、直ちに水から顔を出す。
「──っは!」
(空気が美味しい!溺れなくて良かった……!)
ほんの数秒間息を吸えなかっただけだが、琉生は心からそう思う。
(しかしどうして唯さんが倒れてきたんだ?あの時は真っ直ぐなコースで、倒れるような衝撃も無かったはずだが……)
ふと周りを見渡すと唯はすぐ近くに居るが、朱莉の姿はどこにも見当たらない。
「さっき倒れた時って朱莉とぶつかった?」
「朱莉ちゃんと……?うん、ぶつかったよ。というかさっきはぶつかっちゃってごめんね」
琉生はあえて「押された?」とは聞かずに、「ぶつかった?」と聞く。
どうやら予想は的中したらしい。
琉生は「大丈夫だよ」と優しくいい、唯と二人で朱莉を探すことにした。
探し始めて三分程が経過した時。遠くに大学生くらいの男達に囲まれる朱莉を見つけた。
その顔は酷く怯えていて、左腕は男に強く掴まれており、中々離れられそうにない様子だ。
近くに居る一般人は子供や女性ばかりで、少しずつ距離をとるように下がっていた。
「ちょっとあなた達!朱莉ちゃんが嫌がってるでしょ!?」
この頃よく聞く声がすると思えば、その声は唯のものだった。
「あ?やんのか?……って胸でっか」
「むふふ、ほんとだ」
「俺この子と遊びたい」
不良とキモオタと……、とにかくヤバいやつは朱莉から手を離し、唯にゆっくりと腕を伸ばす。
それでも唯は動かない。
(大事な朱莉ちゃんを守るためなら、私の体なんて……!)
唯がそう考えたその時。唯と男の間に立ち塞がる者が現れる。
「おいおい、俺の大事な妹と友達に何しようとしてんの?」
「お前そんなブッサイクな顔でこの女と遊んでるの?ウケるわ」
不良はそう言い、琉生を無視して朱莉に伸ばした腕を再び動かす。
「いデデデデデデ……!」
数秒後、伸ばした腕を擦りながら不良はその場に膝を着いている。
それは不良の伸ばした腕を琉生が力強く握りしめたから。ゴリゴリと不吉な音を鳴らし、不良は膝を着いたのだ。
「俺がブザイクなのはどうでもいいが、この二人に手を出すやつは俺が許さねぇ。分かった?」
琉生は不良の耳元で静かに伝え、その場を立つ。
最後に不良を強く睨み、唯と朱莉の二人を連れてその場を去る。
その直後、不良を含めた三人が走り去ってゆく音が聞こえて安堵の息を吐く琉生だった。
ウォータースライダーの待機列の先頭に並ぶ朱莉は嬉しそうに言う。
「やっとだな」
琉生も嬉しそうに言うが、朱莉とは嬉しそうな理由が違う。
楽しみにしていたウォータースライダーに滑れることに嬉しそうにしている朱莉な対して、琉生は周りからの視線がやっと少なくなることに嬉しそうにしているのだ。
「こちらは三人用の浮き輪となっています」
とスタッフに言われ、三人は初めて気づく。先に滑っている人は、丸型の浮き輪に一~三人で乗っている。
「どうする、俺だけ別で乗るか?」
「大丈夫、大丈夫。後ろも少し並んでるから三人で乗ろ」
「そうね。後ろ並んでるからね」
琉生は二人。主に唯に気を使って言ったが、二人にすぐに却下される。琉生は内心「そこまで並んでないが?」と思ったがあえて黙っておいた。
「それでは、行ってらっしゃ~い!」
スタッフに力強く押され、三人の乗る浮き輪は急降下する。
「「きゃ~!!」」
琉生の左隣からは二人の叫び声が聞こえる。
ちなみに並びは左から朱莉、唯ときて琉生だ。
隣には朱莉が座ると思っていたが、唯が隣に座り、琉生は叫ぶ所ではなかった。
景色が早く進む。
あと少しでゴール。といった時に、事件は起きた──。
「うわっ!!」
琉生は左から驚くような声を聞いたと思うと、腕に衝撃が加わる。
いた、くわない。なぜなら……。
たわわに実った果実が当たっていて、痛いどころか柔らかい。
チラリと隣に目を向ければ、唯は胸を押し付けるように琉生の腕にしがみついている。
「……」
琉生は先程唯の水着姿を前にした時以上に、脳が思考停止する。
気づいた時には水の中。本気で溺れるかと思い、直ちに水から顔を出す。
「──っは!」
(空気が美味しい!溺れなくて良かった……!)
ほんの数秒間息を吸えなかっただけだが、琉生は心からそう思う。
(しかしどうして唯さんが倒れてきたんだ?あの時は真っ直ぐなコースで、倒れるような衝撃も無かったはずだが……)
ふと周りを見渡すと唯はすぐ近くに居るが、朱莉の姿はどこにも見当たらない。
「さっき倒れた時って朱莉とぶつかった?」
「朱莉ちゃんと……?うん、ぶつかったよ。というかさっきはぶつかっちゃってごめんね」
琉生はあえて「押された?」とは聞かずに、「ぶつかった?」と聞く。
どうやら予想は的中したらしい。
琉生は「大丈夫だよ」と優しくいい、唯と二人で朱莉を探すことにした。
探し始めて三分程が経過した時。遠くに大学生くらいの男達に囲まれる朱莉を見つけた。
その顔は酷く怯えていて、左腕は男に強く掴まれており、中々離れられそうにない様子だ。
近くに居る一般人は子供や女性ばかりで、少しずつ距離をとるように下がっていた。
「ちょっとあなた達!朱莉ちゃんが嫌がってるでしょ!?」
この頃よく聞く声がすると思えば、その声は唯のものだった。
「あ?やんのか?……って胸でっか」
「むふふ、ほんとだ」
「俺この子と遊びたい」
不良とキモオタと……、とにかくヤバいやつは朱莉から手を離し、唯にゆっくりと腕を伸ばす。
それでも唯は動かない。
(大事な朱莉ちゃんを守るためなら、私の体なんて……!)
唯がそう考えたその時。唯と男の間に立ち塞がる者が現れる。
「おいおい、俺の大事な妹と友達に何しようとしてんの?」
「お前そんなブッサイクな顔でこの女と遊んでるの?ウケるわ」
不良はそう言い、琉生を無視して朱莉に伸ばした腕を再び動かす。
「いデデデデデデ……!」
数秒後、伸ばした腕を擦りながら不良はその場に膝を着いている。
それは不良の伸ばした腕を琉生が力強く握りしめたから。ゴリゴリと不吉な音を鳴らし、不良は膝を着いたのだ。
「俺がブザイクなのはどうでもいいが、この二人に手を出すやつは俺が許さねぇ。分かった?」
琉生は不良の耳元で静かに伝え、その場を立つ。
最後に不良を強く睨み、唯と朱莉の二人を連れてその場を去る。
その直後、不良を含めた三人が走り去ってゆく音が聞こえて安堵の息を吐く琉生だった。
0
あなたにおすすめの小説
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる